引越し業を営むには、トラック運送事業者として国土交通大臣や地方運輸局長の許可を受ける必要があります。
しかし、許可取得の手順が細かいうえに満たすべき要件も多いため、何から手を付ければよいかわからない方もいるでしょう。
そこで本記事では、引越し業開業の要件や許可取得までの手順をわかりやすく解説します。
開業時の注意点も取り上げるので、引越し業を新たに開業したい方はぜひ参考にしてください。

引越し業の許可について
引越し業とは、荷物の移動や積み込み、荷卸し、搬入など、引越し関連のサービスを提供する事業です。
引越し業は他者からの依頼で荷物を運び、その対価として運賃やサービス料をもらうため、運送業に該当します。
そのため、引越し業を営むにはトラック運送事業者として運送業許可を取得する必要があります。
ここからは、引越し業を営む際に必要な許可の種類や許可取得の重要性を解説します。
引越し業に必要な許可
引越し業を新たに開業する場合、以下の許可を取得したり、登録を受けたりしなければなりません。
それぞれの概要、メリットやデメリットをまとめました。
| 概要 | メリット | デメリット | |
| 一般貨物自動車運送事業 (緑ナンバー) | トラックを使用して他者の荷物を有償で運ぶ (一般的な引越し業者はこれに該当する) | ・自社でサービスを完結できる ・社会的信用が高い | ・要件が複雑で許可取得が難しい ・多額の開業資金が必要 |
| 貨物軽自動車運送事業 (黒ナンバー) | 軽トラックや軽自動車を使用して他者の荷物を有償で運ぶ | ・届出が比較的容易 ・従業員1名、車両1台から始められる | ・使用できる車両が軽車両に限定される ・少量の荷物しか運べない |
| 貨物利用運送事業 | 荷主と実運送事業者を仲介することで利益を得る事業 | ・許可取得の要件が一般貨物と比較して容易 ・経費が少ないため運営上のリスクが低い | ・営業力や人脈がないと運営が難しい |
法人を設立して引越し業を始めたい、個人で軽トラックを使用して単身者向けのサービスを展開したいなど、事業規模や運営イメージを基に自身に合う許可申請や届出をおこないましょう。
引越し業の許可取得の重要性
運送業許可(一般貨物自動車運送事業)では多くの要件が設けられています。
すべての要件を満たして許可を取得することによって適切な車両や設備を有していることが証明され、引越し作業の安全性が確保されます。
つまり、運送業許可を取得している事業者=国に認められた社会的信用の高い事業者であるということ。利用者からの信頼も得やすいので、許可を取得していない事業者よりも有利に事業活動をおこなえます。
なお、許可を取得せずに営業行為をおこなった場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。
(出典:貨物自動車運送事業法 第七十条|e-Gov法令検索)
胸を張って事業をおこなうためにも、運送業許可は必ず取得しましょう。
繁忙期に限り白ナンバー車両も使用可能
通常、引越し業では、緑ナンバーまたは黒ナンバー車両のみを使用できる決まりになっています。
しかし、引越しの繁忙期に該当する3月15日〜4月15日のうちの15日未満に限り、レンタカー車両(白ナンバー)を事業用車として使用できます。
ただしこの条件が適用されるのは、事業用車両を5台以上配置する一般貨物自動車運送事業者のみとなるため注意が必要です。
レンタカーの使用を希望する事業者は、国土交通省に事前申請をおこなう必要があります。
(出典:貨物自動車運送事業者の引越シーズンにおけるレンタカー使用の取扱いについて|国土交通省)

引越し業に関する許可取得の手続きと条件
ここからは、引越し業を始めるための許可取得の要件や手続きの流れを紹介します。
一般貨物自動車運送事業許可を取得するための要件
引越し業を新たに営む場合、国土交通大臣または地方運輸局長から一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可を受ける必要があります。
しかし、申請をすれば誰でも許可がもらえるわけではありません。
以下の要件をすべて満たし、規定の申請書や必要書類を用意したうえで申請をおこなう必要があります。
| 一般貨物自動車運送事業許可を取得するための要件 | |
| 車両 | ・事業用車を5台以上確保している(確保予定でも可) ・申請者に使用権原があることを車検証などで証明できる ・輸送貨物(家具や家電)を運べる程度の大きさがあるか など |
