コラム

走行税とは?運送業界の負担はどうなる?

行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

運送業許可など自動車系許認可の専門行政書士法人です。運送業、貸切バス、介護タクシー、産廃収集運搬などの許可をメインとしています。組織力でお客様の課題解決に当り、北海道から沖縄まで全国からご依頼いただいております。
【保有資格】行政書士【商工会議所】名古屋商工会議所【著書】 トラック運送業の運輸局監査対策行政書士のための運送業許可申請のはじめ方

自動車にかかる新たな税金の「走行税」が話題になっています。

走行税を簡単に説明すると、車で走れば走るほど納税額が増える税金のことです。

燃料課税の減収を理由に提案された走行税ですが、走れば走るほど儲かる運送業界や、自動車が生活必需品となっている地方の人々からは反対する声もあがっています。

この記事では、走行税について現時点で分かっていることを詳しく解説していきます。
運送業界にかかる負担についても説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

走行税とは

走行税とは、自動車で走った距離に応じて課せられる税金です。

2022年の10月26日におこなわれた内閣府の税制調査会で、自動車税制の見直しについての議論があった際に提案されました。

自動車で走る距離が大きくなるほど税金が高くなる仕様になっており、運送業界をはじめ、自動車を利用するさまざまな人から批判が殺到しています。

 

走行税の導入が検討されるに至った理由

そもそも、なぜ走行税の導入が検討されるようになったのでしょうか?
大きな理由としては、EV(電気)自動車の普及による燃料課税の減収だといわれています。

電気を主な燃料とするEV車は、ガソリン税や軽油引取税の課税対象外となります。
2014年以降、燃料課税を納める必要のないEV車が日本に普及し始めたことで、燃料課税は減収が続いています。
(出典:日本自動車工業会「日本の自動車工業」)

燃料課税は道路特定財源制度に基づいて、主に公道の維持費や整備費に使われていましたが、平成21年度の税制改革によって一般財源化されました。
※一般財源とは、どんな経費にも使用することができる財源のことです。

年々減少していく燃料課税を見た政府が「このままでは財源が足りなくなってしまう」と思い、十分に徴収できなくなった燃料課税に代わる財源として、走行税が提案されました。

 

海外ではすでに導入されいる国も

海外では、すでに走行税が導入されている国があります。

ニュージーランドは、世界的に見ても初期の段階で走行税導入に踏み切りました。
ディーゼル車を中心とした自動車が課税対象となっており、走行する予定の距離を事前に申し出て、それに応じた額を納税する方法をとっています。

ドイツの場合は、12トン以上の大型トラックのみが課税対象となっています。
計測用の車載機を車内に取り付けることが義務付けられており、車載機によって計測された走行距離とCO2の排出量に応じて、税金が徴収される仕組みです。

 

課税対象となる車は?

現時点では、ガソリン車・EV車・ディーゼル車など、全ての自動車が走行税の課税対象になる予定です。

しかし、「ガソリン税や軽油引取税を支払っていないEV車のみを課税対象にするべきだ」「ガソリン車が二重課税になってしまう」という反対意見も多くあがっています。

まだ確定というわけではないようなので、これから先の議論で変更になる可能性もあります。

 

実際いくら徴収されるの?

結論をいうと、実際にいくら徴収されるかはまだ決まっていません。
徴収基準も計測方法も、これから議論されるようです。

参考までに、すでに走行税が導入されているニュージーランドを例に挙げると、1kmあたり5円の走行税がかかっているようです。
年間3,000km走った場合でも、15,000円の税金が徴収されます。

大型トラックの年間走行距離は100,000kmにもなるといわれているため、年間で500,000円の走行税がかかるということになります。
考えただけでも恐ろしい数字ですね…。

 

走行税の課税によるデメリット

走行税の課税によるデメリット

走行税が課税されることによって生じるデメリットは、主に2つあります。

  • 運送業界の負担が増える
  • 地方に住んでいる人は税金が高くなってしまう

 

運送業界の負担はもちろん増加する

走行税が導入されると、運送業界の負担は大きくなります。

運送事業は、走れば走る分だけ収益があがる仕組みです。
燃料価格高騰の影響でただでさえ経営が苦しいなか、走行税によって物流コストがさらに上乗せされると、経済の柱である運送業界にとっては大きな痛手となります。

場合によっては、配送料やサービス料を値上げせざるを得ない状況になり、消費者の負担が増える可能性もあります。

走行税の創設案を聞いた運送業関係者からは「走れば走るだけ利益が出る商売なのに、走れば走るほど税金を取られるのであれば、儲けがなくなってしまう」と困惑の声もあがっています。

 

走行税は地方いじめだという声も

地方では都会ほど公共交通機関が整っていないため、車で移動するのが当たり前となっています。

ENEOS株式会社の調査では、東京都の平均年間走行距離は2,000km未満、大阪府と神奈川県が3,000kmとなっています。
それ以外のエリアではすべて4,000kmを超えていて、そのなかでも茨城・福井・佐賀県は年間で10,000km近く走行しています。
(出典:家庭の自家用車による輸送需要の将来推計

都会の20kmと、地方の20kmではまったく意味が違ってきます。
東京都でいう20kmは23区をほとんどカバーできますが、北海道の20kmはやっと隣町に行けるかどうかの距離になります。

つまり、地方で暮らしている人のほうが車で移動する距離が大きいため、必然的に納税額が高くなってしまいます。

そのため、地方で暮らしている人からは「走行税は地方いじめ」「自家用車しか移動手段がない地方では死活問題」という声も多くあがっています。

 

走行税の課税が始まるのはいつから?

走行税の課税が始まるのはいつから?

「走行税の課税が始まるのはいつから?」と不安になっている方も多いでしょう。

結論をいうと、現時点では具体的な日にちは決まっていません。

2022年の10月26日におこなわれた内閣府の税制調査会で話が出たというだけで、いつから課税を始めるといった具体的な議論はなされていないようです。

政府は走行税を中長期的な課題としているため、今後も慎重に議論を重ねていくと思われます。

 

まとめ

「車にかかる税金が高すぎる」といわれる日本。
走行税は日本経済へのとどめの一撃ともいわれています。

走行税による痛手は、主に運送業界や地方在住の人々が被ることになります。
とくに個人事業主のドライバーや、車両台数を多く配置している運送会社は、今よりも厳しい経営を強いられることになり、最悪の場合、廃業に追い込まれる可能性も考えられます。

税収を確保することは重要ですが、走行税の導入については慎重に議論を重ねたうえで決定してほしいものです。

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