産業廃棄物を収集運搬する際、どのようなケースで許可が必要、あるいは不要になるのでしょうか。もしかしたら普段行っている収集運搬が違法行為に該当しているかもしれません。
そこで、この記事では
- 産業廃棄物とは何か
- 産廃収集運搬業の許可申請とは
- 産廃収集運搬業の許可が必要なケースと不要なケース
などについてザックリ解説していきます。産廃収集運搬業に関わる事業者様はご参考にしていただければ幸いです。
廃棄物とは?
廃棄物とは何かについて、昭和52年に厚労省(当時)の通知で「廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になったものをいう」としています。
具体的な廃棄物の種類については「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法と言います。)」で下記のように定義されています。
「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染されたものを除く。)をいう。
廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に大別され、廃掃法で産業廃棄物について定義し、それ以外の廃棄物を一般廃棄物としています。廃棄物の分類と種類を以下に記載するのでご確認ください。
廃棄物 | 産業廃棄物と一般廃棄物に分かれる。 |
産業廃棄物 | 特別管理産業廃棄物とそれ以外の産業廃棄物に分かれる。 |
一般廃棄物 | 事業系一般廃棄物、家庭系一般廃棄物、特別管理一般廃棄物に分かれる。 |
産業廃棄物とは?
産業廃棄物とは、「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」のことを言います。
産業廃棄物に関することは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称、廃棄物処理法または廃掃法と言います。)第二条第四項」で定められており、その他政令で定める廃棄物については、同法施行令第二条で、
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 鉄くず
- ゴムくず
- 使用した動物や植物の固形状の不要物
- 動物のふん尿
- 動物の死体
などが挙げられています。
また、産業廃棄物のうち、特に爆発性、毒性、感染性が強いものは「特別管理産業廃棄物」と定められ、一般の産業廃棄物を扱うためのものとは別の許可が必要となります。
ここで一番押さえて頂きたいことは、一般家庭から排出される紙くずや廃プラスチックなどの廃棄物は産業廃棄物に当たらないということです。つまり、事業活動によって生じた特定の廃棄物が「産業廃棄物」であることになります。
産業廃棄物収集運搬業の許可とは?
廃棄物処理法に基づいて、排出事業者の産廃処理を助けるのが産業廃棄物収集運搬業です。
そして、産業廃棄物を収集運搬するには、都道府県知事あるいは政令指定都市の市長から「産業廃棄物収集運搬業許可」を得る必要があります。
許可取得後に、事業の一部あるいは全部を廃止したり、住所・氏名または名称・法人の役員・運搬車両・事業の用に供する施設などの変更があった場合は届出が必要となります。
申請受付窓口
産業廃棄物収集運搬業許可の申請受付窓口は、個人・法人共通で排出された産業廃棄物処分場のある都道府県にある環境保全課(地域により名称は異なります。)などです。
たとえば、岐阜県で排出された産業廃棄物を愛知県の産廃処分場へ運搬する場合は、
- 東三河総局 県民事環境部環境保全課
- 東三河総局 新城設楽振興事務所 環境保全課
- 尾張県民事務所 廃棄物対策課
- 海部県民事務所 環境保全課
- 知多県民事務所 環境保全課
- 西三河県民事務所 廃棄物対策課
- 西三河県民事務所 豊田加茂環境保全課
のうち、処分場のある市町を管轄する機関が申請受付窓口となります。
郵送での申請受付は可能か
産廃収集運搬業許可申請は、郵送での受付が可能な地域と不可な地域があります。申請前に必ず確認しておきましょう。
愛知県や大阪府など郵送での受付が不可な地域では、遠方からの申請受付などに考慮して申請書の事前確認のみ郵送で受付可能としています。
いきなり申請書類を持参しても、申請書類の大幅補正や不足資料があると申請受付してもらえません。必ず郵送で申請書類の事前確認をしてもらいましょう。
そして、申請受付に向かう際は、必ずアポを取ってから関係機関で申請受付をしてください。アポを取らずに行って担当者が休みだったり、窓口が申請者で混みあっていると受付してもらえない可能性があります。
許可取得にかかる期間
官公庁によって異なりますが、産廃収集運搬業許可の申請受付をしてから許可取得にかかる期間は40日~60日です。
これに産廃収集運搬講習の受講や申請書作成、申請書に必要な資料を集める期間を加味しないといけません。
