貨物利用運送事業

個人事業主が利用運送事業を始める方法とは?第一種利用運送事業と第二種利用運送事業の違いも解説

個人事業主が利用運送事業を始めるには?要件や流れを解説
この記事のポイント

Q. 個人事業主でも利用運送事業を始められる?
はい。法律上、法人だけでなく個人事業主でも貨物利用運送事業の開業は可能です。必要なのは要件をクリアにし、「登録(第一種)」か「届出(第二種)」を行い、事業運営体制を整えることです。

Q. 第一種と第二種の違いは?
第一種は陸運(トラックなど)を手配する業務が中心で、配送管理や契約の主体になります。第二種は海運・航空・鉄道の取次点に特化し、専門業者を通す形です。

Q. 開業にはどのような手続きが必要?
第一種は国土交通大臣への「登録申請」。第二種は同じく届出でOK。どちらも「申請書+添付書類+要件確認」が基本構成となります。

 

物流の専門知識がなくても、個人で「利用運送事業」を始められる時代です。

しかし、第一種と第二種の制度の違いや、登録・届出の流れを押さえておかなければ、トラブルや法的リスクを抱えることになります。

この記事では個人事業主向けに必要な情報を整理し、スムーズな開業をサポートします。

目次

利用運送事業とは

利用運送事業とは、荷主からの運送依頼に応じるために、自らが責任を負って運賃を受け取り、運送事業者を利用して運送をおこなう事業のことです。

わかりやすく言うと、荷物とそれを運ぶ車両をマッチングさせる配車係のような役割を担っています。

業界大手で例を挙げるなら、愛知県名古屋市に本社を構える「トランコム株式会社」が利用運送事業者に該当します。

運送業界では、利用運送事業者=水屋とよばれており、これは昔、水を売り歩く商人が荷物の取次をおこなっていたことが由来になっているといわれています。

利用運送と自社運送の違い

「利用運送事業」という言葉を聞き慣れない方も多いかもしれません。

これは簡単に言えば、「荷物を運ぶ責任は自分が持つけれど、実際に運ぶのは別の運送会社にお願いする」ビジネスのことです。

たとえば、あなたが地方で作った農産物を全国のスーパーに届けたいとします。

自分でトラックや運転手を用意するのは大変ですが、地域の運送会社に配送を依頼すれば、あなたは「荷主」としての責任を持ちながら、運送そのものはプロに任せられます。これが「利用運送」の考え方です。

一方で「自社運送」は、自分の会社でトラックや運転手を雇い、自らの力で荷物を運びます。たとえば、ヤマト運輸や佐川急便のような大手はこのスタイルです。設備投資も管理負担も大きくなりますが、自由度が高いという特徴もあります。

利用運送事業の役割と特徴

近年ではネットショップや小規模なメーカーが増え、全国各地に商品を届ける機会が増えています。

そのような場面で「利用運送事業」は非常に重宝されます。自分でトラックを買ったりドライバーを雇ったりする必要がないため、初期コストが抑えられ、リスクも少なく物流ビジネスに参入できるからです。

利用運送は「物流の橋渡し役」として、全国の荷主と運送業者の間に立ってサービスを提供する業種です。特に、設備を持たずに始められる点が個人事業主にとって大きなメリットとなります。

第一種と第二種の違い

利用運送事業には「第一種」と「第二種」の2種類があり、それぞれ扱える運送手段や手続き方法が異なります。

ここでは、制度の仕組みや違いを具体的に説明し、どちらが自分の事業に合っているか判断するためのヒントをお伝えします。

第一種貨物利用運送事業の特徴

第一種貨物利用運送事業は、主に「陸上輸送」(トラックなど)を使って荷物を運ぶ際に使われる制度です。

この事業では、自分で荷主(顧客)から依頼を受け、その荷物の配送を他の運送業者にお願いするという流れになります。簡単に言えば「荷主と運送会社の間に立つプロの手配人」のような役割です。

