- 建設・製造・商社・卸売など業種を問わず、既存法人のまま一般貨物自動車運送事業を追加できます。新会社の設立は必須ではありません。ただし既存の事務所・駐車場・車両・人員がそのまま許可要件を満たすとは限りません。
- 自社商品・資材を自社で運ぶ自家輸送は許可は不要。他社の貨物を有償で運ぶ場合は許可が必要な可能性があります。2026年4月1日からは違法な白トラへ委託した荷主等も100万円以下の罰金の対象です。
- 所要資金以上の自己資金を申請日から許可日まで常時確保。既存事業の支払いで残高が所要資金を下回らないよう注意が必要です。標準処理期間は3〜5か月、登録免許税は12万円です。
建設会社や製造会社、商社、卸売会社などが、現在行っている自社配送を発展させて、他社の貨物も運ぶ運送事業へ参入するケースがあります。
既存会社でも、一般貨物自動車運送事業の許可要件を満たせば、新たに運送会社を設立することなく、現在の法人で運送業を始めることが可能です。
ただし、現在保有している事務所、駐車場、トラック、従業員、預貯金を、そのまま運送業許可の要件に使えるとは限りません。営業所や車庫には使用権原・立地・広さなどの基準があり、車両や人員にも個別の要件があります。
また、自社の商品や資材を運ぶ"自家輸送"と、他社の貨物を有償で運ぶ一般貨物自動車運送事業とでは、必要な手続きが異なります。契約書や請求書に「運賃」と書いていない場合でも、実態として運送の対価を受け取っていれば許可が必要になる可能性があります。
2026年4月1日からは、違法な白ナンバートラックへ有償運送を委託した荷主等も新たに処罰対象となっています。既存事業の延長として配送を行っている会社も、自社の輸送が適法な自家輸送なのか、一般貨物自動車運送事業に該当するのかを改めて確認することが重要です。
この記事では、既存会社が一般貨物自動車運送事業へ参入する場合に確認すべき定款、営業所、車庫、車両、人員、自己資金などの条件を、主に愛知県を含む中部運輸局の現行基準をもとに解説します。
※許可基準や実務上の取扱いは、地方運輸局によって異なる場合があります。実際に申請する際は、営業所所在地を管轄する地方運輸局・運輸支局の最新資料を確認してください。
既存会社でも一般貨物自動車運送事業を始められる
一般貨物自動車運送事業は、運送業だけを専門に行う会社に限定された制度ではありません。
すでに建設業、製造業、卸売業、商社、倉庫業などを営んでいる法人であっても、貨物自動車運送事業法に基づく許可要件を満たせば、既存事業を継続しながら運送事業を追加できます。
建設会社・製造会社・商社なども運送業へ参入できる
会社の現在の業種を理由として、一般貨物自動車運送事業の許可申請ができなくなるわけではありません。例えば、次のような会社が運送事業への参入を検討するケースがあります。
- 建設会社が、建設資材や骨材、重機などの運送を他社から受託する
- 製造会社が、自社物流部門を活用して取引先の商品も運ぶ
- 帰り便の空車を活用し、他社の貨物を有償で運ぶ
- 商社や卸売会社が、商品販売とは独立して配送業務を受託する
- 倉庫会社が、保管だけでなく荷主への配送まで引き受ける
ただし、一般貨物自動車運送事業の経営許可を取得するには、営業所、車庫、原則5両以上の車両、運転者、運行管理者、整備管理者、自己資金などの基準を満たさなければなりません。
新しく運送会社を設立しなくても許可申請はできる
一般貨物自動車運送事業を始めるために、必ず新しい運送会社を設立する必要はありません。現在の法人を申請者として、既存法人の事業に一般貨物自動車運送事業を追加できます。
許可を受ける法人と、実際に運送事業を行う法人は一致させる必要があります。例えば、親会社が許可を取得し、その許可を子会社が自由に使用することはできません。営業所・車庫の使用権原、車両の所有・リース関係、運転者等の雇用関係、運行管理の指揮命令系統も、許可申請を行う法人を中心に構築する必要があります。
既存事業と運送事業を同じ法人で行う場合の考え方
既存事業と一般貨物自動車運送事業を同じ法人で行うこと自体は可能です。
ただし、運送事業には独自の安全管理・労務管理・帳簿管理が必要です。既存事業の一部門として運送事業を設ける場合でも、少なくとも次の事項を明確にしておきましょう。
- 運送部門の責任者・運行管理者・整備管理者の指揮命令系統
- 運転者の勤務割・乗務割
- 事業用車両と自家用車両の区分
- 運送契約・運賃の管理方法
- 点呼・整備・事故対応・苦情処理の体制
一般貨物自動車運送事業者には、毎事業年度終了後100日以内の事業報告書と毎年7月10日までの事業実績報告書の提出義務があります。
運送部門の売上・費用を把握できる経理体制を整えておくことが実務上重要です。
まず確認|現在の配送に運送業許可は必要?
