かつて2014年に国土交通省が策定した「トラック運送業の書面化推進ガイドライン」は、法改正を経て、現在は「改正貨物自動車運送事業法」に基づく厳格な『契約書面の交付義務』へと全面移行しています。
言葉は聞いたことがあっても、最新の義務化内容や罰則について詳しく把握していないという方も少なくないでしょう。
この記事では、トラック運送業の書面化義務について分かりやすく説明しています。「そもそもなぜ義務化されたのか」という基礎知識から、実際の法定記載事項まで徹底解説しますので、参考にしてください。
まずは、トラック運送業の書面化義務の全体像から見ていきましょう。
トラック運送業の書面化義務とは(旧・書面化推進ガイドライン)
トラック運送業の書面化は、2014年時点では行政の「ガイドライン(推奨)」という位置づけでしたが、現在は「改正貨物自動車運送事業法」の完全施行(2025年4月にトラック事業者・荷主間に適用、2026年4月からは貨物利用運送事業者や下請・孫請取引へ全面拡大)に伴い、完全な『法定義務』となっています。
具体的には、労働災害の防止、契約上のトラブル防止、適正な運賃・料金の実現といった目的があります。
法令が定める書面化とは、荷主(元請・利用運送事業者含む)による「運送状(または委託書)」の発出に対して、実運送事業者が「運送引受書」を作成・相互交付することを指します。口頭や慣行による曖昧な取引は一発で法令違反(監査処分や荷主勧告)の対象となります。
トラック運送業の書面化がなぜ義務化されたのか
こうした書面化が完全義務化された背景には何があるのでしょうか。それは、近年の市場の変化によりトラック運送業に対して、スピーディーな配送や付帯業務の対応など、様々なニーズが拡大していることがあります。
そして、スポット取引の増加により、取引ごとに適切な条件を設定する目的を果たすためにも、荷主とトラック運送業が契約内容を書面化する必要があるのです。さらに、2024年4月からのドライバーの時間外労働上限規制にともない、長時間の荷待ちや無償の附帯業務が運送会社の死活問題(物流クライシス)となったため、国は法的な強制力を持って書面化による適正取引を義務付けました。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
貨物自動車運送事業輸送安全規則においても、「輸送条件が明確でない運送の引き受け」や「運送の直前もしくは開始以降の運送条件の変更」などは安全を阻害しかねない行為とされています。
トラック運送業の事業者は、こうした行為を防止し、荷主と協力して適正な取引の確保に努めなければならないと定められています。
トラック運送業の書面化によって得られる4つの効果
ここまでの説明で運送業の書面化義務についての基本はご理解いただけたと思います。
それでは、書面化を正しく行なうことにより、どんな効果が期待できるのか見ていきましょう。
効果1|過労運転等のコンプライアンス違反の防止につながる
事前に運送条件を確認することで、輸送形態や発着時間などが明確化され、過労運転などのコンプライアンス違反を防止できます。
効果2|事故等が発生した際に即座に契約内容を確認できる
運送条件などを記録しておくことで、事故などが起こった際に、事後的に契約内容を確認できます。
効果3|現場でのトラブルを防止できる
契約にない付帯業務の防止など、現場でのトラブルを回避できます。
効果4|適正な運賃・料金の収受を実現できる
事前に積み込み・取卸料、付帯業務料などを明確にすることで、適正な運賃・料金を収受できます。
「運送状」「運送引受書」の発出・保存ルール
書面化は、運送が始まる前に必要事項を共有する趣旨のものです。そのため、事前に発出が完了するよう取り組みましょう。
「運送状」は荷主が作成して運送業者へ提出するもので、「運送引受書」は運送業者が作成して荷主へ提出するものです。
まず、貨物の運送を委託する荷主は「運送状」を作成して、運送業者へ提出。
そして、運送を引き受けた運送業者は、実際の運送が始まる前に荷主へ「運送引受書」を交付します。
書面の形式は問われず、必要事項が網羅されていればファックスやメール(電磁的方法)での提出も完全に認められています。なお、改正法により、相互に交付した書面の写し(または電子データ)は「交付の日から1年間保存すること」が法的に義務付けられています。
記載しなければならない法定事項(11項目)
それではここから、書面に書かなければいけない記載事項を解説していきます。
① 貨物の品名、重量、個数等
何をどれだけ運ぶのかを、荷主と運送業者の間で決定して記載します。
あわせて、運送に必要な車種や台数も記載しましょう。
② 運送日時(積込み開始日時・場所、取卸し終了日時・場所)
最新の「新・改善基準告示」に定めるドライバーの拘束時間、休憩期間、連続運転時間に絶対に違反しないよう、実務計算を施して記載します。
荷待ち時間が発生しないことなどに留意して、荷主と運送業者の間で決定してください。
③ 運送の扱種別
積み合わせ運賃、貸切距離制運賃、貸切時間制運賃などの扱い種別を記載します。
④ 運賃、燃料サーチャージ、料金、有料道路利用料、立替金その他の費用
実際に適用する運賃の金額を記載してください。
【重要実務】
現在の運輸局審査および適正化巡回指導では、運賃の中に全ての作業をうやむやに含める「コミコミ運賃」が厳しく取り締まられています。必ず「基本運賃」とは別に、「燃料サーチャージ」「有料道路利用料(高速代)」、そして後述する積込・取卸し等の役務の対価を『明確に分離して別建て記載』しなければなりません。
⑤ 荷送人及び荷受人の連絡先等
運送業者へ業務を委託する荷主の氏名(または会社などの名称)および住所、電話番号その他連絡先を記載します。
⑥ 運送状の作成年月日等
運送状を作成した年月日を記載してください。
⑦ 高価品については、貨物の種類及び価額
貨物に高価品が含まれる場合は、運送品の概要欄に種類および価格を記載します。
⑧ 積込み又は取卸し作業の委託の有無と対価
トラック運送業者に積み込みまたは取卸し作業を委託する際は、その旨の有無だけでなく、国土交通省の「標準的な運賃・料金」に準拠した作業料金(対価)を必ず明記する義務があります。
⑨ 附帯業務の委託と対価
予定外の付帯業務(横持ち、棚入れ、ラベル貼り等)は、拘束時間の超過や事故発生などトラブルのリスクが高まります。あらかじめ提供する具体的な役務の内容と、その対価(料金)を記載してください。
⑩ 運送保険加入の委託の有無
運送保険への加入を運送事業者へ委託する場合には、その旨を記載します。
⑪ 支払方法、支払期日
運賃・料金の支払方法、支払期日を記載してください。なお、下請取引における手形支払いの原則廃止など、最新の適正取引ガイドラインに沿った適正なサイト(期日)での設計が必要です。
まとめ
これまできちんとした書面を交わさず、口頭で契約を交わして後からトラブルになったり労災に繋がったりといった問題を解決するために導入された運送契約の書面化。
現在、配送を委託・受託する際には、荷主と運送事業者の双方で法律に則った書面化(電子交付含む)が完全に義務付けられています。怠った場合は行政処分の対象となる厳しい時代ですが、記載事項は料金や支払日など基本的な内容ばかりです。
一度テンプレートを作成してしまえば、すべての契約で繰り返し使えますので、取り組んでみてはいかがでしょうか。
国土交通省のホームページには、書式例やメール文例も掲載されていますので、参考にしてみてください。
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