運行管理者とは、運送業を営む会社で1名以上の選任が義務付けられている国家資格です。
運行管理者の資格を取得すると、就職や転職が有利になったり、管理者として長く働けるようになったりと、さまざまなメリットがあります。
本記事では、そんな運行管理者の資格について紹介していきます。
取得するメリットや試験概要なども詳しく解説していくので、これから運行管理者の資格を取得しようか迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
2.png)
運行管理者の資格について
運行管理者は、貨物や旅客における輸送の安全を確保するために、事業用自動車を配置する運送会社で最低でも1名以上の選任が義務付けられています。
ドライバーの疲労や健康状態を把握し、安全な運行を常時実施するために指導や監督をおこなうのが主な役割です。
運行管理者の資格には「貨物」と「旅客」の2種類があり、運ぶ対象が物である場合は「貨物」、人である場合は「旅客」となります。
それぞれが別の資格となるため、両方の資格を取りたい場合には、「貨物」と「旅客」の試験を1回ずつ受ける必要があります。
貨物
貨物の運行管理者は、輸送の安全を確保するためにドライバーに対して指導や監督をおこなうのが主な役割です。
貨物の運行管理者の仕事は多岐にわたりますが、主に以下のような仕事をおこなっています。
- 毎日の点呼でドライバーの疲労や健康状態を把握
- 休憩・睡眠施設の保守や管理
- トラックの過積載の防止に努める
- 乗務割の作成や運行状況などを記録する
旅客
一方で旅客の運行管理者の場合、バス・タクシー・ハイヤーなど、人を乗せて走る車両のドライバーに対して指導や監督をおこないます。
旅客の運行管理者は、主に以下のような業務をおこなっています。
- 定刻運行の管理
- ドライバーの勤務時間や健康状態のチェック
- 最新の道路状況や法律などを常に把握
運行管理者の資格を取得するメリット
運行管理者の資格を取得するメリットは、以下の4つです。
- 即戦力となるため就職や転職に有利
- 昇進や昇給も見込める
- 管理者として長く働ける
- 運送業を開業する際にも役に立つ
即戦力となるため就職や転職に有利
運行管理者の資格を取得すれば即戦力として採用されやすくなるため、就職や転職が有利に進むことがあります。
事業用自動車を配置している事業者は、必ず1名以上の運行管理者を選任しなければなりません。
運行管理者の資格は誰もが保有しているわけではないため、資格を持っているだけで重宝されることもあります。
昇進や昇給も見込める
運送業を営む会社には、運行管理者の選任が義務付けられているため、資格を持っているだけで昇進や昇給の対象となる場合があります。
また、会社によっては数千円~数万円の資格手当が支払われるケースもあります。
管理者として長く働ける
運行管理者の資格を保有していれば、管理者として長期的に働くことも可能です。
ドライバーは荷物を運ぶために運転し続ける仕事のため、体力と神経を酷使することになります。
その点、運行管理者は基本的に内勤となります。
運転による体力の酷使がほとんどないため、体力的にも長く働くことができます。
運送業を開業する際にも役に立つ
運行管理者の資格を取得していれば、自分で運送業を開業する際にも役に立ちます。
運行管理者は、社長や役員が兼任することも可能です。
自分が運行管理者の資格を持っていれば、開業する際に焦って資格保有者を探したり、試験日に合わせて準備を進める必要もありません。
運行管理者の試験概要
次に、運行管理者資格の試験概要について紹介します。
運行管理者の試験は、「貨物」と「旅客」の2種類があります。
どちらの試験でも選択式で30問が出題され、正答率60%、つまり30問中18問以上正解すれば合格となります。
試験時期 | 2~3月、8~9月の年2回 |
試験方式 | CBT(パソコンを使用して受験する方式) |
受験資格 | 以下のどちらかに該当する方 ・運行管理の実務経験が1年以上ある ・基礎講習を修了した方または修了見込みの方 |
試験形式 | 選択式30問 |
受験料 | 6,000円(別途手数料が必要) |
貨物と旅客の違い
両者の試験問題の違いとしては、貨物では「貨物自動車運送事業法」、旅客では「道路運送法」に関する問題が出される点です。
安全面に関する内容についてはもちろん、人数や日数など、具体的な数字も含めて理解しておく必要があります。
それぞれで出題される科目の割合を以下にまとめました。
【貨物】
出題分野 | 出題数 |
貨物自動車運送事業法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
その他運行管理者の業務に関して必要な実務上の知識・能力 | 7問 |
【旅客】
出題分野 | 出題数 |
