トラック運送業の許可(一般貨物自動車運送事業許可)取得を検討されている方にとって、頭を悩ませることの一つが駐車場(車庫)選びです。
トラックを駐車できる物件の数が少ないうえに、やっと見つかった場所が駐車場(車庫)の要件に合わないケースも少なくありません。
そこで、トラック駐車場選びを失敗しないために、運送業許可申請における駐車場(車庫)の要件について、市街化調整区域との関係、トラックと車庫寸法の関係、車庫飛ばし、車庫を変更するときの手続なども含めて運送業許可のプロ事務所が解説いたします。
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運送業許可|駐車場(車庫)の要件とは
トラック運送業に使用する駐車場(車庫)は、交通安全上支障のない物件でなければなりません。そのため貨物自動車運送事業法などの関係諸法令や国交省の通達・告示で定められた細かな条件をクリアする必用があります。
下記でどのような要件が定められているのか、一緒に確認していきましょう。
- 適切な使用権限があることを証明できること。
- 都市計画法、農地法、建築基準法、道路法など関係諸法令に違反しない場所にあること。
- 屋根付き車庫の場合は、基本的に都市計画法で定められた「市街化調整区域」と呼ばれる場所でないこと。
- 営業所から直線距離でおおむね10㎞以内(地域によって20km以内、または5km以内)の場所にあること。
- 駐車場出入口が、基本的に交差点の角にないこと。
- 駐車場出入口が、道路の曲り角や横断歩道から5m以内にないこと。
- 駐車場出入口の前面道路の幅は、道路幅員証明書または道路法に定める車両制限令が取得できる幅があること(幅員証明書で対応する場合もあり)。
- 事業用トラックを停めたとき、車両と車両の間隔が50㎝以上確保できる広さがあること。
- 事業用トラックを停めたとき、車庫と車両の間に50㎝以上の隙間が確保できる広さがあること。
- 駐車場出入口は、路肩に乗り上げることなどなくトラックの出入りができる幅があること。
※駐車場出入口の場所に関しては、駐車場法施行令等で定められているため、公安委員会への確認が必要となります。
以下で具体的に見ていきましょう。
適切な使用権限があることの証明とは
適切な使用権限があることの証明は、以下のことを言います。
- 賃貸の場合は賃貸借契約書の契約期間が2年以上であること。2年未満の場合は、賃貸借契約書に期間満了後は「自動更新」の旨の記載があること
- 自己所有の場合は、土地登記事項証明書上の所有者が運送業許可の申請者名義であること。
注意
2019年11月の法改正により、賃貸借の契約期間が2年以上ないと適切な使用権原があるとみなされなくなりました。ただし、契約書の中に期間満了後は契約を「自動更新」する旨の記載があれば、2年未満でも問題ありません。
自動更新の記載がない場合は、「使用承諾書」に大家さんの印鑑をもらうことで対応します。
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都市計画法による市街化調整区域と市街化区域について
都市計画法7条では、日本の国土を市街化調整区域と市街化区域の2つに大きく分けて、各々以下のように定義しています。
- 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
- 2市街化調整区域は、市街化を抑制する区域とする
簡単に言いかえると、市街化調整区域は開発許可などがないと基本的に建物を建てられない地域、市街化区域は建物を建てて良い地域となります。したがって、市街化調整区域にある有蓋車庫は基本的に運送業に使用する車庫として登録することは出来ないということです。
このほか無指定地域も存在しますが、市街化区域にも市街化調整区域にも当たらないため、基本的には建築の抑制はされていません。したがって、無指定地域にある有蓋車庫を運送業に使用する車庫として登録することは基本的に可能です(地域により扱いが異なる場合があります)。
有蓋(ゆうがい)車庫とは?
