トラック運送事業に関わっている方なら誰しも聞いたことのある「トラック協会」。実際に運送会社を営む中で、トラック協会に加入するかどうか、迷っている方もいるのではないでしょうか。
当社で新規一般貨物自動車運送事業の許可を取得いただいたお客様からも、よくトラック協会に加入した方が良いかという質問を受けます。
ここではトラック協会に加入するメリットとデメリットを分かりやすく解説していますので、参考にしてください。より理解を深めていただくために「そもそもトラック協会とは」という基礎知識から解説します。
トラック協会とは
トラック協会とは、運送事業を営む運送会社が集まって様々な活動を行なう団体のことで、正式名称は「公益財団法人全国トラック協会」と言います。全国トラック協会の下部組織として、全国47都道府県に一般社団法人である都道府県トラック協会があり、エリアごとに分かれて活動を行なっています。
主な活動内容は、交通安全対策や環境対策、運行管理者などの資格試験の実施などがあり、幅広い活動を通じて、運送事業の健全な運営や事業全体の社会的発展を目指しているのです。
トラック協会への加入は必須か?
当社で一般貨物自動車運送事業の許可を取得いただいたお客様の中には、トラック運送業を始めるには必ずトラック協会に加入しないといけないと思っている方がいますが、加入は任意です。
トラック協会は加入した方が良いのか
これは筆者の個人的な意見ですが、トラック協会には加入した方が良いと思います。その理由は、巡回指導を実施する適正化事業実施機関はトラック協会の外部団体であるため、トラック協会加入事業者には巡回指導の評価が少しだけ優しくなるからです(法令違反が許されるわけではないのでご注意ください。巡回指導実施後に違反が改善されないと行政処分が科されます)。
また、後述する各種助成金や会員しか受講できないセミナーも随時実施できるため使い倒せば元を取れることもあると私は考えています。
トラック協会への加入資格
トラック協会への加入資格は各都道府県に営業所を有する下記の事業者となります。愛知県を例に下記で紹介します。
- 愛知県内で営業を営む貨物自動車運送事業者
- 貨物自動車運送事業を営む急便事業の団体で愛知県内に事務所があるもの
- 貨物利用運送事業の許可または登録を受けたもので愛知県内に営業所があるもの
- 貨物利用運送事業を営む事業者団体で愛知県内に事務所があるもの
- 貨物自動車運送事業に関し学識経験を有する者で総会による推挙があるもの
一般貨物運送事業者だけでなく利用運送事業者も加入できるので、営業活動にも活用できかもしれませんね。
なお、運送業許可申請の受付をしただけで許可が出ていない状態ではトラック協会への加入はできません。許可取得まで待つようにして下さい。
トラック協会の会費(入会費と月会費)
トラック協会はエリアごとに運営を行なっているため、入会する地域により会費が異なります。同じ県内でもエリアごとに分かれて運営を行なっている協会もあるため、該当するエリアの費用を調べましょう。
入会費の目安
トラック協会はエリアごとに入会費が異なります。例えば、埼玉県と愛知県では5万円、静岡県では10万円となっています。加入の際はウェブサイトなどでお調べ下さい。
月会費の目安
月会費の目安は下記のとおりです。
愛知県トラック協会の場合
平等割という全事業者一律の会費と、車両数に応じた車両別の会費を納めます。
- 平等割:1社月額4,000円
- 車両割:大型車(6トン以上)1両につき250円、中型車(2t超え~6t未満)1両につき210円、小型車(2トン以下)1両につき170円
静岡県トラック協会の場合
静岡県トラック協会の場合、車両保有数に応じて月額の平等割が4780円~1万3320円の間で変動します。車両割も、100円~260円の間で細かく分かれています。
また、任意加入ですが、「埼ト協政策研究会及び埼玉県トラック政治連盟」や「埼玉県高速道路交通安全協議会及び高速道路交通警察官友の会」へ加入すると別途月会費や年会費がかかります。
年会費の目安
同時加入となる陸上災害防止協会の年会費の目安は下記のとおりです。
- 埼玉県:年額一律2000円、車両割1両につき100円
- 愛知県:年額一律2000円(10名以内の事業所。11名以上は1人当たり年額150円を加算)
- 静岡県:年額一律2000円(10名以内の事業所。11名以上は1人当たり年額200円を加算)
トラック協会に加入する3つのメリット
それでは、実際にトラック協会に加入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。大きく4つに分けてメリットを解説します。
下記のトラック協会に加入するメリット・デメリットを考慮して加入するか否かをお決め下さい。
助成制度を活用できる
トラック協会には、輸送の安全確保に力を入れているトラック運送会社を支援してくれる助成制度があります。例えば、ドライブレコーダーやデジタコ、ロボット点呼などを導入すると、費用の一部を助成してもらえます。
ほかにも、睡眠時無呼吸症候群の治療補助など、ドライバーの健康管理に関する助成制度も用意されているため、従業員の福利厚生の一環としても役立つでしょう。
トラック協会の補助金・助成金の種類も併せてお読みください。
人材育成制度を活用できる
日々の事業運営で忙しい中小事業者にとって嬉しいのが、人材育成制度です。トラック協会に加入すると、フォークリフトや小型移動式クレーンなどの受講料助成や、準中型引免許を取得するための教習所料金の助成など、様々な助成を受けられます。
ドライバー向けの支援だけでなく、管理職や事務員が受けられる研修制度もあるため、従業員のキャリアアップを総合的にサポートしてもらえるメリットがあります。
※年度により、助成を受けられる項目の内容は変わります。
各種セミナーが受講できる
トラック協会では、一般貨物運送事業者向けに様々なセミナーを実施しています。例えば、Gマーク取得の加点対象となる事故防止セミナーや運輸安全マネジメントセミナーなど。
セミナーは基本的に無料ですが、協会員でなければ受講できません。他で開催されれば有料となるセミナーが無料で受講できるのは大きなメリットと言えます。
【最新版】Gマーク取得方法をざっくり解説も併せてお読みください。
地域の同業者と交流の機会が生まれる
トラック協会はエリアごとに分かれて運営を行なっている団体です。そのため、トラック協会に加入すると、同じ地域の同業者とコミュニケーションを取る機会が増え、貴重な情報源となります。トラック協会が発信する地域特性に合わせた情報も受け取れるため、加入することで事業運営がスムーズになることは間違いないでしょう。
仕事の発注につながることもある
都道府県トラック協会に加入すると、支部会での勉強会に参加することも可能です。勉強会が終わると支部会員同士でコミュニケーションを取るために飲みに行く機会が増えるため、先輩経営者と仲良くなれば仕事の発注を受けることもあります。
当社のお客様の中には、支部会へ積極的に参加してそこから仕事の受注をしている方もいます。
トラック協会に加入するデメリット
トラック協会に加入するデメリットは、会費がかかることです。新たに入会するためには、入会金が1事業者ごとにかかります。さらに、入会金を払って終わりではありません。トラック協会に加入している間は、月会費や年会費がかかるため、一定のランニングコストが発生することは認識しておきましょう。
まとめ
1948年に設立され、2012年に公益社団法人となった全日本トラック協会。入会しても毎月会報が届くだけの団体とは違い、一般貨物運送事業者にとって実利のある制度が盛りだくさんです。
各種セミナーや助成金制度、人材育成制度が活用できるなど、加入するメリットは大きいので検討してみてはいかかでしょうか。
行政書士法人シフトアップは運送業許認可だけでなく監査・巡回指導対策も実施しています。お気軽にお問い合わせください。
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