運送業許可申請(正式には一般貨物自動車運送事業許可申請)から許可を取得して運送業を開業するまでの流れのご説明です。
前半で運送業許可申請をするまでの大まかな流れ、後半で申請受付から運送業開業までの流れをご説明しております。運送業をはじめたいという方は是非ご覧ください。

運送業許可の申請から開業するまでの全体の流れ
開業までの期間は人によって異なりますが、申請から運送業許可取得までは約4〜5ヵ月、開業までは約2〜3ヵ月かかるケースが多いです。
全体の流れは以下の通りです。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 開業 | ||||
申請書の作成・必要書類収集 | 申請書類を運輸支局へ提出 | 審査期間(4~5ヵ月) | 運送業許可書の交付式 | 運行管理者・整備管理者選任届提出 | 運輸開始前確認の提出 | 緑ナンバー取得 | 運輸開始届・運賃料金設定届の提出 | |||||
社保加入・36協定の締結 | ||||||||||||
役員法令試験 | 残高証明書の提出(2回目) | 登録免許税納付 |
運送業許可の申請をするまでの流れ
運送業許可申請を行うには、許可取得のための条件をクリアして申請書類を作成しなければいけません。申請書類作成までの大まかな流れは以下の通りです。
- 自己資金の確保(1,500万円~2,500万円ほど。平均1,800万円ほど。)
- 車両の台数に合わせた人数の運転者の確保
- 運行管理者資格を持った者の確保(最低1人)
- 運行管理者資格を持っているか、または運行管理基礎講習を修了している者の確保(最低1人)
- 整備管理者の確保(最低1人)
- 運送業に使用する営業所、休憩室・睡眠施設の確保(睡眠施設は必用な場合のみで構いません)。
- 事業に使用するトラックを駐車する車庫(駐車場)の確保。
- 申請に必要な添付書類の収集
- 運送業許可申請書類の作成
- 地方運輸支局へ運送業許可申請書の提出
ざっくり上記のような流れとなります。
運送業許可申請に必要な添付書類とは
運送業許可申請の添付書類は主に下記のとおりです。
- 申請者が法人の場合は履歴事項全部証明書(原本が必用)と定款
- 申請者が個人の場合は、戸籍抄本および住民票(原本必用)と資産目録
- 法人の場合は役員全員、個人の場合は事業主の履歴書
- 運行管理者資格者証の写し
- 整備士3級以上の資格者証または整備管理者選任前研修の修了証の写し
- 営業所および休憩室・睡眠施設の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
- 営業所および休憩室・睡眠施設の位置図、平面図、求積図と写真
- 車庫の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
- 車庫の位置図、平面図、求積図と写真
- 事業用自動車の車検証および使用権限を証明するための売買契約書・リース契約書など
- 道路幅員証明書または幅員が車両制限令に抵触しない旨の証明書 など
運送業許可申請書類の受付窓口
運送業許可申請の受付窓口は、運送業に使用する営業所を管轄する地方運輸支局となります(愛知県に営業所がある場合は「愛知運輸支局」)。
なお、地方運輸支局は各都道府県に一つしかありませんのでご注意ください。
運送業許可申請受付から運送業開業までの流れ
①地方運輸支局および地方運輸局での書類審査
運送業許可申請書類の受付をした地方運輸支局で書類の審査が行われます。審査期間は4か月~5か月となります。審査が行われている間に②~④までを実施または準備します。
注意
※2019年11月の法改正により、それまで3~4か月だった審査期間が4~5か月に伸びました。
②法令試験の受験とヒアリング
運送業許可申請受付後の最初に来る奇数月に法令試験を受験します。
受験者は個人事業主の場合は事業主本人、法人の場合は常勤の役員のうち一人です。
法令試験は2か月に一回実施され、不合格が2度続くと申請は一旦取消しとなりますので頑張って勉強しましょう。
ちなみに試験の合否は中部圏で即日わかりますが、近畿は受験か1週間ほど経過しないと合否がわかりません。
※新型コロナの流行による緊急事態宣言などの影響で法令試験が遅れるケースも見受けられます。
最近の愛知県の合格率は60%、つまり10人受けて6人しか合格できていないということです。
法令試験に対する不安を取り除くために、弊社シフトアップでは、法令試験対策問題集をお渡しする事が可能ですのでご安心ください。
法令試験終了の当日、運輸局から簡単なヒアリングがおこなわれる場合があります。弊社シフトアップではヒアリング予想質疑集を無料でお渡ししておりますので心配はいりません。
③2度目の残高証明書の提出
申請受付から約2か月後に2度目の残高証明書提出の通知が地方運輸支局から通知が来ます。
申請者名義の口座に事業開始に必用な資金が確保されていることを証明するため、指定された期間内の残高証明書を金融機関で取得して提出します。
④社会保険・労働保険の加入と36協定の締結
法人の役員や従業員を健康保険・厚生年金、労災保険・雇用保険(法人役員は除く)へ加入させます。許可取得後に提出する書類への添付書類として、これら保険関係に加入した証明書類を提出しないといけません。
一刻も早く緑ナンバーで運送業を開始したい場合は、許可取得前に加入を済ませておきましょう。
36協定書は、従業員に時間外労働(残業や休日出勤など)を行わせるために必用な書類です。労働組合がある場合はその代表、なければ従業員の代表と協定を結び、労働基準監督署へ提出します。
注意!