有蓋(ゆうがい)車庫とは、倉庫内やテント内などの屋根付き車庫のことです。有蓋車庫は建物とみなされるため、都市計画法という法律の制限を受けます。そのため、都市計画法という法律で定める「市街化調整区域内」にある有蓋車庫は、基本的に運送業に使用する車庫にすることは出来ません。
有蓋車庫と建築基準法
有蓋車庫は建築物であるため、建築基準法の要件をクリアしなければいけません。建物を建築するときは、建築基準法の定めにもとづいて関係機関へ建築確認申請を行うことになっています。
しかし、倉庫やテントなど建築確認申請をしていない物件、つまり違法建築物が多数存在するのが事実です。もし、有蓋車庫をトラック運送業の車庫にしたい場合は、必ず専門の行政書士に調査してもらいましょう。
倉庫内など有蓋車庫として駐車場(車庫)使用できない場所のまとめ
市街化調整区域 | 基本的に有蓋車庫として使用できない |
第一種低層住居専用地域 | |
第二種低層住居専用地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | |
第二種中高層住居専用地域 |
駐車場の地目が農地=田畑の場合は農地転用が必用
都市計画法と並んで、駐車場選びでよく問題になる法律は農地法です。農地法は農地の保護や権利に関することを定めている法律です。土地登記簿謄本上の地目(ちもく)が「田」や「畑」と記載されていると農地に当たるため、農地転用の申請をして地目を「雑種地」などに変える必用があります。
都市計画法上の市街化区域にある農地は、比較的農地転用が簡単で許可ではなく届出だけで済む場合もあります。対して、市街化調整区域にある農地は、農地転用の許可が必要となり、地域によっては農地転用すらできないケースもあります。
農地のまま駐車場用地として賃貸している物件も少なくないため、契約前に必ず地目が田畑になっていないか確認するようにしましょう。
駐車場(車庫)と営業所の距離
運送業の駐車場(車庫)と営業所は減節されていることが原則ですが、別の場所にあっても問題ありません。ただし、駐車場と営業所が別々にある場合は、定められた距離内なければなりません。
地域により距離が異なるため下記でご確認ください。
地域別の駐車場(車庫)と営業所の距離まとめ
北海道 | 札幌市は直線距離で10km以内。それ以外の地域は直線距離で5km以内。 |
新潟県・長野県・富山県・石川県 | 新潟県、長野県は直線距離で5km以内。富山県、石川県は直線距離で10km以内。 |
青森県・秋田県・山形県・宮城県・福島県 | 青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県は直線距離で5km以内。 |
東京都・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・山梨県 | 東京特別区は直線距離で20km以内。それ以外の都内は直線距離で10km以内。 横浜市と川崎市は直線距離で20km以内。それ以外の神奈川県内は直線距離で10km以内。 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、山梨県は直線距離で10キロメートル以内。 |
愛知県・岐阜県・三重県・静岡県・福井県 | 愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県は直線距離で10キロメートル以内。 |
大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県 | 大阪市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の大阪府内は直線距離で5km以内。 京都市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の京都府内は直線距離で5km以内。 神戸市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の兵庫県内は直線距離で5km以内。 奈良市内は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の奈良県内は直線距離で5km以内。 大津市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の滋賀県内は直線距離で5km以内。 和歌山市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外の和歌山県内は直線距離で5km以内。 |
広島県・島根県・鳥取県・岡山県・山口県 | すべて直線距離で5km以内。 |
香川県・徳島県・愛媛県・高知県 | 香川県、徳島県、愛媛県、高知県は直線距離で5km以内。 |
福岡県・佐賀県・大分県・長崎県・熊本県 | 政令指定都市は直線距離で10キロメートル以内。それ以外は直線距離で5km以内。(福岡県、佐賀県、大分県、長崎県、熊本県。宮崎県、鹿児島県 共通) |
沖縄県 | 直線距離で5km以内。 |
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車両制限令・道路幅員証明について
駐車場の要件で述べた車両制限令は、運送業許可においては「車庫前面道路の道路幅員証明または車両制限令に抵触していない旨の証明」と呼ばれています。
駐車場出入口の前面道路が、運送業に使用する車両に対して適切な幅があることの証明と考えて頂ければわかりやすいと思います。
一般的に下記の場合は車両制限令に抵触しません。
相互通行・一方通行の別 | 車道幅員 |
相互通行の場合 | 2tクラスでおよそ5m以上必要 |
4t/大型車クラスであれば5.5m~6m以上必用 | |
一方通行の場合 | 2tクラスでおよそ2.5m以上必要 |
