- 許可:都市型ハイヤーの開業には一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可が必要。流し営業・駅待ち・客引きは不可。原則として2時間以上の運送契約または一日を超える期間の専属契約に基づく営業です。
- 最低車両数:関東運輸局管内では営業区域によって5両または10両以上の最低車両数があり、1台から開業できる制度ではありません。特別区・武三交通圏や京浜交通圏は10両以上が必要です。
- 期間:関東運輸局の標準処理期間は3か月。ただし書類補正期間は含まれず、申請前の準備・許可後の手続きを含めると開業まではさらに時間が必要です。
- 自己資金:所要資金総額の50%以上かつ事業開始当初に必要となる資金の100%以上の自己資金確保が必要。登録免許税は3万円です。
訪日外国人旅行者の増加などを背景に、関東運輸局管内では、訪日客の送迎を目的とした都市型ハイヤー事業者が増えています。
しかし、都市型ハイヤーは高級車を購入して予約制で送迎すれば自由に始められる事業ではありません。有償で旅客を自動車に乗せて運送するため、道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可を取得し、営業所・車庫・最低車両数・運転者・運行管理体制・資金などの要件を満たす必要があります。
さらに都市型ハイヤーには、一般のタクシーとは異なる営業上のルールがあります。流し営業や駅待ちはできず、原則として一日を超える期間を単位として専属で常時運送を提供できることとする書面による契約、または2時間以上の時間を単位として締結される運送契約によって運送する必要があります。
この記事では、都市型ハイヤーとは何かという基礎知識から、許可取得に必要な要件、第二種運転免許、最低車両数、開業資金、申請から営業開始までの流れまで詳しく解説します。
※本記事では主に関東運輸局の2026年8月時点の審査基準・公示・講習資料をもとに解説しています。営業区域や最低車両数、運賃などの細部は地域によって異なる場合があるため、実際に申請する際は営業所所在地を管轄する地方運輸局・運輸支局の最新基準を確認してください。
都市型ハイヤーとは?
都市型ハイヤーは、一般的なタクシーと同じ「一般乗用旅客自動車運送事業」に位置づけられる旅客運送サービスです。ただし、道路上で利用者を探す流し営業をするのではなく、営業所であらかじめ運送を引き受け、一定時間以上の契約などに基づいて旅客を運送する点に大きな特徴があります。
都市型ハイヤーの法律上の位置づけ
道路運送法では、他人の需要に応じ、有償で自動車を使用して旅客を運送する事業について、一定の場合を除いて旅客自動車運送事業の許可が必要とされています。都市型ハイヤーは、一般乗用旅客自動車運送事業のうち「ハイヤー」として運営される事業です。
なお、「都市型ハイヤー」という名称の独立した別種類の許可が存在するわけではありません。一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得したうえで、ハイヤーのうち都市型として定められた営業方法によって運営します。
関東運輸局では、ハイヤーについて「運送の引受けが営業所のみにおいて行われるもの」と整理しています。さらに、そのうち都市型ハイヤーについては、主に次のような契約によって運送を行うものとされています。
- 一日を超える期間を単位として、専属で常時運送を提供できることとする書面による契約
- 2時間以上の時間を単位として締結される運送契約
つまり、「予約を受けて高級車で送迎する」というだけで都市型ハイヤーになるわけではありません。道路運送法上の一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得したうえで、都市型ハイヤーとして認められる営業方法を守る必要があります。
都市型ハイヤーの営業ルール|2時間以上の契約・流し営業禁止
都市型ハイヤーを開業する際に特に理解しておきたいのが、タクシーとの営業方法の違いです。関東運輸局が2026年3月に実施した都市型ハイヤー事業者向け講習では、次のような営業上の注意点が示されています。
- 流し営業を行わない
- 駅待ちなどによる営業を行わない
- 空港などで利用者への客引きを行わない
- 2時間未満となる運送契約を行わない
