運送会社に対する行政処分とは、監査の結果、悪質・重大な法令違反のあった運送事業者に対して科される処分のことです。平成30年にも処分量定の引き上げが行われるなど、厳しくなっても緩和されることのない行政処分。
トラック運送事業者様にとっては重要な内容ですので、一度ご確認いただくことをお勧めします。
まずは、行政処分の種類について見ていきましょう。
※2024年改正の改善基準告示については「2024年改正基準告示を解説!いつ/拘束時間/休憩時間/罰則etc」をお読みください。

運送会社の行政処分は「車両使用停止」「事業停止」「許可取消」の3種類
運送会社に科される行政処分の種類は以下の3種類です。
- 車両使用停止(俗に言う日車)=処分日車数制度
- 事業停止
- 許可取消
行政処分は運輸局によって実施される監査によって法令違反が発覚した場合に科されます。
監査は国土交通省による「自動車運送事業等監査規則」および各地方運輸局長通達「自動車運送事業(一般貸切旅客自動車運送事業を除く。)の監査方針について」に基づき実施され、運輸局公示である「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」により、その処分内容が決定されます。
監査の種類は「特別監査(通称、トッカン)」「一般監査」「該当監査(主に旅客運送事業者に実施)」の3種類です。
監査が入る端緒(きっかけ)は、自動車事故報告規則に定められている国交省に報告の必用な事故を引き起こした事業者や、法令違反が疑われる事業者、巡回指導を拒否した事業者などに対して実施されます。
監査と混同しがちな巡回指導は、適正化事業実施機関が行う運送事業者への指導です。新たに運送業を開始したあとや営業所を新設したあと3ヵ月~6ヵ月後に、その後は2年~3年周期で実施されます。
それでは、以下で3種類の行政処分について見ていきましょう。
行政処分1|処分日車数制度=車両使用停止
処分日車数精度とは一定期間、緑ナンバーを運輸局へ返納する処分制度です。ナンバーの付いていない車両は公道を走ることができませんから、ナンバーを返納した車両は運送業に使用することはできなくなります。トラック運送事業者様には一番馴染みの深い行政処分ですね。
処分日車数制度が適用される違反とは
処分日車数制度が適用されて、車両停止となる主な違反は以下の通りです。
- 帳票類の改ざん
- 点呼の一部未実施
- 3名以上の運転適性診断の未実施
など。
【POINT】処分日数は2倍になるときがある
監査実施により、行政処分を科され、その後3年以内に再違反をした場合は、処分日数が2倍になります。
【POINT】ネガティブリストに公表される
200日車を越える車両停止処分を受けた場合は、地方運輸局のホームぺージ上で事業者名が公表されます。
使用停止処分となる車両台数と日車数の関係
使用停止となる車両台数は、営業所に配置されているトラックの数によって決まります。
内容は下表をご覧ください。
所属するトラックの数 | |||||
処分日数 | 1両~10両 | 11両~30両 | 31両~60両 | 61両~100両 | 101両以上 |
30日車まで | 1両 | 1両 | 1両 | 1両 | 1両 |
31~60日車 | 1両 | 2両 | 2両 | 3両 | 3両 |
61~100日車 | 1両 | 2両 | 3両 | 5両 | 5両 |
101~300日車 | 2両 | 3両 | 5両 | 8両 | 10両 |
301日車以上 | 3両 | 3両 | 5両 | 10両 | 15両 |
行政処分2|事業停止とは?
事業停止とは、悪質または重大な法令違反を犯したときに、一定期間運送行為を行うことができなくなる行政処分です。
事業停止と車両停止を混同して営業停止と思われている事業者様が多いですが、営業停止となるのは行政処分で言うところの「事業停止処分」です。
事業停止処分になると違反のあった営業所は基本的に30日間、運送業を行うことができません。
加えて、違反点数の累計が51点~80点となった場合は、違反行使のあった営業所の管轄区域内すべての営業所について事業停止となります。
例えば、愛知県の営業所で違反があり累計違反点数60点となった場合は、中部運輸局管内にある営業所すべてが事業停止処分となります。
中部運輸局管内の都道府県は愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県の4県なので、近隣の都道府県に営業所を構えている場合は、事業継続を左右するほど大きなダメージとなるでしょう。
事業停止になる悪質または重大な法令違反とは?
