倉庫業をはじめるにあたって、営業倉庫の理解は欠かせません。
しかし、細かな種類や要件、申請の流れをいまいち理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、営業倉庫について解説していきます。
自家用倉庫との違いや登録申請の流れも紹介するので、
「倉庫業を始めたい」
「営業倉庫について詳しく知りたい」
という方はぜひ参考にしてください。
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営業倉庫の定義とは
営業倉庫は、他社の荷物を保管する目的で運営される倉庫です。
倉庫業法で定められている基準を満たした倉庫で、荷物を有償で預かります。
営業倉庫を営むには国土交通大臣の登録が必要
営業倉庫を営むには、国土交通大臣の登録を得なければなりません。
また登録申請にあたって、倉庫業法の規定に沿った防火・防塵対策を実施する必要があります。
なお、未登録で倉庫業を運営した場合は重い罰則が科せられます。
そして、たとえ営業中に火災や事故などのトラブルが起きても、保険は適用されないので注意してください。
営業倉庫と自家用倉庫の違いは?
倉庫の種類は、大きく分けて2種類あります。
それぞれの違いは以下の通りです。
- 営業倉庫:他社の荷物を有償で保管する
- 自家用倉庫:自社の荷物を保管する
順番に見ていきましょう。
営業倉庫
営業倉庫は、他社の荷物を有償で保管する目的で運営されます。
事業を営む形になるため、運営する際には国土交通大臣の登録を得なければなりません。
登録申請をする際には、倉庫の種類ごとに定められた施設や設備面の基準をクリアするとともに、倉庫管理主任者を選任する必要があります。
自家用倉庫
一方、自家用倉庫は自社の荷物を保管するために設けられた倉庫を指します。
自社で製造した商品を出荷まで保管したり、販売拠点目的で利用されることが多いです。
利益を伴うことはないので、もちろん登録は不要です。
営業倉庫の種類
倉庫業法では、営業倉庫は次の3つに分類されます。
- 水面倉庫
- 冷蔵倉庫
- 普通倉庫
それぞれの特徴について以下で詳しく解説します。
水面倉庫
水面倉庫は、原木を水上で保管するための施設です。
川や海の上で保管されることから、水面貯木庫ともよばれます。
愛知県では飛島村の貯木場が有名です。
木材の乾燥による品質の低下を防ぐために、陸上ではなく水上で保管されています。
ただ、現在は製材した状態で出荷されるのが多く、原木のまま保管されることはずいぶん減りました。
冷蔵倉庫
生鮮食品や冷凍食品を低温で保管するための施設を、冷蔵倉庫といいます。
10℃以下の温度で保管することが基準となっています。
普通倉庫
普通倉庫は、農業や製造業で使われる原料や製品を保管するための倉庫です。
農作物をはじめ、食品や紙、金属など、幅広い産業の貨物を収納できます。
その他にも、家財や美術品など、消費者の財産を預けることも可能です。
普通倉庫は保管する貨物の種類によって、より細かく分類されます。
1類倉庫
1類倉庫は、普通倉庫のなかでも特に施設設備の基準が厳しい倉庫です。
皆さんがよく目にするタイプの倉庫で「建屋型」ともよばれ、冷蔵・危険物以外のほとんどの貨物を保管することができます。
しかし、その分基準も厳しく設定されており、国土交通大臣が定める防火性能を満たすほか、防犯・鼠害防止設備の設置も必須です。
2類倉庫
2類倉庫は、1類倉庫から耐火性能を除外した倉庫です。
デンプンや肥料、セメントなどが主な保管対象となります。
耐火性能がないので、火に弱い貨物の保管はできません。
3類倉庫
3類倉庫は、1類倉庫から耐火・防湿性能を省いた倉庫です。
燃えやすいもの、湿気に弱いものは保管不可となるため注意してください。
ガラスや陶器、鉄材などの貨物が収納されることが多いです。
野積倉庫
野積倉庫は、鋼材や木材、自動車など、雨風の影響を受けない貨物を野積みしておく場所を指します。
倉庫といっても屋根や壁があるわけではなく、柵や塀で囲まれた区画内に貨物を積み上げて保管します。
鉄くずを扱う倉庫業者が野積み倉庫で登録するケースが多いです。
貯蔵槽倉庫
袋に入っていない穀物や液体を、サイロやタンクに保管する形態を貯蔵槽倉庫といいます。
状況に応じて、防火性能や災害防止措置を取る必要があります。