- 発地・着地の双方が営業区域外となる旅客運送を行わない(法令上の例外を除く)
- 運送の引受けを営業所で行う
特に注意したいのが、2時間以上で契約したハイヤーを実質的に短時間サービスとして販売する「切り売り」です。例えば、ハイヤー事業者と旅行会社などが2時間以上の契約を締結していても、配車アプリなどを介して一般利用者に30分や1時間単位の送迎サービスとして販売するような運用は認められません。契約書上だけ2時間以上にしておけばよいということではなく、実際のサービス内容についても都市型ハイヤーの営業ルールを満たす必要があります。
タクシー・ハイヤー・個人タクシーとの違い
| 比較項目 | 都市型ハイヤー | 一般タクシー | 1人1車制個人タクシー |
|---|---|---|---|
| 事業区分 | 一般乗用旅客自動車運送事業 | 一般乗用旅客自動車運送事業 | 一般乗用旅客自動車運送事業 |
| 主な営業方法 | 営業所で事前に運送を引き受けて運行 | 流し・乗り場・配車など | 流し・乗り場・配車など |
| 流し営業 | 不可 | 可能 | 可能 |
| 主な契約条件 | 一日超の専属契約または2時間以上の運送契約など | 都市型ハイヤーの契約時間要件は適用されない | 都市型ハイヤーの契約時間要件は適用されない |
| 車両数 | 営業区域ごとの最低車両数を満たす必要がある | 営業区域ごとの最低車両数を満たす必要がある | 1人1台 |
都市型ハイヤーと個人タクシーは、同じ一般乗用旅客自動車運送事業であっても別の制度です。「自分1人で高級車1台を購入して都市型ハイヤーを始める」という形が、そのまま1人1車制個人タクシーとして認められるわけではありません。
白タク・日本版ライドシェアとの違い
道路運送法上の許可や自家用車活用事業などの法的根拠なく、自家用車を使用して他人を有償で運送する行為は、原則として禁止されています。一般に、このような無許可の有償旅客運送は「白タク」と呼ばれます。都市型ハイヤーは、道路運送法に基づいて一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得し、事業用自動車として登録した車両で営業する点が大きく異なります。
また、2024年に開始された「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)」とも制度が異なります。日本版ライドシェアは、タクシーが不足する地域・時期・時間帯において、タクシー事業者の管理のもとで地域の自家用車や一般ドライバーを活用する仕組みです。都市型ハイヤーの許可を取得する制度とは別の制度であるため、混同しないよう注意しましょう。
都市型ハイヤーを開業するには一般乗用旅客自動車運送事業の許可が必要
都市型ハイヤーを事業として開業する場合は、道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可を取得する必要があります。
許可の根拠となる道路運送法
道路運送法第4条では、一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者について、国土交通大臣の許可を受けることを定めています。許可審査では、単に車両と第二種免許を持っているかだけではなく、次のような事項が総合的に確認されます。
- 営業区域・営業所・車庫・休憩仮眠施設
- 最低車両数・運転者
- 運行管理・整備管理体制
- 資金計画・法令遵守・損害賠償能力
営業区域と申請先
都市型ハイヤーには営業区域があります。関東運輸局の許可基準では、申請する営業区域内に営業所を設置することが必要です。また、道路運送法では、原則として旅客の出発地と到着地の双方が営業区域外となる運送は禁止されています。そのため、「許可を取れば日本全国どこでも自由に予約を受けられる」という制度ではありません。
関東運輸局管内で新規許可を申請する場合、申請書は原則として営業所所在地を管轄する運輸支局へ提出し、関東運輸局で審査されます。
個人・法人で申請する場合の違い
一般乗用旅客自動車運送事業については、法人格そのものが絶対的な申請条件というわけではなく、関東運輸局の申請手引きにも個人申請を想定した資金計画の様式があります。ただし、ここでいう個人申請と「1人1車制個人タクシー」は別です。