既存会社が運送業への参入を検討する際は、まず現在行っている配送が一般貨物自動車運送事業に該当するかを確認します。判断の基本となるのは、「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送しているか」という点です。
自社の商品・資材を自社で運ぶだけなら原則として自家輸送
自社が所有する商品、製品、原材料、機械、資材などを、自社の従業員が自社で管理する車両を使用して運ぶ場合は、基本的には自社貨物の自家輸送と考えられます。例えば、次のような輸送です。
- 製造会社が自社製品を顧客の工場へ納品する
- 商社が自社で仕入れ、販売する商品を購入者へ配送する
- 建設会社が自社所有の資材を自社の工事現場へ運ぶ
ただし、形式上は商品販売となっていても、実態として商品を一時的に買い取った形にして他人の貨物を運送している場合などは、個別の契約・取引実態によって判断されます。
他社の貨物を有償で運ぶ場合は一般貨物に該当する可能性がある
他社から貨物の運送を依頼され、対価を受け取って普通・小型トラック等で運ぶ場合は、原則として一般貨物自動車運送事業に該当する可能性があります。例えば、次のようなケースです。
- 建設会社が他社の資材だけを運搬する
- 製造会社が取引先の商品を帰り便で運ぶ
- 卸売会社が自社商品とは関係のない貨物を配送する
- 関連会社の貨物を運送し、関連会社から運搬費を受け取る
「運賃」という名目で請求していなくても契約の実態で確認する
請求書に「運賃」「配送費」「運搬費」という項目がないからといって、必ず許可が不要になるわけではありません。一般貨物自動車運送事業への該当性は、名目だけではなく、次のような事情を含めて総合的に判断されます。
- 誰が貨物を所有しているか
- 誰の依頼に基づいて運んでいるか
- 運送行為に対する対価を受け取っているか
- 商品販売や工事請負と運送を切り離せるか
- 運送だけを単独で受託しているか
建設請負契約を締結し、建設工事の一環としてその工事に必要な資材を運び、運送自体への対価がない場合は、一般貨物の許可が不要となる場合があります。一方、建設工事を行わず、他社の資材の運送だけを有償で引き受ける場合は、一般貨物の許可が必要になる可能性が高くなります。
親会社・子会社・グループ会社の荷物なら自社貨物になるとは限らない
親会社と子会社は資本関係があっても、法律上は別の法人です。そのため、子会社が親会社所有の貨物を有償で運ぶ場合や、グループ会社間で運搬費を支払う場合には、「他人の需要に応じた有償運送」と判断され、許可が必要になる可能性があります。グループ会社間であっても、「同じグループだから白ナンバーで運べる」と判断せず、次の事項を確認してください。
- 貨物の所有者・運送を行う法人・運転者の雇用主
- 車両の所有者・使用者
- 運送費の支払者・契約の内容
トラックを持たず運送会社へ手配する場合は貨物利用運送の可能性もある
自社でトラックを保有せず、荷主から貨物の運送を引き受け、実際の運送を他のトラック運送事業者へ委託する場合は、貨物利用運送事業に該当する可能性があります。
- 自社貨物の配送を運送会社へ依頼する:原則として荷主としての運送委託
- 他社から運送を引き受け、自ら運送責任を負って運送会社へ委託する:貨物利用運送事業に該当する可能性
- 自社のトラックで他社貨物を有償運送する:一般貨物自動車運送事業に該当する可能性
既存会社が運送業へ参入する前に決めること
許可要件の調査を始める前に、誰が、何を、どの車両で、どのように運ぶのかを明確にする必要があります。
現在の法人に運送事業を追加するか別会社を設立するか