たとえば、あなたが個人事業主として家具の販売をしているとします。

お客様からの注文が入ったとき、自社トラックは持っていなくても、信頼できる運送業者に配送を任せれば問題ありません。

その際に「責任を持って運送手配をしますよ」という形で契約するのが、この第一種の業務です。

第一種では「登録制」が採用されています。つまり、事前に国に申請して審査を受け、正式に認められる必要があります。

審査では、事業計画や資金面、業務管理体制などがチェックされるため、開業までに少し時間がかかることもあります。

第二種貨物利用運送事業の特徴

第二種貨物利用運送事業は、第一種と異なり「陸上」ではなく「海運・航空・鉄道」を使った長距離輸送に関わる取次業務です。

実際の輸送は、専門の運送業者が行うため、利用運送業者はその手配や契約調整を担います。

たとえば、個人で輸入雑貨を販売している方が、中国から商品を海上輸送で取り寄せるケースを考えてみましょう。

その場合、自分で船会社と直接契約するのは手間がかかります。代わりに、第二種利用運送事業者が手続きの代行をし、荷主に代わって輸送の手配を行います。

この第二種は「届出制」です。第一種のように厳格な審査を受ける必要はありませんが、適切な書類を提出することで比較的スムーズに事業を始めることができます。

ただし、海運・航空・鉄道といった輸送手段にはそれぞれ専門的な知識が求められるため、業界経験者や事前学習があると安心です。

事業種別の選び方

第一種と第二種、どちらが自分に向いているのかを判断するには、の3つの視点で整理するとわかりやすくなります。

  1. 取り扱いたい輸送手段は何か?
    トラック輸送が中心なら第一種、国際便や長距離輸送が多いなら第二種が適しています。
  2. どこまでの業務範囲を担うのか?
    顧客対応から配送まで一括管理したい場合は第一種。専門業者との間を取り持つだけなら第二種でも十分です。
  3. 申請のしやすさと事業規模
    第一種は登録制でハードルがやや高いですが、その分責任ある業務が可能になります。一方で、第二種はスタートしやすく、小規模事業者にとって負担が少ない点が魅力です。

たとえば、地元エリアでお弁当や手作り品などをネット販売し、配送は市内限定というような場合、トラックでの短距離輸送が中心になるため第一種が適しているでしょう。

一方で、海外の工場から商品を輸入して全国に販売したいといったビジネスモデルの場合、第二種のほうが柔軟です。

このように自分の業務内容に合わせて制度を選ぶことが、開業後のトラブル回避にもつながります。

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個人事業主で開業する方法

個人で利用運送事業を始めたい場合、法人と比べて参入のハードルが低く見える一方で、いくつか注意すべき点があります。

「個人でも本当に始められるのか?」「どんな要件を満たせばいいのか?」といった疑問に答えながら、開業のポイントを整理していきます。

個人での開業は可能か

まず結論から言うと、個人事業主としても第一種・第二種貨物利用運送事業を開業することは法律上問題ありません。

実際に小規模の製造業者やネットショップ経営者が、配送の自由度や利便性を求めて利用運送事業に参入するケースも増えています。

ただし、法人と異なり「信用力」や「経営の安定性」をアピールしづらい点は否めません。

そのため、登録や届出の審査では、経歴・経験・事業内容などをより丁寧に説明することが求められます。

たとえば個人で洋服を仕入れて販売している事業者が、配送業者との取次を請け負いたい場合、過去の営業実績や仕入れ先との契約履歴などを提出資料で明示することが有効です。

必要な資格や人的・資本要件

利用運送事業は「許可制」ではなく「登録制」または「届出制」なので、特別な国家資格は不要です。

ただし、開業にあたっては「人的要件」と「財産的要件」の2つの柱を満たす必要があります。

人的要件(人に関する条件)

運送取引に必要な知識を持つ責任者(事業管理者)を設置する必要があります。

この責任者は、過去に物流や営業の現場で経験があると望ましいとされます。未経験者でも開業は可能ですが、事業計画書や研修履歴などで補足できると信頼度が高まります。

財産的要件(お金に関する条件)

事業を継続的に運営するだけの資金があるかも重要です。

明確な金額基準はありませんが、運送業者への支払い能力や、万が一トラブルが起きた際の損害賠償に備え、損害保険(運送取扱業者賠償責任保険など)への加入が強く推奨されています。

