トラック輸送やタクシー、バス事業を含む運送業界は、現在、深刻な人手不足に直面しており、労働力確保のため、ドライバーの労働条件や労働環境の改善が急務となっています。
そんな中、運送業界の長時間労働や低賃金といったマイナスイメージを刷新するために、国土交通省と厚生労働省が「運転者職場環境良好度認証制度」を創設しました。
本記事では、「運転者職場環境良好度認証制度」の概要を詳しく解説するとともに、認証評価基準や手続き方法なども紹介します。
働きやすい職場認証制度とは?
「働きやすい職場認証制度(運転者職場環境良好度認証制度)」とは、トラック・タクシー・バス事業者が、ドライバーの労働条件や職場の労働環境を改善する取り組みを”見える化”する制度です。
この制度では、一定の基準を満たした事業者に対して、「一つ星」「二つ星」「三つ星」のいずれかの認証が付与されます。
運送事業者は、認証を受けることで、職場環境の良好度を客観的に示すことができます。
「運転者職場環境良好度認証制度」は、発足して間もない制度であるため認知度は低いものの、認証数は年々増加傾向にあります。
2021年度には2,548社、2022年度には3,558社、2023年度には3,735社が認証を受けており、制度が普及するとともに重要性が増していることが見て取れます。
働きやすい職場認証制度が創設された背景
EC市場の拡大に伴い、運送事業者の仕事量は増加傾向にありますが、人手不足は一向に改善されません。
その原因の一つに、物流業界やドライバーの仕事に対するマイナスイメージがあります。
特にトラックドライバーに対しては、「拘束時間が長い」「体力的負担が大きい」「給料が低い」といった印象が根強く、求人を出しても人が集まらない状況が続いています。
このような状況を改善するために、2019年に「働きやすい職場認証制度」が創設されたのです。

認証取得のメリット
運送事業者は、「働きやすい職場認証制度」の認証を取得することで、以下のようなメリットを得られます。
- 社会的信頼の向上が期待できる
- 採用活動を有利に進められる
- 助成金の活用
社会的信頼の向上が期待できる
「働きやすい職場認証制度」を取得することで、労働環境が整備された企業であることを、求職者や取引先にアピールできます。
これにより、社会的信頼が向上するのはもちろん、新たな仕事を獲得するチャンスにも繋がります。
採用活動を有利に進められる
求人業界やハローワークでは、働きやすい職場認証制度を取得した企業を優先的に紹介する取り組みが進められており、未取得の企業に比べて求職者からの応募を得やすい傾向があります。
「国土交通省に認められた企業」として採用活動を行えるため、安心かつ信頼性の高い就職先として認識されやすくなり、高い応募効果を得られる可能性が高まります。
現社員の離職を防げる
働きやすい職場認証制度の認証を取得するために職場環境を改善することは、新たな人材だけでなく、現在働いている社員の定着にも効果的です。
働きやすい職場認証制度の審査では、法令が遵守されているか、労働環境および労働条件の改善に向けた取り組みが行われているか等が確認されます。
そのため、働きやすい職場認証制度の認証を取得することは、職場環境を改善することに繋がるため、結果的に現社員の離職率を低下させるのです。
働きやすい職場認証制度の対象事業者と評価基準
働きやすい職場認証制度の対象となるのは、自動車運送事業者(トラック・タクシー・バス)です。法令遵守をはじめとする厳格な基準を満たすことで、星の数に応じた認証を取得できます。
ここでは、「一つ星」「二つ星」「三つ星」それぞれの認証基準を紹介します。
「一つ星」の認証基準
「一つ星」は、法令を遵守し、労働条件や労働環境の改善に向けた取り組みを一定程度実施していると認められた運送事業者に与えられます。
【一つ星の認証基準】
| 認証項目 | 概要 |
| 法令遵守 | 労働基準法や安全衛生法などの法令を守り、適切な労働条件を提供しているか |
| 労働時間・休日 | 運転者が適切な労働時間で働き、必要な休日を取得できる環境が整備されているか |
| 心身の健康 | 健康診断の実施やストレスチェックなど、運転者の健康管理が行われているか |
| 安心・安定 | 雇用の安定や災害時の安全対策が整備されているか |
| 多様な人材の確保・育成 | 多様な人材を確保し、育成のための施策が実施されているか |
「二つ星」認証の基準
「二つ星」は、法令遵守のみならず、法令を上回る労働条件や労働環境の改善に向けた取り組みを相当程度行っていると判断された事業者に与えられます。
審査の際は、「一つ星」の5項目に加えて、自主性・先進性もチェックされます。
【二つ星の認証基準】
| 認証項目 | 概要 |
| 法令遵守 | 労働基準法や安全衛生法などの法令を守り、適切な労働条件を提供しているか |
| 労働時間・休日 | 運転者が適切な労働時間で働き、必要な休日を取得できる環境が整備されているか |
| 心身の健康 | 健康診断の実施やストレスチェックなど、運転者の健康管理が行われているか |
