行政処分・巡回指導・監査対策

Gマーク巡回指導の対策とは?運行日報と整備管理者の重要ポイント

この記事のポイント
  • 巡回指導はGマーク専用の制度ではなく、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(都道府県トラック協会)が日常的に実施する指導制度です。
  • 巡回指導は直接行政処分を行う制度ではありませんが、重大な法令違反が確認された場合は運輸支局等への情報提供につながる場合があります。運輸局・運輸支局の監査では違反内容に応じて行政処分となることがあります。
  • 点呼・乗務記録・運転者台帳等の運行管理3か月ごとの定期点検(点検整備記録簿の法定保存期間1年間)、社会保険・労働保険の加入状況、各種届出と実態の一致など、多岐にわたります。

 

Gマーク(安全性優良事業所)では、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が実施する巡回指導の結果が、「安全性に対する法令の遵守状況」の評価に利用されます。

巡回指導はGマーク申請のためだけに行われる制度ではありません。各都道府県の地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が、貨物自動車運送事業の適正化を図るために日常的に実施している指導制度です。

2026年度のGマーク申請では、所定の対象期間内に実施された巡回指導結果等をもとに、評価区分Ⅰ「安全性に対する法令の遵守状況」が40点満点で評価され、認定には32点以上が必要です。そのため、運行管理、整備管理、点呼、労働時間、運転者への指導監督、各種届出などを日頃から適切に管理しておくことが重要です。

この記事では、Gマークと巡回指導の関係、運輸局の監査との違い、巡回指導で確認される主な事項、準備しておきたい帳票・書類について、2026年度の制度をもとに解説します。

※Gマークの申請基準や巡回指導の実施方法は年度・地域によって変更される場合があります。実際の申請時は、全日本トラック協会、管轄する都道府県トラック協会、運輸支局等の最新情報を確認してください。

 

Gマークで評価される巡回指導とは?

巡回指導は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が、貨物自動車運送事業者の営業所を訪問し、事業計画、運行管理、整備管理、労務管理、帳票類、法令上の手続きなどを確認する制度です。地方貨物自動車運送適正化事業実施機関は、各都道府県のトラック協会が指定を受けて実施している機関です。

巡回指導そのものは、行政処分を直接行うための監査ではありません。事業者に対して法令遵守に関する指導・助言を行い、必要な改善を促すことが主な目的です。

【注意】

巡回指導で重大な法令違反等が確認された場合は、地方運輸局・運輸支局への情報提供や速報等につながる場合があります。その結果、国による監査や行政上の対応へ発展する可能性もあるため、「指摘を受けても改善すればよいだけ」と軽視することはできません。

 

Gマークと巡回指導の関係

Gマークでは、巡回指導結果が評価区分Ⅰ「安全性に対する法令の遵守状況」に使用されます。2026年度の評価区分Ⅰでは、巡回指導結果等に基づく25項目を40点満点で評価し、Gマーク認定には32点以上が必要です。ただし、巡回指導のすべての項目が「適」でなければGマークを取得できない、という制度ではありません。Gマークでは、巡回指導結果以外にも次の内容が審査されます。

  • 事故や行政処分の状況
  • 安全性に対する自主的な取組
  • 法令に基づく認可申請・届出・報告
  • 社会保険等への適正な加入

Gマークを申請すると必ず申請後に巡回指導が来るわけではない

Gマーク申請後に、すべての営業所へ新たな巡回指導が行われるわけではありません。Gマーク評価では、所定の対象期間内に実施された巡回指導結果が使用されます。2026年度の評価区分Ⅰの対象期間は、2025年7月1日から2026年10月31日までです。この対象期間内に評価へ使用できる巡回指導結果がない申請営業所などについては、評価期間内に巡回指導が行われる場合があります。日頃からいつ確認を受けても対応できる管理体制を整えておくことが重要です。

 

巡回指導と運輸局監査の違い

巡回指導と地方運輸局・運輸支局が実施する監査は、目的や実施主体が異なります。

項目巡回指導運輸局・運輸支局の監査
実施主体地方貨物自動車運送適正化事業実施機関地方運輸局・運輸支局等
主な目的法令遵守状況の確認、指導・助言、事業適正化行政機関による法令遵守状況の確認
行政処分巡回指導そのものが直接行政処分を行う制度ではない違反内容に応じて車両使用停止、事業停止、許可取消し等につながる場合がある
Gマークとの関係巡回指導結果が評価区分Ⅰに使用される行政処分の状況は評価区分Ⅱ等に影響する場合がある

