個人事業主が利用運送事業を始めるには?要件や流れを解説

コラム 利用運送

個人事業主が利用運送事業を始めるには?要件や流れを解説

行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★トラック運送会社に12年勤務後に開業。著書【トラック運送業の運輸局監査対策】【行政書士のための運送業許可申請のはじめ方】★行政書士向けに運送業許可を教える「くるまスクール」主催者

利用運送事業は、法人だけでなく、個人事業主として開業することも可能です。

申請の流れや要件に大きな差はありませんが、必要となる書類や審査期間が少しだけ変わってきます。

これから個人で利用運送事業を始めようと思っている方に向けて、許可・登録における要件や申請の流れなどを詳しく解説していきます。


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利用運送事業とは

利用運送事業とは、荷主からの運送依頼に応じるために、自らが責任を負って運賃を受け取り、実運送事業者を利用して運送をおこなう事業のことです。

わかりやすく言うと、荷物とそれを運ぶ車両をマッチングさせる配車係のような役割を担っています。

業界大手で例を挙げるなら、愛知県名古屋市に本社を構える「トランコム株式会社」が利用運送事業者に該当します。

運送業界では、利用運送事業者=水屋とよばれており、これは昔、水を売り歩く商人が荷物の取次をおこなっていたことが由来になっているといわれています。

 

第一種貨物利用運送事業とは

利用運送事業には、「第一種貨物利用運送事業」と「第二種貨物利用運送事業」の2種類がありますが、今回はそのうちの「第一種貨物利用運送事業」について紹介します。

第一種貨物利用運送事業とは、車両・船舶・航空・鉄道のいずれか1つの輸送手段を利用しておこなう運送事業です。

船舶を利用する場合は港から港、車両を利用する場合は集荷先から配達先など、流通の一部の運送手配のみをおこないます。

【例】A社から家電量販店Bに荷物を運送する際に必要となる「トラック」のみを手配する

他を経由せず、集荷先から配達先までの輸送手段のみを手配するのが第一種貨物利用運送事業です。

第二種貨物利用運送事業について知りたい方は以下の記事をチェックしてみてください。

両者の違いについて知りたい方はこちらも併せてお読みください。

 

利用運送を始めるには国土交通大臣の登録が必要

利用運送を始めるには、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。

登録を受けずに利用運送行為をおこなった場合、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科される、もしくは併科されます。

第一種貨物利用運送事業を個人で開業するメリット

第一種貨物利用運送事業を個人で開業するメリット

「個人事業主でも、第一種貨物利用運送事業を開業することは可能ですか?」という質問をよくいただきますが、個人事業主の場合でも開業は十分可能です。
申請方法も法人のケースと大きく異なる点はありません。

しかし・・・

「やっぱり法人で開業したほうがメリットが多そう」
「個人事業主で申請するのはハードルが高い?」

という理由で、法人開業か個人開業かを迷っている方も多いのではないでしょうか。

そのような方に向けて、ここからは利用運送事業を個人で開業するメリットについて紹介していきます。

 

開業費用が法人の場合よりも安い

第一種貨物利用運送事業の登録にともなって新たに法人を設立する場合、利用運送の登録免許税9万円の他に、行政書士への依頼料や定款認証手数料などが追加で必要になります。

ざっくり見積もっても、法人設立だけで以下の費用はかかってくるでしょう。

  • 行政書士への依頼報酬:5~20万円
  • 定款認証手数料:約5万円
  • 法人設立の登録免許税:約15万円

個人で開業する場合は、法人設立の際にかかる手数料等は一切不要となるため、法人の場合より費用を抑えて開業できます。

※定款認証とは
法人を設立する際に作成される定款(会社の憲法のようなもの)を公証役場で認証してもらう手続きのことです。

 

開業までの期間が法人よりも短い

開業にあたって法人を設立する場合、設立の準備に1ヵ月程度の時間を要します。

利用運送の開業の手続きに着手できるのは法人の設立が完了してからになるため、4~5ヵ月程度の時間がかかります。

一方、個人で開業する場合は法人設立の準備時間が省かれるため、申請書を提出してから2~3ヵ月の標準処理期間で開業することが可能です。

 

第一種貨物利用運送事業を個人で開業するデメリット

一方で、第一種貨物利用運送事業を個人で開業するデメリットも存在します。

 

法人よりも社会的信用が低い

第一種貨物利用運送事業を個人で開業する場合、法人よりも社会的信用が低いことがデメリットとして挙げられます。

シフトアップで個人開業したお客様のなかには、

「法人でなければ仕事を渡せない」
「法人名義の口座でないと取引しない」

と言われた方も過去にいました。

すべての会社がそうとは言えませんが、大手ほどこういった傾向が強いです。

また、利用運送の登録を得た後に一般貨物自動車運送事業の許可を取る方も多く、この場合は初めから法人化していた方が融資を受けやすくなります。

 

営業が苦手な方には不向き

個人事業主が第一種貨物利用運送事業を開業する場合、利益の根源となる荷主を確保するために、安定するまでは必死に営業活動をおこなう必要があります。

そのため、営業が苦手な方には個人で利用運送を開業するのは向いていないかもしれません。

 

第一種貨物利用運送事業登録の4つの要件

第一種貨物利用運送事業登録の4つの要件

ここからは、個人で第一種貨物利用運送事業登録を申請する際の要件を見ていきましょう。

  1. 申請者の要件
  2. 資金の要件
  3. 営業所の要件
  4. 保管場所の要件

 

