コラム 運送業

流通業務総合効率化法と貨物自動車運送事業法がよくわかる記事

【令和6年5月交付】流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正を解説
行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

12年間の運送会社勤務経験を持ち、累計相談数は10,000件以上。運行管理者・配車・総務経理など運送事業の現場を知り尽くした圧倒的な業務ノウハウを基に運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許認可をメインに日本全国対応で力強くサポート。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

令和6年5月に、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律および貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が公布されました。流通業務総合効率化法という長い名前の法律を聞いたとき、多くの物流担当者が結局、これは何のための法律で、自分たちの仕事にどう関係するんだろう?と首をかしげるのではないでしょうか。

この法律、正式には流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律というのですが、その目的はまさに今、日本の物流業界が直面しているドライバー不足(2024年問題)CO2排出削減といった深刻な課題を、国が音頭を取って解決していくための道具を提供することにあります。

流通業務総合効率化法は物流のコスト削減と環境負荷低減を目指し、荷主と物流事業者の連携を国が支援するための法律です。この法律が本当に画期的なのは荷物を送る側(荷主)と荷物を運ぶ側(物流事業者)が手を取り合い、共同で効率化計画を立てることを強く奨励し、その努力に対して税金や融資の面で優遇措置を与える点です。

つまり単なる努力目標ではなく、この法律をうまく活用すれば、あなたの会社もコストを下げながら、時代に合った物流体制を築けますよという具体的な道筋を示してくれているのです。

この記事では、この複雑に見える法律の全体像を、物流に詳しくない方でも確実に理解できるように、具体例を交えながらロジカルに解説していきます。

流通業務総合効率化法とは

流通業務総合効率化法は、日本の物流システムが抱える構造的な非効率性を解消し、経済の活性化と環境負荷の低減を同時に実現するために制定されました。この法律が要するに提供しているのは、輸送・保管・荷役・流通加工といった一連の流通業務を、個別の事業者ではなく、サプライチェーン全体で連携・改善していくための公的な枠組みです。

特にこの法律は、複数の事業者が共同で効率化の計画を立て、国の認定を受けることに大きな焦点を当てています。これにより、単独では実現が難しかった大規模な設備投資や、事業者間の垣根を超えた協力体制が、国の支援の下で可能になるのです。

法律の正式名称と施行時期

この法律の正式名称は流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律です。名前が長すぎるため、通称として物流総合効率化法または短く物流効率化法と呼ばれることが一般的です。

この法律は平成17年(2005年)に制定されましたが、その後の物流環境、特にeコマースの拡大や環境規制の強化に対応するため、令和元年(2019年)に大規模な改正が行われています。したがって、実務でこの法律を活用する際は、最新の令和元年改正の内容、とりわけ特定荷主の規定や、共同輸送・モーダルシフトを促進する支援策を正しく理解することが極めて重要となります。

物流の多重構造化と環境問題の深刻化

この法律が制定された背景には、当時の日本の物流が抱えていた深刻な課題があります。

  1. 一つは多重構造化です。荷主、元請け、下請け…と階層が重なり、情報共有がスムーズに行われず、トラックの積載率が低いまま運行されるなど、非効率な状態が常態化していました。
  2. もう一つは環境問題です。トラック輸送は便利な反面、大量のCO2を排出するため、地球温暖化対策の観点から、輸送効率の改善や環境負荷の低い鉄道・船舶輸送(モーダルシフト)への転換が急務でした。

この法律はこれらの課題を一挙に解決するための、いわば国家戦略としての物流改革の設計図なのです。

特定荷主への規制強化と支援策

令和元年改正で特に注目すべきは特定荷主に関する規定の強化です。特定荷主とは一定規模以上の大量の貨物を継続的に運送する事業者を指します。以前は、荷主側が運送は運送会社の問題と捉えがちでしたが、この改正では、その大量の荷物を発生させている特定荷主に対しても、物流事業者と連携して効率化を推進する努力義務が課せられました。

もし特定荷主が著しく非効率な物流を続けている場合、国から指導や助言を受ける可能性があります。これは特定荷主にも物流の社会的責任を担ってもらい、全体最適を目指すという、国の強い意志の表れであると理解すべきです。

法律が目指す総合効率化と重要性

この法律でいう総合効率化とは特定の工程だけを改善する局所的な効率化とは一線を画します。目指すのは輸送、保管、荷役(荷物の積み下ろし)、流通加工(商品の小分けやラベル貼りなど)といった、すべての流通業務を一体的に捉え、全体として最適化を図ることです。

