トラック運送業の業務委託ドライバーは、運送会社と業務委託契約を結んで配送をおこなう仕事です。
個人事業主として働くので、自由度が高いと注目されている業種ですが、その半面でデメリットも抱えています。
本記事では、トラック運送業の業務委託ドライバーについて紹介します。
メリットとデメリット、仕事内容なども詳しく解説するので、委託ドライバーに興味を持っている方はぜひ参考にしてください。
業務委託ドライバーとは
個人事業主としてトラック運送会社との間に業務委託契約を結び、荷物を指定の場所まで配送する者を、業務委託ドライバーといいます。
業務委託契約とは、トラック運送会社が抱える業務の一部を外部に委託する雇用形態のことです。
正社員・アルバイト・パートは企業と直接雇用関係を結びますが、業務委託の場合は雇用関係は結ばれません。
なお、業務委託ドライバーができる仕事は軽貨物運送事業に限られます。
一般貨物自動車運送事業での業務委託契約は違法となるため、注意してください。
一般貨物自動車運送事業について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
仕事内容
業務委託ドライバーは、軽貨物自動車で比較的小さな荷物を配送します。
委託元から指示された場所へ荷物を取りに行き、配送先の住所へ届けます。
荷物の種類は委託元によって異なりますが、基本的には以下の荷物を請け負うケースが多いです。
- 宅配:Amazonや楽天などの通販商品を個人宅へ届ける
- 企業配:事務用品などの荷物を店舗やオフィスへ届ける
- スポット配送:繁忙期や緊急時に単発で配送する
業務委託ドライバーの現状
現在、ドライバーの高齢化や過酷な労働環境が原因で離職者が増え、トラック運送業界では深刻なドライバー不足が嘆かれています。
しかし、そのような中でも荷物の数は増え続けています。
とくに小口配送の荷物は、運び手が足りなくなるほど急増してる状態です。
このことから、軽貨物ドライバーの需要は非常に高まっているといえるでしょう。
長い目で見ても、当面の間は仕事がなくなる心配はありません。
トラック運送会社と業務委託契約を結ぶメリット
委託ドライバーは、トラック運送会社と雇用関係を結ばず、個人事業主として仕事を請け負います。
そのため、自分の裁量で仕事を進められることが一番のメリットです。
しかし、運送会社と業務委託契約を結ぶメリットはそれだけに留まりません。
- 働いた分だけ稼げる
- 初期コストが少ない
- 人間関係で悩まない
以下の項目で、詳しく解説します。
働いた分だけ稼げる
働いた分だけ稼げるのは、業務委託ドライバーならではのメリットです。
業務委託ドライバーの報酬は固定給である会社員とは異なり、完全歩合制で支払われます。
そのため、仕事内容によっては実力次第で大幅に報酬を受け取ることも可能です。
初期コストが少ない
業務委託ドライバーは、軽貨物自動車1台と普通免許さえ持っていれば、年齢や学歴、性別、国籍に関係なく誰でも開業できます。
そのため、開業にあたっての初期コストを抑えられるのもメリットの一つです。
特別な経験や資格も必要ないため、物流業界未経験の方でも黒ナンバーの届出をおこなえば、簡単に仕事を始められます。
人間関係で悩まない
業務委託ドライバーは個人事業主のため、上司や部下との関係性はありません。
仕事の進行も自分1人で進められるため、人間関係で悩むことが少ないのも特長です。
運送会社と業務委託契約を結ぶデメリット
業務委託ドライバーは自由な働き方ができる一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 慣れるまでは大変
- 経費や保険は全額自己負担
- 有給休暇がない
それぞれ見ていきましょう。
慣れるまでは大変
業務委託ドライバーは、多くの荷物を決められた時間内に配送しなければなりません。
とくに個人宅へ荷物を届ける「宅配」に関しては、時間指定されることも多いので、いかに効率よく配送するかがポイントになります。
