「専業水屋」とは、貨物利用運送事業を営む事業者のことです。
物流業界において、荷主と実運送事業をつなぐ重要な役割を果たしています。
しかし一方で、その運用方法に対しては「ピンハネ」と批判されることも少なくありません。
本記事では、専業水屋の概要や仕組み、必要性を解説するとともに、ピンハネと言われる理由を詳しく探ります。
また、貨物利用運送事業を始めるための要件についても取り上げるので、専業水屋を始めようか悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
専業水屋とは?
専業水屋とは、貨物利用運送事業(第一種貨物利用運送事業)を営む事業者を指します。
貨物利用運送事業とは、他社からの運送依頼に応じるために自らが責任を負って運賃を受け取り、他の実運送事業者(実際に荷物を運ぶ事業者)を利用して荷物を運ぶ事業のことです。
この中でも、トラックを持たずに貨物利用運送事業をおこなう事業者を「専業水屋」と言います。
水屋という呼び名は、昔水を売り歩く商人が、飛脚などへの荷物の取次をおこなっていたことが由来となっています。
専業水屋は、配車係や集客のアウトソーシングをおこなうような立ち位置におり、業界大手でいえば愛知県名古屋市に本社を置く「トランコム株式会社」などが有名です。
貨物利用運送事業(第一種貨物利用運送事業)については、「貨物利用運送事業とは?許可と登録について5分で理解できる記事」で詳しく解説しています。

専業水屋がピンハネといわれる理由
専業水屋は、荷主と実運送事業者をつなぐ仲介的な役割を担っています。
異業種で言う不動産仲介業や人材紹介業と同じような仕組みです。
しかし、専業水屋と聞くと「ピンハネ」という言葉が頭に浮かぶ方もいるでしょう。
専業水屋がピンハネといわれるのには、次のような理由があるからだと考えられます。
- 無理な価格設定をして運賃の水準を下げている
- 運賃の割に合わない仕事を提示してくる
- 実運送を行わないためトラブルに対して無責任
- 運賃の設定が不明瞭
仲介業者である専業水屋が関与することで、実際に荷物を運ぶドライバーや運送事業者に対して支払われる報酬が減ることが、水屋=ピンハネのイメージにつながっています。
専業水屋の必要性
専業水屋はピンハネだと言われているにも関わらず、市場規模が大きい理由は、それだけ高い需要があるからです。
長距離輸送では、いかに効率よく荷物を輸送できるかが、売上を伸ばす鍵となります。そのことから運送会社の間では、「帰り荷」を取ることが一般的となっています。
帰り荷とは、荷物を運び終えて自社拠点へ戻るトラックを利用し、別の荷物を運ぶことをいいます。これにより、帰り便の空荷(荷物を積んでいない状態)を防ぎ、効率的に売上を上げることができるのです。
一般的な運送会社では、各々の人脈を使って帰り荷を探すケースが多いですが、人脈のない零細企業ではうまく帰り荷を見つけられないこともあります。
そこで活躍するのが専業水屋です。
専業水屋に荷主との仲介を依頼すれば、大規模なネットワークから条件に合う帰り荷を紹介してくれるため、自ら荷物を探す手間が省けます。
また、荷主目線で見ても、専業水屋の存在は大きいです。
緊急オーダー時や普段より出荷量が多い日は、追加のトラックが必要になりますが、この際も専業水屋に依頼することで、スムーズに実運送事業者を見つけることができます。
このことから専業水屋は、実運送事業者にとっても、荷主にとっても重要な存在であることがわかります。
専業水屋を始めたいと思ったら
ここまでの話を聞いて、専業水屋に興味を持った方もいるのではないでしょうか。
専業水屋を始めるためには、国で定められたいくつかの要件を満たしたうえで、所定の申請書類を作成・提出し、国土交通大臣から「第1種貨物利用運送事業」の登録を受ける必要があります。
なお、第1種貨物利用運送事業の登録は専門的な知識がないと難しいため、専門家に相談することをおすすめします。
専業水屋の要件
ここからは、専業水屋を始めたいと考えている方に向けて、登録に必要な3つの要件を解説します。
- 最低1か所の営業所を設けている
- 一定の資金を有している
- 欠格事由に該当していない
順番に見ていきましょう。
要件① 最低1か所の営業所を設けている
専業水屋を始めるには、最低1か所の営業所を設ける必要があります。
ただし、建物ならどんなものでもよいわけではなく、建築基準法や都市計画法、農地法などの法令に抵触しないことが条件です。
中でも注意すべきなのが「都市計画法」です。
都市計画法とは、都市計画に関する事項が定められている法律のことで、都市の健全な発展と秩序のある整備を図るために、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。
都市計画法では、建物を建築できない区域が定められており、その区域のことを「市街化調整区域」といいます。市街化調整区域内にある建物は、専業水屋の営業所として使用できないため注意が必要です。
一方、積極的に建物を建ててよい区域のことを「市街化区域」といいます。
市街化区域は13種類に分類されており、その中でも営業所を建てられる区分は以下のように定められています。
- 第二種中高層住居専用地域(一定の要件を満たした場合のみ)
- 第一種住居専用地域
- 第二種住居専用地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
要件② 一定の資金を有している
専業水屋を始める際は、一定の資金を有していることも要件となります。
法人か個人、どちらで事業を始めるかによって、資金があることを証明する方法が異なるため注意が必要です。
法人で専業水屋を始める場合は、直近の貸借対照表の純資産が300万円以上あることが要件となっており、貸借対照表の写しで資金があることを証明します。
純資産が300万円以上ない場合は増資をして、法人の履歴事項全部証明書で純資産が300万円以上になったことを証明しなければ、登録は不可となります。
個人事業主として始める場合は、事業主本人に300万円以上の現金もしくは預貯金があることが求められます。
資金を有していることの証明方法は地域によって異なります。自己申告でよいケースもあれば、金融機関などが発行する残高証明書の提出が必要になるケースもあります。
要件③ 欠格事由に該当していない
申請者が欠格事由に該当していないことも、専業水屋を始めるための要件です。
欠格事由とは、貨物利用運送事業の登録を受けるうえで、相応しくないとされる行動や事柄のことをいいます。
法人の場合は役員全員が、個人事業主の場合は事業主本人が以下の欠格事由に当てはまった場合、貨物利用運送事業の登録を受けられなくなります。
- 申請者が1年以上の懲役もしくは禁錮刑以上の刑を受けている、または刑の執行が終わってから2年を経過していない
- 申請者が第1種および第2種貨物利用運送事業の取消処分を受けてから2年経過していない
まとめ
専業水屋とは、貨物利用運送事業(第一種貨物利用運送事業)を営む事業者のことです。
貨物利用運送事業とは、他社からの運送依頼に応じるために自らが責任を負って運賃を受け取り、他の実運送事業者を利用して荷物を運ぶ事業のことをいいます。
専業水屋の中には、無理な価格設定や、運賃の割に合わない仕事を提示する悪徳業者が存在するため、ピンハネと批判されることも少なくありません。
しかし、荷主と実運送事業者をつなぐ重要な役割を担っており、市場規模も大きいため、始める価値は十分にあるといえるでしょう。
行政書士法人シフトアップでは、貨物利用運送事業の登録のサポートも承っています。
豊富な知識と経験、積み重ねたノウハウをもとに、一から開業の手助けをさせていただきますので、水屋を始めたい方は、運送業勤務歴12年の行政書士が代表を務める「行政書士法人シフトアップ」までお気軽にご相談ください。

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