まず、現在の法人で一般貨物自動車運送事業の許可を取得するのか、運送事業を行う子会社・関連会社を新たに設立するのかを決めます。既存法人で取得する場合は、現在保有する預貯金、事務所、車両、人員などを活用できる可能性があります。一方、別会社を設立する場合は、運送事業の責任や会計を既存事業から分離しやすくなりますが、新会社側で施設・車両・人員・自己資金の要件を満たさなければなりません。
誰の貨物を運ぶのか、どの車両で何を運ぶのか
一般的な一般貨物自動車運送事業では、営業所ごと・車両の種別ごとに原則5両以上の事業用自動車を配置します。現在保有するトラックを利用する場合は、次の事項を確認してください。
- 運ぶ貨物に適した構造・積載量であるか
- 申請法人が使用権原を持っているか
- ローン・リース契約で事業利用が認められているか
- 許可後に事業用自動車として登録できるか
- 既存事業と運送事業の両方で使用する場合に運行管理上の支障がないか
既存法人の定款・登記目的を確認する
既存法人で一般貨物自動車運送事業を始める場合は、定款と登記事項証明書の事業目的を確認します。
定款の事業目的に運送事業が入っているか確認する
現在の定款・登記事項証明書に、一般貨物自動車運送事業を行える事業目的が記載されているか確認しましょう。中部運輸局の申請チェックでは、定款と登記事項証明書の内容や申請法人との整合性が確認されます。代表的な記載例としては、次のような表現があります。
- 一般貨物自動車運送事業
- 貨物自動車運送事業
- 貨物の運送及び配送に関する事業
現在の目的で予定事業を含められるか判断が難しい場合は、目的変更登記の要否を司法書士や法務局へ確認してください。事業目的がない場合は、株主総会等で定款変更の決議を行い、目的変更登記を行うことを検討します。許可申請の準備を進めてから事業目的の不足が判明すると、申請スケジュールへ影響する可能性があるため、早い段階で確認しましょう。
既存の営業所や事務所を運送業の営業所として使える?
本社や支店などの既存事務所を一般貨物の営業所として使用できる場合があります。ただし、既存事務所であることだけを理由に許可要件を満たすわけではありません。
本社・支店をそのまま営業所にできる場合
中部運輸局の基準では、営業所について主に次の要件を満たす必要があります。
- 申請法人が建物について概ね2年以上の使用権原を持つこと
- 都市計画法、建築基準法、消防法、農地法等に抵触しないこと
- 事業遂行上適切な規模を有すること(概ね10㎡以上が目安)
- 営業・運行管理に必要な備品等を備えていること
10㎡未満であっても、机・椅子・電話等を備え、運行管理等の事業遂行に支障がなければ認められる場合があります。
既存事業と同じ事務所を使用する場合の注意点
既存事業と運送事業が同じ事務所を使用すること自体が直ちに禁止されるわけではありません。ただし、運送事業の営業・運行管理を行える専有スペースを確保し、点呼記録、乗務記録、運転者台帳、車両関係書類などを適切に保管できる体制が必要です。他社や他法人と同じ事務所を利用する場合は、申請法人が実際に営業所を使用できることや、他の部分との区分について、より慎重な確認が必要になります。
賃貸物件・役員個人名義物件の確認
賃貸物件の場合は、契約期間が概ね2年以上であることが基本ですが、自動更新条項がある場合には2年未満でも使用権原があるものとして扱われることがあります。居住用の賃貸借契約や、事業利用・転貸が禁止された契約では営業所として使用できない可能性があります。
役員や代表者の個人名義で借りている物件については、申請法人自身に使用権原があるかを確認する必要があります。必要に応じて、賃貸借契約を法人名義へ変更するか、役員と法人の間で転貸・使用貸借契約を締結し、所有者から承諾を得てください。
既存の駐車場を一般貨物の車庫として使える?