初めのうちは少ししか配送できず、思うように稼げない状態が続きますが、数をこなすことで仕事に慣れて収入も上がっていくでしょう。
経費や保険は全額自己負担
個人事業主として働くため、ガソリン代や車両の維持費、保険料はすべて自身で負担する必要があります。
また、年金や健康保険などに関しても自分持ちのため、会社勤めよりも負担が大きくなります。
※会社と雇用関係にある場合は、年金も社会保険料も会社が半額負担しますが、個人事業主は年金も国民健康保険料も全額自己負担となります。
有給休暇がない
当たり前ですが、業務委託ドライバーには有給休暇はありません。休んだ分は収入の減少に直結します。
たとえ、業務中のアクシデントでケガをして休んでも会社は何も保障してくれません。
また仕事を受けたにもかかわらず無断で配送を休んだ場合は、欠車扱いになります。
契約解除や損害賠償請求される恐れがあるので、無断欠勤は絶対に辞めましょう。
軽貨物運送業の登録を受ける手順
個人事業主として業務委託ドライバーを始める場合、貨物軽自動車運送事業への登録は必須です。
貨物軽自動車運送事業とは、軽自動車や125CC超えの二輪自動車を用いて有償で荷物を運ぶ事業を指します。
登録を受ける手順は以下のとおりで、書類に不備がなければ申請日当日に登録可能です。
- 営業所を確保
- 車両を確保
- 届出書と添付書類を営業所管轄の運輸支局へ提出
- 経営届および運賃届を運輸支局へ提出
- 事業用自動車等連絡書を取得
- 車検証変更の書類を作成
- 陸自で車検証と黒ナンバー取得
- 事業スタート
貨物軽自動車運送事業の届出については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
トラック運送業の業務委託ドライバーに関する質問
トラック運送業の業務委託ドライバーについて、よくある質問に回答しました。
これから委託ドライバーを始めたい方は参考にしてください。
Q 委託ドライバーにはどんな免許が必要ですか?
基本的には、普通自動車運転免許があれば問題ありません。
委託ドライバーが運転する自動車は、軽貨物自動車がほとんどです。
そのため、大型トラックや特殊車両といった特別な免許は必要ありません。
しかし、委託元によってはAT車限定不可のところもあるので、仕事を探す際は注意してください。
Q 女性でもできるって本当ですか?
最近は、女性の業務委託ドライバーも増加しています。
業務委託ドライバーは小口配送がメインのため、重い荷物を運ぶ自信のない女性にも適しています。
また、割れ物など取り扱いに注意が必要な荷物は、丁寧さや気配りが不可欠です。
荷物に細やかな配慮ができる人材として、女性ドライバーが求められることも多いです。
業務委託契約で考えられるリスクは?
悪徳業者の不利益な契約には注意が必要です。
募集をおこなっている企業のなかには、ドライバーから利益を巻き上げようとする悪徳業者も存在します。
たとえば、以下のようなケースがあります。
- 「指定の車両で仕事をしてほしい」といって車のローンを組まされる
- 求人の条件と実際の仕事内容が違いすぎる
- 高すぎる契約金や業務委託手数料を請求される
委託ドライバーは個人事業主として働くので、自分の身は自分で守る必要があります。
悪徳業者に騙されないためにも、怪しい、何かおかしいと気付くための知識を養いましょう。
まとめ
個人事業主としてトラック運送会社との間に業務委託契約を結び、荷物を指定の場所まで配送する者を、業務委託ドライバーといいます。
委託元と雇用関係を結ばないため、収入や休日など、すべて自分の裁量で決められるのがメリットです。
上司と部下の関係性もないため、人間関係で悩むことも少ないでしょう。
一方で、ガソリン代や車両の維持費などの経費はすべて自分持ちになるため、会社員よりも負担は大きくなってしまいます。
業務委託ドライバーを始めるか検討している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
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