悪質または重大な法令違反とは下記の行為を言います。
- 運行管理者の未選任
- 整備管理者の未選任
- 全運転者に対して点呼未実施
- 監査拒否、虚偽の陳述
- 名義貸し、事業の貸渡し
- 乗務時間の基準に著しく違反
- 全ての車両の定期点検整備が未実施
上記のほか、違反点数の累積により事業停止となる場合があります。
※累積違反点数制度に関しては後述します。
事業停止処分を行う場合 | 処分対象営業所 | |
---|---|---|
① | 一つの管轄区域に係る違反点数の累積点数が30点以下の事業者について、違反営業所に270日以上の処分日車数を付された場合 | 該当する営業所 |
② | 一つの管轄区域に係る累積点数が31点以上の事業者について、違反営業所等に180日車以上の処分日数を付された場合 | 該当する営業所 |
③ | 違反点数の付与により、一つの管轄区域に係る累積違反点数が51点以上80点以下となった場合 | 該当する営業所の管轄区域内のすべての営業所 |
行政処分3|許可取消とは?
許可取消は、運送業の許可が取消しとなる処分です。主に以下のいずれかに該当する場合に適用されます。
累積違反点数超え①
- 事業停止処分を過去2年間に3回受けていた事業者が以下のいずれかに該当する場合
- 累積違反点数が30点以下の場合で、270日車以上の車両停止処分を付された
- 累積違反点数が31点以上の場合で180日車以上の車両停止処分を付された
- 累積違反点数が51点以上となった
累積違反点数超え②
一つの管轄区域内で累積点数が81点以上になったときは累積違反点数超えとなります。一つの管轄区域内とは、例えば中部運輸局管内であれば愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県の4つのことを言います。
命令に従わない
車両使用停止処分または事業停止処分を受けた事業者が自動車検査証の返納、または登録番号(緑ナンバー)返納の命令に従わないときのことです。
3年以内に事業停止処分となる行為の反復
事業停止処分を受けた事業者が、処分を受けた日から3年以内に同一の悪質または重大な違反を再度行ったとき。
同一命令違反
以下の命令に従わず行政処分を受けた事業者が、3年以内に同じ違反をした場合
- 事業計画に従い業務を行うべき命令
- 安全管理規定の変更命令
- 輸送の安全の確保命令
- 公衆の利便を阻害する行為の停止命令
- 事業改善命令
など。
旅客運送を行った
許可がないにも関わらず、継続・反復して有償で旅客運送を行ったとき。旅客運送とは、バスやタクシーのように人の輸送を行うことを言います。
【POINT】行政処分は営業所単位で科される
行政処分は営業所単位で科されます。したがって、複数の営業所がある運送会社では、監査で違反行為の見つかった営業所のみが行政処分の対象となります。
とは言え、監査後に行政処分を科された複数の営業所を持つ運送事業者は、別の営業所にも監査が入る可能性は高くなります。
ですので、会社単位で法令違反を無くすよう努力しなければいけません。
平成30年に実施された処分量定等の引き上げ
平成30年の改正により、以下のように処分量定が引き上げられました。
乗務時間等告示遵守違反
【改正前】
- 未遵守5件以下:警告
- 未遵守6件以上15件以下:10日車
- 未遵守16件以上:20日車
- 未遵守31件以上、3名以上など:30日事業停止
【改正後】
1カ月の拘束時間および休日労働の限度に関する違反が確認された場合は、上記現行の件数として計上し、処分日数を算出する。さらに別立てで以下の通り処分日車数を算出し、上記現行の処分日数に合算する。
- 未遵守1件:10日車
- 未遵守2件以上:20日車
健康状態の把握義務違反
【改正前】
- 把握不適切50%未満:警告
- 把握不適切50%以上:10日車
【改正後】
- 健康診断未受診者1名:警告
- 健康診断未受診者2名:20日車
- 健康診断未受診者3名以上:40日車
社会保険・労働保険の未加入
【改正前】
- 一部未加入:10日車
- 全部未加入:20日車
【改正後】
