既に運送業許可をお持ちの運送事業者様が新たに営業の拠点となる場所を設けることを、一般的に「運送業の営業所新設(事業所新設)や営業所移転」と言います。
この記事では、営業所新設(事業所新設)が、どんな場合に必用になるのか、そして申請から認可までの手続きの流れや期間などについて運送業専門事務所が優しく解説致します。是非ご覧ください。
運送業の営業所新設・営業所移転の申請が必用なケース
冒頭でも述べたとおり、運送業の営業所新設(事業所新設)は、運送業を営んでいる既存営業所とは別の場所に運送業の営業所や車庫(駐車場)を設ける場合に必用となります。
これには、様々なパターンがあるので以下でケースごとに見ていきましょう。
パターン1|同一都道府県内で営業所新設を行う場合
同一都道府県内で運送業の営業所新設を行うのは下記のようなケースです。
- 既存営業所の車庫から10km(地域による違いあり)以上離れている場所に営業所を新たに設ける場合
- 既存営業所を廃止して、別の場所に営業所を当たらに設ける場合
など。
パターン2|他府県へ進出
上記パターン1が、他府県への進出となるケースです。
- 新たな荷主を確保して他府県へ進出
- 長距離運行の定期便が確保したため、着地となる県で営業所新設
など。
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営業所新設には一般貨物自動車運送事業の経営計画変更届書の提出が必用
運送業の営業所新設(事業所新設)をするには、一般貨物自動車運送事業の経営計画の変更認可申請を行います。
認可申請の提出先は、新設する営業所を管轄する地方運輸支局となります。下記で営業所新設認可申請の期間を確認しましょう。
営業所認可申請から認可が出るまでの期間
営業所新設認可申請から認可が出るまでの期間は2カ月~3カ月で、早ければ2ヶ月程度で認可が下ります。
申請書類に補正が入ると、運輸支局での審査が遅くなるため、認可が出るのも遅くなります。
注意
2019年11月の法改正で、申請から認可取得までの期間は、それまの1~2カ月から延長されて「2~3カ月」となりました。営業所新設までの期間はこれまでよりも長いスケジュールを取ってください。
営業所新設(事業所新設)認可手続きの流れ
営業所新設認可申請から、新営業所での運輸開始までの流れは以下のようになります。
① | 新設する営業所・休憩・睡眠施設と車庫の確保 |
② | 新設する車庫へ配置する車両の確保 |
③ | 新設する営業所に配置する運行管理者、運行管理補助者、整備管理者、整備管理補助者、運転者の確保 |
④ | 一般貨物自動車運送事業の営業所経営計画変更認可申請の作成と提出 |
⑤ | 認可取得 |
⑥ | 事業用自動車等連絡書の取得 |
⑦ | 車両の変更または移転登録 |
⑧ | 運輸開始 |
運送業の営業所新設4つの要件
営業所の新設には、下記4つの要件があります。
- 申請者の要件
- 運行管理者・整備管理者・運転者など配置人員の要件
- 営業所・休憩室・睡眠施設の要件
- 車庫(駐車場)の要件(車庫新設が必要な場合のみ)
- 車両の要件
※資金の要件はありません。
以下でざっくり各要件を確認しましょう。
申請者の要件
- すでに一般貨物自動車運送事業の許可事業者であること
- 車両停止以上の行政処分を受けている場合は、行政処分を受けることがなくなった日から3カ月以上経過していること。※酒気帯びなど悪質な違反の場合は6カ月以上
- 申請者が禁固刑以上の刑を受け、または受けることがなくなった日から2年を経過していること
など。
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運行管理体制の要件
新設する営業所に常勤する以下の人員が確保または確保予定であること。
- 営業所に配置する車両数の応じた数の運転者
- 運行管理者
- 運行管理補助者
- 整備管理者
- 整備管理補助者
運転者
運転者は新設営業所に所属する車両台数以上の人数の確保が必要です。また、運転者となるためには下記要件をクリアしなければいけません。
- 日々雇い入れられる者(日雇い)でないこと
- 2ヵ月以内の期間を定めて雇用されるものでないこと(試用期間中の者が2ヵ月を超えて雇用されるに至った場合を除く)
運行管理者
運行管理者は、運行管理者資格者証を有する者でなければなりません。
運行管理者となるには、運行管理者試験センターの実施する試験に合格するか、運行管理者基礎講習を含めた講習年1回を5回受講して実務経験で資格を取得します。
運行管理者は車両1台から29代までは一人以上。以後29台増えるごとに1人以上の確保が必要です。
運行管理補助者
運行管理補助者は、車両台数にかかわらず最低1人の選任が必用です。運行管理補助者となるには、運行管理者資格を有しているか、運行管理者基礎講習を修了している必用があります。
運行管理補助者を配置しないことも可能ですが、その際は運行管理者不在のときはトラック運送業を行うことはできません。
整備管理者
整備管理者は車両台数のかかわらず最低1人の選任が必要です。
整備管理者となるには3級以上の整備士資格を有しているか、トラックの点検整備などの実務経験が2年以上ある者が実務経験を積んだ会社から証明をもらい整備管理者船員前研修を修了する必要があります。
整備管理補助者
整備管理者補助者は、車両台数にかかわらず一人以上の選任が必要です、整備管理者補助者になるための要件はありません。
営業所・休憩睡眠施設の要件
営業所と休憩睡眠施設の主な要件は下記のとおりです。
適切な使用権原を有していること
自己所有の場合は建物登記簿謄本の原本、賃貸の場合は申請日時点で契約期間2年以上の賃貸借契約書の写し等、使用権原を疎明できる書類が提出できること。
契約期間が2年に満たない賃貸借契約の場合、契約更新は自動更新の旨の記載があれば問題ありません。
