2024年5月に施行された下請法の改正は、運送業へ大きな影響を与えると言われています。
運送業界では、元請け企業が下請け企業に仕事を委託し、その下請け企業がさらに別の下請け企業へと仕事を依頼する「下請けの多重構造」が一般的になっています。
下請けの多重構造は、効率的な輸送業務をおこなったり、荷主を探す時間や手間を削減したりするために活用されることが多いですが、いくつかの問題点が伴っていることをご存知でしょうか?
本記事では、下請法改正が運送業に与える影響を解説します。
運送業界で一般的となっている下請けの多重構造の仕組みや問題点についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
運送業における下請けの仕組み
下請けとは、元請け企業が受注した仕事を、別の企業に委託することを言います。
仕事の委託を受けた企業(下請け企業)は、元請け企業から指示された内容に従って業務を遂行します。
トラック運送会社の99%以上は、中小企業が占めていると言われています。
運送業界では十分な人脈がなければ仕事を取ることが難しく、人脈の少ない中小企業や零細企業の中には、元請け企業から仕事をもらって売上を作っているところも多いです。
そのことから、運送業界では下請けの多重構造が一般的になっています。
下請けの多重構造とは、特定の仕事に対して、複数の層にわたって下請け業者が関与する仕組みを指します。元請け企業が下請け企業に仕事を委託し、その下請け企業がさらに別の下請け企業へと仕事を依頼することで、多重構造ができあがります。
【下請けの多重構造のイメージ】
荷主
⇓
元請け企業
⇓
下請け企業(1次請け)
⇓
下請け企業(2次請け)
この下請けの多重構造は、効率的な輸送業務をおこなったり、荷主を探す時間や手間を削減したりするために活用されることが多いですが、いくつかの問題点も伴います。
次の項目で詳しく見ていきましょう。
運送業で多重下請けが問題視される原因
運送業で下請けの多重構造が問題視される原因は、以下の3つです。
- 人手不足に陥りやすい
- 負担が集中しやすい
- 経営が不安定になりやすい
① 人手不足に陥りやすい
下請けピラミッドの末端にいる企業ほど、長時間労働や不規則な勤務状況など、過酷な労働環境にさらされており、収入も少ない傾向があります。
そのことから下請け企業では、離職率の増加や就職希望者の減少による人手不足に陥りやすくなります。
② 負担が集中しやすい
下請け企業には、労働時間の負担が集中しやすいです。
荷物を輸送する際には、荷積みや荷降ろしが完了するまでの間待機しなければならない「荷待ち時間」が発生します。
この荷待ち時間は、労働時間と見なさることが一般的ですが、一部の運送会社では「働いていないので休憩時間として扱う」というところも多く、荷待ち時間分の給料が支払われないケースがあります。
下請け企業は、元請け企業の代わりに輸送をおこなうため、このような理不尽な負担が集中しやすくなるのです。
③ 経営が不安定になりやすい
運送業界に限った話ではありませんが、下請け企業の業績が悪化して倒産した場合、多重構造のピラミッドが崩れる恐れがあります。
下請け企業の一つが倒産すると、その下に連なる下請け企業が、売掛金を回収できなくなります。下請けが何層にも連なっていた場合は、その下の全ての下請け企業に影響が及びます。
下請法とは?
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、下請け企業の保護を目的とした法律です。下請け企業に対する不当な取引条件の強要や、報酬支払いの遅延を防止するために制定されました。
公正取引委員会は2024年5月に、下請法の運用基準を改正することを発表しました。
これまで、荷主と運送事業者の取引は下請法の対象とされていませんでしたが、今回の法改正によって買いたたきなどの行為が制限され、運送事業者に対して妥当な対価を支払うような処置が施されました。
これにより、運送事業者がコスト上昇分を取引価格に転嫁しやすくなります。

下請法の改正で変わること
下請法の改正は、トラック運送業にどのような変化をもたらすのでしょうか。
- 管理簿の作成が義務付けられる
- 管理規定の作成義務が課される
- 荷待ち削減のための取り組みが実施される
順番に見ていきましょう。
① 管理簿の作成が義務化される
下請法改正によって、元請け企業は「実運送体制管理簿」の作成が義務化されます。
管理簿には、実際に運送をおこなう事業者名のほか、サービスや対価などの詳細を記載する必要があります。
なお、作成した管理簿は、1年間保管しなければならないため注意しましょう。
② 管理規定の作成義務が課される
下請法が改正されたことにより、一定規模以上の元請け企業に対し、下請けの多重構造を適正化するための管理規定の作成が義務付けられます。
加えて、下請け企業に仕事を委託する際は、責任者の選任も必要です。
③ 荷待ち削減のための取り組みが実施される
下請法が改正されたことで、大手荷主に対し、荷待ち時間の削減を目的とした具体的な計画の策定と、国への定期的な報告が義務付けられます。
計画の策定と定期報告への取り組みが不十分な場合は、国から是正勧告がおこなわれます。是正勧告に従わなかった場合は、社名の公表や是正命令が下されるため注意しましょう。
なお、是正命令にも従わなかった荷主には、最大で100万円の罰金が科せられます。
下請法の改正が運送業に与える影響
下請法改正により、元請け企業が下請け企業に仕事を委託する際に、公平性が増す効果が期待できます。
下請法が改正されるまで、荷主と運送事業者の取引は対象とされていませんでしたが、法が適用されることによって、下請け企業がどのくらいの運賃で何を運んでいるのかが可視化されます。
今までは、元請け企業が下請けの多重構造の実態を把握できてないケースもありましたが、法改正により運送業界全体の透明性が高まり、質の良い輸送を目指せるようになるでしょう。
まとめ
運送業界では、元請けが下請けに仕事を委託し、さらに別の下請けへと仕事を依頼する「下請けの多重構造」が一般的になっています。
下請けの多重構造は、効率的な輸送業務をおこなったり、荷主を探す時間や手間を削減したりするために活用されることが多いですが、人手不足に陥りやすい、負担が集中しやすい、経営が不安定になりやすいなどの問題点も抱えています。
下請法改正により、仕事を下請けする際に公平性が増す効果が期待でき、質の良い輸送を目指せるようになるでしょう。

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