EC・通販利用者の増加によって宅配便需要の増える中、黒ナンバーを取得して運送業を始めたいという方が急増しています。
コロナ禍により増えたウーバーイーツのようなフードデリバリーをやりたいうという方にとっても、黒ナンバー登録は気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、黒ナンバー(軽貨物運送)とは何か、一般貨物運送業との違い、黒ナンバー取得の要件やメリット・デメリットなどについて、専門家が優しく解説しております。
ぜひご覧ください。
黒ナンバー(軽貨物運送事業)とは?
黒ナンバー(軽貨物運送)とは、軽貨物自動車を使用して貨物の輸送を行う運送業のことで、正しくは「貨物軽自動車運送事業」と言います。
黒ナンバーと呼ばれるのは、黒い下地に黄色の文字でナンバーが書かれていることが由来です。黒ナンバーを取得するには、国土交通省の許可を得る必要があります。
貨物軽自動運送事業は、貨物自動車運送事業法という法律の第2条で
他人の需要に応じ、有償で、三輪以上の軽自動車および二輪の自動車を使用して貨物を運送する事業
と定義されています。
簡単に言うと、軽貨物自動車または125㏄越えのバイクで運賃をもらって貨物を運ぶ事業のことです。
自動車は「三輪以上の軽自動車と二輪車」に限られ、具体的には
- 車検証上の用途欄が「貨物」となっている軽自動車(排気量660CC以下の4輪と3輪自動車)
- オートバイ(排気量125CC超えのバイク。道路運送車両法で言う軽二輪と小型二輪)
のことを言います。
黒ナンバーによる運送業は、素早く、かつ小資本で一人から開業できるのが大きな魅力です。また、黒ナンバー運送業は緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業)や貨物利用運送業の許可に比べて簡単なのが特徴です。
黒ナンバー取得のメリットとデメリット
黒ナンバー取得のメリット
- 一般貨物自動車運送事業に比べて圧倒的に早く事業が開始できる
- 登録免許税が必用ないため、黒ナンバー取得のための費用が安い
- 一人(1台)からでも開業できるため、個人事業としてビジネスを始めやすい
- 営業用ナンバーとなるため、自家用車に比べて自動車税、重量税などが安い
- 頑張れば一般貨物自動車以上の売上を確保できる
黒ナンバー取得のデメリット
- 個人で始める場合は、自分以外に変わりがいないため稼働日数が売上に直結する
- 大手軽貨物運送会社の業務委託で始めるとロイヤリティの支払いが発生して身入りが少なくなる
- 自家用車に比べて自動車任意保険料が高い
黒ナンバー(軽貨物運送)と一般貨物自動車運送事業の違いとは?
運送業は貨物自動車運送事業法という法律で以下の3種類に分かれています。
- 一般貨物自動車運送事業
- 特定貨物自動車運送事業
- 貨物自動車運送事業(黒ナンバー)
1.の一般貨物自動車運送事業は、通称、「緑ナンバー」や「営業ナンバー」、「運送業」、「トラック運送業」などと呼ばれる事業で、その定義は下記のとおりです。
他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車および二輪の自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものを言う。
言い換えると、軽貨物自動車や125cc以下のバイク以外の貨物自動車で運賃をもらって貨物を運ぶ運送業が「一般貨物自動車運送事業」ということです。
対して、黒ナンバー(貨物自動車運送事業)は、冒頭でもご説明した通り、125㏄超えのバイクや軽貨物自動車を使って行う運送業です。
両者の一番大きな違いは、許可取得の難易度です。一般貨物自動車運送事業の許可を取るには、営業所・休憩室、駐車場を確保し、最低でも5台以上のトラックをそろえ、5人以上の人員を確保し、事業開始に必用な自己資金(およそ1,500万円~2,500万円ほど)を準備できることなどの要件すべてをクリアしないといけません。
そして、ご依頼から許可取得にかかる期間は、弊社シフトアップでは平均的に6カ月を要します。
これに比べ、黒ナンバー登録は圧倒的に要件が少ないことに加え、ご依頼から運輸開始するまでの期間も短く、最短2日も可能です。