2020年から36協定書の様式が変更されました。トラック運送事業者が作成・提出するのは「様式第9号の4」になります。
⑤運送業許可取得の通知
法令試験に合格し、運輸局での審査が終了したら営業所管轄の地方運輸支局から許可取得の通知が入ります。
弊社シフトアップへご依頼いただいた場合は、弊社へ通知が入ることになります。
⑥運送業許可証の交付式と登録免許税納付書類取得
運送業許可証(正しくは運送業許可書)の交付式は、営業所を管轄する運輸支局にて行われます(地域により行われない場合もあります)。
交付式は許可取得から1週間以内に行われるのが慣例です。個人事業主の場合は事業主、法人の場合は役員または運行管理者がなるべく出席するようにしてください。
交付式では、運送業許可証と登録免許税納付書が手渡されるほか、約2時間かけて一般貨物自動車運送事業者として守るべき法令や、許可取得後に提出する書類の説明などを受けます。
行政処分などについての話もあるので眠らずにしっかり聞いてください。
運送業許可証の見本
以下は、弊社シフトアップで運送業許可を取得された方の運送業許可書です。
運輸開始の際は、運送業許可書を事務所内に提示する必要があります。
⑦登録免許税の納付
登録免許税12万円を金融機関で納めます。登録免許税は許可取得の日から1か月以内に納めないといけません。
コンビニでは納付できないため、銀行か郵便局で納付してください。
⑧運行管理者と整備管理者選任届の提出
運行管理者と整備管理者の「選任届」という書類を運輸支局へ提出します。
提出先は、運送業の営業所を管轄する運輸支局の保安課(地域により名称が異なる)です。
⑨運輸開始前確認の提出
下記の書類を添付して「一般貨物自動車運送事業の運輸開始前の確認について(通称、開始前確認)」という書類を営業所管轄の運輸支局へ提出します。
- 運輸支局受付印のある運行管理者と整備管理者の選任届写し
- 法人、役員、従業員(短時間労働者を除く)が健康保険・厚生年金保険、労災保険・雇用保険に加入したことを証明する書類の写し
- 労働基準監督署の受付印のある36協定書の写し
⑩事業用自動車等連絡書の取得
運輸開始前確認を提出すると、「事業用自動車等連絡書」という書類が地方運輸支局で発行されます。これは一般的に「連絡書」と言われている書類です。連絡書は自家用自動車でいう車庫証明に当たります。
⑪緑ナンバー取得
運送業で使用予定として申請書に記載した事業用トラックを、緑ナンバー(営業ナンバー)に変更します。
すでに緑ナンバーを取得している車両は、車検証の変更のみおこないましょう。
以下で詳しい変更方法を解説します。
事業用ナンバーへの登録
売買や譲渡などでトラックの名義を変更する場合、営業所を管轄する運輸支局に以下の書類を提出する必要があります。
- 現所有者(ローンまたはリース会社)の委任状
- 新所有者(申請者)の委任状
- 譲渡証明書
- 申請書
- 事業用自動車等連絡書
ただし、場合によっては上記以外の書類が必要になるケースもあるため、運輸局の担当窓口へ問い合わせることをおすすめします。
自賠責保険・任意保険に加入
車両を白ナンバーから緑ナンバーへ変更した場合、用途も自家用から事業用に切り替わるので、新しい車検証が発行されます。
また、ナンバーを変更したタイミングで自賠責保険や任意保険に加入しましょう。
すでに加入済みの場合は、事業用に対応できるよう補償内容を変更する必要があります。
⑫運輸開始届・運賃料金設定届の提出後に運送業開業
新車検証の写しと営業用ナンバー対応の自動車任意保険の保険証券の写しを添付し、「運輸開始届」を営業所管轄の運輸支局へ提出をします。
同時に「運賃料金設定届」を提出すれば晴れて運送業開業となります。
⑬巡回指導
運輸開始届の提出後、3か月~6か月月後を目安に「適正化事業実施機関」による巡回指導が行われます。日程は1か月ほど前に申請者様へ書面で通知されます。
巡回指導は、A~Eの5段階で評価され、DまたはEの場合は行政処分の対象となります。帳票類、特に点呼簿と日報を重点的に見られますので、日々の運送業事務をしっかり行いましょう。
弊社シフトアップでは、帳票類のチェックなど巡回指導対策も承っておりますのでご安心ください。
運送業許可を取得する際の注意点
続いて、実際に運送業許可を取得するまでに押さえておきたい3つの注意点を解説します。
- 申請者が欠格事由に該当する場合は申請自体が不可
- 自宅を事務所や休憩室にする場合は注意が必要
- 許可取得後1年以内に運輸を開始する必要がある
申請時や許可を取得してから慌てないように、しっかりと把握しましょう。
注意点1|申請者が欠格事由に該当する場合は申請不可
運送業許可は、申請者である個人事業主本人・法人役員のいずれかが、欠格事由に該当しないことが申請の前提条件となっています。
1つでも当てはまる場合、要件を完璧に満たしていたとしても申請ができなくなります。
運送業許可の欠格事由は、貨物自動車運送事業法の第五条で定められています。
