トラック運送業において、避けて通ることができない大きな課題は、ドライバーによる交通事故の撲滅です。この記事では、実際にトラックドライバーの安全教育を行なう上で、模範となる心構えや安全教育の方法を分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
まずは、なぜ運送業の安全教育は必要なのかという視点から見ていきましょう。
なぜ運送業の安全教育は必要なのか
トラックなどの貨物自動車が交通事故を起こすと、一般のドライバーが自家用車で交通事故を起こした時に比べて、被害が大きくなってしまいます。
それは、運送業で使用する貨物用自動車は車体や積み荷が大きい分、ほかの自動車も巻き込む大惨事に繋がってしまうからです。そのため、トラック運送業において、ドライバーの安全教育は切り離せない重要な取り組みであり、一般のドライバーよりもさらに高い安全意識が必要とされます。
一般貨物運送事業者が行う乗務員に対する指導教育と記録簿とは[様式あり]も併せてお読みください。
トラックによる交通事故発生状況の傾向
事故防止に繋げるために、まずはトラックによる交通事故の傾向を認識することが大切です。「どんな事故が多いのか」「どういう状況で発生しやすいのか」といった平均的な傾向を理解し、自社の状況に合わせて自己分析や対策を講じるようにしましょう。
それでは、実際にどのような交通事故が発生しているのか、傾向を見ていきます。
人身事故は「追突事故」が約半数を占める
トラックによる人身事故のうち、約半数が追突事故です。ドライバーにこの傾向を認識させるとともに、マニュアルなどを活用して追突事故防止の実施を促しましょう。
国土交通省の「トラック追突事故防止マニュアル」では、追突事故防止のポイントは次の6点です。
- 乗務前点呼で運行管理者とよく話す
- 十分睡眠をとる
- きちんと休む
- 車間距離をとる、わき見をしない
- 乗務後点呼では気づいたことを報告する
- 同僚運転者とよく話し合う
このように具体的な行動を明文化し、ドライバー自身が具体的にどう行動すれば事故防止に繋がるのかを理解させることが重要です。
死亡事故は「人との事故」「追突事故」が多い
トラックによる死亡事故は、交差点における人との事故や衝突事故が多いことが特徴的です。最も多いのが「人対車両事故」といわれる人との接触事故。次いで「追突事故」です。
この中でも人との接触事故は、ほとんどが交差点で発生していて、歩行者や自転車との接触事故は死亡に繋がる割合が高くなっています。
この傾向から、横断歩道では歩行者や自転車の有無を確認するなど、特に慎重な安全確認をするようドライバーへ指導することが大切です。全日本トラック協会の「トラック交差点事故防止マニュアル」などを活用して、死亡事故の撲滅に取り組みましょう。
自社や関係地域における事故特性の調査・分析
ここまで、交通事故の一般的な傾向を理解することの重要性について解説してきました。しかし、トラック運送業の安全教育においては一般的な傾向の理解だけでは不十分といえます。
なぜなら、運んでいる荷物や走行する道路、時間帯によって起こりうる事故は異なるからです。一般的な傾向を理解した上で、自社の関係地域における事故発生状況を調査・分析し、より効果的な安全対策を講じる工夫をしましょう。
調査項目の例として、「事故の発生件数および推移」「事故原因」「車格や積載貨物の品目」「天候を含む道路環境」「運転者の運転経験や安全に関する教育状況」などがあります。
国土交通省のホームページでは、交通事故の統計に関して「事業用自動車の交通事故の傾向分析」や「事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会」などの資料が掲載されていますので、参考にしてください。
模範となる運送業ドライバーとしての5つの心構え
ここからは、ドライバーに対して安全運転の心構えを指導する際のポイントをお伝えします。運送業ドライバーは、その社会的役割、また事故を起こした場合の影響などを認識し、安全運転を心がけることで、一般ドライバーの模範となる使命があるということを、一人ひとりの従業員に意識させることが重要です。
それでは、模範となる運送業ドライバーとしての心構えを5つご紹介します。
心構え1|思いやりと譲り合いの気持ちを持つ
道路を安全に利用するために、交通ルールが定められています。その交通ルールを守っていくためには、お互いの思いやりや譲り合いの気持ちが欠かせないという意識を確認しましょう。
心構え2|油断や過信はしない
「毎日走っている道だから」といった油断や、「自分は運転スキルが高いから」といった過信は、交通事故を引き起こす可能性を高めてしまいます。
それは、油断や過信によってつい周囲の安全確認を怠ってしまうからです。運転のプロであるからこそ、初心を忘れず緊張感を持った運転が大切であるという意識を確認しましょう。
心構え3|急ぎやあせりは抑える
急いだりあせったりしている時は、スピード超過や一時停止の無視、強引な追い越しなど、危険な運転に繋がりやすくなります。まずは気持ちを落ち着けて、安全運転を第一とすることが大切であるとの意識を確認しましょう。
心構え4|怒ったりイライラしない
興奮状態にあると、的確な判断力が低下し、強引な運転をしがちです。冷静な気持ちを保ち運転に集中することが大切であるとの意識を確認しましょう。
心構え5|エコドライブの励行
急発進や急ブレーキなど「急」のつく運転をしないエコドライブ。エコドライブは、地球環境に優しいだけでなく、安全運転にも繋がります。ドライバーへエコドライブについて説明する際には、環境保全と安全確保の両側面の効果を伝えることで、取り組みをさらに促していきましょう。
グリーン経営認証とは?メリット・デメリット、取得の流れ、取得方法etcも併せてお読みください。
おすすめの安全教育の方法
ここまでの説明で、安全教育の重要性や基本的な心構えはご理解いただけたと思います。それでは、「自社のドライバーに安全教育をしよう」と決意したら、何から始めればいいのでしょうか。
警察署の交通安全教育指導の出張講習依頼
トラック運送業が警察署に安全指導を依頼すると、交通安全課などの担当者が企業に出張で来てくれて交通安全講習会をしてくれるのです。
講習会の内容としては、トラックの交通事故の統計の解説(追突事故の原因として「ナビに気を取られていた」「スマホを触っていた」などの実態)や、管轄エリアにおける事故の地域性などについて詳しい話を聞くことができます。ほかにも、忘れがちな交通ルールのレクチャーや、プロのドライバーが日常的に意識すべき心構えなどを幅広く講習するものです。
DVDなどの映像も交えながら1時間程度で開催してもらえるため、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
国土交通省マニュアルの活用
先に説明した出張講習は1日で終了する短期集中型で意識を高める手法ですが、日常的な指導においてオススメできるツールは国土交通省が発行する各種マニュアルです。
国土交通省のホームページにある「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行なう一般的な指導及び監督の実施マニュアル」は、トラック運送業がドライバーの指導・監督を実施するために作られたもの。
トラック・トレーラーの特性に合わせた運転の注意点、安全運送のための積付け・固縛の方法など、具体的な指導内容が120ページ以上にわたり解説された充実のマニュアルです。安全運転に関する指導が1冊にまとめられていますので、日々の社員研修などに活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
運送業ドライバーは、運転のプロであるからこそ、模範となるドライバーとして、ほかのドライバーの手本となるような、安全でマナーの良い運転を心がけなくてはならないことを、指導を通じて理解してもらいましょう。
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