社員用駐車場、資材置場、工場敷地内の駐車スペースなどを一般貨物の車庫へ転用できる場合があります。ただし、車庫には収容能力、区画、距離、道路、使用権原などの基準があります。
計画車両を収容できるか・間隔基準を確認する
事業用車庫には、計画するトラックを安全かつ容易に収容できる広さが必要です。中部運輸局では、車両と車庫の境界および車両相互間に50cm以上の間隔を確保することが求められています。
一般的な一般貨物自動車運送事業では、営業所ごと・車両種別ごとに原則5両以上を配置するため、少なくとも計画車両数に対応する車庫面積が必要です。車両の寸法だけで計算せず、境界・車両間の間隔や出入りに必要なスペースも考慮してください。
資材置場と車庫を併用する場合の注意点
建設会社等では、資材置場とトラック駐車場を同じ敷地内に設けていることがあります。車庫として申請する面積に、資材置場、社員用駐車場、自家用車用スペースなどを含めないよう注意が必要です。車庫部分と他用途部分を明確に区分し、実際にも申請どおりの状態で維持する必要があります。
営業所から車庫までの距離・前面道路を確認する
車庫は原則として営業所に併設します。営業所に近接し、通常徒歩で連絡できる場所は併設とみなされる場合があります。併設できない場合、中部運輸局管内では原則として営業所から直線10km以内であることが必要です。(※地域や管轄する運輸支局によっては例外あり)
また、車庫の使用権原についても概ね2年以上が必要です。
車庫の敷地が広くても、前面道路から計画車両が適法に出入りできなければ車庫として使用できない可能性があります。前面道路が車両制限令に適合しているかを確認し、必要に応じて道路幅員証明書等を準備します。特に大型車両やトレーラーを導入する場合は、道路幅だけでなく、交差点や車庫出入口での旋回についても確認しましょう。
既存のトラックを一般貨物の車両として使える?
既存法人が保有する白ナンバートラックを、許可申請の計画車両として使用できる場合があります。新規許可の申請時点で、計画車両がすでに緑ナンバーである必要はありません。自社保有車両については、車検証等により申請法人の使用権原を確認し、許可後に事業用自動車として登録します。
会社所有のトラックでも確認が必要なケース
会社が所有する車両であっても、次のような場合は計画車両として使用できない、または追加確認が必要です。
- 輸送する貨物に車両の構造・積載量が適していない
- 車検証上の所有者・使用者と申請法人の関係が不明確
- 既存契約により事業用利用が制限されている
- 必要な最低車両数(原則5両以上)を満たしていない
貨物軽自動車運送事業で使用する軽自動車は別制度の車両であり、通常の一般貨物自動車運送事業における原則5両の最低車両数には算入しません。けん引車と被けん引車を使用する場合は、最低車両数の算定上、けん引車1両と被けん引車1両の一対を1両として数えます。
リース・ローン中の車両、役員個人名義の車両
リース車両を使用する場合、中部運輸局では契約期間が概ね1年以上であるリース契約書等によって使用権原を確認します。ローン購入や所有権留保付きの車両については、車検証上の使用者、割賦契約、残債、事業利用の可否などを確認してください。
代表者や役員の個人名義の車両を申請法人が使用する場合は、法人に適切な使用権原があることを証明する必要があります。「社長の車だから会社で自由に使える」と判断することはできません。個人から法人への売却、リース、使用貸借などの方法を検討し、車両の所有者、使用者、保険、ローン契約等との整合性を確認してください。
既存社員を運転者・運行管理者・整備管理者にできる?
必要な資格や勤務条件を満たせば、既存社員を一般貨物部門へ配置できる場合があります。
既存社員を運転者として配置する場合
既存社員を運転者にする場合は、使用する車両に対応する運転免許を保有していることに加え、事業計画を遂行できる勤務体制を組めることが必要です。一般貨物では、「車両が5台だから運転者も必ず5人」という全国一律の固定人数はありません。車両数、運行回数、休日、拘束時間、休息期間などを踏まえて、事業計画の遂行に十分な員数を確保します。
建設作業員・営業社員などとの兼務をどう考えるか
建設作業員や営業社員が運転者を兼務することが、一律に禁止されているわけではありません。ただし、運転以外の業務時間も含めて、改善基準告示等に適合した勤務割・乗務割を作成する必要があります。
日中に建設作業を行い、その前後に長時間運転を行うような計画では、拘束時間や休息期間の基準を満たせない可能性があります。双方の労働時間を合算して確認してください。
運行管理者・整備管理者の確保
既存社員が貨物の運行管理者資格者証を持っている場合は、営業所の常勤運行管理者として選任できる可能性があります。運行管理者資格者証は、試験合格による方法のほか、貨物の運行管理に関して5年以上の実務経験があり、その期間中に5回以上(うち少なくとも1回は基礎講習)の所定講習を受講するなどの要件を満たして取得する方法もあります。
必要な運行管理者数は、原則として営業所に配置する事業用自動車が29両までなら1名で、その後は30両増すごとに1名を追加します。
整備担当者を整備管理者として選任する場合の代表的な資格要件は次のとおりです。
- 一級・二級・三級の自動車整備士技能検定に合格している
- 対象車種について2年以上の点検・整備等の実務経験があり、整備管理者選任前研修を修了している
中部運輸局では、事業用自動車5両以上の使用の本拠ごとに、原則として常勤の有資格整備管理者を確保します。
既存法人の自己資金はどのように確認される?