また、開業時にかかる登録手数料(第一種の場合は数万円程度)、事務所の維持費、帳簿管理の仕組みなども、準備段階でしっかり考えておきましょう。

注意すべき法的な制限事項

個人であっても、利用運送事業を行う以上は「貨物利用運送事業法」や「道路運送法」といった法律のルールに従う必要があります。

とくに気をつけたいのがの3点です。

1. 虚偽記載や書類不備の罰則

申請書や届出書類に誤りや故意の虚偽記載があった場合、登録が取り消されることがあります。ミスを防ぐためにも、記入後は必ず再確認しましょう。

2. 名義貸しの禁止

他人の名前を使って登録・届出をする行為(名義貸し)は違法です。本人または正当な管理者でなければ手続きはできません。

3. 営業開始後の管理責任

利用運送業者は、運送業務の「手配責任」を負う立場です。

たとえば、委託した運送業者に問題があった場合でも、荷主に対して一定の責任が発生します。このため、委託先の選定や契約書の内容には細心の注意が必要です。

こうした法的なポイントを理解しておかないと、「知らないうちに違反していた」といったリスクを抱えることになります。開業準備中に専門家(行政書士・中小企業診断士など)に相談するのも有効な選択肢です。

法人で開業する方法

人事業主に比べて、法人として利用運送事業を始める場合は「社会的信用の高さ」や「組織体制の明確さ」が評価されやすいという利点があります。

しかしその一方で、会社としての法的責任や登記関連の書類も必要になるため、準備すべき内容も異なります。

法人が利用運送事業を始める際に満たすべき条件と注意点をわかりやすくご紹介します。

法人形態での事業運営の特徴

法人で事業を行う場合、組織としての信頼性や継続性が担保されやすいため、取引先との契約や金融機関からの融資面でも有利に働くことが多くあります。

たとえば、地方の製造業者が法人格を持って利用運送事業を行っている場合、大手の配送業者や商社とスムーズに契約を結びやすくなります。

また、業務の拡大やスタッフの雇用などに柔軟に対応できるのも、法人の強みです。

一方で、役員構成や資本金、定款(会社の目的や事業内容を定めた書類)なども審査対象になるため、組織の整備が不十分だと登録が遅れることもあります。

単に法人であるというだけでは登録が通るわけではなく、「体制としての健全性」や「継続的な業務能力」が見られます。

法人登記と登録要件の関係

法人が第一種貨物利用運送事業を行うには、事前に法人登記が完了していることが大前提となります。

登録申請時には、法人の登記簿謄本や定款のコピーを提出し、会社として利用運送業を行う意思と能力があることを示す必要があります。

また、定款には「貨物利用運送事業」や「物流サービス業」など、関連する事業目的が明記されていなければなりません。

目的欄に該当する記述がないと、登録審査の段階で修正を求められることもあります。設立時に忘れずに記載しておくことがポイントです。

さらに会社の所在地が実在すること、営業所として機能していることも必要条件です。たとえばバーチャルオフィスやポストのみの住所では、登録が認められないケースもあります。

物理的なオフィス空間と、電話・パソコン・帳簿管理などの設備があるかどうかも見られます。

資本金・役員構成に関する要件

貨物利用運送事業において、法的には資本金の最低額は明示されていません。

しかし、実務上は少なくとも500万円以上の資本金があると信頼性が高まります。

資金力が不十分な場合、事業の継続性に不安があると判断されるリスクがあるためです。

また、役員構成も重要な審査項目です。特に「代表取締役」や「業務執行役員」の中に、物流業界での経験がある人物がいると審査がスムーズに進む傾向があります。

経験者がいない場合でも、事業計画書や研修履歴などでカバーすることができます。

さらに、法人である以上、社会保険や労働保険への適切な加入も見られます。従業員を雇用する場合は、労務管理体制が整っているかどうかの確認も忘れないようにしましょう。

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第一種貨物利用運送事業の登録方法

第一種貨物利用運送事業を始めるには、国土交通大臣への「登録申請」が必要です。

これは届出制ではなく審査制のため、申請書を提出しただけで自動的に認められるわけではありません。

必要な書類や記入方法、登録までの流れをわかりやすく解説します。

登録申請に必要な書類

第一種の登録申請には、次のような書類を提出する必要があります。

  • 貨物利用運送事業登録申請書(国土交通省が定めた様式)
  • 事業計画書(営業所所在地、取扱貨物の種類、業務範囲などを明記)
  • 履歴書および経歴書(事業責任者について)
  • 損害賠償責任保険の加入証明書
  • 事業所の賃貸契約書や登記事項証明書
  • 定款や登記簿謄本(法人の場合)