道路運送法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力 | 7問 |
運行管理者試験の合格率
運行管理者試験の合格率は、平均して3割程度です。
参考までに、過去3回分の試験の合格率を以下にまとめました。
【貨物】
試験年度 | 合格率 |
令和4年度 第1回 | 38.4% |
令和3年度 第2回 | 32.3% |
令和3年度 第1回 | 29.8% |
【旅客】
試験年度 | 合格率 |
令和4年度 第1回 | 40.1% |
令和3年度 第2回 | 34.5% |
令和3年度 第1回 | 32.6% |
運行管理者試験の難易度
試験の難易度は近年難化傾向にありますが、しっかりと勉強すれば独学でも必ず合格できます。
実は、運行管理者資格を受ける方は、大半が会社から取得するようにいわれた方が多いです。そのため、あまり自分で勉強せずに試験を受ける方が多く、合格率がやや低めになっています。
独学でもしっかりと勉強すれば、合格者の3割に入ることは十分可能です。
おすすめの勉強方法は、Amazonなどで販売されている過去問題集を繰り返し解くことです。
また、以前までは筆記で試験がおこなわれていましたが、令和3年度の試験からパソコンを使用して解答する「CBT方式」に変更されました。
パソコンをあまり使い慣れていない方は、制限時間内でスムーズに解答するためにも操作に慣れておく必要があるでしょう。
公益財団法人運行管理者試験センターの公式サイトにCBTのサンプルテストが掲載されているので、事前に受けて操作に慣れておくと安心です。
運行管理者試験の日程
運行管理者試験は、毎年2回、2~3月と8~9月に実施されます。
令和5年度(令和4年度第2回試験)は、2月18日~3月19日が試験日程となっています。※2023年2月時点では申し込みは終了しています。
受験申請はそれぞれ1ヵ月~2ヵ月前に開始されるため、忘れずに申請しましょう。
ちなみに、令和3年度の試験をもって書面での申請は廃止され、現在はインターネット申請のみとなっているので注意してください。
運行管理者試験の申し込みの流れ
ここからは、運行管理者試験の申請方法について紹介します。
新規の受験申請の場合、運行管理者試験センターの「運行管理者試験電子申請システム」を利用して申し込みをする必要があります。
申請には以下の費用が必要です。
- 受験手数料:6,000円(非課税)
- システム利用料:660円(税込)
※試験結果の通知を希望する方は、試験結果レポートの費用として140円(税込)が別途必要になります。
では実際に、申し込みの流れを確認していきましょう。
- 必要書類・情報を用意する
- システム上で受験の申請をおこなう
- 申請が完了したら手数料等を支払う
①必要書類や情報を用意する
まずは、運行管理者試験を受験するにあたって必要となる書類や情報を用意しましょう。
申請には、以下の書類や情報が必要です。
- 申請で利用するメールアドレス
- 本人確認書類(運転免許証・住民票・マイナンバーカードのいずれか1つ)
- 申請者本人の顔写真
さらに上記に加えて、受験資格が実務経験1年以上の方は「実務経験承認者に関する情報」を、受験資格が基礎講習修了または修了見込みの方は「基礎講習修了証」または「運行管理者講習手帳」が必要になります。
②システム上で受験の申請をおこなう
必要書類と情報が揃ったら、試験センターの「運行管理者試験電子申請システム」を利用して、用意した必要書類と情報を入力します。
入力事項に問題がなければ申込は完了です。
③申請が完了したら手数料等を支払う
申請が完了した後で、受験手数料等を支払います。
決済方法は以下から選択可能です。
- コンビニ決済
- クレジットカード決済
- ペイジー決済
受験資格が実務経験1年以上の方は、支払いが完了した後、実務経験承認者が試験センターからのメールに対して承認をおこなわないと受験をすることができなくなるため注意してください。
まとめ
本記事では、運行管理者の資格について解説しました。
運行管理者は輸送の安全を確保するために、ドライバーに対して指導や監督をおこなう役割を担っています。
運行管理者資格には物を運ぶ「貨物」と人を運ぶ「旅客」の2種類があり、それぞれで異なる内容となっています。
資格を取得できれば、就職や転職活動が有利に進んだり、管理者として長く働けるようになったり、自身で運送業を開業する際にも役立ったりするなど、多くのメリットがあります。
試験の合格率は3割程度とやや低めですが、しっかりと勉強すれば独学での合格も十分可能です。資格試験は年に2回おこなわれているため、スケジュールに余裕をもって受験するようにしましょう。
運送業許認可や巡回指導・監査対策に関するお問い合わせは行政書士法人シフトアップまでお気軽に。全国対応しております。