以下で一部を抜粋しますので、参考にしてください。
- 申請者が1年以上の懲役または禁錮刑の執行を終えてから5年経過していない
- 申請者が一般貨物自動車運送事業もしくは特定貨物自動車運送事業の許可取り消しを受けてから5年経過していない
- 申請者と密接な関係にある者(親会社や子会社、グループ会社など)が、一般貨物自動車運送事業もしくは特定貨物自動車運送事業の許可取り消しを受けてから5年経過していない など
注意点2|自宅を営業所や休憩室にする際は注意が必要
自宅を運送会社の営業所や休憩室にすることも可能ですが、他の建物と同様に、関係法令に抵触しないことが条件になります。
現時点で自宅として使用できているからといって、必ずしも営業所や休憩室の用途で登録できるわけではないので注意してください。
ただし例外で、昭和45年11月以前に「既存住宅」とよばれる場所に建てられた建物であれば、営業所や休憩室に使用できるケースもあります。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてお読みください。
注意点3|許可取得後1年以内に運輸を開始する必要がある
申請者は、運送業許可を取得した日から1年以内に運輸を開始しなければなりません。
もし1年以内に運輸を開始できなかった場合、運送業許可自体が失効します。
基本的に1年あれば問題なく運輸を開始できますが、
「ドライバーが入社できなくなった…」
「運行管理者が突然辞めてしまった!」
など、不測の事態が生じた場合は予定通りに進めることが難しくなります。
万が一の場合に備えて、ドライバーや役員が突然辞める可能性はないか、代わりの従業員のあてはあるか確認しておくと安心でしょう。
よくある質問
ここからは、運送業許可の申請や取得に関するよくある質問に回答します。
運送業許可に有効期限はある?更新は必要?
運送業許可に有効期限はありません。
基本的に一度取得したら永続的に資格が適用されるため、更新も不要です。
ただし、違反行為や行政処分を重ねた場合は、許可取り消しの措置がとられます。
(参照元:貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について)
許可取り消しになった場合は、5年の期間を過ぎないと再び運送業許可を申請することができないので、注意が必要です。
車両を確保した後でなければ運送業許可申請はできない?
手元に車両が用意できていなくても、確保予定であれば許可申請を進めることが可能です。
ただし、使用権原の証明として「売買契約書」や「リース契約書」の写しを提出する必要があります。
運送会社を開業する際の必要資金額は?
使用する車両台数や営業所の賃料などによって金額は異なりますが、おおよそ1,500〜2,500万円の自己資金が必要になります。
自己資金は、運送会社を開業するための資金+当面の間事業を続けていくための資金です。
具体的にいうと、車両購入費(リース、ローン代)の12ヵ月分や、6ヵ月分の役員報酬・従業員給料手当などが内訳として挙げられます。
なお申請時には、必要な資金が揃っているかどうかを金融機関が発行する「残高証明書」で証明する必要があります。
申請時に十分な資金があることを証明できない場合は、運送業を開業する資格がないとみなされ、許可申請を取り下げられてしまうため必ずクリアしておきましょう。
社会保険に加入せず許可を取得できる?
社会保険に加入しなかった場合、運送業の許可は取れても緑ナンバーを取得することはできません。
運送会社として事業を始めたいのであれば、社会保険への加入は必須です。
負担を減らしたいからといって運輸開始後に社会保険を脱退した場合は、行政処分の対象となります。
せっかく取得した運送業許可を無駄にしないためにも、必ず加入しましょう。
運行管理者や整備管理者は必ず選任しなければならない?
運輸開始前に、運行管理者と整備管理者は必ず選任する必要があります。
そもそも選任されなかったり、運輸開始後に解任したまま新たに選任しなかった場合は、30日間の事業停止処分という重い罰則が科されます。
なお、運行管理者は整備管理者と、整備管理者は運行管理者またはドライバーと兼任可能です。
ただし整備管理者が運行管理者を兼ねた場合は、運行管理者に常勤性が求められるため、ドライバーとの兼任はできません。
まとめ
運送業は許可取得後も、様々な書類を提出しないと開業できません。開業後は、定められた帳票類を作成・保管する義務が発生します。しっかり管理するようにしてください。
万が一、巡回指導で行政処分の対象となり、車両停止処分になれば売上がダウンして貴社の経営を圧迫しかねません。
運送業開業に関する疑問や相談は、年間相談件数430件を超える運送業許可のプロ事務所「行政書士法人シフトアップ」へお気軽にご相談ください。
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