- 行政処分の種類は「自動車等の使用停止」「事業停止」「許可取消」の3種類です。2026年現在の現行基準は2025年4月1日施行のもの(2024年10月改正版ではありません)。
- 違反点数制度は「点呼未実施なら○点」という固定点数方式ではなく、自動車等の使用停止の日数10日車までごとに1点として算定されます。累積違反点数が51〜80点で事業停止、81点以上で原則許可取消の対象です。
- 累積期間は原則処分日前3年間。一定条件(処分前2年間に行政処分なし、または違反行為時点でGマーク認定事業所、かつ処分後2年間に新たな処分・重大事故・重大違反がない等)を満たした場合のみ2年間で消滅します。Gマーク取得だけで自動的に2年消滅する制度ではありません。
運送会社は、貨物自動車運送事業法や貨物自動車運送事業輸送安全規則などに基づき、安全な輸送を確保するための運行管理や車両管理を行う必要があります。
監査によって法令違反が確認された場合には違反内容や程度、過去の行政処分歴などに応じて、自動車等の使用停止、事業停止、許可取消などの行政処分を受ける場合があります。
また、貨物自動車運送事業者には違反点数制度があり、行政処分による自動車等の使用停止日数などに応じて違反点数が付与されます。違反点数が累積すると、事業停止や許可取消につながる場合があります。
2024年10月にも行政処分基準の見直しが行われましたが、その後さらに改正されており、2026年現在、国土交通省が掲載している貨物自動車運送事業者向けの現行基準は2025年4月1日施行のものです。
この記事では、運送会社に対する行政処分の種類、日車数と違反点数の仕組み、事業停止・許可取消の基準、行政処分情報の公表、許可取消後の再取得、監査と巡回指導の違いなどを解説します。
運送会社に対する主な行政処分は3種類
貨物自動車運送事業者が法令に違反した場合、その内容や程度、過去の処分状況などに応じて行政処分等が行われる場合があります。主な行政処分は次の3種類です。
- 自動車等の使用停止
- 事業停止
- 許可取消
このほか、違反内容によっては文書警告や輸送の安全確保命令などの措置が行われる場合もあります。
自動車等の使用停止とは
自動車等の使用停止は、事業用自動車について一定期間の使用を停止させる行政処分です。処分量は「日車」という単位で表されます。
例えば、1台を10日間使用停止とする場合は「10日車」、3台をそれぞれ10日間使用停止とする場合は合計「30日車」となります。
実際の日車数は、確認された違反事項、違反の程度、初違反か再違反かなど、国土交通省が定める行政処分基準・違反事項別基準等に基づいて算定されます。
事業停止とは
事業停止は、自動車等の使用停止よりも重い行政処分で、一定期間、貨物自動車運送事業の全部または一部を停止させるものです。
違反内容、行政処分基準上の日車数、累積違反点数、過去の行政処分歴などによって異なります。
違反点数の付与により、一の地方運輸局管轄区域における累積違反点数が51点以上80点以下となった場合は、累積違反点数を理由とする事業停止処分の対象となります。ただし、累積違反点数が50点以下であっても、違反内容や処分日車数等によって事業停止処分の対象となる場合があります。
許可取消とは
許可取消は、一般貨物自動車運送事業の許可そのものを取り消す重大な行政処分です。
違反点数の付与により、一の地方運輸局管轄区域における累積違反点数が81点以上となった場合は、原則として許可取消処分の対象となります。また、累積違反点数とは別に、悪質な法令違反等によって許可取消処分の対象となる場合もあります。
死亡事故や飲酒運転が発生したという事実だけで、すべてのケースについて直ちに許可取消となるわけではありません。事故や違反を端緒として監査が行われ、確認された法令違反、事業者による指導監督の状況、事業者の関与、過去の処分状況、累積違反点数などを踏まえて行政処分が判断されます。
行政処分の対象範囲は処分内容によって異なる
「すべて営業所単位で行われる」と考えるのは適切ではありません。
自動車等の使用停止や事業停止では、違反が確認された営業所を対象として処分が行われる場合があります。一方、違反点数は営業所に付され、地方運輸局の管轄区域単位で累計されます。累積点数や違反内容によっては事業停止や許可取消につながるため、「1つの営業所だけの問題」と考えず、会社全体で法令遵守体制を整えることが重要です。
2026年現在の行政処分基準
貨物自動車運送事業者に対する行政処分基準は、法令改正や制度の見直しに応じて改正されています。
2024年10月にも過労防止関係などの行政処分基準が見直されましたが、その後さらに改正され、2026年現在、国土交通省が掲載している現行基準は2025年4月1日施行のものです。