これらは申請先の地方運輸局によって多少異なる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。

ポイント
特に忘れがちなのが、事業所の「実在証明」と「業務体制の説明」です。

単に住所だけでなく、「どのような設備があり、どんな体制で荷主とやりとりするか」を説明資料として用意しておくとスムーズです。

登録申請書の書き方と記入例

申請書は様式に従って記載する必要がありますが、形式を守るだけでは不十分です。

読み手(審査官)が「この人はきちんと事業を理解している」と納得できる内容になっているかがカギです。

たとえばのような記載例が適切です。

  • 「○○県○○市を中心に、日用品や雑貨の中距離配送(半径50km以内)を対象とした利用運送業務を行う」
  • 「荷主とは月間契約により、週3便を地元の運送業者A社へ委託する」
  • 「配送指示、伝票管理、問い合わせ対応は全て自社にて実施」

また、記入ミスを避けるために、過去に申請した人の記載例や、国土交通省が公表している記入見本を参考にするのも良い方法です。

行政書士に代行を依頼することもできますが、自分で記載内容をしっかり理解しておくことで、審査中の補足依頼や追加質問にも柔軟に対応できます。

登録までの流れと所要期間

第一種の登録申請の流れは、おおまかに次の通りです。

  1. 事前相談(任意)
    地方運輸局の担当窓口に事前相談が可能です。資料の確認や不明点の解消ができるので、初めて申請する方には特におすすめです。
  2. 書類提出(窓口または郵送)
    必要書類を揃えたら、地方運輸局に提出します。提出時点で手数料(例:登録免許税3万円程度)がかかります。
  3. 書類審査・補正依頼
    内容に問題がなければ審査に入ります。場合によっては書類の補正(訂正や追記)を求められることがあります。
  4. 審査完了・登録通知書の交付
    無事に審査を通過すれば、「登録通知書」が交付されます。これをもって事業開始が可能となります。

所要期間はおおむね1か月~2か月が目安です。ただし、補正が発生した場合や繁忙期などはもう少しかかることもあります。

登録が完了したからといって、その後の管理が不要になるわけではありません。事業開始後も、登録事項に変更が生じた場合には「変更届」の提出が必要です。

そのため、スケジュールには余裕をもって準備するのが安心です。

第二種貨物利用運送事業の届出方法

第二種貨物利用運送事業は、海運・航空・鉄道などの運送を利用する場合に適用される制度です。

第一種と異なり、審査を要する「登録」ではなく、書類を提出するだけの「届出制」であるため、開業のハードルは比較的低めです。

ここでは、どのようなケースで届出が必要なのか、どんな書類を準備すべきか、また届出の流れについて解説していきます。

届出が必要なケースとは

第二種の届出が必要なのは、「海運」「航空」「鉄道」の運送手段を使って荷物を配送したい、または荷主の代理として運送契約の取次を行いたい場合です。

実際の輸送は海運会社・航空会社・鉄道会社が行いますが、それを手配・契約・管理するのが利用運送事業者の役割です。

たとえば次のようなケースでは、第二種の届出が必要になります。

  • 海外からの輸入雑貨を船便で受け取り、日本国内の倉庫へ輸送を手配する
  • 海外の工場から航空便で電子部品を輸入し、国内で配送する工程を手配する
  • 鉄道輸送を使って、国内複数拠点に定期的な荷物の移動を行う

これらのケースでは、実際の運送業務は外部の輸送会社に任せますが、「誰が運送契約の責任を持つか」によって届出の必要性が生じます。

なお、届出が不要な場合もあります。たとえば、自社の商品を自分で手配して輸送するだけで、他人の荷物を取次しない場合などは該当しません。

海運・航空・鉄道ごとの届出内容

第二種の届出では選ぶ輸送手段ごとに提出する資料の内容が少しずつ異なります。

どれも国土交通省の所轄下にありますが、輸送形態による実務の違いが反映されているためです。

海運を利用する場合

  • 利用予定の船会社との取引契約書(または取次契約書)
  • 輸送範囲(港から港、国内港間など)の記載
  • 船積計画書やスケジュールなどが必要なこともあります

航空を利用する場合

  • 航空貨物会社との取次契約書
  • 航空路線や空港情報
  • 取扱う貨物の種類や包装の安全対策に関する説明書

鉄道を利用する場合

  • JR貨物などとの運送契約の写し
  • 積替え場所(ヤード)の所在地や管理体制の説明
  • 鉄道を使う理由や輸送量の見込みなどを求められることがあります

いずれの手段においても、「どのような荷物を、どこからどこまで、どのように運ぶのか」が明確に説明できることが求められます。

形式的な書類提出ではなく、実際の事業内容に即した説明を心がけましょう。

届出手続きの手順と必要書類

第二種の届出は、管轄の地方運輸局(国土交通省の出先機関)に対して行います。

書類に不備がなければ、比較的短期間で受理されるのが特長です。

一般的な手続きの流れは次のとおりです。

事前準備・相談(任意)

