運送業界内では、白ナンバーで運送業をおこなってしまい、問題となるケースが後を絶ちません。
この記事を読んでいる方の中には、
「基準がいまいちわからない…」
と疑問に思っている方も多いでしょう。
白ナンバーで荷物を運ぶこと自体は違法行為には当たりません。
しかし、運ぶものや形式によっては違法になる場合があります。
この記事では、白ナンバーで運送業をおこなうことについて説明します。仮に違法行為をおこなった場合、どのような罰則があるのかについても詳しく解説していきます。
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白ナンバーで運送業をおこなう場合は許可が必要
運送業をおこなうには、緑ナンバーの取得(運送業許可)が必須です。
そもそも運送業(一般貨物自動車運送事業)とは、他人の依頼を受けて有償で貨物を運ぶ事業です。
貨物を運ぶ中で運賃の受け渡しが発生する場合は、国土交通大臣または地方運輸局長から許可を得る必要があります。
このことは、貨物自動車運送事業法で以下のように定められています。
一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
緑ナンバーを取得するには、法令で定められたいくつかの要件をクリアし、申請書類を作成して運輸支局へ提出します。
とても大変な道程ですが、緑ナンバーを取得すれば運送業をおこなえるようになるだけでなく、次のようなメリットも得られます。
緑ナンバーを取得するメリット
緑ナンバーを取得するメリットは下記のとおりです。
- 社会的信用を得られるため、営業先や仕事の幅が広がる
- 重量税や自動車税などの税金を抑えられる
- 従業員の社会保険加入義務が発生するため、福利厚生の向上に繋がる
これから先、運送事業を視野に入れているのであれば、緑ナンバーを取得しておいたほうがいいでしょう。
運送業許可(一般貨物運送許可)を取る4つのメリットとデメリットを無料公開
緑ナンバーを取得するための要件
では、緑ナンバーを取得するためにはどんな要件があるのでしょうか。
ざっくりまとめると下記の7点になります。
- 事業を始めるにあたって必要な資金を確保している
- 運行管理者、整備管理者の資格を持っている人がいる
- ドライバーが5人以上いる
- 事業用自動車を最低5台持っている(軽自動車は除く)
- 事務所とドライバーの休憩室を確保している
- すべての事業用自動車を停める駐車場または車庫を確保している
- 運送業役員法令試験に合格している
緑ナンバーを取得するまでの流れについては、下記の記事で詳しく説明しています。
運送業許可申請から開業までの流れを全て公開!
そもそも白ナンバーとは
白ナンバーとは、自家用車に付けられるナンバープレートのことで、公道を走っているすべての一般車両に装着義務があります。
マイカーにも使われており、白地に緑色の文字でナンバーが記されています。(軽自動車の場合は、黄色地に黒字です。)
自社の荷物を自社の車で運ぶ自家用車のこと
白ナンバーは、自社の荷物を自社の車で運ぶ役割を担います。
自社の荷物を運ぶので、当然運賃は発生しません。そのため運送業には当たらず、緑ナンバーと違って運輸局の許可を取得する必要もありません。
白ナンバーと緑ナンバーの違い
白ナンバーと緑ナンバーの大きな違いは、自家用車か事業用車か、という点です。
白ナンバーが「自社の荷物を自社の車で運ぶ」自家用車であることに対して、緑ナンバーは「他社の荷物を運賃をもらって運ぶ」事業用車になります。
その他にも、運搬物・自動車税・車検期間など、両者の違いは多岐にわたります。
下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
緑ナンバー(営業ナンバー)とは?白ナンバーとの違い・メリット・取得方法・条件
2022年4月からアルコールチェックが義務化
2022年4月に施行された改正道路交通法施行規則によって、白ナンバーもアルコールチェックが義務化されました。
アルコールチェックの詳細は下記の記事をご覧ください。
アルコールチェックが義務化!対象事業者/罰則/選ぶ基準を解説
白ナンバーで運送業をおこなうのは違法か?
結論からいうと、白ナンバーで運送業をおこなうのは違法行為です。
ここでは、なぜ違法になるのかを詳しく説明していきます。
そもそも運送業とは?
