運送会社では整備管理者の選任が義務付けられています。
未選任の場合には厳しい罰則があるほど重要な役割を担っている整備管理者ですが、「資格を取得するには何が必要?」「どんな業務をおこなっているのかわからない」など、詳細まで理解している方はそこまで多くない印象です。
そこで本記事では、整備管理者について、選任の要件や仕事内容を交えながら解説していきます。
まずは整備管理者とは何かから見ていきましょう。
運送会社の整備管理者とは
整備管理者とは安全運行を保つために、事業用自動車の点検や整備、車庫の管理などをおこなう人です。
運送会社には、1つの営業所につき1人以上の選任が必須となります。
整備管理者の仕事内容
整備管理者の仕事内容は、道路運送車両法施行規則の第三十二条によって下記のように定められています。
- 日常点検の実施方法を決める
- 日常点検の結果に基づいて運行の可否を決める
- 定期点検の実施
- 日常・定期点検のほか、必要な点検を実施
- 点検の結果から、必要な整備をおこなう
- 定期点検・整備の実施計画の作成
- 点検・整備に関する記録の管理
- 車庫の管理
- 上記①~⑧の事項をドライバーや整備員に指導・監督する
(引用元:道路運送車両法施行規則第三十二条)
日常点検の実施結果から車両の状態を確認して運行するか指示したり、点検結果(日常点検表)の管理をおこなったりすることが主な仕事です。
2026年現在の運輸局監査において、整備管理者が管理すべき「日常点検表」や「3ヶ月定期点検記録簿」の形骸化は最も厳しく追及される項目の一つです。特に、ドライバー任せで整備管理者が内容を確認・署名した形跡がない場合や、定期点検の期日を1日でも超過して運行させていた事実が発覚した場合は、実質的な管理放棄とみなされ重大なペナルティの対象となります。自社の帳票類の管理精度に少しでも不安がある場合は、運輸局からの監査通知(臨検)が届く前に、運送業専門の行政書士へ帳票の総点検を依頼し、適切な運用状態を早期に確立しておくことが事業防衛の鉄則です。
整備管理者は何人必要?
5台以上の事業用自動車を配置する営業所につき、1人以上の選任が必要です。
意味合いとしては、最低1人の整備管理者を選任すれば良いため、1つの営業所に100台の事業用自動車がある場合でも、1人の整備管理者の選任で法令上は問題ありません。
運行管理者の場合は車両台数が一定数増えるごとに追加の管理者が必要でしたが、整備管理者は車両台数がどれだけ増えても最低1人の選任で大丈夫です(実際は車両台数が増えると整備管理者の数も増やす事業者が多いです)。
ちなみに、霊柩運送や介護タクシー事業を行っている事業者で事業用自動車の所有数が5台未満の営業所は、整備管理者を選任する義務はありません。
※一般貨物自動車運送事業者は、車両数に関わらず整備管理者の選任が必要です。
選任していない場合は行政処分が下される
一般貨物自動車運送事業者では、最低でも1人以上の整備管理者の選任が許可条件のひとつになっています。
そのため、未選任であったり、長い間不在が続いた場合には、「30日間の事業停止」という重い行政処分が下されます。
整備管理者の要件とは
整備管理者になる方法は次の2つです。
- 2年以上の実務経験+実務経験の証明+研修を受ける
- 自動車整備士の資格を持っている
次でそれぞれ詳しく解説していきます。
2年以上の実務経験+実務経験の証明+研修を受ける
実務経験が2年以上あれば、選任前研修を受講することで、整備管理者になるための要件をクリアできます。
ちなみに、ここでいう実務経験には次の2つが該当します。
- これから扱う自動車と同じ種類の点検・整備の実務経験
- これから扱う自動車と同じ種類の整備管理者または整備管理補助者の経験
注意してほしいのが、必要になるのは「同じ種類の自動車」の実務経験という点です。
そのため、二輪自動車の整備の実務経験があるからといって、トラック運送会社の整備管理者になることはできません。
実務経験の証明について
2年以上の実務経験は、トラック運送会社での点検・整備や整備管理(補助)者の経験だけでなく、認証工場などにおけるトラックの点検・整備の経験でも大丈夫です。
ガソリンスタンドで自家用車の点検・整備をやっていたことが整備管理者の実務経験に該当するかという質問をよく受けますが、トラックではなく自家用車の点検・整備だけをおこなっていた場合は実務経験には該当しないので注意してください。
自動車整備士の資格を持っている
1級~3級の自動車整備士資格のうちいずれかを取得していれば、車両管理の業務をおこなうにあたって必要な知識や技術を持っているとみなされるため、それだけで要件をクリアできます。実務経験の証明や選任前研修を受ける必要はありません。