4t/大型車クラスで3.0m以上必要 |
道路を管轄する地方自治体が車両制限令を扱っていない場合は、幅員証明を取得します。幅員証明の場合の車両と車道幅員の関係は、車両制限令と同様です。
なお、駐車場出入口の前面道路が国道の場合、道路幅に規制がかかりませんので、車両制限令を取る必要はありません。
トラックの車庫飛ばしに関して
最近は少なくなった車庫飛ばし。結論を言うとこれは違法です。トラック運送会社でよくある車庫飛ばしは、「自動車NOX・PM法」に適合しない車両を事業用自動車として使うために、NOX・PM適用外の地域に車庫を借りて駐車するケースです。人口の少ない地域では、いまだによくあるのが現実です。
地方の運送会社へ監査・巡回指導対策などで伺うと、実は車庫飛ばししている車両があると打ち明けてくる社長さんもいらっしゃいました。
運輸局や警察への通報があれば、刑事罰の対象になるだけでなく、運輸局による監査の対象にもなるため絶対やってはいけません。
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トラックと駐車場(車庫)の寸法の関係
トラックなどの事業用自動車と駐車場の寸法の関係は下記を目安にしてください。
車両の大きさ | 駐車場の広さ |
---|---|
7.5tを超えるもの | 1台につき約38㎡以上 |
2tロング越えるもの~7.5tまで | 1台につき約28㎡以上 |
2tロング | 1台につき約20㎡以上 |
2tまで | 1台につき約15㎡以上 |
【具体例】4トン車が5台の場合、5台×28㎡=140㎡以上の大きさの駐車場が必用になります。
また、車両と車庫の間隔がしっかりと確保されていて、配置を計画しているすべてのトラックが収容できるスペースがあるかも併せてチェックしてください。
具体的には、車庫の壁や境界、隣の車両との間に50cm以上空きがあれば問題ないでしょう。
注意
2019年11月の法改正により車庫面積に対する要件が厳格になりました。運送業に使用するトラックすべてを駐車したときに、車両の占有割合が車庫の面積の90%を超える場合は、基本的に駐車場の要件をクリアできないことになります。
弊社シフトアップでは、駐車場はなるべく余裕を持った広さのものをお客様に確保頂いております。なぜなら、計算上はギリギリ全車両が収まる大きさでも、実際の運用でトラックを駐車するのに問題ないかと運輸局に疑問を持たれ、不適合と判断される可能性があるからです。
そのため、弊社では候補地の広さが十分でないと判断したら、運送業許可を確実に取るため、全車両を実際に駐車場候補地にとめて、出入りに問題ないかご依頼者様にご確認頂く場合がございますのでご了承ください。
駐車場(車庫)は出入口前面道路の幅員が重要
トラック運送業に使用する駐車場(車庫)を選ぶときにもっとも注意することは「出入口前の道路幅の広さ」です。
なぜなら、トラック駐車場は出入口前の道路幅が狭いケースが非常に多いからです。事実、弊社シフトアップへ運送業許可取得をご依頼頂いたお客様の中で、駐車場(車庫)候補地を別の場所に変えて頂くケースは、出入口前の道路幅が狭いことによるものが8割です。
駐車場(車庫)を選ぶときは、出入口前の道路幅に十分ご注意ください。くれぐれも、専門の行政書士に調査してもらう前に売買や賃貸借の契約を結ばないようにしましょう。
整備管理者と駐車場の関係
「大型自動車の使用者等は整備管理者を選任し、整備管理者に対し職務執行に必用な権限を当てなければならない」
と定められています。
道路運送車両法施行規則第32条では、整備管理者の職務には、「自動車車庫を管理すること」や「日常点検の実施結果に基づき、運行の可否を決めること」などが盛り込まれています。したがって、運送業に使用する駐車場(車庫)を管理するのは整備管理者となります。
整備管理者の職務の詳しい内容は下記のとおりです。
- 日常点検の実施方法を定めること
- 日常点検の実施結果に基づき、運行の可否を決めること
- 定期点検を実施すること
- 上記のほか随時必用な点検を実施すること
- 日常点検、定期点検または随時必用な点検の結果必用な整備を実施すること
- 定期点検および必用な整備の実施計画を定めること
- 点検整備記録簿その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること
- 自動車車庫を管理すること
- 上記に掲げる事項を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、または監督すること
ちなみに、トラック運送事業者は整備管理者を選任しないと行政処分の対象になってしまいます。必ず選任するようにしましょう。
駐車場(車庫)の共有
2つ以上のトラック運送事業者が同一の車庫を共有することは可能です。
つまり、他のトラック運送事業者が運輸局で車庫登録している場所の一部を、他のトラック運送事業者が使用できるということです。
この場合は、駐車場出入口などの共用部分はトラックを収容する面積から除外する必要があるのでご注意ください。
駐車場の変更や増設・移転は事業計画変更認可申請が必要
運送業許可を取得して運輸開始をしたあとに
- 登録車庫を無くして別の車庫に引っ越す
- 登録車庫だけでは車両が収まりきらなくなったので近隣に車庫を増設したい
これらのケースでは「事業計画変更認可申請」を営業所管轄の運輸支局へ提出し、認可を受けることが必要となります。
無認可車庫を使用していると行政処分の対象となるのでご注意ください。
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運送業の駐車場(車庫)に関するQ&A
弊社シフトアップへ運送業許可取得されたお客様からよく頂く質問を下記でご紹介します。
Q 車庫(駐車場)は市街化調整区域内の物件でも良いの?