産業廃棄物収集運搬業許可取得で必要なこと|許可要件のクリア
申請要件のクリア
産廃収集運搬業を行うには、下記5つの要件すべてをクリアして許可を取得することが必要です。
- 収集運搬業の講習会を受講していること
- 収集運搬に必要な施設を有すること
- 事業計画が整っていること
- 経理的基礎を有すること
- 欠格要件に該当しないこと
下記で5つの要件についてザックリ解説しますのでご確認ください。
要件1 収集運搬業講習会の修了
申請者が個人場合は事業主、法人の場合は役員(監査役を除く)のうち一人が「公益財団法人産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)」の行う「産業廃棄物収集・運搬課程」を受講し、講習の最後に行われる試験に合格=修了する必要があります。
講習修了証の有効期限
講習修了証には有効期限があるので注意してください。産業廃棄物収集・運搬課程(新規)は5年、産業廃棄物収集・運搬課程(更新)は2年です。
初めて受講する新規講習受講の有効期限後は、更新講習を受講します。
要件2 運搬施設
運搬施設とは、産業廃棄物を収集運搬する車両と、産廃を入れる容器のことです。
回収した産業廃棄物が飛散したり、混ざらないようにする運搬施設が確保できていること、運搬車両を使用する適切な権限や駐車場を確保できていることが要件となります。
要件3 事業計画
事業計画とは、産業廃棄物が排出される場所・現場、産業廃棄物の品目・運搬量・形状、運搬方法などを踏まえて適切な業務内容や人員が整っている事業計画が必要となります。
要件4 経理的基礎
経理的基礎とは、申請前直近3年間の決算書が債務超過になっていないこと、適正は自己資本比率を有していること、納税の滞納がないことなどを言います。
経理的基礎の要件が満たせないときは、中小企業診断士の作成した経営診断書を提出することで要件をクリアできる地域もあります。
要件5 欠格要件
申請者が、過去に暴力団とのつながりがないこと、刑法の罪を犯していないこと、産業廃棄物に関する法律違反による刑の執行が終わってから5年を経過していることなどが欠格要件となります。
いずれか一つでも該当すると欠格要件を満たせません。
産業廃棄物収集運搬業の申請方法
申請書類の作成と添付資料の収集
産業廃棄物収集運搬業許可申請は定められた様式の申請書類を作成し、添付資料を収集しなければいけません。
様式は都道府県の官公庁のホームページで取得が可能です。
愛知県の場合は、「あいちの環境」のホームページで入手可能です。
添付資料は、法人履歴事項全部証明書、役員全員の身分証明書、納税証明書などです。
申請書類は正副2通作成・提出
申請書類は正副2通作成し、官公庁が好評している許可申請の手引きに記載のある順に書類を揃えて提出してください。
身分証明書や納税証明書などの公的書類や、印鑑を押して申請書は写しを取って副本とし、原本を含むものを正本とします。
提出の際は、綴じ紐やホッチキス止めなどせずに提出するよにしてください。
許可申請書類の受付
産業廃棄物収集運搬業許可の要件をすべてクリアして申請書と添付資料を整えたら、申請受付窓口へ申請書類を提出し、処分場所在地の都道府県知事の許可を得ます。
申請手数料の納付
申請書類の受付ができたら、都道府県の収入証紙で申請手数料を納付します。新規産廃収集運搬業許可の申請手数料は81,000円です。
郵送で申請する場合は、先に収入証紙を購入し申請書類と併せて官公庁へ送るようにしましょう。
申請書類の審査
申請受付から許可取得には、官公庁の審査が40日~60日かかります。都道府県により審査期間が異なるので事前に確認しておきましょう。
申請書類に不備があった場合は、補正指示が入るので早急に対応してください。
補正が遅れると許可取得が遅くなるので注意しましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可の有効期限
産業廃棄物収集運搬業許可の有効期限は5年です。期限が迫っていることの通知が官公庁から来ることはないので注意が必用です。
有効期限が来る前に、更新申請の手続きをして事業継続してください。
更新申請は有効期限の3ヵ月前から、新規許可の申請をした官公庁で受付可能です。
有効期限を1日でも過ぎると、許可は失効してしまいます。自信で管理するか、申請を依頼した行政書士に期限管理をしてもらいましょう。
更新申請の受付後に有効期限が来た場合はどうなるか
更新申請受付後に許可の有効期限が来た場合でも、更新許可取得までの間は産業廃棄物収集運搬業を継続することは可能です。
産業廃棄物収集運搬業許可があるとできること
産廃収集運搬業許可があれば、産廃の排出事業者から委託を受けて、産廃の排出先から処理受託者のもとへ産廃を運搬することができます。収集運搬の際には、
- 産廃が飛散、流出しない措置を取る
- ダンプなどの運搬車両に産廃収集運搬車である旨の表示をする。