黒ナンバー(軽貨物運送)の開業費用
黒ナンバーで運送業を始めるには、最低でも1台の軽貨物自動車が必要です。ですので、開業にはすでに軽貨物車を持っているという方を除いて、自動車の購入費用がかかります。
新車にするか、中古車にするかで購入費は大きく異なるため開業費を安くしたいという方は中古車を購入しましょう。
ちなみに、ハイゼットカーゴ商用車の新車価格は2021年現在、94万円~152万円です。詳しくはこちらのダイハツのウェブサイトで確認してください。
軽自動車購入代金のほか、車庫証明取得費、車両登録費なども必要となります。
開業後にかかる費用にはどんなものがあるか
黒ナンバー開業後は、主に下記のような費用がかかります。
- 車検代
- 自動車点検整備費
- 自動車税
- 自動車重量税
- 駐車場代
- 自賠責保険料
- 自動車任意保険料
- 貨物保険保険料(必要な場合のみ)
- 税理士顧問をつける場合は顧問料
- 国民健康保険料(個人事業主の場合)
- 所得税
黒ナンバー(軽貨物運送)の車種と自動車保険について
黒ナンバー(軽貨物運送)に使用できる車種
車検証上の用途が「貨物」となっている軽自動車であれば黒ナンバーとして登録できる軽自動車となります。
街で良く見かけるのは、ハイゼットバン、エブリイバン、ミニキャブバン、サンバーバン当たりでしょうか。
黒ナンバー(軽貨物運送)の自動車保険
黒ナンバーは営業用で使用するので交通事故の確立が高くなります。そのため自動車任意保険の毎月の保険料は自家用車に比べて約3割~4割高くなります(保険会社により異なります)。
また、黒ナンバー車両の自動車任意保険を扱う損保会社も限られており、東京海上、三井住友海上、損保ジャパンあいおい、富士火災、朝日火災、共栄火災あたりとなります。保険料の安い会社社は富士火災・朝日火災で、その他の大手損保会社より1割~2割安いです。
保険会社の選び方のポイントは、毎月の支払い保険料だけでなく、事故対応の良い保険代理店を選ぶことです。なぜなら、事故後の示談交渉を上手くやってくれる代理店から加入しないと、契約者自身が大きなストレスをかかえることになり、仕事にも支障が出てしまうからです。
ですので、事故時の対応が良い保険代理店を見極めて自動車任意保険へ加入するようにして下さい。
黒ナンバー(軽貨物運送)登録・取得の流れ
黒ナンバー(軽貨物運送)を始めるための流れは以下の通りです。
- 事業を行う営業所を確保
- 車両を確保
- 届出用紙を作成して添付書類と併せて営業所管轄の地方運輸支局へ届出
- 運輸支局へ経営届及び運賃届を提出
- 事業用自動車等連絡書を取得
- 車検証変更の書類を作成
- 車検証と黒ナンバー取得
- 事業開始
黒ナンバー登録の申請は、提出書類に不備がなければ申請日当日に黒ナンバー事業者として登録されます。そのため、申請日当日に車両のナンバー変更まで行えば、その日から事業を開始することが可能です。
したがって、申請から登録、開業までの期間は最短で1日です。申請日までに営業所や駐車場の確保、車両の確保、申請書類の作成も必用になるため、開業日予定日から逆算して準備するようにしましょう。
黒ナンバー取得に必用な書類とは?
黒ナンバー取得に必用な書類は、軽貨物運送を行う営業所を管轄する運輸支局と軽自動車検査協会へ提出する書類に分けられます。以下で確認してください。
営業所を管轄する運輸支局へ提出する書類
- 貨物軽自動車運送業経営届出書(宣誓書を含む)
- 運賃料金設定書および運賃料金表
- 事業用自動車等連絡書(中部地方など不要な地域あり)
- 黒ナンバー登録する車検証の写し
- 整備管理者選任届(黒ナンバー車両が10台以上になる場合のみ)
新車を黒ナンバー登録する場合は、カタログ内のスペックがわかるページの写しや完成検査終了証などを提出します。
軽自動車検査協会へ提出する書類
- 車検証の原本
- 申請依頼書
- 事業用自動車等連絡書(運輸支局受付印のあるもの)
- 住民票(車検証の所有者が自己以外、且つ個人事業主の場合)
- 履歴事項全部証明書(車検証の所有者が自己以外、且つ法人の場合)
- ナンバープレート(軽自動車検査協会で購入できます)
黒ナンバー取得(貨物運送業登録)の要件とは?
