運送事業者ができる巡回指導の対策方法とは?巡回のチェック項目や評価段階など詳しく解説

行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

12年間の運送会社勤務経験を持ち、累計相談数は10,000件以上。運行管理者・配車・総務経理など運送事業の現場を知り尽くした圧倒的な業務ノウハウを基に運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許認可をメインに日本全国対応で力強くサポート。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

運送事業者ができる巡回指導の対策方法とは?巡回のチェック項目や評価段階など詳しく解説
この記事のポイント

巡回指導は、トラック協会が実施する法令遵守状況の確認であり、行政監査を未然に防ぐための健康診断のような役割を果たします。主なポイントは以下の通りです。

  • 評価はA〜Eの5段階。D・E評価を受けると運輸支局による行政監査の対象となるリスクが極めて高くなります。
  • 対策の柱は「嘘のつけない点呼記録」「全ドライバーへの指導監督」「2024年改正の改善基準告示に沿った拘束時間管理」の3点です。
  • 当日までに運転者台帳や点呼簿などの法定帳票を、現場の運行データと整合性が取れた状態で整理しておくことが不可欠です。

トラック協会から巡回指導の通知が届くと、多くの事業主や運行管理者は「何を準備すればいいのか」「もし悪い評価がついたらどうしよう」と強い不安を感じるものです。しかし、巡回指導の本質は運送業の免許を取り消すための摘発ではなく、あくまで事業者が正しいルールで運営できているかを助けるための指導・助言です。

ここで不備を指摘され、最悪の評価を受けてしまうことは、すなわち行政監査という、より厳しい調査を自ら招き入れることを意味します。

特に近年は、働き方改革に伴うドライバーの労働時間規制が非常に厳しくなっており、現場でのちょっとした記録の漏れが致命的な低評価につながるケースが増えています。当日に指導員が書類のどこを見て、どのような不備を見抜くのかをあらかじめ知っておけば、冷静に対処することが可能です。

この記事では、最高ランクのA評価を確実に勝ち取るために必要な38項目の重要ポイントから、不備を指摘されないための帳票整理の手順まで、現場の状況に即して分かりやすく解説します。

目次

行政監査につながる評価の仕組みと巡回が行われる理由

巡回指導の目的は、貨物自動車運送事業法に基づき、すべての運送事業者が安全な輸送サービスを提供できているかを確認することにあります。この結果は単なるアドバイスで終わるものではなく、国の行政機関である運輸支局と共有される仕組みになっています。実際の運用状況を証明できなければ、会社としての存続が危ぶまれる事態になりかねません。

営業停止のリスクが高まる悪い評価の分かれ道

巡回指導の結果は、A(適正)からE(不適正)までの5段階で判定されます。ここで特に警戒すべきはD評価とE評価です。

適正化事業実施機関規程により、これらの低評価を受けた事業所の情報は速やかに運輸支局へ報告されることになっています。これは法律を守れていない可能性が高い事業所として国にリストアップされることを意味し、その後の抜き打ち監査や車両停止処分などの重いペナルティへと直結します。

A評価を維持し続けることは、行政処分という最大のリスクから会社を守る防波堤となるのです。

当日の書類チェックの流れと掛かる時間の目安

巡回指導当日は、原則として2名の指導員が営業所を訪れます。時間は車両台数や書類の整理状況にもよりますが、おおむね2時間から3時間程度を要するのが標準的です。

まず運行管理と整備管理に関する膨大な書類の突合が行われ、その後にアルコール検知器の動作確認や、車両の掲示物のチェック、そして最後に運行管理者等へのインタビューが行われます。この際、書類がバラバラで提示に時間がかかってしまうと、管理体制そのものが疑われ、評価にマイナスの影響を与えることが多いため、事前のファイリングが不可欠です。

