貨物自動車運送事業法は、運送業をおこなううえで避けては通れない法律です。
しかし、以下のように思っている方も多いのではないでしょうか。
「運送業とどんな関係がある法律なの?」
本記事では、そのような方に向けて、貨物自動車運送事業法の概要をわかりやすく解説していきます。どのような法律なのかざっくりと知りたいという方も、ぜひ参考にしてみてください。
貨物自動車運送事業法とは
貨物自動車運送事業法とは、その名の通り、貨物自動車運送事業について規定されている法律のことです。
そのほかにも、運送業許可についての要件や、自動車運送の適正化に関する事業についての内容が定められています。
貨物自動車運送事業法の目的
貨物自動車運送事業法の目的は、以下のように定められています。
この法律は、貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとするとともに、貨物自動車運送に関するこの法律及びこの法律に基づく措置の遵守等を図るための民間団体等による自主的な活動を促進することにより、輸送の安全を確保するとともに、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(引用元:貨物自動車運送事業法 第一条)
つまり、貨物自動車運送事業法は、貨物自動車運送事業の運営を正しくおこなうことを目的として制定された法律ということです。
そのほかにも、貨物自動車運送に関する法律や措置を守るために、民間団体の自主的な活動を促進して輸送の安全を確保したり、貨物自動車運送事業の発達を図り、公共の福祉の増進を手助けしたりすることを目的としています。
物流三法にも制定されている
貨物自動車運送事業法は、物流三法にも制定されています。
物流三法とは、競争の促進と輸送安全の確保を目的として制定された物流二法(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)に、鉄道事業法が追加された法律のことです。
貨物運送の柔軟な事業展開を促進するために、一般貨物自動車運送事業の営業区域の規制や運賃の事前届出制の廃止を目的として、2002年に改正されました。
貨物自動車運送事業の種類
貨物自動車運送事業法で定められている運送事業は、以下の3つに分類されます。
貨物自動車運送事業 | |||
一般貨物自動車 運送事業 |
特定貨物自動車 運送事業 |
貨物軽自動車 運送事業 |
|
事業内容 | 他人の要求に応じて自動車で貨物を運送する | 特定の人の要求に応じて自動車で貨物を運送する | 他人の要求に応じて軽自動車などで貨物を運送する |
許認可方法 | 許可制 | 許可制 | 届出制 |
一つずつ解説していきます。
一般貨物自動車運送事業
一般貨物自動車運送事業とは、他人の要求に応じて、運賃をもらって貨物を運送する事業です。
軽自動車および二輪自動車以外の自動車を利用する必要があります。
一般貨物自動車運送事業をはじめる場合は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。
一般貨物自動車運送事業については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
【運送業許可とは】種類/必要不要/要件/流れ/費用/期間すべて解説
特定貨物自動車運送事業
特定貨物自動車運送事業とは、特定の人の要求に応じて、運賃をもらって貨物を運送する事業です。
一般貨物との違いは、荷主が特定されているか、不特定かにあります。
対象となる車両は一般貨物と同じく、軽自動車および二輪自動車以外の自動車です。
特定貨物自動車運送事業をはじめる場合は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。
貨物軽自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業とは、他人の要求に応じて軽自動車や125cc超えの自動二輪車で貨物を運送し、その対価として運賃を受け取る事業です。
貨物軽自動車運送事業をはじめる場合は、営業所の名称や場所、事業用自動車の概要など、国土交通省令で定められている事項を国土交通大臣に届け出る必要があります。
貨物軽自動車運送事業については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【見逃しNG】黒ナンバー登録・取得方法(軽貨物運送)のココが知りたい
一般貨物と特定貨物は許可制
前述した通り、一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業は、国土交通大臣から許可を得てはじめて運輸を開始することができます。
許可基準の要旨
許可が与えられる基準は以下の通りです。
- 事業の計画が輸送の安全確保のために適切であるか
- その他、事業の遂行上適切な計画があるか
- 事業を自ら適確に遂行できる能力があるか