運送業(一般貨物自動車運送事業)とは、個人や法人を問わず、自社以外の人から運賃を受け取って目的地まで物や人を運ぶ事業のことです。
運送業を始めるためには、営業用車の目印である緑ナンバーの取得が必要になります。(軽自動車の場合は黒ナンバーの取得が必要です。)
白ナンバーを使用して運送業をおこなうことは違法行為
白ナンバーを使用して運送業をおこなうことは違法です。
前述したように、白ナンバーは「自社の荷物を自社の車で運ぶ」行為のみ許されています。
社外の人から運賃をもらって荷物を運ぶことは、運送業に該当するため、緑ナンバーを取得していない車両がおこなうと貨物自動車運送事業法に違反することになります。
個人事業主として運送を請負うケースも基本的にNG
個人事業主として運送を請け負う場合でも、基本的に抜け道は存在しません。
「知り合いがやっているし大丈夫だろう」という場合でも、実は法律違反だったケースも珍しくありません。
以下で、代表的なNGケースを紹介します。
NGケース1|個人事業主が荷主の荷物を買い取って自身の荷物として運ぶ
個人事業主として運送を請け負った荷物を「自身の荷物」とみなして運送業をおこなうケースを例に挙げます。
この場合、個人事業主が荷主から荷物を買い取って自分の荷物にすれば運賃は発生しないため、許可は必要ないと考えられがちです。
しかし、荷主から受け取った報酬の中に、実質的な運賃がどうしても含まれてしまいます。
そのため、緑ナンバーを取って運送するのが理想でしょう。
NGケース2|荷主の白ナンバートラックで個人事業主が荷物を運ぶ
個人事業主でよくある2つ目の事例が、「運ぶ荷物とトラックは荷主所有だが、運転手だけ個人事業主」というケース。
運送業ではなく請負業と判断されるケースもありますが、基本的にはグレーゾーンです。
警察や運輸局もすべてを把握できるわけではないので、発覚しなければ罪を問われることはないでしょう。
しかし、万が一業務中に交通事故を起こしてしまった場合、捜査の中で警察から追及されてしまうため、おこなわないほうが無難です。
引越し業者では繁忙期のみ例外あり
白ナンバーで運送業をおこなうことは違法ですが、引越し業者では繁忙期に限って白ナンバーのレンタカーを使用することが認められています。
期間は3月15日~4月15日のうちの15日以内で、国土交通省に事前申請を提出すれば、白ナンバーでの営業が可能になります。
白ナンバーで運送業をおこなった場合の罰則
では、白ナンバーで運送業をおこなってしまった場合、どのような罰則が科せられるのでしょうか。
運送した側と荷主側、それぞれ見ていきましょう。
運送した側には懲役刑もしくは罰金が科される
白ナンバーで運送業をおこなった場合には、貨物自動車運送事業法に違反したとみなされ、運送をおこなった人に「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が科されます。
なお、懲役刑になってしまった場合には、刑期を努め終えてから5年が経過するまでは欠格事由に該当するため、新規の運送業許可申請ができなくなってしまいます。
荷主に対しての罰則はある?
白ナンバーに運送を依頼した荷主に対しては、直接的な罰則はありません。
しかし、緑ナンバー未取得の違法な業者と知っていながら運送を任せていた、という悪評は世間に広がってしまいます。
そうなると会社のイメージダウンにも繋がりかねません。
白ナンバーで運送業をおこなうことは、運送した側にも荷主側にも大きなリスクがあるため、必ず許可を取ってから始めましょう。
よくある質問
最後に、白ナンバーや運送業関連でよくある質問に回答していきます。
軽自動車やバイクで荷物を運ぶ場合も許可は必要?
軽自動車やバイク(自動二輪車)で他人の荷物を有償で運ぶ場合は、運送業許可(緑ナンバー)ではなく、貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)の届出をおこなう必要があります。
軽自動車またはバイク1台と運転免許証さえあれば、基本的に誰でも届出は可能です。
一般貨物自動車運送事業よりも参入障壁が低いため、個人事業主として開業する方も多く見られます。
なお、バイクの場合は、排気量が125cc未満であれば届出をする必要なく運送行為をおこなえます。
個人事業主でも緑ナンバー(運送業許可)を取得できる?
要件さえ満たせば、個人事業主でも運送業許可を取得できます。
しかし、個人事業主が許可申請するからといって、1名で受け付けが可能になるわけではありません。
運送業許可取得の要件は法人と同じなので、人員は最低でも6名、車両は5台以上揃える必要があります。
その他の営業所や資金の要件も法人の場合と同様です。
このことを念頭に置いたうえで、開業計画を練る必要があるでしょう。
白ナンバーのダンプカーは違法?
緑ナンバーのダンプカーは、運賃を受け取って他社の土砂や砕石を運びます。
一方で白ナンバーのダンプカーは、他社の土砂や砕石をその場で買い取り、自社の所有物にして運んでいます。
つまり運賃のやり取りが発生しないため、事実上は運送業許可(緑ナンバー)は必要ありません。
白ナンバーであっても、違法ではないということです。
しかしグレーな範囲になるため、土砂や砕石をその場で買い取る場合であっても、なるべく緑ナンバーを持っていたほうがよいでしょう。
白ナンバーでの運送行為を見かけた場合はどこへ通報すべき?
白ナンバートラックでの運送行為を見かけた場合は、警察または運輸局に相談しましょう。
ただ、自分では違法な運送行為だと思っていても、実際はそうでないケースもあります。
そのため、あらかじめ情報をしっかり収集してから通報することをおすすめします。
トラックの「名義貸し」って違法なの?
名義貸しとは、運送業許可を持たない個人ドライバーが、運送業許可を持つ事業者に緑ナンバートラックを増車してもらい、その名義を利用して運送業をおこなうこと。
ナンバー貸しともよばれ、貨物自動車運送事業法の第27条に抵触する行為です。
自分では許可が取れないからといって名義貸し行為をおこなうと、
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 30日間の事業停止処分
が下されるので十分注意してください。
まとめ
この記事では、白ナンバーで運送業をおこなうことについて詳しく解説しました。
白ナンバーで自社の荷物を運ぶこと自体は違法行為には当たりませんが、他社の荷物を有償で運ぶ場合、それは運送業となり、違法とみなされます。
違法行為をおこなった人に対しては重い罰則が科せられるため、しっかりと知識を身に着けたうえで白ナンバーでの配送をおこなうようにしましょう。
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