都市型ハイヤーとして事業を行う場合は、法人・個人を問わず、営業区域ごとの最低車両数や営業所、車庫、管理体制など、通常の一般乗用旅客自動車運送事業に関する許可要件を満たさなければなりません。また、法人の場合は、役員のうち1名以上が事業に専従することなども関東運輸局の審査基準で求められています。
都市型ハイヤーの許可取得に必要な要件
都市型ハイヤーの許可では、多くの要件を事前に満たす必要があります。特に営業所・車庫・車両については、先に契約や購入をしてから許可要件を満たさないことが判明すると、大きな損失につながる可能性があります。
営業所の要件
営業所は、事業用自動車の運行管理や利用者への営業上の対応を行う拠点です。関東運輸局の現行審査基準では、主に次の条件が示されています。
- 営業区域内にあること
- 土地・建物について1年以上の使用権原を有すること
- 建築基準法・都市計画法・消防法・農地法などに抵触しないこと
- 事業計画を遂行するために必要な規模があること
自宅や既存事務所を営業所にする場合であっても、用途地域や建物の利用条件、賃貸借契約の内容などを事前に確認する必要があります。
車庫の要件
事業用車両を保管する車庫も許可審査の対象です。関東運輸局では、車庫は原則として営業所に併設することとされています。併設できない場合は、遠隔点呼を行う車庫など一定の例外を除き、原則として営業所から直線2km以内にあり、十分な運行管理を行えることが求められます。また、次のような要件も確認されます。
- 配置する事業用自動車をすべて収容できること
- 原則として他用途の部分と明確に区画されていること
- 土地・建物について1年以上の使用権原があること
- 点検・清掃・調整を行える広さがあること
- 車両の出入りに支障がないこと・前面道路が車両制限令に抵触しないこと
休憩・仮眠施設の要件
運転者が休憩、仮眠または睡眠を取るための施設も必要です。関東運輸局の審査基準では、次のような事項が求められています。
- 事業計画を遂行できる適切な規模・設備があること
- 他用途の部分と明確に区画されていること
- 運転者が必要なときに使用できること
- 土地・建物について1年以上の使用権原があること
- 建築基準法・都市計画法等に抵触しないこと
車両・最低車両数の要件
都市型ハイヤーは、1台だけ車両を準備すれば新規開業できる制度ではありません。関東運輸局では、営業区域ごとに最低車両数が定められています。例えば、2026年2月17日改正の審査基準では、次のような最低車両数が示されています。
| 営業区域の例 | 最低車両数 |
|---|---|
| 特別区・武三交通圏 | 10両以上 |
| 京浜交通圏 | 10両以上 |
| 京葉交通圏 | 10両以上 |
| 東葛交通圏 | 5両以上 |
| 千葉交通圏 | 10両以上 |
| 北総交通圏 | 5両以上 |
| 埼玉県南中央交通圏 | 10両以上 |
最低車両数は営業区域によって異なります。また、複数の営業所を設置する場合、一定の場合を除いて各営業所にも原則5両以上を配置する必要があります。車両については購入車両だけでなく、適切な使用権原を確保したリース車両を利用することもできます。
運転者と第二種運転免許の要件
都市型ハイヤーの運転者には、使用する車両に対応する第二種運転免許が必要です。普通乗用車を使用する場合は、一般的には普通自動車第二種免許が必要となります。
第二種免許の通常の受験資格は、21歳以上かつ普通免許等を受けていた期間が通算3年以上です。ただし、所定の受験資格特例教習を修了した場合には、19歳以上かつ普通免許等の保有期間が通算1年以上で第二種免許試験を受験できる特例があります。
運行管理・整備管理体制の要件
都市型ハイヤーでは、ドライバーだけ確保すればよいわけではありません。営業所ごとに、配置する車両数に応じて必要となる有資格の運行管理者を確保する計画が必要です。また、次のような運行管理体制の整備が必要です。
- 指揮命令系統・点呼体制
- 事故防止の教育・指導
- 事故発生時の連絡体制
- 運転者への指導監督・苦情処理体制
整備管理についても体制整備が求められ、関東運輸局の審査基準では、事業用車両が5両以上の場合、原則として常勤の有資格整備管理者を選任する計画が必要とされています。都市型ハイヤーを行う主要営業区域では最低車両数自体が5両または10両となるため、運行管理者や整備管理者を含めた人員計画を開業前から検討する必要があります。