中部運輸局では、事業計画に基づいて算定した所要資金以上の自己資金が必要です。既存法人で申請する場合も、現在の会社の預貯金等をもとに資金要件が確認されます。
自己資金の確認方法と注意点
自己資金は、原則として申請事業に係る預貯金の額によって確認されます。中部運輸局では、申請日時点と、許可・不許可の処分までの適宜の時点に、残高証明書等による確認が行われます。
既存会社の場合、銀行口座に十分な残高があっても、その資金を運送事業の開始資金として確保できることが重要です。既存事業の仕入れ、給与、借入返済、税金などにも使用される資金と、一般貨物の所要資金を同じ資金に重複して充てることはできません。申請後も通常の事業支払いが発生することを踏まえ、所要資金を下回らないよう余裕を持って資金計画を作成してください。
預貯金以外の流動資産・借入金がある場合
中部運輸局長が認める場合には、預貯金以外の流動資産を自己資金へ含められる場合があります。その場合、申請日時点の「見込み貸借対照表等」により資産額を確認します。売掛金等が必ず自己資金として認められるわけではないため、事前に運輸支局へ相談してください。
借入金があることだけを理由に、許可申請ができなくなるわけではありません。ただし、まだ融資が実行されておらず口座へ入金されていない「融資予定額」だけを申請時点の預貯金として扱うことはできません。融資が実行されて預貯金として確保されている場合に、借入金が含まれていることだけを理由として直ちに申請できなくなるわけでもありません。
業種別|既存会社が運送業へ参入するケース
建設会社が運送業を始めるケース
建設会社が自社の工事で使用する自社所有の資材を、自社従業員と自社車両で運ぶ場合は、基本的には自家輸送と考えられます。建設工事の請負契約を締結し、その工事に密接不可分な作業として資材を運び、運送自体への対価を受け取っていない場合には、一般貨物の許可が不要となる場合があります。一方、次のような場合は許可が必要になる可能性があります。
- 他社の資材や骨材の運送だけを請け負う
- 建設工事を行わず、ダンプでの運搬だけを行う
- 他社所有の重機・資材を有償で運ぶ
- 親会社や元請会社から運搬費を受け取って貨物を運ぶ
製造会社・商社・卸売会社が運送業を始めるケース
製造会社が自社製品を自社トラックで顧客へ配送するだけであれば、基本的には自社貨物の輸送です。ただし、取引先の商品を有償で運ぶ、帰り便で他社貨物を運ぶ、グループ会社の製品を運搬費付きで運ぶなどの場合は一般貨物への該当性を確認します。
商社・卸売会社も同様で、自社商品の配送は自家輸送ですが、顧客所有の商品を有償で運んだり、商品売買とは別に配送業務を引き受けたりする場合は一般貨物の許可が必要になる可能性があります。自社で車両を保有せず他の運送会社を使って顧客の貨物を運ぶ場合は、貨物利用運送事業の登録・許可が必要になることもあります。
一般貨物ではなく別制度を選んだ方がよいケース
軽自動車だけで配送するなら貨物軽自動車運送事業
三輪以上の軽自動車や二輪自動車だけを使用して、他人の需要に応じ有償で貨物を運ぶ場合は、一般貨物ではなく貨物軽自動車運送事業に該当します。届出制ですが、営業所、車庫、休憩施設、運行管理体制、損害賠償能力などの要件があります。
自社でトラックを持たず運送会社へ委託するなら貨物利用運送
自社でトラックを運行せず、荷主から運送を引き受けて実運送事業者へ委託する場合は、貨物利用運送事業に該当する可能性があります。一般貨物と貨物利用運送では、申請手続き・財産要件・責任関係が異なります。
産業廃棄物を運ぶ場合は産廃収集運搬許可との関係も確認する
他人の産業廃棄物を収集・運搬する事業を行う場合は、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業許可が必要になります。産廃許可を持っていれば一般貨物許可が自動的に不要になる、あるいは一般貨物許可があれば産廃許可が不要になるという関係ではありません。委託契約、処理業務との一体性、誰が運送対価を受け取るかなどをもとに、双方の許可要否を確認してください。
既存会社で一般貨物許可を取るまでの進め方