たとえば、従来の輸送だけを改善しても荷役作業が非効率であればボトルネックは解消しません。この法律の枠組みを活用し、荷主と運送会社、倉庫会社が協力してどこにボトルネックがあるのかを見つけ出し、全体でムダをなくしていくことが、コスト削減とドライバーの負担軽減という二重のメリットを生み出すために非常に重要となるのです。

貨物自動車運送事業法との関係

流通業務総合効率化法は、しばしば貨物自動車運送事業法(貨物運送事業法)と混同されがちですが、両者は全く異なる役割を持っています。

  • 貨物運送事業法は個別の運送事業の安全と適正を規制する法律です。(事業許可の基準などを定める)
  • 一方、流通業務総合効率化法は、複数の事業者が連携して効率化を達成するための支援と枠組みを提供する法律です。

つまり、効率化法は、貨物運送事業法の持つ厳しい規制の一部を認定を受けた計画に限り特例として緩和したり、手続きを簡素化したりするための根拠法としての役割を果たします。
連携による効率化を、既存の規制が邪魔しないように調整する、いわば調整役のような位置づけだと考えると分かりやすいでしょう。

参考記事:3PLとは?物流との関係や特徴、倉庫業との違いについて解説

流通業務総合効率化法の核となる計画認定制度

流通業務総合効率化法を実務で活用する上で、最も重要なキーワードが流通業務総合効率化計画の認定制度です。

この制度は、物流事業者や荷主などが作成した、物流効率化のための具体的な計画を、国土交通大臣と経済産業大臣が審査し、これは本当に効果がありそうだと認める仕組みです。
認定を受けることで国がその計画のお墨付きを与えたことになり、計画実行に必要な税制優遇や金融支援、さらには規制の特例といった具体的な後押しが受けられるようになります。
単に努力するだけでなく、国の支援を受けて一気に効率化を進めるためのパスポートだと理解してください。

認定計画の3つのタイプ

効率化計画として国が認定するタイプは、大きく分けて以下の3つに分類できます。

  1. 共同化・集約化:複数の荷主や運送会社が協力し、共同で輸送ルートを構築したり、共同で倉庫を利用したりして、ムダを省く方法です。
  2. 輸送方法の転換(モーダルシフト):トラック輸送を、CO2排出量が少ない鉄道や船舶輸送に切り替えることを指します。
  3. IT活用・自動化:AIを活用した最適な配車システムの導入や、倉庫でのマテハン機器(自動搬送車など)を導入して、作業効率を抜本的に改善する計画です。

これらのうち、特に中小企業にとっては、共同化による連携が、最も実現性が高く、効果も出やすい戦略と言えるでしょう。

税制・金融・規制の優遇措置

認定計画の最大の魅力は、国から提供される具体的な優遇措置です。

  • 税制面:認定計画に基づき取得した物流施設や特定の機器(自動倉庫、マテハン機器など)に対し、特別償却税額控除が適用されます。これにより、設備投資の初期負担を実質的に軽減できます。
  • 金融面:日本政策金融公庫などによる低利融資を利用しやすくなり、資金調達のハードルが下がります。
  • 規制面:貨物運送事業法に基づく事業計画変更の手続きが簡素化されるなど、行政的な手間も軽減されるメリットがあります。

特定荷主と事業者連携

流通業務総合効率化法の計画認定は特定荷主と物流事業者がWin-Winの関係を築くための非常に強力なツールとなります。前述の通り、特定荷主には効率化の努力義務がありますが、ただ義務を果たすだけでなく、この認定制度を活用することで、税制優遇という具体的なリターンを得ることができます。

一方、物流事業者は特定荷主との長期的な業務提携を通じて、安定的な仕事量と共同輸送による車両稼働率の向上というメリットを享受できます。この法律は一方的な協力ではなく、相互の利益(インセンティブ)に基づいた戦略的な連携にある、ということを理解しておくべきでしょう。

企業が流通業務総合効率化法を実務で活用する戦略

流通業務総合効率化法を単なる行政手続きで終わらせてはいけません。これは激化する競争環境の中で、企業が物流コストを削減し、同時に企業の社会的責任(CSR/ESG)を果たすための、極めて実践的な戦略ツールとして活用すべきです。