トラック協会がやってくる周期と事前の通知

巡回指導が行われる頻度は、前回の評価内容によって変動しますが、一般的には2年から3年に一度のペースで実施されます。新しく営業所を開設した場合は、半年以内に最初の巡回が行われます。通知は通常、実施の約1ヶ月前までにハガキや封書で届きます。この通知が届いてから準備を始めたのでは間に合わない項目が多いため、日頃からいつ来ても大丈夫な状態を作っておくことが、現場担当者の負担を減らす唯一の方法です。

最高ランクのA評価を取るための大切な項目

A評価を獲得するためには、全38項目の中でも配点が高い重点項目を完璧にこなす必要があります。形式的に書類があるだけではなく、内容に矛盾がないかが厳しく問われます。特に安全輸送の根幹に関わる項目については、日々の継続的な記録がそのまま評価に直結することを認識しておきましょう。

A評価獲得のための点呼記録や教育記録の整備状況を、プロの視点で精査いたします。

※わからないことは、まずは当社へお気軽にご相談ください。

嘘がつけない点呼の記録と正しく行っている証拠

点呼は安全運行の根幹であり、巡回指導で最も重要視される項目の一つです。指導員は、点呼簿に記載された時間と、デジタコに記録された走行開始・終了時間を詳細に照らし合わせます。もし点呼時間が走行開始後になっていたりすれば、それは点呼の未実施または虚偽の記録とみなされます。また、アルコール検知器を用いた記録が全件漏れなく残っているか、測定結果の数値が異常ではないかも見られます。整合性が取れない記録は、信頼を一度に失墜させる原因となります。

全ドライバーへの教育を証明する指導記録の残し方

国土交通省の指針により、運送事業者は全ドライバーに対して定期的に指導監督を行う義務があります。巡回指導では、この教育をいつ、誰が、どのような内容で行ったかを示す教育記録簿の提示が求めされます。単に話をしただけでなく、配布した資料や実施風景の写真、ドライバー本人の受講印などが揃っていると、教育の実施実態があると高く評価されます。特に新任ドライバーや高齢ドライバーへの特定指導が漏れていないかは、非常によく見られるポイントです。

整備の担当者が行う日々の点検と車検の管理状況

整備管理の面では、3ヶ月ごとの定期点検(法定点検)がすべての車両に対して遅滞なく行われているかが最大のチェックポイントです。

定期点検整備記録簿の原本が備え付けられているか、点検時期を知らせる管理表が機能しているかが見られます。また、毎朝の乗務前に行う日常点検の結果も、点呼簿とセットで確認されます。整備管理者がドライバーからの故障報告をどのように吸い上げ、修理を指示したかという一連のプロセスが、記録として追える状態にあることが求められます。

重点確認項目チェックの急所評価への影響
点呼の実施状況アルコール検知器の使用とデジタコとの整合性極めて高い(不備=即低評価)
指導監督の実施12項目の計画的な実施と全運転者の記録高い(未実施は是正対象)
過労運転の防止改善基準告示(拘束時間等)の遵守極めて高い(2024年以降の重点)
定期点検の実施3ヶ月点検の実施率と記録簿の保存高い(漏れがあると重大指摘)

当日に出し忘れると困る大切な書類とデータの整理

巡回指導の当日は、指導員が効率よくチェックできるよう、必要な書類を事前にカテゴリー分けして整理しておくことが好印象につながります。帳票類の管理は、単に紙を保管するだけでなく、実際の現場での運行実態をいかに正確に裏付けるかが問われます。事前のファイリングが合否を左右すると言っても過言ではありません。

書類の整合性チェックや「いつ来ても大丈夫な管理体制」の構築をバックアップします。

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社会保険や雇用の状況をまとめた運転者台帳の書き方

運転者台帳は、法令で定められた項目を漏れなく記載しなければなりません。氏名や生年月日だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金)や雇用保険への加入記号番号の記載が必須です。巡回指導では、実際に保険料を納付している証明として領収証や決定通知書の提示を求められることもあります。また、健康診断の受診日と結果の判定、免許証の有効期限なども最新の状態に更新されているか確認してください。写真の貼り付け漏れも意外と多い指摘事項です。