不明点がある場合、地方運輸局の担当者に事前相談することができます。自分の事業が届出の対象となるかどうかも確認できます。

書類の作成と提出

提出書類には次のようなものが含まれます。

  • 第二種貨物利用運送事業届出書
  • 会社(または個人)の概要説明書
  • 利用予定の運送会社との契約書または覚書
  • 業務内容の説明資料(輸送手段、区間、取扱貨物など)

受付と審査(形式的)

第一種のような詳細審査はありませんが、形式不備や記載漏れがあると差戻されます。

届出受理通知の発行

不備がなければ、提出から2週間~1か月程度で「届出受理通知」が交付されます。これが届けば事業開始が可能です。

  • 書類提出後でも、内容に変更があった場合は「変更届出」が必要です。たとえば契約先の運送会社を変更した場合や、取扱う輸送手段を追加した場合などは、忘れずに届け出ましょう。
  • 届出を怠ったまま事業を行うと、違法営業とみなされ、罰則を受けるおそれがあります。

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開業後にやるべきこと

利用運送事業の登録や届出が無事に済んだとしても、それは「スタートラインに立った」というだけに過ぎません。

事業を安定的に続けるためには、日々の業務運営や法令遵守、トラブル予防といった実務面にしっかり取り組む必要があります。

ここでは、開業後に押さえておくべきポイントを3つの観点から解説します。

適切な業務管理体制の整備

利用運送事業者は、荷主から貨物を預かる契約上の「責任者」です。

実際に運送を請け負うのは別の運送会社であっても、その手配やトラブル対応は事業者自身が担うことになります。

そのため、のような業務管理体制を整えることが重要です。

  • 運送業者との契約管理:どの運送会社に、どの条件で委託しているかを明確に管理します。
  • 配送状況の確認体制:納期遅延や誤配送がないか、荷主に代わってモニタリングする仕組みが必要です。
  • 問い合わせ・クレーム対応フローの整備:荷主からの問い合わせや、万一の事故に備えて、対応ルールや連絡先一覧を準備しておくと安心です。

クラウド型の運送管理システムや帳簿管理ツールなどを活用すると、少人数でも効率よく運営できます。

取扱業務ごとの帳簿・記録の保管

貨物利用運送事業者には、業務に関する帳簿の作成・保管義務があります。これらは税務・監査・法令上のトラブルに備えるために不可欠です。

最低でもの記録は保存しておきましょう。

  • 荷主との契約書・見積書
  • 委託先運送業者との契約書・請求書
  • 取扱貨物の種類・数量・日付・区間
  • クレーム発生時の記録や対応履歴

保管期間は原則として3年間以上が推奨されています。紙の書類でも構いませんが、スキャンしてデジタル化しておくと管理が容易です。

継続的な法令遵守と届出更新の重要性

利用運送事業は、登録・届出をしただけで終わるわけではありません。

事業の継続中も、法令に沿った運営と必要な届出の提出が求められます。

たとえば、次のようなケースでは「変更届」や「廃業届」が必要になります。

  • 営業所の住所変更
  • 責任者の交代
  • 運送取扱区域の拡大や縮小
  • 事業の休止や廃止

これらを怠ると、行政指導や登録取消などのリスクにつながることもあります。

年に1回は、事業内容と届出内容が一致しているかをチェックする仕組みを設けると安心です。

利用運送事業でよくあるトラブルとその対策

利用運送事業は設備投資が少なく、個人でも始めやすいビジネスですが「手配責任」を負うという特性上、トラブルが発生した際にはその責任を問われることがあります。

ここでは、実際に起こりがちなトラブルと、それを未然に防ぐための対策について解説します。

委託先トラブルと責任の所在

利用運送事業者が最も多く直面するのが、「委託先の運送会社による遅配・破損・誤配送」などのトラブルです。

たとえ運送そのものを他社に委託していたとしても、荷主から見れば、依頼をしたのは利用運送事業者であるため、責任を追及されるのは自分自身になります。

  • 荷物の引渡し遅延による契約違反
  • 運送中の荷物破損に関する賠償請求
  • 配送先の誤りによる損害発生

対策として有効なのはの3点です。

  1. 信頼できる運送会社の選定
    過去の実績や損害保険加入状況、応対品質などをチェックして委託先を選びましょう。
  2. 委託契約書の明文化
    「どのような業務をどこまで請け負うか」「損害発生時の責任の分担」などを文書で明確にしておくことが重要です。
  3. 賠償責任保険への加入
    万が一のトラブルに備えて、「運送取扱業者賠償責任保険」などに加入しておくと安心です。