2024年10月改正だけを「2026年現在の最新基準」として行政処分の内容を判断することは適切ではありません。具体的な行政処分を確認するときは、次の現行資料を確認してください。
- 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について
- 行政処分等の基準についての細部取扱い
- 貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について
- 貨物の違反事項ごとの行政処分等の基準
違反点数制度とは
貨物自動車運送事業者に対する行政処分では、法令違反を繰り返す事業者等に対してより重い行政処分を行うため、違反点数制度が設けられています。
「点呼未実施なら3点」「整備不良なら5点」のように、違反項目へ一律の固定点数を直接付与する仕組みではありません。
原則として、行政処分による自動車等の使用停止の日数10日車までごとに1点として違反点数が付与されます。使用停止が10日車であれば1点、20日車であれば2点、30日車であれば3点という考え方です。
そのため、同じ点呼関係の違反でも、未実施の状況、違反の程度、他の違反事項との組み合わせなどによって、処分日車数や違反点数は異なります。
累積点数によって事業停止・許可取消につながる
違反点数は営業所に対して付され、地方運輸局の管轄区域単位で累計されます。
累積期間は原則として処分日前3年間です。
| 累積違反点数 | 基本的な取扱い |
|---|---|
| 50点以下 | 違反内容や処分日車数に応じて、自動車等の使用停止や事業停止等の対象となる場合があります。 |
| 51点以上80点以下 | 累積違反点数を理由とする事業停止処分の対象となります。 |
| 81点以上 | 原則として許可取消処分の対象となります。 |
なお、累積違反点数が50点以下であっても、違反内容や処分日車数によって事業停止処分となる場合があります。また、悪質な法令違反等については、累積違反点数とは別に許可取消処分の対象となる場合があります。
違反点数の累積期間は原則3年間
違反点数の累積期間は、原則として処分日前3年間です。ただし、一定の条件を満たす場合には、違反点数が付与された後2年間で点数が消滅する取扱いがあります。主な条件は次のとおりです。
- 処分前2年間に行政処分を受けていない、または違反行為時点で安全性優良事業所(Gマーク認定事業所)であること
- 行政処分に伴って命じられた所要の措置を履行していること
- 処分後2年間、新たな行政処分を受けておらず、一定の重大事故を起こしていないこと
- 処分後2年間、酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転等の一定の重大な違反がないこと
Gマークを取得しているだけで、自動的に違反点数が2年間で消えるわけではありません。Gマーク認定の有無は、この特例的な取扱いを受けるための条件の一つであり、処分後の法令遵守状況や事故・違反の有無などもあわせて判断されます。
行政処分情報は公表される場合がある
国土交通省や地方運輸局では、自動車運送事業者に対する一定の行政処分等について、事業者名、営業所名、行政処分の内容、主な違反事項、違反点数などをWebサイトで公表しています。
国土交通省の行政処分情報検索では、原則として過去5年間の行政処分情報を確認できます。荷主や取引先が運送事業者を選定する際などに確認する可能性があるため、企業信用への影響についても考慮する必要があります。
日車数と違反点数の関係
自動車等の使用停止処分では「日車」という単位が使用されます。日車数は、使用を停止する車両数と日数を組み合わせて表します。例えば、3台をそれぞれ10日間使用停止とする場合、合計30日車となります。
貨物自動車運送事業者の違反点数は、原則として自動車等の使用停止の日数10日車までごとに1点として算定されます。違反事項そのものについて固定点数が設定されているのではなく、違反事項ごとの行政処分基準に基づいて基準日車数等が算定され、その処分日車数をもとに違反点数が付与される仕組みです。複数の違反が監査で確認された場合には、処分日車数が大きくなる可能性があります。
行政処分が事業へ与える影響
輸送能力や売上・従業員への影響
自動車等の使用停止を受けると、停止対象となった車両を一定期間使用できません。事業停止処分となった場合は、その処分範囲・期間に応じて運送業務を行えなくなるため、輸送能力や売上へ影響する可能性があります。事業停止期間中であっても、車両費、保険料、人件費、事務所賃料などの固定費が発生する場合があるため、資金繰りへの影響についても検討する必要があります。
事業停止を理由として当然に無給とできるわけではありません。従業員の賃金・休業手当等については、労働関係法令を踏まえて適切に判断する必要があります。
許可取消後に再取得できる?