整備管理補助者とは
その名の通り、整備管理者を補助する人のことです。
整備管理者が休日や休暇を取り、社内に整備管理に関する業務を遂行できる人がいなくなってしまった場合には、補助者が業務の一部を代行することができます。
整備管理補助者の要件とは
以下のどちらかに該当している者を、補助者として選任することができます。
- 整備管理者の要件を満たしている人
- 整備管理者によって十分な教育を受けた人
また、整備管理者は下記の表の内容に基づき、補助者に対して教育などをおこなう必要があります。
| 教育をする必要があるとき | 教育の内容 |
|---|---|
| 補助者を選任するとき | ・整備管理規程の内容 ・整備管理者選任前研修の内容 |
| 整備管理者選任後研修を受けたとき | ・整備管理者選任後研修の内容 |
| 整備管理規程を改正したとき | ・改定後の整備管理規程の内容 |
| 行政から情報提供を受けたとき その他必要なとき | ・行政から提供された情報など |
補助者を選任したあとに、営業所管轄 Flats の運輸支局への届出は不要ですが、整備管理規程に氏名と職務の範囲を記載する必要があります。
整備管理補助者の仕事
補助者が代行できる仕事は3つあります。
- 日常点検の結果に基づいて運行の可否を決定する
- 日常点検の実施の指導などをおこなう
- 日常点検に係る業務をおこなう
簡単にまとめると、補助者は日常点検に関することだけ代行できます。
これ以外の仕事については、整備管理者がおこなわなければなりません。
なお、整備管理者が補助者に「運行可否決定の権限」を与えた場合は、整備管理者に代わって日常点検の結果に基づいて運行の可否を決定できます。
補助者の選任は必要?
整備管理補助者を選任しなくても法令違反とはなりません。
そのため、「教育にも時間がかかるし補助者は選任しなくてもいいか」という理由で補助者を選任せず、整備管理者1人のみで車両の管理などをおこなう運送会社が多く見られますが、これはあまりおすすめできません。
なぜなら、整備管理者が体調不良などで突然欠勤をした場合、トラックの日常運行の可否を決められる人がいなくなってしまうからです。
そのような事態に備えて、整備管理補助者の選任はしておきましょう。
【豆知識】運送会社に整備管理者が必要となった背景
本来であれば、自動車の使用者が点検や整備、車庫管理などをおこない、車両の安全確保を図るのですが、使用する自動車の台数が多い場合、使用者自らが車両の安全の確保をおこなうことが難しくなります。
そうなると、車両の管理や、事故を起こした場合の責任体制が曖昧になるおそれがあります。
また、トラックや大型バスは、一般車両と比べて構造が特殊なため、事故が起こったときの被害が甚大になります。
そのため、事故を起こさないように、専門的な知識をもった人が責任を持って車両管理を行う必要があります。
上記のような理由から「整備管理者」を選任し、使用者に代わって車両管理を行うことにより、車両の管理や責任体制を確立し、自動車の安全確保を図る制度が設けられています。この制度を「整備管理者制度」といいます。
運送会社では、この制度に則って「整備管理者」の選任が義務付けられています。

よくある質問
ここからは、整備管理者について、当社シフトアップによく寄せられる質問に回答していきます。
Q.整備管理者の資格に有効期間はあるの?
A.整備管理者の資格に有効期間はありません。
資格を取得してから10年以上経っていても、選任されるまでは取得した資格がなくなることはありません。
ただし、選任された年度内に1回、それ以降は「2カ年度に1回」のタイミングで整備管理者選任後講習を受ける必要があります。前回の受講日から丸2年(24ヶ月)という意味ではなく、国の会計年度(4月〜翌3月)を基準に管理されるため、実務上非常に注意が必要です。
なお、講習の受講についての通知はどこからも来ません(以前は運輸支局から案内が届いていました)。
筆者がトラック運送事業者のもとへ監査・巡回指導対策に伺うと、選任後講習の受講を忘れていたという会社がよくあります。
受講を怠ると行政処分の対象となるので、受講時期については自社でしっかり管理してください。
Q.整備管理者の選任後に届出は必要?
A.選任・変更後は、速やかに運輸支局に届出を提出する必要があります。
整備管理者を選任、または変更した場合は、遅滞なく事業所を管轄する運輸支局に整備管理者選任届出を提出する必要があります(以前存在していた「15日以内」という固定の猶予期間ではなく、現在は実務上『選任後速やかに』提出する運用となっています)。
その際に、本人の実務経験証明書と整備管理者選任前研修終了書の写し、または自動車整備士技能検定3級以上の合格証明書の写しも併せて提出してください。
Q.整備管理者の外部委託はできるの?
A.整備管理者の外部委託は原則禁止されています。
以前まで、外部委託は認められていましたが、平成19年9月10日に法律が改正され、自社外の人を整備管理者として選任することは禁止されました。(出典:国土交通省)
ただし、委託先がグループ会社で、次の条件を満たしている場合のみ、外部委託が認められます。
- グループ企業が一体となって輸送の安全確保に取り組む、安全管理規程および整備管理規程、そのほかの必要な規程について一定の条件を満たしている
- 外部委託をすることについて、受託者とその雇用者、責任者が同意・承認している
- 整備管理者が他の業務または役職を兼ねている場合、整備管理者の業務をおこなう際の支障とならない
Q.整備管理者とドライバーの兼任は可能?
A.整備管理者はドライバーや運行管理者との兼任が可能です。
整備管理者には、運行管理者のような厳格な兼任制限がないため自社内での兼務は認められています。ただし、実務上その営業所に専任(常勤)している必要があるため、他営業所の整備管理者との兼任はできません。また、小規模運送会社で「1人が運行管理者・整備管理者・ドライバーの3役をすべて兼任する」という過密な体制を敷く場合、2026年現在の運輸局審査や巡回指導では、過労運転防止および安全管理の形骸化の観点から非常に厳しく監査されるトレンドにありますので体制構築には注意が必要です。
運行管理者について詳しく知りたいという方は「運送業許可|運行管理者の要件の整理はこれでカンペキ」も併せてお読みください。
まとめ
整備管理者の選任は、運送会社に必須となっています。
選任されるためには実務経験が必要になりますが、運行管理者に比べるとハードルはやや低く設定されている印象です。
ドライバーとの兼任も可能なので、興味がある方や、運送会社でキャリアアップしたいと考えている方は、今回の記事を参考に、整備管理者を目指してみてはいかがでしょうか。
運送業許認可や巡回指導・監査対策に関するお問い合わせは行政書士法人シフトアップまでお気軽に。全国対応しております。

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