- 未加入1名:警告
- 未加入2名:20日車
- 未加入3名以上:40日車
トラック運送事業における行政処分の処分量定引き上げ
【改正前】配置車両と処分日車数の関係
配置車両(台) | ||||
処分日車数 | 1~10 | 11~30 | 31~60 | 61~100 |
~30日車 | 1 | 1 | 1 | 1 |
31~60 | 1 | 2 | 2 | 3 |
61~100 | 1 | 2 | 3 | 5 |
101~300 | 2 | 3 | 5 | 8 |
301日車~ | 3 | 3 | 5 | 10 |
※車両停止処分は営業所ごとに行う。 |
例)処分150日車のとき、営業所当たりの配置車両が
- 5両の場合は車両停止=2両×75日
- 10両の場合は車両停止=2両×75日
- 100両の場合は車両停止=7両×18日+1両×24日
【改正後】使用停止車両割合を全体の最大5割に引き上げ
例)処分150日車のとき、営業所当たりの配置車両数が
- 5両の場合は車両停止=2両×75日
- 10両の場合は車両停止=5両×30日
- 100両の場合は車両停止=15両×10日
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最近改正された2つの行政処分
①|過積載に対する処分
過積載運行をした事業者は、以下のような処分を受けます。
- 初犯:車両停止処分
- 再違反:車両停止処分期間が延長
- 3回目の違反:輸送の安全確保命令を併せて発動
- 4回目以降:特別監査実施または事業許可の取消し
具体的な過積載による行政処分は、貨物自動車運送事業法の規定により以下のように定められています。
違反の回数と日車数
過積載による運送の引き受け | 初回 | 2回目 | 3回目以降 |
---|---|---|---|
過積載の程度が5割未満のもの | 10日車 | 30日車 | 60日車 |
過積載の程度が5割以上10割未満のもの | 20日車 | 50日車 | 100日車 |
過積載の程度が10割以上のもの | 30日車 | 80日車 | 160日車 |
処分の回数とその内容
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
---|---|---|---|---|
車両停止 | 車両停止 | 車両停止 | 車両停止 | 許可取消 |
- | - | 輸送の安全確保命令 | 輸送の安全確保命令 | |
- | - | - | 特別監査 |
過積載を行った運転者が事故を起こした場合の措置
過積載運行により事故を起こすと民事訴訟により運転者に対しても賠償責任が生じます。過積載運行を行った運転者に対する措置は、道路交通法により以下のように定められています。
- 自動車検査証(車検証)の提示、重量測定器(カンカン)受忍義務
- 過積載を解消するための応急措置(荷物の現場取り卸し、警察による通行指示)
- 違反点数および反則金
違反点数と罰則金の関係は下表のとおりです。
超過割合 | 大型車 | 普通車 | ||
5割未満 | 2点 | 3万円 | 1点 | 2万5千円 |
5割以上10割未満 | 3点 | 4万円 | 2点 | 3万円 |
10割以上 | 6点 | 懲戒適用 | 3点 | 3万5千円 |
②|過労防止関連違反
働き方改革の流れを受けて、平成30年から過労運転防止に関しても行政処分基準が強化されました。内容は次のとおりです。
- 貸切バス事業者を除く運送事業者に対し、乗務時間超過など過労運転防止に関係する車両処分量定の引き上げ
- トラック運送事業者に対して、使用停止車両の割ワイを最大で保有車両の5割りまで引き上げ
- トラック運送事業者に対して、席成果事業実施機関の評価などで問題のある事業者に対して重点的に監査を行う。
その他の行政処分|運行管理者の資格取消
運行管理者の業務についての以下のいずれかの法令違反がある場合は、運行管理者資格者証の返納が命じられ、資格取消となります。