3年分を保管する点呼の台帳とアルコール検知器の期限

多くの帳票は、以前の1年間から3年間の保存義務へと改正されています。点呼記録簿だけでなく、運行指示書や事故の記録なども、過去3年分を即座に提示できるように準備が必要です。また、アルコール検知器についても、単に備え付けてあるだけでは不十分です。メーカーが指定する有効期限や使用回数の上限を超えていないか、毎日の動作確認記録が残っているかが精査されます。故障したまま使用し続けている実態が発覚すれば、極めて重い指摘となります。

走った記録と指示書の内容を一致させる管理の手順

乗務記録(日報)と、事前に作成される運行指示書の連動性も重要です。2泊3日などの長距離運行の場合、あらかじめどのようなルートを通るか、どこで休息を取るかを指示書として残さなければなりません。この指示書と実際の日報の内容(時間・場所)が著しく乖離している場合、適切な運行管理が行われていないとみなされます。これらの現場データが整合性を持って管理されていることが、健全な運営の証跡となります。

厳しくなった拘束時間のルールと証拠の残し方

2024年問題以降、巡回指導で最も厳しくチェックされるのが労働時間の管理です。厚生労働省が定める改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)を遵守できているか、デジタコのデータがすべてを物語ります。計算の誤りや認識不足が、即座に行政処分のリスクを増大させるため、正確な時間管理の体制が不可欠です。

2024年改正の拘束時間ルールへの適合診断など、複雑な労務管理の対策を支援します。

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1日の休み時間や仕事の長さを計算する決まりと罰則

2026年現在のルールでは、ドライバーの1日の拘束時間は原則13時間以内、最大15時間です。勤務終了後の休息期間は継続11時間以上を基本とし、最低でも9時間を下回ることは許されません。

巡回指導では、ランダムに選ばれたドライバーの数ヶ月分の記録が1分単位で集計されます。これらを一度でも超えていれば不適正となり、回数が多い場合は行政処分の対象となります。単に日報を見るだけでなく、客観的な記録であるデジタコとの突き合わせが行われる点が非常に重要です。

給与の台帳とデジタコを突き合わせて見つかる問題

指導員は、給与計算の根拠となる出勤簿・賃金台帳と、実際の走行記録であるデジタコを横並びにして確認します。ここで、デジタコでは走行している時間なのに、賃金台帳上では休憩扱いになっていれば、未払い残業代が発生している疑いを持たれます。これは労働基準法違反にもつながる重大な不備です。運行管理部門と給与計算部門で情報の乖離をなくす社内体制の構築が不可欠です。

2人で交代して走る時や休みを分ける時の記録の工夫

11時間の休息期間を一括で取ることが困難な場合に認められる分割休息特例や、2人乗務の場合、計算ルールがより複雑になります。分割休息の場合は、1回につき継続3時間以上、合計で10時間以上必要など、細かな条件があります。巡回指導では、これらの特例を適用する際に必要な運行指示書への記載や事前の合意があるかどうかが確認されます。正しく記録を残す手順を現場で徹底しなければなりません。

指摘を受けた後の評価を戻す報告書の作り方

巡回指導の結果、不備を指摘されたとしても、その後のリカバリー次第で最悪の事態は避けられます。大切なのは、指摘を真摯に受け止め、二度と同じミスを起こさない仕組みを国に示すことです。報告書の提出は自社の管理能力を再アピールする絶好の機会でもあります。

改善報告書の書き方や行政監査回避のためのリカバリープランを提案いたします。

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結果の通知書から読み取る直すべき本当の理由

巡回指導が終わると、その場で巡回指導結果通知書が手渡されます。重要なのは表面上の不備ではなく、その背後にある管理体制の欠陥を特定することです。例えば「点呼の漏れ」の本当の理由が、深夜帯の管理体制の不足にあるならば、そこを改善しない限り再発は防げません。なぜその不備が起きたのかという原因分析を行うことが、改善報告書作成の第一歩です。