監査は、重大事故だけを理由に行われるものではありません。事故・悪質違反、公安委員会等からの通報、過去の行政処分、法令違反情報、巡回指導結果などを踏まえて、行政が監査を必要と判断した場合に実施されることがあります。巡回指導を「監査の予行演習」と位置付けるのではなく、日常の法令遵守状況を第三者の視点で確認し、必要な改善につなげる機会として捉えることが重要です。

 

Gマーク評価で使用される巡回指導のおおまかな流れ

巡回指導の具体的な実施方法は、地方実施機関や案件によって異なります。一般的には、営業所を訪問して事業計画、帳票、運行管理、整備管理、労務管理等について確認し、必要に応じて指導・助言が行われます。代表的な流れは次のとおりです。

  1. 実施に関する連絡:地方実施機関から巡回指導の日時・実施方法等について連絡を受ける場合があります。
  2. 営業所での確認:指導員が営業所を訪問し、帳票、法定手続、運行管理・整備管理等を確認します。
  3. 結果の説明:確認結果や改善が必要な事項について説明・指導を受けます。
  4. 必要な改善:改善を求められた事項について対応し、必要に応じて地方実施機関へ改善状況を報告します。

実際の連絡方法、提出書類、改善報告の要否・期限などは地方実施機関によって異なる場合があるため、管轄する都道府県トラック協会の案内を確認してください。

巡回指導で主に確認される事項

巡回指導では、貨物自動車運送事業を適正に運営するために必要となる幅広い事項が確認されます。特に、運行管理、整備管理、労働時間、点呼、各種帳票、法定手続などは重要な確認項目です。

事業計画・各種届出が現状と一致しているか

営業所、車庫、休憩・睡眠施設、車両数、運行管理者、整備管理者などについて、運輸支局へ提出している事業計画・届出内容と実態が一致しているか確認します。例えば、次のような変更を行った場合は、変更内容に応じて認可申請・事前届出・事後届出等が必要になることがあります。

  • 営業所・車庫・休憩睡眠施設の変更
  • 車両の増車・減車
  • 運行管理者・整備管理者の変更
  • 事業者名称・住所・役員等の変更

すべての変更が単純な「変更届」ではありません。変更する内容によって必要な手続きが異なるため、事前に確認する必要があります。

運行管理|点呼・乗務記録・運転者台帳等が適切か

運行管理関係の帳票は、巡回指導における重要な確認事項です。主に次のような帳票・管理状況が確認されます。

  • 点呼記録・乗務等の記録・運転者等台帳
  • 運行指示書・事故記録
  • 運転者への指導・監督記録
  • 適性診断の受診状況・健康診断の実施状況
  • 勤務時間・乗務時間の管理状況

単に帳票が存在するだけでなく、実際の運行内容と記載事項が整合していることが重要です。乗務記録、点呼記録、勤怠記録、デジタルタコグラフ等の記録に大きな食い違いがあれば、適切な運行管理が行われているか確認を受ける可能性があります。

遠隔点呼・自動点呼を導入している場合

遠隔点呼や自動点呼などを実施している営業所では、使用している機器・システムが法令上の要件を満たしているか、必要な確認事項・点呼結果・異常時対応等の記録が適切に保存されているかも確認対象となります。点呼方法に関する制度は近年改正が続いているため、現在利用している点呼方式が最新の貨物自動車運送事業輸送安全規則等に適合しているか確認してください。

車両管理と整備管理者の業務

事業用トラックは、安全な運行を確保するため、日常点検と定期点検を適切に行う必要があります。整備管理者は、主に次のような業務を行います。

  • 日常点検の実施方法を定める・日常点検結果に基づいて運行の可否を判断する
  • 定期点検を実施する・必要な整備を実施する
  • 点検・整備記録を管理する・車庫を適切に管理する
  • 整備管理規程に基づく業務を行う

事業用トラックは、原則として3か月ごとの定期点検の対象です。

外部の整備工場へ点検を依頼している場合

3か月定期点検や法定整備をディーラー・認証整備工場等へ依頼している場合でも、事業者・整備管理者側が点検・整備状況を把握し、必要な記録を適切に管理することが重要です。事業用トラックなど3か月点検対象車の点検整備記録簿の法定保存期間は1年間です。外部整備工場へ任せているからといって、事業者側で点検の実施状況や記録を確認できない状態は避ける必要があります。