資金計画・自己資金の要件
都市型ハイヤーの許可申請では、事業開始に必要な費用を算定した「所要資金」と、その資金を実際に調達できるかが審査されます。関東運輸局の現行基準では、主に次の費用を所要資金として計算します。
- 車両費:取得価格またはリースの場合は1年分の賃借料等
- 土地費・建物費:取得価格または1年分の賃借料等
- 機械器具・什器備品費
- 人件費・燃料油脂費・修繕費等の2か月分
- 保険料・租税公課の1年分
- その他の創業費等
さらに関東運輸局では、所要資金の50%以上、かつ事業開始当初に必要となる資金の100%以上の自己資金を確保することが求められています。自己資金は申請した瞬間だけあればよいものではなく、申請日以降も基準を満たす状態で確保する必要があります。
法令遵守の要件
一般乗用旅客自動車運送事業では、申請者に事業を適法に経営する能力があることも審査されます。法人の場合、業務を執行する常勤役員が一般乗用旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有することなどが求められています。また、社会保険等への加入義務がある場合は、健康保険・厚生年金・雇用保険等へ適切に加入する必要があります。過去の重大な行政処分、重大事故、悪質な道路交通法違反などについても審査項目となります。
損害賠償能力・任意保険の要件
旅客を有償で運送する事業である以上、事故によって旅客や第三者に損害を与えた場合に備える必要があります。一般乗用旅客自動車運送事業の許可では、国土交通省告示で定める基準に適合する任意保険または共済に、計画する事業用車両のすべてが加入する計画であることが求められます。保険料は車種、車両台数、補償内容、運転者などによって異なるため、車両購入費だけでなく事業用保険の見積額も資金計画に含めておきましょう。
都市型ハイヤーの開業までの流れ
都市型ハイヤーは、事業計画を決めてから許可を取得し、車両登録や運賃手続きなどを経て営業を開始します。
①営業区域と事業計画を決める
まず、どの地域を営業区域として都市型ハイヤーを運営するのか決めます。営業区域によって最低車両数や運賃の取扱いなどが異なるため、この段階で管轄する運輸支局の最新基準を確認することが重要です。
②営業所・車庫・休憩施設を確保する
次に、営業区域内に営業所を確保し、車庫や休憩・仮眠施設を準備します。物件を正式契約する前に、使用権原、用途地域、建築基準法、都市計画法、消防法、車庫の前面道路などを確認しましょう。
③車両を準備する
営業区域ごとに定められた最低車両数以上の車両を確保します。購入だけでなくリースを利用することも可能ですが、申請者が適切な使用権原を有している必要があります。都市型ハイヤーだからといって法律上必ず特定の高級車ブランドを使用しなければならないわけではありません。ただし、提供するサービス内容、運賃区分、乗車定員などを考慮して車両を選定する必要があります。
④運転者・運行管理体制を整える
第二種運転免許を持つ運転者を必要人数確保し、運行管理者や整備管理者など必要な管理体制を整えます。許可取得後に人材を探し始めるのではなく、申請段階から現実的な採用・配置計画を作成する必要があります。
⑤一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可を申請する
要件を満たす事業計画が整ったら、一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可申請書を作成します。関東運輸局管内では、原則として営業所所在地を管轄する運輸支局へ申請します。申請書には、営業区域、営業所、車庫、車両、運転者、管理体制、資金計画などに関する書類を添付します。
⑥法令試験を受験する
一般乗用旅客自動車運送事業の新規許可申請では、申請後に法令試験が行われます。道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則など、事業運営に必要となる法令知識が確認されるため、申請前から準備しておくことが重要です。試験の受験者、日程、合格基準などの具体的な取扱いは、申請する地方運輸局の最新公示を確認してください。
⑦運賃・料金の認可申請を行う