| 安心・安定 | 雇用の安定や災害時の安全対策が整備されているか |
| 多様な人材の確保・育成 | 多様な人材を確保し、育成のための施策が実施されているか |
| 自主性・先進性 | 法令遵守を超えた自主的な取り組みや、先進的な労働環境改善施策が行われているか |
「三つ星」認証の基準
「三つ星」は、法令を遵守し、法令を上回る労働条件や労働環境の改善に向けた取り組みを十分に実施していると認められた事業者に対して付与されます。
働きやすい職場認証制度の中で、最もレベルの高い認証基準となります。
「三つ星」は、「二つ星」の基準を全て満たした上で、行動計画・体制整備の評価項目が追加されます。
【三つ星の認証基準】
| 認証項目 | 概要 |
| 法令遵守 | 労働基準法や安全衛生法などの法令を守り、適切な労働条件を提供しているか |
| 労働時間・休日 | 運転者が適切な労働時間で働き、必要な休日を取得できる環境が整備されているか |
| 心身の健康 | 健康診断の実施やストレスチェックなど、運転者の健康管理が行われているか |
| 安心・安定 | 雇用の安定や災害時の安全対策が整備されているか |
| 多様な人材の確保・育成 | 多様な人材を確保し、育成のための施策が実施されているか |
| 自主性・先進性 | 法令遵守を超えた自主的な取り組みや、先進的な労働環境改善施策が行われているか |
| 働きやすい職場実現のための行動計画・体制整備 | 職場環境の改善に向けた具体的な行動計画が策定され、それが実行されているか |
働きやすい職場認証制度の認証を取得する流れ
働きやすい職場認証制度の認証取得は、電子申請もしくは郵送による申請が可能です。
電子申請の場合は割引が適用されるため、コストを抑えたい事業者は電子による申請をおすすめします。
申請から認証取得までの流れは以下の通りです。
一般財団法人日本海事協会(Class NK)に審査を申し込みます。
(2)審査料を振り込む
申請後、審査料を振り込みます。電子申請の場合は割引が適用されます。
(3)審査の実施
事前スクリーニングと書面審査の後、審査委員会で審査結果が審議されます。
(4)審査結果の通知
審査結果が通知されます。合格した場合は登録料を振り込みます。
(5)登録証書の発行・送付
登録証書が発行され、認証事業者としてホームページで公表されます。
なお、初めて申請する事業者は、「一つ星」からの申請手続きとなります。
認証取得に必要な書類
働きやすい職場認証制度の認証を取得するためには、以下の書類を用意する必要があります。
- 審査申込書
- 営業所情報
- 自認書
- 就業規則則(10人未満の営業所は労働基準監督署の受付印不要)
- 36 協定
- 労働条件通知書
- 安全衛生委員会等関連書類
- 定期健康診断結果報告書(50人以上の営業所のみ対象)
- 事業改善報告書等(行政処分の違反点数を受けている事業者のみ対象)
出典:日本海事協会「トラック・バス・タクシードライバーのための「働きやすい職場認証制度」」
認証取得に必要な費用
認証を取得する際は、以下の費用を支払う必要があります。
【一つ星・二つ星】
| 審査料 | 50,000円 + 3,000円 × 営業所数(本社を除く) ※電子申請の場合は30,000円に割引 |
| 登録料 | 60,000円 + 5,000円 × 営業所数(本社を除く) |
【三つ星】
| 審査料 | 147,000円 + 3,000円 × 営業所数(本社を除く)+ 84,000円 × 2ヵ所目以降の対面審査対象営業所数 ※電子申請の場合は127,000円に割引 |
| 登録料 | 60,000円 + 5,000円 × 営業所数(本社を除く) |
認証取得には助成金制度が活用できる!
都道府県トラック協会会員事業者の場合、働きやすい職場認証制度の認証取得にかかる費用の一部が助成されます。この助成金制度を活用することで、認証取得に伴うコストを大幅に軽減することが可能です。
具体的な支援額は以下の通りです。
| 助成対象 | 助成額 |
| 新規認証取得 | 上限30,000円 |
| 同位認証継続 | 上限20,000円 |
| 三つ星の新規認証取得 | 上限50,000円 |
※令和6年時点
まとめ
「働きやすい職場認証制度」は、ドライバーの労働環境を改善し、業界全体の人材確保を支援するための重要な制度です。
認証を取得することで、労働環境が整備された企業であることを、求職者や取引先にアピールできるため、採用活動や営業活動を有利に進められます。
認証を受けるためには、社内制度の整備や従業員への周知が必要ですが、長期的には安心・安全な職場環境の構築につながります。ドライバー不足に悩む事業者の方は、早めに認証取得を検討し、競争力を高めていきましょう。
運送業許認可や監査対策はシフトアップへ
行政書士法人シフトアップは、運送業許認可の専門事務所として10年の運営実績があり、年間相談件件数は860件以上です。
運送業許可を取りたい、営業所や車庫を増設したい、監査や巡回指導対策が必要という方は、お気軽の下記へご相談ください。

.png)