特に日本の物流業界が直面している2024年問題という避けられない課題に対応するための、最も有効な手段の一つとして、この法律の活用を考えるべきです。

共同輸配送による2024年問題への対応

ドライバーの時間外労働規制が厳格化される2024年問題は運送会社にとって運べる荷物が減るという、死活問題に直結します。この問題を乗り切る最も現実的な解決策が、共同輸配送です。

今まで、A社とB社の荷物をそれぞれ別のトラックが運んでいたものを、流通業務総合効率化法の認定計画のもと、一つのトラックでまとめて運ぶ仕組みを構築するのです。この共同化に必要な拠点整備やITシステム導入には、前述の税制優遇や融資支援が受けられます。

これにより走行距離と車両台数を削減し、ドライバーの労働時間を法定基準内に収めることができるようになり、持続可能な事業運営が可能となるわけです。

参考記事:物流・配送・運送業界に迫る"2025年問題"とは?人手不足にどう立ち向かうか

環境問題への意識の高まりは、もはや企業の努力目標ではなく、顧客や投資家からの厳しい評価基準となっています。そこで有効なのが、モーダルシフトの推進です。これは長距離輸送をCO2排出量の多いトラックから、鉄道や船舶などの環境負荷の低い輸送手段に切り替えることです。

認定計画ではこのモーダルシフトに必要な積み替え拠点(ターミナル)の整備や鉄道コンテナの購入といった大規模な設備投資に対しても支援が適用されます。この取り組みは環境対策(ESG)としての評価を高めるだけでなく、トラックドライバーの長距離・長時間労働を削減することにもつながる、一石二鳥の戦略と言えるでしょう。

よくある質問

流通業務総合効率化法と物流効率化法は同じ法律ですか。

はい、実質的に同じ法律を指します。

法律の正式名称は流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律ですが、その目的が物流全般の効率化にあることから、業界内では物流総合効率化法や単に物流効率化法という通称で呼ばれています。これは、複雑な法令名よりも、法律の役割を端的に示す通称が広く浸透したためです。

特定荷主として指定されるとどのような義務がありますか。

特定荷主は国から直接的な義務を課せられるわけではなく、努力義務が中心となります。

法律の趣旨に基づき、自社の物流を効率化するための計画を策定し、物流事業者との連携を図ることが求められています。たとえば、輸送ロット(一回に運ぶ荷物の量)の見直しや納品時間の平準化など、物流事業者がムダなく効率的に運送できる環境を整える努力が期待されています。

この努力を怠り、物流が著しく非効率な状態にあると判断された場合、国や地方公共団体からの指導・助言の対象となる可能性があります。

認定を受けた場合の税制優遇は具体的にどのようなものですか。

認定を受けた計画に基づき取得した特定の設備(物流施設やマテハン機器など)に対して、税制優遇措置が適用されます。具体的には、特別償却(取得価額の一定割合を通常の減価償却とは別に償却できる)や、税額控除(法人税・所得税から税額の一部を控除できる)といった措置が設けられています。

これにより設備投資の初年度の税負担が軽減され、企業のキャッシュフローを改善し、投資回収を早める効果があります。詳細は取得する設備や時期によって異なるため、経済産業省や国土交通省の最新情報、あるいは税理士に確認することが必要です。

計画認定の申請は、中小企業でもメリットがありますか。

はい、中小企業にこそ大きなメリットがあります

中小企業単独では、共同輸送のための大規模なITシステム導入やモーダルシフトに必要な物流施設の整備といった投資が資金的に難しいケースが多いです。しかし認定を受けることで、日本政策金融公庫などからの低利融資や、補助金・助成金の採択において優遇を受けやすくなります。

さらに、大企業である特定荷主と連携し、共同化計画を通じて安定的な取引関係や、スケールメリットによる効率化を享受できる可能性があります。

まとめ

流通業務総合効率化法は日本の物流が抱える人手不足、環境負荷、非効率な多重構造といった構造的な課題を解決するための、国家的な支援の枠組みです。

この法律の核となる計画認定制度を積極的に活用することで、企業は税制優遇、金融支援、規制緩和といった具体的なメリットを享受しながら、2024年問題への対応やモーダルシフトといった時代の要請に応えることができます。

この法律は規制ではなく事業成長の大きなチャンスです。物流事業者の方はぜひ特定荷主と連携し、共同輸配送などの具体的な効率化計画を策定し、国の支援を最大限活用して、持続可能な経営基盤を確立する次の一手としてご活用ください。

運送業許可、巡回指導・監査対策、利用運送業許可、倉庫業許可など物流全般の許認可に関するお悩みは当社シフトアップへご相談ください。

参考サイト

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