一般貨物自動車運送事業の許可が取り消された場合、その許可に基づいて事業を継続することはできません。
許可取消後は原則として5年間の欠格期間がある
貨物自動車運送事業法第5条では、一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消を受け、その取消しの日から5年を経過しない者を欠格事由として定めています。
したがって、許可を取り消された事業者が、取消直後に同じ条件で再び一般貨物自動車運送事業の許可を取得することはできません。
法人の役員等にも欠格事由が及ぶ場合がある
許可を取り消された事業者が法人の場合には法人だけでなく、一定の役員等も欠格事由の対象となる場合があります。
具体的には、許可取消に係る聴聞の通知が到達した日前60日以内に、その法人の役員等であった者について、取消しの日から5年を経過していない場合は欠格事由に該当することがあります。
「許可取消の直前に役員を辞任すれば欠格事由を避けられる」と単純に考えることはできません。現行の貨物自動車運送事業法では、許可を受けようとする法人と密接な関係を有する者が、一定期間内に一般貨物自動車運送事業等の許可取消を受けている場合についても欠格事由が設けられています。単に別法人を設立したり、名義を変更したりすれば欠格期間中でも新たな許可を取得できるとは限りません。資本関係、支配関係、役員構成などを含め、貨物自動車運送事業法第5条および関係省令に基づいて確認する必要があります。
5年経過後も自動的に許可が戻るわけではない
欠格期間が経過しても、以前の許可が自動的に復活するわけではありません。
再び一般貨物自動車運送事業を行う場合は、新たに許可申請を行い、申請時点の許可基準を満たす必要があります。必要書類や審査内容は申請時点の制度や個別事情を踏まえて管轄運輸局等へ確認してください。
行政処分を防ぐために見直したい社内体制
行政処分のリスクを抑えるためには監査直前だけ帳票を整えるのではなく、日頃から法令に沿った運行管理を行うことが重要です。
運行管理体制を定期的に確認する
例えば、次のような事項を継続的に確認します。
- 法令上必要となる点呼を適切に実施しているか・点呼記録を適切に作成・保存しているか
- 業務記録や運転者台帳等を適切に管理しているか
- 運転者の勤務時間・乗務時間を適切に把握しているか
- 車両の点検・整備を適切に行っているか
- 必要な指導・監督を計画的に実施しているか
現行の行政処分基準では、全運転者等に対して点呼を全く実施していない場合など、著しく不適切な運行管理体制について重い行政処分の対象となる規定があります。
また、運行管理者について一定の重大な法令違反等が認められた場合には、運行管理者資格者証の返納命令が発令される場合があります。
運転者への指導・監督を計画的に行う
貨物自動車運送事業者は、国土交通省の「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」に基づき、運転者へ必要な指導・監督を行う必要があります。
初任運転者、高齢運転者、事故惹起運転者などについてはそれぞれ必要となる特別な指導や適性診断を確認する必要があります。「12項目を年1回だけ実施すればよい」と形式的に考えるのではなく、年間計画を作成し、実際に指導した内容や実施状況を記録しておくことが重要です。
Gマーク(安全性優良事業所)を活用する
Gマークは、公益社団法人全日本トラック協会が実施する「貨物自動車運送事業安全性評価事業」において、安全性に関する一定の基準を満たした事業所を認定する制度です。
Gマークを取得したからといって、行政処分の違反点数そのものが加点されたり減点されたりするわけではありません。
違反点数の累積期間は原則3年間ですが、処分前2年間に行政処分を受けていない場合、または違反行為時点で安全性優良事業所である場合で、さらに行政処分に伴う所要の措置を履行し、処分後2年間に新たな行政処分、一定の重大事故、酒酔い運転・酒気帯び運転・過労運転等の一定の重大な違反がないなど、所定の条件を満たした場合には、2年間で違反点数が消滅する取扱いがあります。
Gマークを取得しているだけで、自動的に違反点数が2年間で消える制度ではありません。
監査と巡回指導は別の制度
運送会社が受ける「監査」と「巡回指導」は同じ制度ではありません。
| 項目 | 監査 | 巡回指導 |
|---|---|---|
| 実施主体 | 国土交通省・地方運輸局・運輸支局等 | 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関 |
| 主な目的 | 法令遵守状況の確認 | 貨物自動車運送事業の適正な運営の確保のための指導 |
| 行政処分との関係 | 違反確認→行政処分等の対象となる場合あり | 巡回指導そのものは行政処分ではない。ただし重大な違反等が確認された場合は行政への情報提供等を通じて監査につながる場合あり |