危険品倉庫
危険品倉庫は、消防法で指定されている危険物や高圧ガスを保管するための倉庫です。
必要に応じて、柵や塀、鉄条網などの防護措置を施す必要があります。
また、保管する危険物の種類によって「消防法」「高圧ガス保安法」など関係法に適合することが求められています。
トランクルーム
トランクルームは、家財や美術品など、消費者の財産を預けられる倉庫です。
国土交通大臣の登録を得た場合、通常とは異なる「認定トランクルーム」の称号を得られます。
ただし、定温性能や防塵性能、防虫性能を設ける必要があります。
営業倉庫の登録申請手順
営業倉庫における登録申請の流れを解説していきます。
倉庫業を始めたいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
①運輸局へ事前相談する
まずは、取り扱う物品と施設規模を決めたうえで、運輸局へ事前相談をおこないます。
担当者の話をしっかりと聞き、営業倉庫として登録可能な物件や、取り扱いできる物品の要件を理解しましょう。
倉庫業の要件については、以下の記事で解説しています。
②物件選び
要件が理解でき、営業方針が定まったら、次に物件を選びます。
新築・購入・借用などの調達手段を選び、業者に施設設備の基準を指示します。
当社では昭和の時代に建築された古い倉庫で倉庫業登録をしたいというお客様から相談を頂きますが、2005年の姉歯事件前に建築された倉庫は大幅な改修工事をしない限り、倉庫業登録できないと思ってください。
③地方自治体へ相談
物件の候補が絞れたら、倉庫業をおこなう場所として使用可能か、地方自治体に相談してください。
④物件を決定する
倉庫業をおこなう場所として使用可能なことを確認できたら、物件を決定して正式に契約しましょう。
⑤登録申請書の作成
登録申請書の作成と、必要書類を収集します。
倉庫業の必要書類は膨大になる場合が多いので、心してかかりましょう。
参考までに、最も審査基準が厳しい1類倉庫の場合は、20種類以上の書類を揃える必要があります。
必要書類については以下の記事で詳しく解説しているので、併せてお読みください。
⑥運輸局へ申請
申請書の作成が完了したら、営業所を管轄する地方運輸局へ提出します。
⑦審査
説明聴取や実地調査をもとに、審査が進められます。
申請書に不備がある場合は補正指導が入るので、随時修正をおこないましょう。
審査にかかる期間は、申請書を提出してから2ヵ月程度です。
⑧登録免許税の納付
審査が完了したら、登録免許税(9万円)を納めます。
その後、領収証書貼付書に領収書正本を貼り付けて、営業所を管轄する地方運輸局へ提出してください。
⑨営業開始
登録免許税を納付したら、いよいよ営業スタートです。
倉庫料金を設定してから30日以内に、届出をする必要があるので忘れずにおこないましょう。
未登録で倉庫業を営んだ場合の罰則は?
倉庫業をおこなうためには、国土交通大臣の登録を得る必要があります。
未登録のまま倉庫業をおこなった場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
その他にも、他人の倉庫業のために名義を貸す行為も違反となります。
この場合は名義を貸した側も借りた側も、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
登録を受けたうえで、正しく倉庫業をおこないましょう。
違反行為 | 罰則 |
未登録のまま倉庫業をおこなった場合 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 または併科 |
他人の倉庫業のために名義を貸す | |
他人の名義を借りて倉庫業をおこなう |
参照元:倉庫業法 e-Gov法令検索
まとめ
「自分で申請手続きをおこなう時間が取れない」
「倉庫業登録はしたいけど申請に手間をかけたくない」
そのような場合は、ぜひ行政書士法人シフトアップへご依頼ください。
弊社では各要件の確認から申請書作成、提出代行まで、手厚くサポートいたします。
また、現時点で倉庫業をおこなうか迷っている場合は、ぜひ以下の記事もお読みください。
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