都市型ハイヤーでは、経営許可とは別に運賃・料金についても道路運送法に基づく認可が必要です。新規許可申請の際には、運賃・料金についても必要な認可申請を進めます。地域ごとに自動認可運賃が公示されている場合があり、その範囲内で運賃を設定して認可申請を行う方法があります。
⑧事業用自動車として車両を登録する
許可取得後は、車両を事業用自動車として登録します。一般乗用旅客自動車運送事業で使用する車両は、営業用車両として適切に登録し、必要な車体表示などを行います。任意保険等への加入も営業開始前に完了させます。
⑨運輸開始に必要な手続きを行い営業を開始する
運転者や管理者の選任、車両登録、運賃認可、保険、必要な帳票・管理規程などを整えたうえで運輸を開始します。許可を取得しただけで直ちに旅客を乗せて営業できるわけではありません。許可後に必要となる手続きを確認し、準備が整ってから営業を開始しましょう。
都市型ハイヤーの開業までにかかる期間
許可申請の標準処理期間
関東運輸局では、一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可について、標準処理期間を3か月としています。ただし、これは適法かつ必要書類が整った申請を通常処理するための標準期間です。申請書類の不備を補正する期間や、申請者自身が事業計画を変更するために必要となった期間などは含まれません。
第二種免許・営業所・車庫などの準備期間も必要
開業までの期間を考える際は、許可審査の3か月だけを見るのではなく、申請前の準備期間も考慮する必要があります。特に、次のような準備には時間がかかることがあります。
- 法人設立・営業所探し・車庫探し
- 車両の確保(最低5両または10両以上)
- 第二種免許を持つ運転者の採用
- 運行管理者・整備管理者の確保
- 資金調達
許可取得後の車両登録や運賃手続きにも期間が必要
許可取得後にも、登録免許税、事業用車両登録、保険、管理者等の届出などの手続きがあります。運賃・料金についても営業開始までに認可を受ける必要があるため、経営許可申請とあわせて計画的に手続きを進めることが重要です。そのため、開業予定日から逆算し、申請前の準備から許可後の手続きまで余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
都市型ハイヤーの開業に必要な費用
都市型ハイヤーの開業費用には全国一律の「最低○○万円」という金額が決められているわけではありません。最低車両数、車種、営業所・車庫を購入するか賃借するか、人員数などによって必要資金は大きく変わります。
登録免許税などの法定費用
一般乗用旅客自動車運送事業の新規経営許可を受けた場合には、登録免許税3万円が必要です。このほか、車両登録に関する費用や各種証明書の取得費用などが発生する場合があります。
車両の購入・リース費用
開業費用の中で大きな割合を占めやすいのが車両費です。都市型ハイヤーは営業区域によって5両または10両などの最低車両数が設定されているため、1台だけの車両費を考えればよいわけではありません。関東運輸局の資金計画では、購入する場合は原則として取得価格、リースの場合は原則として1年分の賃借料等を所要資金として計算します。
営業所・車庫・休憩施設にかかる費用
営業所や車庫を賃借する場合は、敷金・保証金、賃料、仲介費用、内装・設備費などが必要になります。関東運輸局の所要資金計算では、土地・建物を賃借する場合、原則として1年分の賃借料等を計上します。
任意保険・自動車保険にかかる費用
事業用自動車は、許可基準を満たす任意保険または共済への加入が必要です。自家用車向け保険とは保険料体系が異なることがあるため、許可申請前に事業用車両としての保険料を確認しておきましょう。関東運輸局の所要資金では、保険料について原則1年分を計上します。
許可申請で求められる所要資金
関東運輸局の審査基準を例にすると、所要資金には次の費用を含めます。
| 項目 | 主な算定方法 |
|---|---|
| 車両費 | 取得価格またはリース料1年分等 |
| 土地費 | 取得価格または賃借料1年分等 |
| 建物費 | 取得価格または賃借料1年分等 |
| 機械器具・什器備品 | 取得価格 |
| 運転資金 | 人件費・燃料油脂費・修繕費等の2か月分 |
| 保険料・租税公課 | 原則1年分 |
| その他 | 創業に必要となる費用 |
自己資金はいくら必要?
