「貨物利用運送の事務所をここに設定するのは、用途変更の許可はいりませんが都市計画法に違反してないとは言い切れないんです。」
「そんなあいまいな答えで納得いきません!」
貨物利用運送の事務所使用の可否をめぐってこんなやりとりをしたのが4日間前。
貨物利用運送許可を取得したいと、ホームページをご覧頂き問合せを頂いた㈱H様の案件での出来事です。
㈱H様からは「貨物利用運送の許可を取りたくてインターネットで色々と調べて書類もある程度作成したけど、やっぱりよく解らないのでお願いします。」とご依頼を頂きました。
既に建設業を営んでいる㈱H様は、他の建築業者の建築資材等を運送業者に手配する業務を新たに行うため、貨物利用運送の許可を取得したいとのこと。
最近は、建設業をやっているという方からの利用運送許可取得の依頼が増えています。建設業界もコンプライアンスをしっかり守らないといけないという方が増えている証拠ですね。
やっぱり市街化調整区域でした
利用運送許可を取るための資金の要件である、純資産300万以上があることは貸借対照表を確認させていただき全く問題なしです。
事務所の方は・・・
心配していた通り「市街化調区域」でした。愛知県の一宮市は市街化調整区域が多いので、運送業、貨物利用運送業を問わず、お客様ご希望の場所が事務所使用できず困ることが多い地域です。
私は社長に市街化調整区域と呼ばれる場所は「既存宅地」でないと事務所使用できない旨伝えました。
「この事務所から5分の場所にある自宅が確か既存宅地だった。少し前に家を新築した時に、そんなことを建築事務所が言っていた。そこで申請できない?」
なるべく費用は抑えて新事業開始したいのは誰でも同じです。他に事務所を借りるコストを考えると賢明な選択と言えます。
早速調査開始!
翌日、当事務所で早速調査を始めました。
今回は社長のご自宅が既存宅地と呼ばれる土地に建築されていれば問題なく貨物利用運送の許可申請ができます。
法務局へ行って土地の登記簿謄本を取得。分筆の繰り返しが行われており、8部登記簿を取得してようやく昭和45年11月前から既存宅地であることが確認できました。
登記簿をもっていざ一宮市の建築指導課へ!
市役所の建築指導課担当者と30分以上のやり取りの末、出た答えが冒頭のセリフです。ほんとうに今回はてこずりました。
「用途変更の許可を取る必要はないが、都市計画法上問題ないとは言い切れない。」
で、結局どうすればいいの?
お堅い対応の市役所の担当者。久々にこういうお方と出逢いました。
貨物利用運送業、運送業、貸切バス事業も事務所の要件は同じです。トラックを持たず実運送をしない貨物利用運送とはいえ、市街化調整区域の事務所では基本的に申請ができません。
例外的に、都市計画法第34条等に定める条文に当てはまる場所であれば申請可能です。
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市街化調整区域と事務所の関係
市役所の担当が言ったことをまとめると・・・
自宅の改造もないし、建設業の事務所として使用するなら、何の届出も許可もいらない。しかし、運送業・利用運送業の申請では、事務所が都市計画法に抵触しない旨の宣誓書を提出する。
そうすると、都市計画法に抵触しないとは言い切れないので既存宅地の用途変更許可をしてもらう必要が出る。なぜなら、都市計画法第34条違反となるから。
わかったようなわからないような。
都市計画法34条は、市街化調整区域にどんな建築物なら立てられるかを定めた条文です。
建設業の事務所として使用するのは都市計画法に違反していても問題ないなら、貨物利用運送業に使用するのも問題ないんじゃないの?
市役所との交渉は、担当官レベルで言うことが変わるので、担当を変えてもらおうと思いました。しかしこの方、一宮市役所の建築指導課では一番キャリアが長いらしく、別の担当に変わっても結局この担当に意見を求めに行くから同じ。ですので、この発想は却下しました。
都市計画法に違反しないために許可を取る
確かに、今回の物件は都市計画法第34条には当てはまりません。それは納得しました。
そのうえで、トラックを持たない貨物利用運送の事務所として使用するだけで、新築するわけでもないし、既存の建物を改造するわけでもない。だから融通をきかせて欲しいと何度も交渉しました。
しかし、市役所の担当に「都市計画法違反しているからダメ」と切り捨てられました。
利用運送許可申請には「都市計画法に違反していません」という旨の宣誓書を提出しないといけません。ですから今のままでは申請は無理です。
そこで、苦肉の策として都市計画法に違反しないために「建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設許可申請」という長いタイトルの許可申請を市役所で取ることになりました。
建物の改造もしないのに、上記許可申請を取るのはレアケースだと市役所の職員に言われながらも申請書類作成をして無事許可申請は完了。
「建築物の~」の許可取得までには1ヶ月ほど。この間に法人の事業目的に「貨物利用運送業」を追加して、利用運送許可申請書類を作成。役所の許可がおりたらすぐに貨物利用運送の許可申請をする段取りにしました。
利用運送許可申請の完了
およそ1ヶ月後、市役所から「建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設許可」がおりました。
喜び勇んで、利用運送許可申請を運輸支局へ提出。3ヶ月後に利用運送の許可が出て、お客様は晴れて事業開始となりました。
まとめ
市街化調整区域に事務所を置くことも可能な事例でした。市街化調整区域だから絶対に事務所使用できないわけではありません。ですから、すぐにあきらめないでくださいね。
ただし、事前調査は綿密に行う必要があります。今回のように都市計画法上の許可を取得してからでないと事務所として使用できない場合もあります。
今回のお客様は、ご自身で利用運送許可の書類作成を試みましたが、最終的に当事務所にご依頼頂いため、ご自身の時間や経費の浪費をしなくて済みました。
仮にご自身ですべて行っていたら、運輸支局に利用運送許可申請をしてから、事務所使用できない場所だとわかり、その後3回、4回と市役所に足を運んで相談に行き、別の許可を取得して、ふたたび利用運送許可の申請をする。
といったことになっていたでしょう。
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