黒ナンバー取得の要件は大きく分けて6つです。
- 営業所・休憩・睡眠施設の要件
- 車両の要件
- 車両の要件
- 適切な運送約款の設定
- 適切な運行管理体制の整備
- 損害賠償能力
以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
営業所と休憩・睡眠施設の用件
- 営業所と休憩・睡眠施設は黒ナンバー車両を駐車する車庫から半径2km以内にあること
- 適切な使用権限があること
- 営業所と休憩・睡眠施設は都市計画法上の市街化調整区域と呼ばれる場所でないこと
- 市街化区域にある場合は、建物を事務所使用できる区域にあること
- その他、建築基準法、農地法などの関係諸法令に抵触しないこと
など。
※上記の要件をクリアできれば、賃貸でも自己所有でも構いません。
車庫の要件
- 営業所・休憩・睡眠施設から半径2km以内にあること
- 適切な使用権限があること
- 営業用車両を容易に駐車できる広さがること
- 倉庫やガレージなど屋根付き車庫(有蓋車庫と言います)の場合は、市街化調整区域と呼ばれる場所でないこと
- その他農地法、建築基準法などの関係諸法令に抵触していないこと
など。
※上記の要件をクリアできれば、賃貸でも自己所有でも構いません。
車両の要件
- 事業に使用する車両を1台以上確保していること
- 事業に使用する車両は、車検証上の用途欄が「貨物」となっている軽貨物自動車であること
- 2輪車の場合は排気量125㏄超えであること
など。
軽トラは中古車やローンで購入した車両でも良いか
黒ナンバーで使用する車両はリースやローンによる購入でも構いません。また、中古車でも問題ありません。
適切な運送約款の設定
- 運賃および料金の収受並びに軽貨物自動車事業者の責任に関する事項等が明確に定められていること
- 旅客の運送を行うことを想定したものでないこと
適切な運行管理体制の整備
軽貨物自動車運送事業の適切な運営を確保するために、運行管理等の管理体制を整えること
損害賠償能力
自動車損害賠償保障法等に基づく責任保険または責任救済に加入する計画、その他一般自動車保険の締結等十分な損害賠償能力を有すること(自賠責保険、自動車任意保険に加入すること)。
黒ナンバー(軽貨物運送)の仕事は儲かるのか
儲かるかどうかは事業を行う人によるところが大きくなりますが、儲かっている方は大勢います。
弊社シフトアップのお客様には、EC業者の宅配で月150万円の売上を上げている方もいらっしゃいます。ただし、150万円の売上を上げるには寝ずに走るほどの覚悟が必用です。
筆者が勤務していたトラック運送会社にも軽貨物部隊があり、その売上は少ない方で50万円ほど、多い方で120万円ほどでした。
黒ナンバーで軽貨物運送を行っている方の月平均売上は30万円~50万円程。この辺りの売上の事業者は、他の軽貨物運送会社の業務委託で走っている方が多いようです。
近年はEコマースの需要急増により、ヤマト運輸や佐川急便など、大手宅配事業者の下請けで高収入を得ることが可能である。amazon flex(アマゾンフレックス)で本業のスキマ時間を利用した副業ができるなどの理由で軽貨物運送を始める人が増えています。
軽貨物運送は緑ナンバーに比べて初期投資も少なく、1台から始められる手軽さが魅力と言えるでしょう。
ウーバーイーツなどフードデリバリーを始めるときに黒ナンバーは必要か?
Ubereats(ウーバーイーツ)、DiDiフード、フードパンダ、Woltなどのフードデリバリーを始めるときに黒ナンバーが必要かどうかは、どんな車両を使ってデリバリーするかによって決まります。
原付バイクで始める場合
黒ナンバーは不要です。原付は黒ナンバーの対象外なので、何の手続きもせずにいまお持ちの原付バイクを使ってフードデリバリーを始めることが可能です。
125cc超えのバイクで始める場合
125cc超えのバイクは黒ナンバー(軽貨物運送)の対象となるため、黒ナンバー取得が必要です。
ただし、125cc超えのバイクでフードデリバリーをしている方は、今のところ見かけたことがありません。
軽自動車を使って始める場合
軽自動車を使う場合は、黒ナンバー取得が必要です。ただし、Nboxやタントなど、自家用車タイプの軽自動車の場合は、貨物車への構造変更が必要となります。
軽自動車を使って始めようとしている方は、既存のフードデリバリーサービスではなく、独自に事業を立ち上げようとしている方だと思います。
普通車を使って始める場合
ハイエースやプロボックスなど2輪車、軽自動車以外の普通車を使用してフードデリバリーを行う場合は、黒ナンバーではなく緑ナンバー、つまり一般貨物自動車運送事業の許可が必要となります。
一般貨物自動車運送事業は取得の要件がとても厳しいため、軽貨物車を使って始めることをおすすめします。
自転車を使って始める場合
黒ナンバーは不要です。
まとめ
黒ナンバー(軽貨物運送)は、車両1台、個人事業で始められるため小資本で始めたい方には向いています。
筆者が勤めていた運送会社にも、軽貨物部隊がありました。大手上場企業の下請けとして車両15台ほどで主に個配業務を地場で行っており、毎日距離は相当走っていました。
月の売上は良く、軽貨物運送でこんなに月間の運賃を稼ぐのかと驚いた時も何度かありました。
黒ナンバー(軽貨物運送)開業をご検討中の方は、トライしてみる価値のある事業と言えるでしょう。
よくある質問
運行管理者と整備管理者は必用ですか?
黒ナンバー(軽貨物運送)を行うのに、運行管理者は不要です。整備管理者は車両9台まで不要、10台以上からは必用となります。
中古車でも黒ナンバー登録できるの?
黒ナンバー登録する車両は、中古車でも新車でもかまいません。中古車を購入すれば開業費用を抑えることができます。
リースやローンで買った車両でも黒ナンバー登録できるの?
リース・ローンで購入した車両でも黒ナンバー登録できます。ただし、車検証上の使用者は必ず黒ナンバー運送を行う人でなければなりません。
黒ナンバー登録は難しいの?
黒ナンバー登録は緑ナンバー許可の取得に比べて圧倒的に簡単です。これも黒ナンバー運送が人気のある理由に一つです。
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