| 営業所・休憩室 | 引越し業を営む場合、事業拠点となる営業所と休憩室を設けなければならない。使用できる建物には以下のような要件がある。 ・登記簿謄本や賃貸借契約書で使用権原を証明できる |
| 睡眠施設 | 睡眠施設は、ドライバーが仮眠を取らないと安全な運行を確保できない場合に限り設置が求められる。 ・市街化調整区域に該当しない(例外あり) |
| 車庫 | 引越し業を営む際は営業所や休憩室と併せて、車庫の設置も必須。ただし、使用できる土地には以下のような条件がある。 ・登記簿謄本や賃貸借契約書で使用権原を証明できる |
| ドライバー及び運行管理者・整備管理者の選任 | ・ドライバー(5名以上) ・運行管理者(試験合格または5年以上の実務経験+講習受講) ・整備管理者(自動車整備士3級以上または実務経験2年以上)運行管理者と整備管理者はそれぞれ選任が必要。 ただし、運行管理者は整備管理者と兼任可能。整備管理者はドライバーとも兼任可能だが、その場合は運行管理者との兼任は不可。 |
| 労働保険・社会保険への加入 | 法人役員や従業員を健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険(役員は除く)へ加入させる。 |
| 資金の確保 | 開業費用や当面の事業資金が確保できているかを証明しなければならない。確保する車両や施設によって費用は異なるが、おおよそ1,500〜2,500万円程度。 |
| 損害賠償能力 | 引越し業者は、運送中の事故やトラブルに備えて賠償責任保険や任意保険に加入する必要がある。 |
| 役員法令試験 | 法人の場合は役員のいずれか1名、個人事業主は本人が役員法令試験に合格する必要がある。 奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)に、営業所を管轄する地方運輸局で実施される。 |
それぞれの要件は以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
一般貨物自動車運送事業許可の手続きの流れ
一般貨物自動車運送事業許可の取得手続きは、営業所を管轄する地方運輸支局で実施されます。
以下は、許可取得までの一般的な手続きの流れです。
| 一般貨物自動車運送事業(運送業)許可取得までの流れ | |
| ①準備 | 一般貨物自動車運送事業を営むために必要な要件を確認し、車両や資格、施設、資金などを確保する。 |
| ②申請書の提出 | 準備が整ったら、営業所を管轄する運輸支局に必要な書類や申請書を提出する。 |
| ③役員法令試験の受験 | 法人の場合は役員のいずれか1名、個人事業主は本人が法令試験を受験する。 |
| ④役員や従業員の保険加入 | 法人役員や従業員を健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険に加入させる。従業員に時間外労働をさせる可能性がある場合は、36協定の締結も済ませておく。 |
| ⑤許可取得 | 審査に通過すると、一般貨物自動車運送事業の許可書が交付される。(標準処理期間4〜5ヵ月) 運送業許可書と併せて登録免許税の納付書(12万円)も手渡されるため、許可取得から1ヵ月以内に納付する。 |
その後、運行管理者・整備管理者選任届と運輸開始前確認を提出して車両を緑ナンバーへ変更したら、晴れて事業をスタートできます。
運輸開始後は、運輸開始届や運賃料金設定届の提出も忘れずにおこないましょう。
許可取得の流れについては以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。
貨物軽自動車運送事業・貨物利用運送事業でも可能
引越し業は、前述した一般貨物自動車運送事業で営むのが一般的ですが、貨物軽自動車運送事業や貨物利用運送事業でも可能です。
貨物軽自動車運送事業の場合は、所在地を管轄する運輸支局に事業の届出をする必要があります。
軽車両が1台あれば個人事業主でも開業でき、届出自体も比較的簡単なため、最短1日で事業を開始することも可能です。
一方の貨物利用運送事業の場合、国土交通大臣の登録または許可が必要です。
申請には定められた要件を満たす必要があり、許可取得までは3〜4ヵ月かかります。
車両を確保する必要がなく、開業資金も一般貨物自動車運送事業より少なくすむため、金融機関から十分な融資を受けられる運送業許可が取れない場合に適しています。
事業を始めるまでの難易度は一般貨物自動車運送事業より低いですが、その分利益やサービスの幅が制限されるため注意してください。
優良事業者の証「引越安心マーク」とは?