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| ①現在の輸送内容を確認する | 貨物の所有者・契約相手・運送対価の有無を整理する |
| ②既存法人か新会社かを決める | 資産・人員・責任・会計・取引関係を比較して申請主体を決める |
| ③定款・登記目的を確認する | 一般貨物の事業目的を確認し、必要に応じて目的変更登記を進める |
| ④施設・車両・人員を調査する | 使用権原・関係法令・距離・前面道路・車両構造等を調査する |
| ⑤自己資金を確認する | 所要資金を計算し、既存事業の支払い後も所要資金以上を維持できるか確認する |
| ⑥不足分を準備する | 追加賃借・車両購入リース・採用・資格取得などを進める |
| ⑦経営許可を申請する | 管轄運輸支局へ申請書を提出し、法令試験を受験する |
| ⑧許可後の手続き・運輸開始 | 登録免許税・管理者選任・社会保険・任意保険・車両登録等を行い事業を開始する |
中部運輸局の一般貨物自動車運送事業の標準処理期間は3〜5か月です。申請書の補正や申請内容の変更に要する期間は含まれません。
申請後は、法人の場合、原則として許可後に当該事業へ専従する常勤役員1名が法令試験を受験します。中部運輸局では、新規許可事業者に対して、許可後1年以内に運輸を開始する条件が付されます。登録免許税は12万円です。
新会社を設立した方がよい?既存法人で取得した方がよい?
既存法人で取得する場合と運送子会社を作る場合の比較
既存法人で取得する場合は、現在の預貯金、営業所、車庫、車両、従業員を活用できる可能性があります。一方で、既存事業の資金需要や労務管理と運送事業を両立させる必要があります。
運送部門を子会社化すると、事業責任や会計を分離しやすくなります。ただし、新会社側で許可要件を満たさなければなりません。施設や車両の名義をすべて必ず子会社へ移さなければならないわけではありません。親会社からの賃貸・リース・使用貸借、従業員の転籍・出向などにより、子会社が適切な使用権原と指揮命令権限を確保する方法もあります。契約内容と実際の管理実態を許可基準に整合させることが必要です。
既存会社が荷主となり、新設した運送子会社へ運送を委託する場合は、親子会社間であっても運送契約、運賃、責任範囲を明確にします。子会社が親会社の貨物を有償で運ぶ場合は、子会社側に適切な運送事業許可が必要です。会社を分けるかどうかは、許認可だけでなく、事業責任、会計、税務、労務、資産管理などを含めて判断してください。
既存会社が運送業へ参入するときによくある注意点
- 自社輸送の延長だから許可不要だと思い込む:自社製品の配送から始まり、取引先や関連会社の貨物まで運ぶようになると、一般貨物へ該当する可能性があります。
- 他社貨物を運んでから許可の必要性に気づく:実際に有償運送を始めた後で許可を申請しても、無許可営業が適法になるわけではありません。事業開始前に許可の要否を確認しましょう。
- 既存事務所なら無条件で営業所にできると思う:使用権原、広さ、関係法令、必要設備などの基準を満たす必要があります。
- 既存駐車場なら車庫にできると思う:車両間隔50cm以上・区画・前面道路・営業所との距離(直線10km以内)などを満たさない場合があります。
- 既存社員をそのまま配置すれば人員要件を満たすと思う:勤務時間・乗務時間や運行管理業務を適切に遂行できる体制が必要です。
- 既存事業の支払いで自己資金が減ってしまう:申請後も所要資金以上の自己資金を維持する必要があります。資金繰り表を確認し、必要に応じて申請事業用の資金を別口座で管理するなど検討してください。
既存会社の運送業参入でよくある質問
Q. 建設会社でも一般貨物自動車運送事業の許可を取得できますか?
取得できます。現在の業種に関係なく、営業所、車庫、車両、人員、自己資金などの許可要件を満たせば申請できます。
Q. 製造会社が自社製品を運ぶだけでも緑ナンバーが必要ですか?
自社が所有する製品を、自社の従業員と車両で運ぶだけであれば、基本的には自家輸送となり、一般貨物の許可が不要な場合があります。他社の商品や取引先所有の貨物を有償で運ぶ場合は別途確認が必要です。