- 産廃収集運搬業許可証の写しなどの書類の備え付けが必要。
などの決まりがあります。
なお特別管理産業廃棄物を収集運搬する場合は、「特別産業廃棄物収集運搬」の許可が必用となるので気を付けてください。
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産廃収集運搬業許可が必要なケース
他社が排出した産業廃棄物を、依頼を受けて中間処理施設や最終処理施設に運搬する場合は、産廃収集運搬業許可が必要となります。
収集場所と運搬先が同一の都道府県であれば、その都道府県の許可のみで構いませんが、別々の都道府県であれば、それぞれの都道府県の許可を取得しなければいけません。
例えば、愛知県で排出された産廃を大阪府の処理施設まで収集運搬する場合は愛知県と大阪府、それぞれで産廃収集運搬業の許可が必用です。
では、自社で排出した産廃を運ぶ場合には、許可取得は不要なの?という疑問を持った方は次もご覧ください。
産廃収集運搬業の許可が不要な3つのケース
産廃収集運搬業の許可が不要なケースは、
- 自社の産廃の収集運搬
- 元請けで解体工事をしたときの解体物の収集運搬
- 「専ら物」の収集運搬
という3つのケースが考えられます。以下で具体的に見ていきましょう。
①自社の産廃の収集運搬
自社の産廃を収集運搬する場合、収集運搬業の許可は不要です。この場合、「自社の定義」が問題となりますが、例えば他社から運転手を借りて、自社のトラックで収集運搬した場合は、違法行為に該当します。
自社で収集運搬する際にも、産廃の飛散、流出、悪臭を抑えるなど安全な措置をとり、定められた車両表示、定められた書類の携帯が義務付けられています。自社で排出さいた産廃だから適当にトラックに積んで処分場まで持っていけば良いというものではないのでご注意を。
②元請けで解体工事をしたときの解体物の収集運搬
元請けで解体工事をした場合、解体物の収集運搬に関しては収集運搬業の許可は必要ありません。廃棄物処理法では、産廃の処理は排出者の責任で行うことが基本となっているので、自社で発生させた産廃は、自社で処理できるわけです。
一方、下請けとして解体工事をした場合は、元請け業者が産廃を発生させ、解体した業者に産廃の処分を委託したという形になりますので、収集運搬業の許可が必要となります。
③「専ら物」の収集運搬
「専ら物」とは、再生利用に使われる物で、古紙や古繊維、鉄くず(古銅等を含む)、空きびん類を指します。これらの収集運搬に関して許可が不要であることは、産業廃棄物処理法第十四条第一項に示されています。
補足|それは本当に自社の出した産廃?間違いもあり得るので注意
産業廃棄物が本当に自社が排出したものであるかどうかは注意が必要です。自社が出した産廃だと思っていたものが、実は法律上は他社のものであり、無許可で産廃の収集運搬を行っていたというケースもあります。
元請け、下請けを気にせずに収集運搬することのないうにしましょう。
白ナンバー車両でも産廃収集運搬業はできるか?
産業廃棄物収集運搬業は自家用の白ナンバー車両で行っても問題ありません。
また、緑ナンバー車両で産廃収集運搬業を行うことも可能です。その際は、一般貨物自動車運送事業許可、いわゆる運送業許可の取得が必要となります。
産廃収集運搬業の許可は譲渡できるか
産廃収集運搬業許可は基本的に譲渡することができません。これはグループ会社間であっても同様です。
運送業許可のように営業権だけを他の会社に譲渡することはできないのでご注意ください。
当社の産業廃棄物収集運搬業許可報酬
項目 | 報酬 |
産業廃棄物収集運搬業許可申請 | 10万円+税 |
新規で許可取得する場合は、別途登録免許税81,000円が必要です。
よくある質問
産廃週運搬の許可を取るまでの期間はどれくらいですか?
官公庁により異なりますが申請受付から許可取得まで40日~60日ほどです。
産廃収集運搬業許可取得の費用を教えてください。
当社の報酬は10万円+税です。新規許可の場合は、別途登録免許税81,000円が必要となります。
産廃収集運搬許可の有効期限が切れました。救済措置はありますか?
残念ながら有効期限が1日でも切れると救済措置はありません。許可はなくなってしまいます。しっかり期限の管理をしてください。
産廃収集運搬許可をグループ会社に譲渡できますか?
基本的に産廃収集運搬許可を他の会社の譲渡することはできません。
まとめ
産廃収集運搬業の許可申請に関して、許可制度の概要、許可が必要なケース・不要なケースについて解説してきました。
他社との差別化を図りたい事業者様にとっては、産廃収集運搬業の許可を受けることは大きなアピールにつながります。
産廃収集運搬業の許可申請に関するご相談は、名古屋市は名駅の「行政書士法人シフトアップ」までお気軽にご相談ください。
ご不明な点はございませんか?
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