自己資金についても「一律で○○万円」と決められているわけではありません。関東運輸局では、所要資金総額の50%以上かつ事業開始当初に必要となる資金の100%以上の自己資金を確保することが求められています。都市型ハイヤーでは最低車両数が5両や10両となる地域があるため、車両費・人件費を含めると相応の資金が必要になる可能性があります。
行政書士へ許可申請を依頼する場合の費用
一般乗用旅客自動車運送事業の許可申請を行政書士へ依頼する場合は、法定費用とは別に行政書士報酬が必要です。行政書士報酬には法律上の一律料金がなく、事務所や依頼内容によって異なります。営業所・車庫の要件確認、資金計画、申請書作成、運賃認可手続きなど、どこまで依頼するかを確認したうえで見積もりを取りましょう。
都市型ハイヤーの運賃・料金の決め方
ハイヤーの運賃・料金には認可が必要
都市型ハイヤーの運賃・料金を事業者が完全に自由に決められるわけではありません。一般乗用旅客自動車運送事業の運賃・料金は、道路運送法に基づく認可制度の対象となります。関東運輸局では、特別区・武三地区、京浜地区、千葉地区の一部、埼玉南部地区の一部などについて、ハイヤーの自動認可運賃が公示されています。実際に設定する運賃については、営業区域に対応する最新の運賃公示を確認する必要があります。
時間制運賃・距離制運賃などの考え方
ハイヤーの運賃には、地域によって時間制運賃、距離制運賃、長期間契約運賃、半日貸・1日貸運賃などが設定されています。そのため、単純に「1km○円」と自由に料金表を作るのではなく、営業区域に適用される運賃制度を確認して認可を受ける必要があります。
都市型ハイヤーの契約時間に関する注意点
運賃制度上の時間単位と、都市型ハイヤーとして営業するための契約条件は分けて考える必要があります。都市型ハイヤーとして行う運送については、原則として一日を超える期間を単位として専属で常時運送を提供できることとする書面による契約、または2時間以上の時間を単位として締結される運送契約などが必要です。
事業者自身が2時間以上で契約していたとしても、旅行会社、仲介事業者、配車アプリなどが利用者向けに2時間未満へ分割して販売するような「切り売り」は認められていません。
都市型ハイヤーを開業する前に確認したい注意点
流し営業・駅待ち・客引きはできない
都市型ハイヤーでは、道路上を走行しながら利用者を探す流し営業や、駅・空港などで予約のない利用者を待って乗車させる営業はできません。特に空港などで利用者へ声をかけ、その場で運送契約を成立させる客引きは、都市型ハイヤーの営業方法として認められていません。
空港送迎自体が禁止されているわけではありません。あらかじめ適法に運送を引き受けた旅客を空港へ送迎することと、その場で客を探すことは区別する必要があります。
2時間未満の運送契約は都市型ハイヤーの対象にならない
都市型ハイヤーでは、原則として2時間以上の運送契約、または一日を超える期間を単位とする専属契約などに基づいて営業します。例えば「空港からホテルまで30分だけ」「駅から観光地まで1時間だけ」といった運送を、都市型ハイヤーの短時間契約として販売することはできません。
営業所で運送の引受けを行う必要がある
ハイヤーは、運送の引受けを営業所で行うことを前提とする営業形態です。予約受付に電話やウェブサービスなどを利用する場合でも、事業者の営業所を通じた適切な運送引受け・運行管理の仕組みを整える必要があります。ドライバーが空港や路上で独自に顧客を獲得し、その場で運送を引き受けるような営業方法は避けなければなりません。
営業区域外で自由に営業できるわけではない