よくある質問
Q. 行政処分にはどのようなものがありますか?
貨物自動車運送事業者に対する主な行政処分として、自動車等の使用停止、事業停止、許可取消があります。
このほか、違反内容によっては文書警告や輸送の安全確保命令等の措置が行われる場合もあります。
Q. 違反点数制度とは何ですか?
貨物自動車運送事業者に対する行政処分では、原則として、自動車等の使用停止の日数10日車までごとに1点として違反点数が付与されます。
「点呼未実施なら3点」といった固定点数方式ではなく、違反内容等に応じて算定された処分日車数をもとに点数が付与される仕組みです。一の地方運輸局管轄区域における累積違反点数が51点以上80点以下となった場合は事業停止処分、81点以上となった場合は原則として許可取消処分の対象となります。
Q. 点呼を実施していないと必ず30日間の事業停止になりますか?
すべての点呼未実施が直ちに30日間の事業停止となるわけではありません。
点呼関係の処分は、未実施の程度などに応じて行政処分基準が定められています。一方、全運転者等に対して点呼を全く実施していない場合など、著しく不適切な状態については重い行政処分の対象となります。
Q. Gマークを取得していると違反点数は早く消えますか?
Gマークを取得しているだけで、その場で違反点数が減点・消去されるわけではありません。
処分前2年間に行政処分を受けていない場合、または違反行為時点で安全性優良事業所である場合で、さらに処分に伴う所要の措置を履行し、処分後2年間に新たな行政処分、一定の重大事故、酒酔い運転・酒気帯び運転・過労運転等の一定の重大な違反がないなど、所定の条件を満たした場合には、2年間で違反点数が消滅する取扱いがあります。Gマーク認定だけで自動的に2年間で点数が消えるわけではありません。
Q. 行政処分になると会社名を公表されますか?
一定の行政処分等については、国土交通省や地方運輸局のWebサイトで、事業者名、営業所名、処分内容、主な違反内容、違反点数等が公表されます。
国土交通省の行政処分情報検索では、過去5年間の行政処分等の状況が掲載されています。
Q. 死亡事故が起きると必ず許可取消になりますか?
死亡事故が発生したことだけを理由として、すべての場合に直ちに許可取消となるわけではありません。
事故を端緒として監査が行われ、確認された法令違反、事業者による指導監督の状況、累積違反点数などを踏まえて行政処分が判断されます。
Q. 許可取消になった場合、再び運送業許可を取得できますか?
貨物自動車運送事業法の欠格事由に該当する期間中は、新たな一般貨物自動車運送事業の許可を取得することはできません。許可取消を受けた者については、原則として取消しの日から5年間が欠格期間となります。5年間が経過しても、以前の許可が自動的に復活するわけではありません。
再度、新規許可申請を行い、その時点の許可基準を満たす必要があります。また、法人の場合は、聴聞の通知が到達した日前60日以内に役員等であった者や、一定の密接な関係を有する法人についても欠格事由が問題となる場合があります。
まとめ
貨物自動車運送事業者に対する主な行政処分には、自動車等の使用停止、事業停止、許可取消があります。2026年現在、国土交通省が掲載している貨物自動車運送事業者向けの現行行政処分基準は2025年4月1日施行のものです。
違反点数は、「点呼未実施なら3点」といった固定点数方式ではなく、原則として自動車等の使用停止の日数10日車までごとに1点として算定されます。違反点数は原則として処分日前3年間で累積され、一の地方運輸局管轄区域における累積違反点数が51点以上80点以下となった場合は事業停止処分、81点以上となった場合は原則として許可取消処分の対象となります。
違反点数の累積期間は原則3年間ですが、所定の条件を満たした場合には2年間で消滅する取扱いがあります。Gマークを取得しているだけで、自動的に違反点数が2年間で消滅する制度ではありません。
行政処分につながる監査と、適正化事業実施機関が行う巡回指導は別の制度です。巡回指導そのものが行政処分ではありませんが、重大な違反等が確認された場合には行政への情報提供などを通じて監査につながる場合があります。
許可取消を受けた場合は、貨物自動車運送事業法第5条の欠格事由を確認する必要があります。原則として取消日から5年間は再取得できず、法人の場合は一定の役員や密接な関係を有する法人にも欠格事由が及ぶ場合があります。
自社だけでは帳票や運行管理体制の確認が難しい場合には、運送業に詳しい専門家へ相談し、不備や改善事項を整理する方法もあります。行政書士法人シフトアップでは、運送事業者を対象として、監査や巡回指導を想定した帳票類・管理体制の確認などのサポートを行っています。
【参考文献】
- 国土交通省「行政処分の基準」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/baseline.html - 国土交通省「事業者の行政処分情報検索」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/cgi-bin/search.cgi - e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083