簡単にまとめると、輸送事業を安全かつ適切におこなえる能力が備わっているかを許可の基準にしているということです。
主な審査項目
許可を得るにあたって、いくつかの審査項目を通過する必要があります。
主な審査項目は以下の8つです。
- 営業所
- 事業用自動車
- 車庫・駐車場
- 休憩・睡眠施設
- 運行管理体制
- 資金計画
- 法令遵守
- 損害賠償能力
資金計画と運行管理体制は、8項目のなかでも準備することが難しいといわれています。
シフトアップでは、運送業許可についてのご相談や申請の代行も承っています。
【見逃しNG】運送業許可の要件が誰でも5分でわかる
法令試験について
運送業の許可を得るためには、法令試験に合格する必要があります。
許可申請をおこなったのが法人であれば常勤の役員1名が、個人事業主であれば申請した本人が法令試験を受験します。
試験は2か月に1度おこなわれ、不合格になった場合は1度だけ再受験も可能です。しかし、2度目の試験にも不合格となってしまった場合には、申請自体を取り下げられてしまいます。
「再試験でも不合格だった場合は、二度と運送業許可を取得することができないの?」
…と思われがちですが、そんなことはありませんので安心してください。
そのような場合には、再度許可申請書を提出すれば、再度法令試験を受けることができます。
法令試験については以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
運送業(一般貨物)役員法令試験についての疑問を専門家が解消
貨物軽自動車運送事業は届出制
貨物軽自動車運送事業は、国土交通大臣に届出を提出する必要があります。前述した2つの運送業許可よりは比較的容易に届出を受け付けてもらうことができます。
貨物軽自動車運送事業の届出に必要な要件は以下の通りです。
- 営業所
- 事業用自動車
- 車庫・駐車場
- 休憩・睡眠施設
- 運行管理体制
- 法令遵守
- 損害賠償能力
許可申請とは異なり、車両1台、人数1名からはじめられるのが、貨物軽自動車運送事業の大きなメリットです。
貨物自動車運送事業法における代表的な違反行為
最後に、貨物自動車運送事業法における代表的な違反行為を3つ紹介します。
- 無許可で営業する
- 運行管理者が未選任
- ナンバー貸し
無許可で営業する
1つ目の違反行為は、無許可営業です。
貨物自動車運送事業をおこなう場合は、国土交通大臣に許可申請書または届出書を提出し、認可を受ける必要があります。
無許可のまま営業をおこなうと、貨物自動車運送事業法違反となり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。悪質だと判断された場合には、懲役刑と罰金刑が併科されることもあります。
運行管理者が未選任
運行管理者が未選任だった場合も、貨物自動車運送事業法違反に該当します。
運行管理者とは、事業用自動車の安全な運行を管理する人のことで、運送業をはじめる際には必ず1名以上の選任が必要になります。
もし、急な退職などで運行管理者が不在の状態が1か月以上続いた場合には、「30日間の事業停止」という重い行政処分が下されます。
事業停止処分は運送業のなかでも特に重い罰則となるため、十分に注意してください。
ナンバー貸し
ナンバー貸しも、貨物自動車運送事業法違反の対象になります。
ナンバー貸しとは、雇われていないドライバーが一般貨物自動車運送事業の許可を持った運送会社にトラックを増車してもらい、許可を取らずして運送業をおこなう行為です。
車検証なども完全に運送会社名義のため、名義貸しともよばれます。
ドライバー側は許可を取らなくても運送業ができますし、運送会社は何もしなくてもお金が入ってくるため、両方にメリットがあります。
しかし、どれだけメリットがあったとしても、ナンバー貸しは立派な違反行為です。
ナンバー貸しをおこなった場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。悪質だと判断された場合は併科されることもあります。
トラック運送事業者が違反行為を行ったときの行政処分については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてお読みください。
運送会社の行政処分と違反点数制度を優しく解説【最新版】
まとめ
本記事では、貨物自動車運送事業法の概要について詳しく解説しました。
貨物自動車運送事業法は、貨物自動車運送事業の運営を正しくおこなうことを目的として制定された法律です。
運送業許可の基準についてはもちろん、法令試験や違反行為に関しても詳しく記載されています。いわば、運送業のバイブルのような法律です。
貨物自動車運送事業法について理解しておくことで、正しい知識のもと、運送事業をおこなうことができます。
知らない間に違反をして、重い行政処分を受けないようにするためにも、貨物自動車運送事業法をしっかりと理解しておくことが重要です。
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