- 事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物使用運転、大型車等無免許運転、火星記載運送または最高速度違反行為を引き起こした場合で、資格者が当該違反講師を明示、または事業用自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認していたとして都道府県公安委員会から道路交通法第75条第3項の規定に基づく意見聴取または同法108条の34の規定に基づく通知があった場合
- 資格者が事業用自動車により、酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転またはひき逃げを行った場合
- 資格者が運行の安全確保に関する違反の事実もしくはこれを証するものを隠滅しまたは改ざんを行う等これを疑うに足りうる相当の理由が認められる場合。
違反点数制度
監査の結果、法令違反が判明した場合に自動車の車両停止以上の行政処分が下された場合に、運送事業者へ違反点数が付与されることを「点数制度」と言います。
どのようなときに監査が入るかはこちらをご覧ください。
違反点数が累積される期間は3年か2年のいずれか
違反点数制度は法令違反のあった営業所に対して付され、運輸局単位で累計されます。違反点数が累積する期間は基本的に3年です。3年の間に違反点数が累積すると、事業の取消しや事業の停止、違反事業者名の公表(ネガティブリスト)などの処分が適用されます。
ただし、以下の営業所では違反点数が付与されても、その後2年間無事故無違反を保てば点数は消去されます。
- 処分日以前の2年間点数付与がない場合
- 安全性優良事業所(Gマーク認定を受けている事業所のこと)
【最新版】Gマーク取得方法をざっくり解説も併せてお読みください。
ネガティブリストの公表
違反点数は運輸局内で合計(累積)され、累計点数が20点を超えると運輸局より四半期ごとに事業者名が公表されます。これをネガティブリストと言います。
違反点数の計算方法は、自動車の使用停止日数10日車につき1点となります。
補足|事業停止および許可取消処分と日車数の関係
事業の停止処分となるケース | ① 1回の行政処分で270日車以上を受けた営業所(ただし、運輸支局内の累積違反点数が30点超えの場合は180日車以上で事業停止) |
② 運輸支局内の累積違反点数が50点超えとなった場合、当該運輸支局内の全営業所 | |
事業の許可取消処分となるケース | ① (地域に関係なく)2年間に事業停止処分を4回受けた場合 |
② 運輸支局内の累積違反点数が80点超えとなった場合 |
まとめ
トラック運送事業者に関する行政処分と違反点数制度について解説しました。毎年のように処分基準が改正されるため、法令遵守は益々厳格化されていきます。我が社も、しっかり法令遵守できる体制を作ってください。
なお、行政処分中および処分修了後3ヶ月(悪質な違反は6カ月)間は、事業拡大を行うことができません。したがって、営業所や車庫の新設、増車などはできませんのでご注意を。
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よくある質問
行政処分にはどのようなものがありますか?
行政処分は車両使用停止、事業停止、許可取消の3種類です。車両使用停止は一定期間トラックの使用ができなくなります。事業停止は一定期間運送業を行うことができません。許可取消は運送業許可が剥奪されます。
違反点数制度とは何ですか?
監査の結果、車両使用停止以上の行政処分が下されたときに付与される違反点数制度のことです。違反点数の累積期間は3年。累積違反点数が80点を超えると許可取消となります。
Gマークを取得している違反点数は早く消えますか?
Gマーク認証を取得していると、違反点数の累積期間は2年となります。
行政処分になると会社名を公表されますか?
監査の結果、車両使用停止以上の行政処分となると、国土交通省等のホームページに会社名や違反点数が一定期間公表されます。
ご不明な点はございませんか?
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