①申請者の要件

前提として、申請者となる個人事業主が欠格事由に当たらないことが要件となります。

欠格事由とは、許認可を受けるために必要な資格がないことを指します。

事業主が下記の項目に1つでも該当する場合は、残念ながら第一種貨物利用運送事業の登録を受けることはできません。

  • 1年以上の懲役または禁錮を務め終えてから2年を経過していない
  • 貨物利用運送事業の登録・許可取り消し処分を受けてから2年を経過していない
  • 申請の2年以内に貨物利用運送事業に関する不正行為をおこなった

 

②資金の要件

登録を受けるためには、申請者となる事業主本人が一定額以上の資金を保有している必要があります。

具体的にいうと、300万円以上の純資産を保有していなければなりません。

純資産とは資産から負債を控除したもので、「資本金」や「資本剰余金」などがこれに該当します。

純資産を300万円以上保有していることが証明できない場合は、申請ができなくなるため注意してください。

 

③営業所の要件

第一種貨物利用運送事業をおこなうためには、営業所を設ける必要があります。

ただし、営業所として成り立つならどこでもいいというわけではなく、使用権限があること、都市計画法に違反しないことが条件になります。

営業所の要件は以下のとおりです。

  • 営業所が賃貸の場合、事業主が借主になっている賃貸借契約書がある
  • 営業所が自己所有の場合、名義が事業主本人となっている
  • 都市計画法に定められている「市街化調整区域」や「第1種及び第2種低層住居専用地域」、「第1種中高住居専用地域」に該当しない(例外あり)

 

④保管場所の要件

保管場所を持つ場合は営業所の要件と同様に、使用権限があるか、都市計画法に違反しないかを確認する必要があります。

保管場所の要件は以下の3つです。

  • 保管施設を使用する場合、事業主名義の施設または賃貸借契約書がある
  • 都市計画法に定められている「市街化調整区域」や「第1種及び第2種低層住居専用地域」、「第1種中高住居専用地域」に該当しない(例外あり)
  • 保管施設の規模や構造、設備が適切なものである

第一種貨物利用運送事業を始めるための要件について詳しくしたい方は下記も併せてお読みください。

 

第一種貨物利用運送事業の種類

第一種貨物利用運送事業には、以下の4つの種類があります。

  • 車両
  • 船舶
  • 航空
  • 鉄道

今回は当社で最も依頼の多い「第一種貨物自動車運送事業」について、以下で解説していきます。

 

第一種貨物自動車利用運送事業登録で用意するもの

第一種貨物自動車利用運送事業の登録申請で用意するものを紹介していきます。

個人事業主と法人の場合では必要書類などが大きく変わってくるため、申請の際には十分注意してください。

 

必要書類

個人事業主が第一種貨物自動車運送事業の登録を申請する際には、以下の書類が必要です。

  • 運送委託契約書
  • 財産に関する調書(地域により残高証明書が必要)
  • 戸籍抄本
  • 履歴書

 

費用(自己資金+登録免許税)

申請の際に必要となる費用は、以下のとおりです。

  • 300万円以上(純資金)
  • 9万円(登録免許税)

 

第一種貨物利用運送事業登録を取得する流れ

第一種貨物利用運送事業登録を取得する流れ

ここからは、第一種貨物利用運送事業の許認可までの流れを確認していきましょう。

 

登録までの流れ

第一種貨物利用運送事業登録は、以下のような流れで進んでいきます。

  1. 資金と営業所の確保
  2. 申請書類の作成
  3. 申請に必要な書類を集める
  4. 営業所を管轄する運輸支局へ申請書類を提出する
  5. 審査
  6. 登録通知書の交付
  7. 登録免許税9万円を納付する
  8. 運賃料金設定届出書を提出する
  9. 営業スタート

運賃料金設定届出書は、運賃を設定してから30日以内に営業所を管轄する運輸支局に提出する必要があるため注意してください。

また、登録免許税についても、登録が完了してから30日以内に納付する必要があります。

 

審査期間

申請書が受理されてから登録までにかかる審査期間を「標準処理期間」といいます。
第一種貨物利用運送事業の登録の標準処理期間は、2~3ヵ月とされています。

 

第一種貨物利用運送事業の個人開業に関するQ&A

最後に、第一種貨物利用運送事業の個人開業に関する質問に回答していきます。

 

個人で利用運送事業を開業すると儲かるって本当?

個人事業主が、利用運送事業で一般のサラリーマン以上に稼ぐことは十分可能です。
しかし、開業初月から大きな利益を上げるためには、入念な営業活動が必要となることを忘れないでください。

 

行政書士に依頼した場合の報酬はいくら?

第一種貨物利用運送事業の登録申請を弊社にご依頼いただいた場合にかかる費用は以下のとおりです。

書類の作成から提出代行まで、丁寧かつ迅速に対応しますので安心してご依頼ください。

第一種貨物利用運送事業の種類 報酬額
貨物自動車 10万円+税
内航海運 25万円+税
外航海運 25万円+税
国内航空 25万円+税
国外航空 25万円+税
鉄道 25万円+税

※上記の報酬に加え、登録免許税(9万円)が別途必要になります。

 

まとめ

本記事では、個人事業主が第一種貨物利用運送事業を開業するにあたって、必要となる条件や許認可の大まかな流れについて解説しました。

個人事業主が許認可を取得する際の手順は、法人の場合と大きな変わりはありませんが、費用が安く抑えられたり、開業までの期間を短くしたりできるメリットがあります。

第一種貨物利用運送事業の登録を得るためには、必要書類を揃えたり、各要件をクリアしているかなど、事細かに確認する必要があります。

特に、要件の確認には専門的な知識が必要になる場合もあるため、利用運送許認可のプロである行政書士に依頼すると安心です。

登録申請が不安な場合は、ぜひ弊社シフトアップにご依頼ください。

運送業許認可や巡回指導・監査対策に関するお問い合わせは行政書士法人シフトアップまでお気軽に。全国対応しております。

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