事務所(営業所)・休憩室・睡眠施設と駐車場(車庫)の選定はお客様が最も苦労なさることの一つです。営業所新設だから新規許可取得時のような細かな要件を満たさなくても良いということはありません。
いざ申請となったときに困らないよう、その要件を確認していきましょう。
営業所新設|事務所(営業所)・休憩室の要件とは?
運送業の営業所新設(事業所新設)における事務所(営業所)の要件は下記のとおりです。
- 適切な使用権限のあることを証明する書類が提出できること
- 事務所、休憩室・睡眠施設は車庫から10km以内(地域による違いあり。関東圏の一部では20kmまたは5km以内)にあること
- 建物が都市計画法、建築基準法、農地法など関係諸法令に抵触しないこと
- 認可取得までに机、椅子、電話などが揃っていること
適切な使用権限のあることを証明する書類とは何か
適切な使用権限のあることを証明する書類は、賃貸の場合と自己所有の場合で異なります。
賃貸の場合
- 賃貸借契約書の契約期間が1年以上あること
- 契約期間が1年未満の場合は、自動更新である旨の記載があること
- 契約書内の建物の使用目的に「事務所使用可能」の旨の記載があること
自己所有の場合
申請者が所有者となっている建物の登記簿謄本が提出できること。
睡眠施設のみに課される要件とは?
睡眠施設は、営業所・休憩室同様の要件に加えて、十分な睡眠・仮眠を取ることができるように一人当たり2.5㎡以上の広さを確保できることが要件となります。
事務所(営業所)と休憩室の広さで気を付けること
営業所と休憩室には何㎡以上ないといけないという広さの要件はありません。ただし、運送業事務を行ったり、運転者が休憩するために必要な広さを確保しなければいけません。
例えば、自宅の一室の畳1畳分を営業所と休憩室にするということは、事務所を行ったり、休憩を取るためのスペースを確保できているとは言いがたいため、申請を受け付けてもらえません。
最低でも営業所と休憩室併せてワンルームマンションほどの広さは必用となります。
都市計画法・建築基準法・農地法など関係諸法令に抵触しないこととは?
都市計画法について
運送業で使用する営業所、休憩室・睡眠施設は、基本的に都市計画法という法律で定められた市街化調整区域と呼ばれる場所に設置することはできません。
都市計画法は、都市の健全な発展などを目的とする法律で、都市計画の内容や決定手続き、都市計画制限、都市計画事業などに関して必用な事項を定めている法律です。
都市計画法の中では、日本の国土を
- 市街化調整区域
- 市街化区域
- 無指定地域
の3種類に区分しており、市街化調整区域と市街化区域は建築できる建物に制限がかかります。
【市街化調整区域】
市街化調整区域は、市街地化を抑制する地域と定められており、基本的には建物を建てることができない区域です。
市街化調整区域内には、絶対に建物を建設してはいけないということはありません。しかし、調整区域内にある建物は基本的に運送業に使用する事務所として使用することはできないと思ってください。
【市街化区域】
市街化区域は、都市計画法で12種類に区分され、それぞれの区分ごとに建築できる建物が規制されています。
12種類の区分のうち、事務所が建築できないのは以下の3つです。
- 第1種低層住居専用地域(例外あり)
- 第2種低層住居専用地域(例外あり)
- 第1種中高層住居専用地域(例外あり)
- 第2種中高層住居専用地域(2階以下なの建物なら良い)
上記の区分以外にある建物であれば、運送業の事務所として使用することは基本的に可能です。
建築基準法について
建築基準補法とは、建物の敷地、設備、構造、用途に関しての最低基準を定めた法律です。建築基準法の中でも、運送業の事務所に関係してくることが多いのは建物の用途です。
例えば、市街化調整区域の建物を賃貸する場合に建築当時に工場として建てられている物件を事務所使用するためには用途変更が必用となります。
調整区域内の建物は、正規の手順を踏んで建築された建物であっても、建築当初の用途を、建築時の施主以外が用途変更することは基本的にはできません。
ですので、市街化調整区域内で用途が事務所以外の建物を賃貸することは基本的にできないと考えてください。
よくある質問
質問1|営業所(事務所)、休憩室・睡眠施設はアパートでも良いですか?
営業所(事務所)新設の場合の営業所、休憩室・睡眠施設は、必ずしも店舗事務所ではなく、アパートの一室でも構いません。
質問2|睡眠施設は設けなくても大丈夫ですか?
はい、睡眠施設を必ず設ける必用はありません。ただし、ドライバーが自宅に帰って休息を取ると、十分な休息時間を確保できないような運行計画のある場合は、睡眠施設の設置が必用になります。
質問3|休憩室・睡眠施設は事務所と別の場所でも構いませんか?
はい、休憩室・睡眠施設は事務所と別の場所にあっても構いません。
営業所新設|駐車場(車庫)の要件
運送業の営業所新設(事業所新設)認可申請では駐車場においても一定の要件を満たす必要があります。
その要件は、具体的には以下のとおりです。
- 適切な使用権限のあることを証明する書類が提出できること
- 事務所と駐車場(車庫)は直線距離で10㎞以内であること(地域による違いあり)
- 屋根付きの場合(有蓋車庫と言います)、都市計画法上の市街化調整区域と呼ばれる場所でないこと(事務所同様の例外あり)
- 駐車場出入口前の道路に関して車両制限令または幅員証明書が取得できること
- 駐車場(車庫)出入口の幅が基本的に6m~8mであること
- トラックを停めたときに車両と車両の間に50㎝以上の隙間ができること
- トラックを停めたときに車庫と車両の間に50㎝以上の隙間ができること
- 他の営業所と共同で使用する車両は、本拠地となる営業所で駐車場(車庫)が確保されていること
ポイント
※駐車場出入口に関して、2019年11月の法令改正で「駐車場出入口が交差点から5㎞以内にないこと」などの詳細な条件はなくなりました。ただし、交通安全が確保できる駐車場でなければならないことに変わりはありません。
車両制限令・幅員証明書について
車両制限令・幅員証明書とは、車庫出入口前の車道幅員が、道路法や車両制限令という政令に基づき、運送業に使用する車両に対して適切な広さがあることを証明する書類のことです。
車両制限令に基づく車道幅員は一般的な道路では、以下のような幅が必用となります。
相互通行の場合
営業所に配置する車両のうち、最大幅を2倍した数値に50cm足した幅があること。
EX. 車両の幅員が250cmの場合に必用な車道幅員
250cm×2+50cm=550cm → 550cm以上の車道幅員が必用
一方通行の場合
EX. 車両の幅員が250cmの場合に必用な車道幅員
250cm+50cm=300cm → 300cm以上の車道幅員が必用
車両と駐車場の大きさの関係
区 分 | 1台あたりの広さ |
---|---|
7.5トンを超えるもの | 36㎡以上 |
2.0トンロング越え~7.5トンまで | 28㎡以上 |
2.0トンロング | 1台20㎡以上 |
2.0トンまで | 15㎡以上 |
例)4tトラックが5台であれば、5台×28㎡=140㎡以上の大きさの駐車場が必要になります
まとめ
運送業の営業所新設の場合も、新規運送業許可取得時と同様の営業所・休憩室・睡眠施設、車庫の要件をクリアしなければいけません。
特に既存営業所から遠方の都道府県に進出される運送事業様は、新設営業所を置く地域の不動産仲介業者へ行く機会があまり作れないことが多く、苦労されるお客様が多いです。
ご不明な点はございませんか?
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