荷主との契約不履行に備えるには

荷主と取り交わす契約があいまいなまま運送手配を行うと、「聞いていた話と違う」「損害賠償を求められた」といったトラブルに発展するリスクがあります。

特に気をつけたいのは次のようなポイントです。

  • 荷物の引渡し日時、場所、数量などの取り決め
  • 運送方法と委託先の明示
  • 遅延・破損などが発生した際の対応ルール

荷主との信頼関係を築くには、「トラブルを起こさない」以上に、「トラブルが起きたときに適切に対応できるかどうか」が重要です。

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開業に向けたサポート・相談先一覧

利用運送事業を開業するにあたっては、制度の理解、書類作成、法令対応など、個人で進めるには不安を感じる場面も多いものです。

そうしたときは、専門家や支援機関に相談することで、スムーズに開業手続きを進められるようになります。

ここでは、個人事業主が活用できる主なサポート先をご紹介します。

行政書士や中小企業支援機関の活用

行政書士

貨物利用運送事業の登録申請や届出手続きに詳しい行政書士に依頼すれば、書類の不備や手続きミスを防ぐことができます。

特に第一種事業で必要な「登録申請書」や「事業計画書」の作成は、初めての方にはハードルが高いため、プロの手を借りることで安心して進められます。

行政書士に依頼した場合の報酬はいくら?

第一種貨物利用運送事業の登録申請を弊社にご依頼いただいた場合にかかる費用は以下のとおりです。

書類の作成から提出代行まで、丁寧かつ迅速に対応しますので安心してご依頼ください。

第一種貨物利用運送事業の種類 報酬額
  • 貨物自動車 10万円+税
  • 内航海運 25万円+税
  • 外航海運 25万円+税
  • 国内航空 25万円+税
  • 国外航空 25万円+税
  • 鉄道 25万円+税

※上記の報酬に加え、登録免許税(9万円)が別途必要になります。

中小企業診断士・創業支援センター

「事業の始め方がわからない」「開業後の資金繰りが不安」など、経営全般に関する相談は中小企業診断士や地域の創業支援センターが頼りになります。

無料で相談に応じてくれる自治体運営の窓口もあるため、まずは気軽に話を聞いてもらうのがよいでしょう。

国土交通省や地方運輸局の情報提供

利用運送事業に関する制度や申請様式は、国土交通省や各地方運輸局のウェブサイトで公開されています。

書類の様式や提出先、審査の流れなどが詳しく説明されているため、自己手続きする場合の情報収集源として有効です。

  • 国土交通省公式サイト(貨物利用運送関連ページ)
  • 地方運輸局(各都道府県に1箇所以上所在)

また、運輸局では「事前相談」も受け付けています。書類を提出する前に内容の確認をしてもらえるので、不備や誤りを防ぐうえで非常に役立ちます。

まとめ

個人事業主でも始められる「利用運送事業」は初期投資が比較的少なく、設備やトラックを持たずに物流業界へ参入できる魅力的なビジネスモデルです。

第一種と第二種の制度の違いを理解し、自分の事業形態や取扱商品、対象エリアに合った方法を選べば、無理なくスタートすることができます。

特にネット販売や地方での生産者、小規模メーカーにとっては、

「配送の自由度を高めたい」
「自分で運ばず、でも顧客対応はしっかりしたい」

といったニーズにマッチする選択肢と言えるでしょう。

一方で、運送の“手配責任”を負う立場であることから、トラブル対応や契約管理には注意が必要です。

制度や法律を正しく理解し、信頼できる運送業者とのパートナーシップを築くことが、長く事業を続ける鍵となります。

はじめて挑戦する方は、行政書士や創業支援機関などの専門家のサポートを活用しながら、無理のない形で開業を進めていくのがおすすめです。

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行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

12年間の運送会社勤務経験を持ち、累計相談数は10,000件以上。運行管理者・配車・総務経理など運送事業の現場を知り尽くした圧倒的な業務ノウハウを基に運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許認可をメインに日本全国対応で力強くサポート。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

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