なお、賃貸借契約書中の建物使用目的に「事務所使用」の旨の記載が必要になります。
都市計画法に抵触しないこと
土地の市街地化の抑制や建物の建築など土地利用に関して定めた「都市計画法」という法律に抵触してはいけません。
都市計画法では、市街地化を抑制する市街化調整区域と市街化区域という区分が定められています。
基本的に市街化調整区域内にある建物は運送業の営業所・休憩睡眠施設として使用することはできません(例外あり)。
市街化区域の場合は、下記の用途地域以外であれば基本的に営業所・休憩睡眠施設として使用可能です。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域(戸建て且つ事務所面積150㎡以下なら可)
- 第2種中高層住居専用地域(2階以下の建物なら可)
農地法、建築基準法ほか関係諸法令に抵触していないこと
土地の地目が田畑の場合、農地法に定める農地に該当するため営業所・休憩睡眠施設を建築することができません。この場合は、農地転用許可を得る必要があります。
建築基準法では、建物を事務所使用する場合の建物の基準が定められているため同法に抵触することもできません。
このほか、消防法、河川法などに抵触する建物でないことも必要です。
規模が適切であること
営業所と休憩室については、何㎡以上ないといけないという広さの規定はありません。ただし、運送業事務や運転者がしっかり休息を取れる広さの確保は必用です。
睡眠施設においては、一人当たり2.5㎡以上の広さを確保しなければいけないので注意してください。
必用な什器備品を備えていること
営業所・休憩室には机・椅子やソファーの設置、営業所には最低限PC1台の設置が必要です。
睡眠施設には運転者が仮眠や睡眠をとるためのベッドや布団の備付けが必須となります。
マンションは営業所・休憩睡眠施設に使用できるか
各種要件を満たせばマンションの一室を営業所・休憩睡眠施設に使用することは可能です。
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車庫の要件
車庫の要件は下記のとおりです。
原則として営業所に併設していること
運送業に私用する車庫は、規定上、営業所と併設することになっています。ただし、そのような物件が出ることは稀なため営業所・休憩睡眠施設と車庫は離れた場所にあっても問題ありません。
計画車両すべてを容易に収容できること
事業に使用する車両すべてを容易に収容できる広さが必要です。その基準は下記3つです。
- 車庫と車両の境界の間隔が50センチ以上離れていること。
- 車両と車両の間が50センチ以上離れていること。
- 車庫内で車両が転回する際に道路や歩道に車両がはみ出さない広さがあること。
単純に車庫壁と車両間を50センチ以上確保できれば良いというわけではないので注意してください。
他の用途に使用される部分と明確に区分されていること
他の運送事業者が運送業の車庫として登録している場所を間借りする場合などは、他事業者が使用する場所と明確な区分が必要です。
また、申請時に車庫整備がされていない場合などは、認可取得までに整備後の写真提出が必須となります。
適切な使用権原を有すること
自己所有の場合は、土地登記簿謄本の原本、賃貸の場合は申請時に2年以上の契約期間がある賃貸借契約書の写しの提出ができること。
賃貸の場合で契約期間2年に満たない場合は、営業所同様に契約更新が「自動更新」の記載があれば使用権原があるとみなされます。
都市計画法等の関係諸法令に抵触しないこと
車庫においては、土地計画法上の市街化調整区域の物件でも問題ありません。ただし、農地の場合は農地転用が必要となります。
庇や建物内を車庫とする場合は、建築基準法の基準を満たす必用があり、市街化調整区域内の場合は建築基準法を満たせないケースが多いため注意してください。
車両制限令または幅員証明書の取得
車庫出入口前面道路は、道路を管轄する地方自治体等から車両制限令または幅員証明書を取得して車両の通行に十分は車道幅があることを証明します。
道路交通法上の安全が確保できること
車庫出入口においては、曲り角にないこと、交差点や横断歩道から5m以上離れていることなど、道路交通法上の安全確保ができることが必用です。
車両の要件
主な車両の要件は下記のとおりです。
- 最低5台以上の事業用自動車を確保または確保予定であること
- 車両に適切な使用権限があることを証明できる書類が提出できること
- NOX・PM法の規制地域の場合は、適合車両であること
申請者車両には、4ナンバー等の小型車が入っても大丈夫ですが、軽自動車は含むことができません。
また、けん引車と被けん引車は併せて1台として計算します。
まとめ
運送業の営業所新設(事業所新設)は、新規運送業許可と同様、事務所・駐車場の選定を間違えると時間を浪費するだけでなく、経済的損失を招きます。
特に、第1ステップとなる事務所・駐車場の要件は、法律的に「原則」と「例外」が存在しますのでとても慎重に行う必要があります。
なぜなら、基本的には、この場所は使用できないが、ある要件を揃えれば使用可能という細かな規定があるからです。
運送業の営業新設は、数ある許認可の中でも難易度の高い、運送業の案件を数多くこなしたプロの運送業専門行政書士に依頼しましょう。
当事務所の営業所・車庫移転・増設の報酬
サービス名 | 報酬額(消費税別途) | 備考 |
---|---|---|
営業所と車庫の新設 | 250,000円 | 既存営業所と車庫の廃止申請含む |
営業所のみの増設または移転 | 150,000円 | 既存営業所の廃止申請含む |
車庫のみの移転 | 150,000円 | 既存車庫の廃止申請含む |
車庫のみの増設 | 150,000円 |
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