運転者の労働時間

コラム

トラック運転手の労働時間についてわかりやすく解説

行政書士法人シフトアップ 代表社員 川合智

川合 智

運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」の社長★トラック運送会社に12年勤務後に開業。著書【トラック運送業の運輸局監査対策】【行政書士のための運送業許可申請のはじめ方】★行政書士向けに運送業許可を教える「くるまスクール」主催者

2019年4月に改正労働基準法が施行されたこともあり、運送業界においてもトラック運転手の労働環境、特に労働時間の改善は重要な課題となっています。人材不足もあいまって運転手の労働時間問題を解決しないと、今後の事業継続に影響が出る可能性も少なくありません。

そこで、この記事ではトラック運転手の労働時間に関する問題点や改善方法などについてまとめております。まずは、トラック運転手の労働時間に関する問題点から見ていきましょう。

 

トラック運転手の労働時間に関する問題点

トラック運送業界に身を置いている方であれば、運転手の労働時間が長時間に及ぶことが珍しくないことはご存じでしょう。

例えば、海上コンテナのヤードや物流センターでの荷積みの待ち時間が数時間になる場合でも、定められた時間に荷下ろしをしないといけないため運転手の心に負担がかかることは否めません。

それでも会社の売上は維持する必要がある。だから運転手に負担をかけていることはわかっているが仕事を断ることができない。荷主に待ち時間をなんとかして欲しいと言っても改善されることは望めない。

このように、どうにもならない状況の中で会社運営せざるを得ない状況があるのが、トラック運送業界の実情と言えるでしょう。

2024年改正の改善基準告示を解説!いつ/拘束時間/休憩時間/罰則etc」も併せてお読みください。

 

2019年の改正労働基準法のポイント

2019年4月1日に施行された改正労働基準法において、勤怠管理に関わる法改正のポイントは以下の4点です。

 

ポイント1|年次有給休暇取得の義務化

一つ目は年次有給休暇取得の義務化です。企業は従業員に「年に5日以上の有給休暇を取得させることが義務」となりました。

改正労働基準法の4つのポイントの中でも、この年次有給休暇を取得させる義務がトラック運送会社に一番関係してくる内容でしょう。

人手不足のトラック運送会社にとって、ドライバーに年5日の有給休暇を与えることは現実的に難しいと言わざるを得ません。

 

ポイント2|残業時間(時間外労働)の上限規制と罰則

2つ目は残業時間の上限規制と罰則です。従来、残業時間に関する労使協定(通称、36協定と言います)を労使で結べば、厚生労働省の通達で定められた上限以上の残業が可能でした。

しかし、改正後の残業時間は、基本的に月45時間以内、年間360時間以内で、36協定を結んだ場合は以下のようになります。

  • 残業時間は年間720時間以内
  • 残業時間と休日労働の合計は月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計は、2ヵ月平均。3ヵ月平均、4ヵ月平均、5ヵ月平均、6ヵ月平均の全てが1ヵ月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヵ月まで

つまり、36協定を結んでも、残業時間は1か月100時間、年間720時間を越えられず、また年間6か月までの複数月の平均が80時間を超える残業はできなくなりました。違反した場合、半年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。

 

ポイント3|フレックス制の清算期間を3か月まで延長

3つ目はフレックス制の清算期間を3か月まで延長したことです。従来、フレックス制の清算期間は1か月であり、月をまたいでの労働時間の調整ができませんでした。

しかし、改正後は清算期間が3か月まで延長でき、調整が可能となります。3か月の労働時間の平均が週40時間以内で、1か月の平均が週50時間以内であれば、割増賃金の支払は不要となります。

 

ポイント4|高度プロフェッショナル制度の実施

4つ目は高度プロフェッショナル制度の実施です。同制度においては、書面による本人の同意、労使協定により、年収1,075万円以上の専門職への労働時間の規制、残業、割増賃金が規定の対象外となります。

 

トラック運転手の労働時間を正確に把握するには

トラック運転手の労働時間を正確に把握するには、何が必要でしょうか。以下では、使用者が措置を講ずるべき内容を示した厚生労働省によるガイドラインについてみていきます。

 

労働基準法における労働時間の把握策

労働基準法は、使用者が労働時間を適切に管理する責任があるとしています。厚生労働省は、労働時間の把握に関して自己申告制の不適切な運用や残業賃金の未払い、長時間労働がなされている現状を踏まえ、以下のような基準を示しています。

 

①始業・終業の時刻を勤務日ごとに記録する

使用者は、労働者の勤務日ごとに始業時刻、終業時刻を確認、記録し、それをもとに労働時間を把握、確定する必要があります。

 

②客観的な方法で記録を確認する

労働時間に関してはできるだけ客観的な方法で把握する必要があります。そのためには使用者が自ら確認して記録すること、タイムカードなど客観的な記録に基くことが大切です。

自己申告制による場合は、申告された労働時間が実際の時間に合っているか実態を調査することも必要です。

 

③労働時間に関する記録を保存する

労働時間に関する記録は保存しておく必要があります。タイムカードや残業報告書などは、最後の記録がなされた日から3年間の保存が求められます。

 

④運行管理者などが労働時間を管理する

運行管理者は、労働時間をしっかり管理し、管理上の問題点の把握とその解消が必要です。

 

⑤「労働時間等設定改善委員会」などを活用する

労働時間等設定改善委員会は、事業主および労働者それぞれを代表する者を構成員とし、労働時間等の設定の改善を図るための措置を図る機関です。委員の半数が労働者代表の推薦に基づいて指名されているなど一定の条件を満たしていれば、委員会の決議を労使協定に代替させることができます。

 

トラック運転手の労働時間管理で注意すべき点

トラック運転手の労働時間管理で注意すべき点として挙げられるのは、会社の目が届かないなかでの勤務状況の把握です。トラック運転手は会社を離れて運転業務に従事するため、出社や退社時間以外は、何をしているか把握しにくい状況にあります。

特に重要なのは休憩時間の把握です。運転手が面倒くさがり、休憩時間をしっかりと日報やタコグラフに記録していないことがあるので、粘り強くその記入を指導していくことも必要となります。

 

まとめ

トラック運転手の労働時間に関する問題点、トラック運転手の労働時間に関する定め、2019年の労働基準法改正のポイント、トラック運転手の労働時間を正確に把握するに必要なこと、トラック運転手の労働時間管理で注意すべき点について解説してきました。

運送事業者様においては、労働基準法などにおける労働時間の規定や解釈など疑問に思われることが多々あるかもしれません。

2024年改正の改善基準告示を解説!いつ/拘束時間/休憩時間/罰則etc」も併せてお読みください。

 

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