社会保険・労働保険への加入状況

健康保険、厚生年金保険、雇用保険などについて、法令上加入義務のある従業員が適切に加入していることは、Gマークの認定要件の一つです。加入義務の有無は、雇用形態や労働時間などによって異なります。法令上加入義務があるにもかかわらず未加入の状態が是正されない場合は、Gマークの認定要件を満たさない可能性があります。

 

巡回指導のときに準備しておきたい書類

巡回指導では、事業計画、帳票類、運行管理、整備管理、労務管理、法定手続など幅広い事項が確認されます。2026年度のGマーク評価区分Ⅰでは、巡回指導結果等に基づく25項目40点満点で評価します。

【重要】

必要な書類や確認対象期間は帳票の種類や営業所の状況によって異なります。「すべて直近3か月」と固定せず、法定保存期間と地方実施機関から指定された対象期間を確認してください。

カテゴリ主に確認しておきたい書類
運行管理関係点呼記録、乗務等の記録、運転者等台帳、運行指示書、事故記録、運転者への指導監督記録、適性診断関係資料等
車両・整備管理関係日常点検関係記録、定期点検整備記録簿(1年間保存)、整備管理規程、整備管理者選任届等、車両台帳等
労務管理関係出勤簿・タイムカード等、賃金台帳、労働時間・拘束時間等の管理資料、36協定、就業規則等
健康管理関係健康診断個人票、健康診断の実施状況、法令に基づく医師の意見聴取等に関する資料、適性診断関係資料等
許可・届出関係許可関係書類、事業計画関係書類、増減車等の届出、運行管理者・整備管理者関係届出等
社会保険等健康保険・厚生年金保険・雇用保険等について、加入義務のある従業員の加入状況を確認できる資料

 

帳票同士の整合性を確認する

巡回指導への準備では、単に書類を揃えるだけでなく、それぞれの記録内容が実態と一致しているか確認することが重要です。例えば、次のような資料の間に矛盾がないか確認します。

  • 点呼記録と乗務記録
  • 乗務記録とデジタルタコグラフ等の記録
  • 勤務記録と拘束時間・休息期間
  • 車両台帳と運輸支局への届出台数
  • 運行管理者・整備管理者の実態と選任届
  • 定期点検実施日と点検整備記録簿

法定保存期間も確認する

帳票ごとに法令上の保存期間が異なります。事業用トラックなど3か月点検対象車の点検整備記録簿は1年間保存する必要があります。

一方、点呼記録、乗務記録、運転者台帳、指導監督記録、労務関係書類などは、それぞれ異なる法令・保存期間が適用されます。「巡回指導では直近3か月しか見られない」と考えず、各帳票について法定保存期間を満たして管理してください。

 

Gマーク申請に向けて巡回指導前に確認したいポイント

①運輸支局への手続き漏れがないか確認する

営業所、車庫、車両、管理者などの現状と、運輸支局へ提出している内容を照合します。

変更内容に応じて認可・届出等が必要になるため、「変更してから後で届ければよい」と判断しないよう注意してください。

②点呼・乗務記録を毎日確認する

巡回指導直前だけ帳票を整えるのではなく、運行管理者が日常的に記載漏れや内容の不整合を確認する体制を整えます。

③拘束時間・休息期間等を管理する

トラック運転者については改善基準告示等に基づく拘束時間、休息期間、運転時間などを適切に管理する必要があります。

勤怠データだけでなく、実際の運行記録等と照合して管理することが重要です。

④3か月点検の実施状況を確認する

事業用トラックの3か月定期点検について、実施漏れがないかを確認します。

外部工場へ依頼している場合も、点検整備記録簿が自社で確認できる状態にしておきましょう。

⑤社会保険等の加入状況を確認する

法令上加入義務のある従業員について、社会保険・労働保険への加入状況を確認します。

手続き漏れ等がある場合は、関係機関や専門家へ確認し、必要な対応を進めてください。

⑥Gマークの評価区分Ⅲは別途確認する

巡回指導で高い評価を受けることと、Gマークの評価区分Ⅲ「安全性に対する取組の積極性」で得点することは別の評価です。

例えば2026年度の評価区分Ⅲには運転者研修、安全会議・QC活動、適性診断、健康起因事故防止対策、車両安全装置、時間外労働時間短縮、運輸安全マネジメント評価、リアルタイムGPS等を活用した先進的運行管理システムなどの項目があります。