Q. 取引先の商品をついでに運ぶ場合も許可が必要ですか?
「ついで」であっても、他社の貨物を有償で運べば、一般貨物自動車運送事業に該当する可能性があります。帰り便・混載・短距離などは、許可要否を左右する決定的な要素ではありません。
Q. 親会社・子会社の商品だけなら白ナンバーで運べますか?
親会社と子会社は別法人です。一方の会社が他方の所有する貨物を有償で運ぶ場合は、一般貨物の許可が必要になる可能性があります。
Q. 既存の白ナンバートラックを一般貨物で使えますか?
車両の構造・使用権原などの要件を満たせば、計画車両として申請し、許可後に事業用自動車へ登録できる場合があります。
Q. 今使っている本社事務所を営業所にできますか?
使用権原(概ね2年以上)、関係法令、広さ(概ね10㎡以上が目安)、設備などの条件を満たせば使用できる可能性があります。
Q. 既存の社員を運転者として配置できますか?
車両に対応する運転免許を持ち、勤務時間・乗務時間等の基準を満たせる場合は配置できます。既存業務との兼務がある場合は、双方の労働時間を合算して確認します。
Q. 赤字決算の会社でも運送業許可を申請できますか?
赤字決算であることだけを理由に、直ちに申請できなくなるわけではありません。ただし、所要資金以上の自己資金を確保できること、資金調達の裏付けがあること、社会保険等の法令遵守体制が整っていることなどが必要です。
Q. 運送部門だけ子会社にすることはできますか?
可能です。ただし、子会社が許可申請者となり、子会社側で施設、車両、人員、管理体制、自己資金などの要件を満たす必要があります。
Q. 一般貨物ではなく貨物利用運送を選んだ方がよい場合はありますか?
自社でトラックを保有・運行せず、荷主から引き受けた運送を他の運送会社へ委託する事業であれば、貨物利用運送事業を検討します。一般貨物と貨物利用運送では事業形態や責任が異なるため、予定する物流スキームに応じて選択してください。
まとめ
既存会社が一般貨物自動車運送事業へ参入する場合、新たな運送会社の設立は必須ではありません。建設会社、製造会社、商社、卸売会社なども、現在の法人で許可要件を満たせば運送業を追加できます。
既存法人が参入する場合の出発点は、今ある事務所、駐車場、車両、従業員、資格者、預貯金のうち、何を一般貨物の許可要件へ活用できるかを確認することです。中部運輸局では、営業所・車庫は使用権原2年以上・営業所は概ね10㎡以上・車庫は営業所から直線10km以内・車両間隔50cm以上が必要です。
車両は営業所ごと・車両種別ごとに原則5両以上必要です。運転者について固定の「5人」という基準はありませんが、事業計画を遂行できる十分な員数と、必要な運行管理者・整備管理者を確保しなければなりません。
また、現在行っている配送が自社貨物の自家輸送なのか、他社貨物の有償運送なのかを確認することも重要です。親会社・子会社間であっても、別法人の貨物を有償で運べば、一般貨物の許可が必要になる可能性があります。
既存法人の預貯金を自己資金として使用する場合は、既存事業の支払い後も所要資金以上を維持できるか確認してください。自己資金は申請日だけでなく、許可日まで常時確保する必要があります。
現在の配送が一般貨物自動車運送事業に該当するか判断が難しい場合や、既存の事務所・車庫・トラック・人員を許可申請へ使用できるか確認したい場合は、物件契約や実際の有償運送を始める前に、管轄運輸支局または行政書士などの専門家へ相談しましょう。
【参考文献】
- 国土交通省 中部運輸局「法令・公示|貨物自動車運送事業(緑ナンバー)」
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/truck/ippan_hourei.html - 国土交通省 中部運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案の処理方針について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/truck/ippan/hourei/cbt_kouji_ippan.pdf - 国土交通省 中部運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可並びに事業計画変更認可申請事案に係る標準処理期間について」
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/truck/ippan/hourei/cbt_kouji_shorikikan.pdf - 国土交通省「違法な『白トラ』への規制が令和8年4月1日から強化されます」
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000346.html - 国土交通省「自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993363.pdf - 国土交通省「産業廃棄物の収集運搬と貨物自動車運送事業法上の取扱いに関する周知資料」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001992616.pdf - e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083 - 厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html