言い訳にならない具体的な改善方法の書き方

改善報告書には、抽象的な決意を書くだけでは不十分です。具体的かつ客観的に確認できる対策が求められます。例えば「アルコール検知器を最新のクラウド管理型に入れ替えた」「運行管理補助者を新たに選任した」といった、目に見える変化を記載する必要があります。実施したことがわかる写真などを添付することで、報告書の説得力は飛躍的に高まります。

報告書を出すまでの期限と運輸支局への伝わり方

指摘を受けた項目に対する改善報告書は、通常30日以内に提出する必要があります。

この期限を過ぎてしまったり、内容が不十分だったりすると、運輸支局へ「改善の意思なし」として報告されてしまいます。支局への報告が「改善済み」で終わるかは、その後の監査の優先順位に直結します。速やかに、かつ丁寧な裏付け資料を揃えて提出することが、行政監査を回避するための最大のチャンスとなります。

当日の不安をスッキリさせるよくある質問

行政による監査との違いと責任者の立ち会い

巡回指導は民間団体による指導であり、直接的な行政処分を下す権限はありません。対して行政監査は国による調査であり、違反があれば即座に処分が下されます。巡回指導の当日は、営業所の責任者である運行管理者と整備管理者の立ち会いが原則として求められます。責任者が不在だと書類の説明ができず、本来クリアしている項目も確認不能(不適正)とされる恐れがあるため、必ず日程調整をして全員が揃う日に実施してもらうべきです。

後から記録を作ることで疑われる悪質な行為

巡回指導の直前に、漏れていた点呼記録や日報を遡って作成する「書き溜め」は絶対に避けてください。指導員は筆跡の不自然さや、デジタコデータとの矛盾を鋭くチェックします。事実と異なる記録(捏造)が発覚した場合、単なる過失よりもはるかに重い「悪質」という判定が下され、即座に行政監査へと回されます。不足がある場合は正直に認め、今後はどう管理するかを誠実に示すほうが、最終的なリスクは小さくなります。

車の台数が少ない営業所でのチェックのされ方

「うちは車両が数台だから、そんなに厳しく見られないだろう」というのは大きな誤解です。巡回指導の38項目は、事業規模に関わらず一律で適用されます。むしろ車両が少ないほうが、一台あたりの点検状況や一人ひとりの教育実態が細部まで見られやすい側面もあります。小規模な営業所でも、国家資格者がしっかりと職務を全うしている証拠(点呼記録等)を整えておくことが、評価を分けるポイントです。台数が少ないからと油断せず、基本的な帳票管理を徹底してください。

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まとめ

運送業の巡回指導は、事業の健全性を証明し、行政監査という致命的なリスクから会社を守るための貴重な機会です。最高ランクのA評価を勝ち取るためには、38のチェック項目を正しく理解し、特に点呼の実施、指導監督の記録、Thicknessそして改善基準告示に沿った拘束時間管理の3点を盤石にする必要があります。当日になって慌てないよう、日頃から法定帳票を整理し、客観的なデータ(デジタコ等)との整合性を確認しておくことが何よりの対策です。

2024年問題以降、法令遵守のハードルはかつてないほど高まっており、現場の努力だけで完璧な対応を維持するのは容易ではありません。自社の管理体制に少しでも不安がある場合や、前回の巡回で思うような評価が得られなかった場合は、初期段階で専門家へ相談し、模擬巡回を通じた事前対策を行うことをお勧めします。早めの準備が、結果として会社への信頼を高め、安定した事業運営を支える力となります。自信を持って当日を迎えられるよう、一つひとつの項目を着実にクリアしていきましょう。

行政監査を未然に防ぎ、安心な事業運営を続けるための管理体制を共に構築しましょう。

※わからないことは、まずは当社へお気軽にご相談ください。

参考文献

  • この記事を書いた人
行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

12年間の運送会社勤務経験を持ち、累計相談数は10,000件以上。運行管理者・配車・総務経理など運送事業の現場を知り尽くした圧倒的な業務ノウハウを基に運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許認可をメインに日本全国対応で力強くサポート。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

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