【注意】

デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー、車両管理システムなどを導入すれば自動的に加点されるわけではありません。全日本トラック協会が公表している2026年度の具体的な評価項目・判断基準を確認し、自社の取組がどの項目に該当するかを確認してください。

 

 

巡回指導で指摘を受けた場合の対応

巡回指導で不備を指摘された場合は指摘内容を確認し、必要な改善を進めます。

重要なのは帳票だけを形式的に修正して終わらせるのではなく、同じ不備が繰り返されない仕組みを作ることです。例えば、次のような対応が考えられます。

  • 点呼記録の確認ルールを見直す
  • 運行管理者による帳票チェックを定期化する
  • 3か月点検の年間スケジュールを作成する
  • 運転者への指導監督計画を作成する
  • 労働時間管理システムと運行データを照合する
  • 法定届出の社内チェックリストを作成する

改善後にさらに安全性を高める場合は、Gマーク評価区分Ⅲの対象項目を確認し、安全装置、運転者教育、健康管理、運行管理システム等、自社に適した取組を計画的に進めましょう。

 

まとめ

巡回指導は、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が貨物自動車運送事業者の法令遵守状況を確認し、指導・助言を行う制度です。

Gマーク申請のためだけに行われる制度ではありませんが、Gマークでは所定の対象期間内の巡回指導結果が評価区分Ⅰ「安全性に対する法令の遵守状況」に利用されます。

2026年度は、巡回指導結果等に基づく25項目40点満点で評価し、認定には32点以上が必要です。確認対象は、点呼、乗務記録、運転者台帳、労働時間、指導監督、車両の点検整備、運行管理者・整備管理者、社会保険等、事業計画・各種届出など多岐にわたります。

事業用トラックは3か月ごとの定期点検が必要であり、点検整備記録簿の法定保存期間は1年間です。整備を外部工場へ依頼している場合も、事業者側が点検・整備状況を確認できる管理体制を整えておく必要があります。また、クラウド車両管理や電子帳票を導入すること自体がGマークの加点になるわけではありません。Gマークで加点を目指す場合は、2026年度の評価区分Ⅲの項目・判断基準を確認し、それぞれの条件を満たす取組を行う必要があります。

巡回指導の直前だけ書類を揃えるのではなく、日々の運行・整備・労務管理を適切に実施し、いつ確認を受けても法令遵守状況を説明できる状態を維持することが重要です。

 

【参考文献】

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

12年間の運送会社勤務経験を持ち、累計相談数は10,000件以上。運行管理者・配車・総務経理など運送事業の現場を知り尽くした圧倒的な業務ノウハウを基に運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許認可をメインに日本全国対応で力強くサポート。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

おすすめ記事一覧

物流の2030年問題とは?懸念される物流クライシスやその原因について解説 1

ご覧いただきありがとうございます。運送業許可専門、行政書士法人シフトアップ代表の川合 智です。 2024年4月から施行された「改善基準告示」の改正により、運送業界は大きな転換期を迎えました。しかし、現 ...

緑ナンバーとは?取得条件や取得方法と白ナンバーの違いについて解説 2

緑ナンバー(営業用ナンバー)とはそもそも何か。緑ナンバーと白ナンバーの違いとは。その他、緑ナンバーを取るメリットや行政書士に許可取得を依頼する場合に考えるべきことなどを優しく紹介しています。

自家用車と事業用車の違いとは? 3

この記事のポイント 会社の業務で使用する車であっても、自動車運送事業に供していなければ自家用として登録されます。区分の判断は「自社業務か他者のためか」「有償か無償か」などの実態によります。 自家用と事 ...

運送業の行政処分とは?違反点数制度と許可取消の基準について解説 4

運送会社に対する行政処分と違反点数制度についての解説です。平成30年の改正にも対応しております。是非ご覧ください。

埼玉運輸支局の法令試験に合格した後の流れ 5

ご覧いただきありがとうございます。運送業許可専門行政書士の川合智です。 インターネット通販の拡大など、市場の追い風を受けて業績拡大が続くトラック運送業界。現在運送会社で働いている方や、転職先として運送 ...

-行政処分・巡回指導・監査対策

無料相談は今すぐこちらへ【全国対応中】