引越し業を専門におこなうなら、「引越安心マーク」の取得がおすすめです。
引越安心マークは、安心安全な引越しサービスを提供する事業者だけに交付される引越優良事業者の証です。
全日本トラック協会が平成26年より創設した制度で、引越しにおけるクレームやトラブルを防止し、消費者が安心して引越し業者を選択できる環境づくりに貢献しています。
なお、申請には一般貨物自動車運送事業者または貨物利用運送事業者(第一種・第二種)が必要です。貨物軽自動車運送事業者は申請対象外となるため注意してください。
申請期間や条件についての詳細は、全日本トラック協会のホームページで確認できます。
(出典:引越事業者優良認定制度(引越安心マーク)について|全日本トラック協会)

引越し業で注意すべきリスクと対策
ここからは、引越し業を開業する際に注意すべきリスクや対策案を紹介します。
臨機応変な対応が必要
引越し業は毎回現場が異なるため、道路状況や運ぶ荷物の量もその都度変化します。現場ごとに臨機応変に対応するためには、高い適応力と経験値が必要になるでしょう。
また、引越し作業中にはエアコンの取り付けを依頼される場合もあります。
電気工事士の資格や専門知識を持っていれば対応できるようになるため、他店との差別化も図れます。
もし、電気工事士の資格や専門知識を持っていなくても、エアコンの取付業者をパートナー企業として提携することで、請け負えますので検討する余地はあります。
引越請負業者の役割を知っておく
引越し作業中、利用者から不用品の廃棄を依頼される場合がありますが、基本的に引越し業者側で処理を請け負うのはNGです。
引越し時に発生した不用品は、産業廃棄物もしくは一般廃棄物に該当します。
利用者自身で廃棄する以外は、産業廃棄物処理業者や一般廃棄物処理業者、自治体に処理を委託しなければなりません。
そのため、利用者から不用品の処理を依頼された場合は、産業廃棄物処理業者や一般廃棄物処理業者を紹介する、もしくは利用者自身で廃棄してもらうようにしてください。
ルールに背いてまで処理を請け負うのはやめましょう。
(出典:引越時に発生する廃棄物の取扱いについて|環境省)
集客する方法を決めておく
開業後は多くの人にサービスを認知してもらうためにも、集客活動に注力しましょう。
引越し業者でよく利用される集客方法は以下の5つです。
- 見積りサイトに登録する
- チラシをポスティングする
- Web広告を活用する
- ホームページを作成する
- Googleビジネスプロフィールを設定する
また上記に加えて、見積もりを無料にしたり、ダンボールの費用を割引したりするなど、利用者が引越しを委託したいと思うようなサービスも集客に効果的です。
まとめ
引越し業を始めるには、さまざまな準備をおこなう必要があります。
とくに一般貨物自動車運送事業者として事業を営む場合、要件の確認に専門的な知識を要します。
その他にも、必要書類の収集や申請書の作成、法令試験対策なども並行しておこなわなければならないため、非常に多くの時間を費やすことになるでしょう。
行政書士法人シフトアップでは、引越し業の申請から開業まで、手続きの代行を承っています。運送業許可専門の行政書士事務所なので、書類作成から許可取得までスムーズな対応が可能です。
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