車庫の要件の1.でご説明したとおり、屋根のない青空駐車場の場合は、都市計画法上の制限を受けません。ですから青空車庫を市街化調整区域内の物件を運送業に使用する車庫として登録することは可能です。
対して、屋根付きの有蓋車庫は、都市計画法の制限を受けるため基本的には市街化調整区域内の物件を使用することはできません。
もちろん、一部の例外を除いて市街化調整区域内の駐車場に事務所・休憩室を置くこともできません。
Q 市街化調整区域にすでに建っている倉庫などを運送業の駐車場にできないの?
これは、ケースバイケースですが、駐車場にできないケースの方が多いです。すでに建っている建物なのになぜいけないのかと思うかもしれませんね。市街化調整区域内の建築物は、主に以下の4つの理由で建てられたと考えられます。
- 既存宅地と呼ばれ、都市計画法が施行される昭和43年6月(地域により施工日が違います)より前は建物を建てて良い場所だった。
- 都市計画法が施行される前から建物が建っていた。
- 開発許可を受けて建築された。
- 違法に建築された。
上記1~4でお客様が運送業に使用できる可能性が高いのは1の既存宅地に建っている建物です。ただし、建物を建てたときの使用目的がどうなっているか等が問題になるため、駐車場の要件をクリアできるかは調査が必用となります。
Q すべての車両を一つの駐車場に停める必要はあるの?
運送業許可を取得するためには、最低5台のトラックを必要とします。ただし、5台すべての車両を停められる駐車場が見つからないケースもあります。その時は、駐車場を2か所以上に分けても構いません。
しかし、営業所から直線距離で10㎞以内(地域により20km以内、関東圏の一部は5km以内)の場所でなければならないのは変わりませんので注意してください。
Q 駐車場内には建屋が必用と聞いたことがあるけど本当?
駐車場内に建屋は不要です。かつて、トラック運送業が免許制だったころは、そのような規定がありました。しかし、規制緩和により許可制となった今はなくなった規定です。
Q 以前に運送会社が使用していた駐車場は要件を満たしているよね
残念ながら、以前に運送会社が使用していた駐車場であっても、運送業許可申請における駐車場(車庫)の要件を満たしているとは限りません。
なぜなら、要件に合致していない物件を運輸局に登録しないままトラック駐車場として使用しているケースがあるからです。以前に運送会社が使用していた物件だからと言って、すぐに契約を決めないで、運送業専門の行政書士法人へ現地調査を依頼するようにしましょう。
まとめ
運送業許可において、事務所選びに並んで最も慎重になるべき駐車場(車庫)の要件の解説でした。要件をクリアした物件を確保しないと、賃料などの経費がムダになる、次の候補地を探すのに時間がかかる、許可取得までの期間が延びるという事態になりかねません。
候補地が見つかったら、必ず運送業専門の行政書士へ要件に適合するかどうかご相談することをオススメします。
弊社シフトアップであれば、運送業許可のプロ事務所として豊富な取扱い事例をもとに、最短1日でお客様のお選びになった物件が、駐車場として使用できるかどうかの判断が可能です。お悩みになる前に運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」へお気軽にご相談ください。
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