都市型ハイヤーには許可を受けた営業区域があります。道路運送法では、原則として発地・着地の双方が営業区域外にある旅客運送は禁止されています。したがって、東京の営業区域で許可を取得したからといって、大阪府内だけで完結する運送を自由に受注できるわけではありません。
営業所・車庫は契約前に許可要件を確認する
営業所と車庫は許可取得の重要な審査項目です。賃料が安い、広い、駅から近いといった理由だけで物件を決めるのではなく、都市計画法、建築基準法、消防法、農地法、前面道路などを確認してください。物件を契約してから許可に使用できないことが判明すると、移転や契約変更が必要になる可能性があります。
車両購入前に最低車両数・使用権原を確認する
都市型ハイヤーでは営業区域によって最低車両数が異なります。「まず高級車を1台購入してから許可を考える」という順序ではなく、先に営業区域と許可要件を確認し、その後に必要な台数の車両を確保することが重要です。
許可取得前に営業を開始しない
道路運送法上の許可などの法的根拠がない状態で、他人の需要に応じて自動車を使用し、有償で旅客を運送することは原則としてできません。「モニター運行」「知人の送迎」「外国人旅行者限定」などの名称を付けても、実態として他人の需要に応じて有償で旅客を運送している場合は、道路運送法違反となる可能性があります。実際のサービス開始は、必要な許可・認可・車両登録等を完了してから行いましょう。
都市型ハイヤーの開業に関するよくある質問
都市型ハイヤーは1台から開業できますか?
本記事で主に対象としている関東運輸局の都市型ハイヤー指定地域では、新規開業を1台から行うことはできません。営業区域ごとに最低車両数が設定されており、関東運輸局では都市型ハイヤーが行われる主要な営業区域について5両または10両以上などの基準があります。例えば特別区・武三交通圏や京浜交通圏では10両以上が最低車両数です。
個人でも都市型ハイヤーを開業できますか?
法人格だけが絶対条件というわけではありませんが、個人で申請する場合でも通常の一般乗用旅客自動車運送事業として営業区域ごとの最低車両数、営業所、車庫、管理体制、資金などの要件を満たす必要があります。「個人なら1台で都市型ハイヤーを開業できる」という意味ではありません。
高級車でなければ都市型ハイヤーとして営業できませんか?
高級車ブランドであること自体が、都市型ハイヤー許可の法定要件ではありません。重要なのは、許可基準を満たす事業用自動車について適切な使用権原を確保し、事業用として登録することです。ただし、ハイヤーの運賃表には車種区分が設けられている地域もあります。また、企業役員送迎や訪日旅行者向けサービスでは車格や乗り心地が商品価値に影響するため、事業計画上の車両選定は重要です。
普通自動車第一種免許だけで運転できますか?
できません。有償で旅客を運送する都市型ハイヤーの運転者には、使用する車両に対応する第二種運転免許が必要です。普通乗用車を使用する場合は、原則として普通自動車第二種免許が必要になります。
運行管理者は必ず選任する必要がありますか?
営業所ごとに、配置する車両数に応じて法令上必要となる有資格の運行管理者を確保する必要があります。都市型ハイヤーの主要な営業区域では最低車両数が5両または10両となるため、新規開業では運行管理者を含めた管理体制の構築が必要になります。
自宅を営業所として都市型ハイヤーを開業できますか?
自宅だから一律に不可というわけではありません。ただし、営業区域内にあること、1年以上の使用権原があること、都市計画法・建築基準法・消防法等に抵触しないこと、事業を遂行するために必要な規模があることなどの要件を満たす必要があります。また、最低車両数分の車庫や運行管理体制も別途確保しなければならないため、住宅の一室だけ確保すれば開業できるわけではありません。
都市型ハイヤーは全国どこでも営業できますか?
