車庫証明と違う場所に自動車を保管する行為を「車庫飛ばし」といいます。
故意におこなわれるケースもあれば過失によるものもありますが、どちらの場合も違反行為です。
今回は、車庫飛ばしについて詳しく解説します。
行為がおこなわれる理由や車庫証明の正しい取り方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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車庫飛ばしとは?
車庫飛ばしとは、車庫証明とは異なる場所に自動車を保管することです。
故意におこなわれる場合もあれば、知らず知らずのうちに該当するケースもあります。
虚偽の車庫証明を申請すること
自動車を購入した際には、車庫証明を登録しなければなりませんが、この登録内容と異なる場所に駐車する行為を「車庫飛ばし」といいます。
車庫証明は車を所有するのに必要不可欠
自動車には、使用の本拠地(所有者の自宅など)から直線距離で2km以内の場所に車庫を設けて保管する決まりがあります。
車庫が決まった際には、「車庫証明」という名目で地域の警察署に申請書を提出しなければなりません。
車庫証明は、車を所有する方にとっては必要不可欠です。
正しい手続きをおこない、申請通りの場所で自動車を保管する義務があります。
申請内容と実際の保管場所が異なる場合は、たとえ過失だとしても違反行為となるため注意してください。
車庫飛ばしの手口とは
故意におこなわれる車庫飛ばしの手口は、非常にシンプルです。
- 車庫証明を取りたい地域に住民票を移す(もしくは名義を借りる)
- 住民票を移した地域の警察署で車庫証明を申請
- 地域を管轄する陸運支局でナンバープレートを受け取る
- その後、住民票を元に戻す
このように、車庫証明を申請したい地域に住民票を移す、もしくはその地域に住んでいる人の名義を借りるだけで、誰でも簡単に車庫飛ばしができてしまいます。
車庫飛ばし行為をおこなう理由
なぜ故意に車庫飛ばしをおこなう必要があるのでしょうか。
理由は人によってさまざまですが、特に以下のような事情からおこなわれることが多いです。
- 駐車場代を安くしたい
- ディーゼル規制から逃れたい
- 複数の車を所有したい
- 他県のナンバープレートを取りたい
順番に解説していきます。
駐車場代を安くしたいから
都心は郊外に比べると、月極駐車場の料金が高い傾向にあります。
駐車場代を少しでも安くするために郊外で車庫証明を取り、実際は都心部で保管するというケースが多いです。
ディーゼル規制から逃れたい
東京都や神奈川県の一部では、環境保全の問題から、ディーゼル車の規制条例が適用されています。
この条例は規則に適合しないディーゼル車の使用を禁止するもので、規制対象から外れるために、他の地域で申請をおこなうケースもあるようです。
複数の車を所有したいから
複数の自動車を所有したいからという理由でおこなわれる場合もあります。
通常、1台分の駐車スペースには、同じく1台分の車庫証明しか取れません。
2台目の車庫証明を取るには、他の場所で駐車場を借りて申請する必要があります。
しかし、それでは余分にお金がかかってしまいます。
そのため、車庫飛ばしをおこない、1台目と同じ場所に2台目の車庫証明を取るというケースも見られます。
他県のナンバープレートを取りたい
ご当地ナンバープレートを取りたいがために、一時的にその地域に住民票を異動して車庫証明を取り、ナンバープレートが取得できたら戻すケースもあります。
もちろん、この場合も車庫飛ばしに該当するので、十分注意してください。
車庫飛ばしをいつの間にかしているケース
車庫飛ばしは、上記のように故意におこなわれる場合もあれば、知らず知らずのうちに該当しているケースも少なくありません。
ここでは、いつの間にか車庫飛ばしに該当している3つのケースを紹介します。
- 引越しをしたとき
- 親族に車を譲渡したとき
- 軽自動車は保管場所の届け出が必要
一つずつ解説していきます。
引越しをしたとき
引っ越しをして住所が変わり、住民票の異動はしたものの、陸運支局でナンバープレートの変更をおこなわなかった場合は、車庫飛ばしに該当してしまいます。
親族に車を譲渡したとき
親族間で車を譲渡したときに両者の住所が異なる場合は、車庫証明の内容を変更しないと、車庫飛ばしに該当します。
軽自動車は保管場所の届け出が必要
軽自動車の場合、車庫証明の申請は不要です。
その代わり、保管場所の位置を管轄する警察署へ届け出る必要があります。
届出が必要になる地域の条件は、以下の3つです。
- 県庁所在地
- 人口10万人以上の市
- 東京や大阪の中心から30㎞圏内
自分の住んでいる場所が該当地域に当たるかは、全国軽自動車協会連合会のホームページで確認できます。
車庫飛ばしによる罰則
車庫飛ばしは、刑法第157条公正証書原本不実記載等の罪に該当する立派な違反行為です。
違反が発覚した場合には罰則を受けることになります。