自由に営業できるわけではありません。一般乗用旅客自動車運送事業には営業区域があり、原則として発地と着地の双方が営業区域外となる旅客運送は禁止されています。一方、発地または着地のいずれかが営業区域内にある運送まで、一律に禁止されているわけではありません。また、都市型ハイヤーの取扱いや運賃制度は地域によって異なるため、事業を行いたい地域の地方運輸局・運輸支局で確認する必要があります。
都市型ハイヤーの許可取得には何ヶ月かかりますか?
関東運輸局における一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可の標準処理期間は3か月です。ただし、書類の補正期間などは含まれません。さらに、申請前の営業所・車庫探し、車両確保、人員採用、資金準備と、許可後の車両登録などにも時間が必要です。運賃・料金の認可手続きも必要となるため、開業計画では標準処理期間だけでなく、前後の準備・手続期間を含めてスケジュールを組むことが重要です。
都市型ハイヤーの開業にはいくら必要ですか?
全国共通の「最低開業資金○○万円」という基準はありません。車両費、営業所、車庫、人件費、保険料などを事業計画に応じて算定します。関東運輸局では、所要資金総額の50%以上かつ事業開始当初に必要となる資金の100%以上の自己資金が必要です。特に都市型ハイヤーでは営業区域によって5両または10両以上の車両を確保する必要があるため、車両価格だけで判断せず、運転者・管理者の人件費や営業所・車庫、保険まで含めて資金計画を作成しましょう。
まとめ
都市型ハイヤーは、営業所で事前に運送を引き受け、原則として一日を超える期間を単位として専属で常時運送を提供できることとする書面による契約、または2時間以上の時間を単位として締結される運送契約などに基づいて旅客を輸送するハイヤー事業です。
一般のタクシーとは異なり、流し営業、駅待ち、空港などでの客引きはできません。また、2時間以上の契約を実質的に短時間サービスへ分割する「切り売り」にも注意が必要です。
開業するためには道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業の経営許可を取得し、営業所、車庫、休憩施設、最低車両数、第二種免許を持つ運転者、運行管理・整備管理体制、自己資金、損害賠償能力などの要件を満たす必要があります。
特に注意したいのが最低車両数です。本記事で主に対象としている関東運輸局の都市型ハイヤー指定地域では、1台から新規開業する制度ではなく、営業区域によって5両または10両以上などの最低車両数が設けられています。
また、関東運輸局の標準処理期間は3か月ですが、第二種免許を持つ運転者の確保、営業所・車庫探し、車両確保、資金調達、運賃・料金の認可、許可後の車両登録などには別途時間がかかります。
都市型ハイヤーの開業を検討している場合は、車両や物件を先に契約するのではなく、まず営業区域と最新の審査基準を確認し、許可要件を満たせる事業計画を作成することが重要です。都市型ハイヤーの経営許可申請や営業所・車庫の要件確認、資金計画、運賃認可などでお困りの場合は、行政書士法人シフトアップまでお気軽にご相談ください。
【参考文献】
- 国土交通省 関東運輸局「タクシー事業を始めるには」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/taxi_jigyoukaisi/index.htm - 国土交通省 関東運輸局「法人タクシー事業の許可申請の審査基準について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000107967.pdf - 国土交通省 関東運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業 経営許可申請書作成の手引き」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000285521.pdf - 国土交通省 関東運輸局「都市型ハイヤー事業者 オンライン講習会」(令和8年3月4日)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000369314.pdf - 国土交通省 関東運輸局「道路運送法上の申請に対する処分に関する標準処理期間について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/taxi_jigyoukaisi/date/202_syorikikan.pdf - 国土交通省 関東運輸局「タクシー関係申請手続き(運賃関係)」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/taxi_jigyoukaisi/unchin.html - 国土交通省 関東運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー)の自動認可運賃等について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000108048.pdf - 国土交通省「一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー・タクシー事業)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000033.html - 国土交通省「タクシー事業について・自家用車活用事業(日本版ライドシェア)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000003.html - 警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/jyuken_tokurei.html - e-Gov法令検索「道路運送法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183