罰金
車庫飛ばしによって科せられる罰金は以下のとおりです。
違反内容 | 罰金 |
虚偽の保管場所証明申請 | 20万円以下の罰金 |
保管場所の不届、虚偽届出 | 10万円以下の罰金 |
道路の車庫代わり使用 | 3ヶ月以下の懲役または20万円以下の罰金 違反点数3点 |
道路における長時間駐車 | 20万円以下の罰金 違反点数2点 |
参考資料:自動車の保管場所の確保等に関する法律
車庫飛ばしの検挙数
「車庫飛ばししてもバレないから大丈夫」そう思っている方がいたら要注意です。
車庫飛ばしは道路の使用を阻害したり、交通安全に支障を及ぼしたりすることから、取締りが年々強化されています。
実際、令和3年の青空駐車の取締件数は803件、車庫飛ばしの検挙数は6件でした。
駐車禁止違反や乗車中の職務質問をきっかけに違反が発覚するケースも多いため、バレないから大丈夫と安心しきっていると、いつか痛い目に遭うかもしれません。
参考資料:駐車対策の現状 - 警察庁
トラック運送業者による車庫飛ばしも危険
自家用車だけでなく、トラック運送事業者が保有する緑ナンバーの事業用トラックの車庫飛ばしも多く発生しています。
事業用トラックの車庫飛ばし
事業用トラックは原則、車庫から出発して車庫に戻ります。
なぜなら、乗務前と乗務後に必ず点呼をおこなう必要があるからです。
例外として、離れた場所でおこなう「IT点呼」や「中間点呼」が認められるケースもありますが、基本的には業務を終えたら車庫にトラックを戻さなければなりません。
事業用トラックで車庫飛ばしをしようものなら、ナンバープレートの色(緑ナンバー)から、近隣の住民や同業者に一目で判断され、通報されてしまうでしょう。
違反をおこなった場合、取引先や協力会社からの信頼を失う恐れがあるばかりか、運輸局から行政処分を受ける可能性もあるので、本来の場所以外で保管するのはやめましょう。
ディーゼル登録のための車庫飛ばし
東京都や神奈川県の一部地域では、ディーゼル車の規制条例が適用されています。
しかし、この規制条例から逃れるために、トラック運送業事業者が規制がない場所に移転したように見せかけて、虚偽の車庫証明を取るという行為がおこなわれています。
車庫証明は規制のない地域で登録されているため、規制対象の地域でも運行ができてしまいます。
なかには、申請していない都内の車庫に停めるという悪質なケースも横行しているようです。
車庫証明の取り方【一般車】
①必要書類を揃える
まずは、車庫証明の申請に必要な書類を揃えましょう。
- 自動車保管場所証明申請書
- 保管場所標章交付申請書
- 保管場所の所在図・配置図
- 保管場所使用権原疎明書面
- 使用の本拠置が確認できるもの(運転免許証や公共料金の領収書など)
上記の書類は、警察署または警視庁のホームページからダウンロードできます。
②警察署で申請手続きをおこなう
書類の作成が完了したら、証明書交付手数料(2,000円~2,200円)と共に地域を管轄する警察署に提出します。
③3日~7日後に書類が交付される
申請が完了してから3日~7日後に再び警察署へ向かうと書類が交付されます。
このときに、申請時に受け取った「納入通知書兼領収書」を提出しなければならないため、忘れずに持参しましょう。
また。標章交付手数料として別途500円が必要になります。
車庫証明取り方【自家用トラック】
(1)必要書類を揃える
一般車同様、申請にあたって必要となる書類を揃えます。
- 車検証
- 保管場所証明申請書
- 保管場所標章交付申請書
- 保管場所使用承諾証明書
- 保管場所の所在と配置の図
上記の書類+印鑑も必要になるため、忘れずに持参しましょう。
(2)警察署で申請手続きをおこなう
証明書交付手数料と共に、地域を管轄する警察署に提出します。
費用は各都道府県で異なりますが、標章交付手数料と合わせて大体2,500円~3,000円です。
最後に「納入通知書兼領収書」を受け取って申請は完了です。
(3)3日~7日後に書類を受け取る
申請が完了してから3日~7日後に再び警察署へ向かい、車庫証明書・保管場所標章番号通知書・保管場所標章の3点を受け取りましょう。
保管場所標章は、外からよく見える位置に貼り付けてください。
まとめ
車庫飛ばしとは、申請済みの車庫証明とは違う場所に自動車を保管する行為です。
故意におこなわれる場合もあれば、知らず知らずのうちに該当するケースもあります。
車庫飛ばしは道路の使用を阻害したり、支障を及ぼしたりすることから、年々取締りが強化されています。
駐車禁止違反や乗車中の職務質問をきっかけに発覚するケースも多いため、バレないから大丈夫と安心しきっているといつか痛い目に遭うかもしれません。
また、たとえ故意ではなかったとしても、申請内容と実際の保管場所が異なる場合は違反行為となるため注意してください。
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