多くのトラック運送事業者が、早朝や夜間の点呼執行者の勤務について頭を悩ませているはず。
そこで、この記事ではデジタル機器を利用した点呼が可能となる「IT点呼」について解説いたします。
IT点呼とは何か、導入するメリットとデメリット、導入の要件などについて一緒に確認していきましょう。
IT点呼とは?システムの概要を解説
IT点呼は、スマートフォンやパソコンなどのIT機器を使用して、遠隔で点呼をとるシステムです。
通常、乗務前後の点呼は対面でおこなう必要がありますが、IT点呼の場合は離れた場所からも実施できます。
運行管理者の負担を軽減できると、多くのトラック運送会社が導入しています。
ここでは、IT点呼の概要や遠隔点呼・電話点呼との違いを解説します。
IT点呼とは?
IT点呼は、スマートフォンやパソコンのカメラ、アルコール検知器などのIT機器を使用して実施される点呼です。
通常、点呼は乗務前後に対面で実施する必要があります。
これはドライバーの顔色から、体調不良や酒気帯びがないかを確認するためです。
例外として、2泊3日の長距離輸送の場合は電話による点呼が可能ですが、乗務前後のいずれかは対面点呼をおこなわなければなりません。
しかし、トラック運送業では輸送ルートが車両によって異なるため、出庫・帰庫する時間も早朝から深夜までさまざまです。
そのため、運行管理者の長時間勤務や人手不足に頭を抱える運送会社も数多くあります。
このような状況を解消するために、「IT点呼」が導入されました。IT点呼を試験的に導入したい時にはタブレットのレンタルが便利です。
IT点呼と遠隔点呼の違い
IT点呼と混同されがちなシステムに「遠隔点呼」があります。
遠隔点呼は、IT点呼とは別枠で新たに設けられたシステムで、ICT技術を活用して遠隔拠点間で実施されます。
IT点呼がGマークの保有と優良営業所認定が必須なのに対し、遠隔点呼は要件さえ満たせば全ての営業所で導入可能です。
しかし、Gマークの所持が必須でない代わりに、機器やシステムの性能要件が厳しいなどの特徴があります。
| IT点呼 | 遠隔点呼 |
| ・Gマーク取得必須 ・営業所開設から3年経過後のみ申請可能 ・優良だと認められた営業所のみ ・申請後の現地調査は不要 | ・Gマークがなくても導入可能 ・開設3年未満でもOK ・要件を満たせば全ての営業所で実施可 ・機器やシステムの性能要件が多い |
基本的な要件は同じですが、Gマークを取得しているなら「IT点呼」、なければ「遠隔点呼」の導入を検討するとよいでしょう。
IT点呼と電話点呼との違い
「電話点呼」は、運行上やむを得ない場合のみ適用される点呼方法です。
スマートフォンや携帯電話で直接対話して、ドライバーの健康状態を確認します。
ここでいう運行上やむを得ない場合とは、ドライバーが遠隔地で乗務を開始または終了するときなど、物理的な事情で対面点呼の実施が難しい状態を指します。
なお、車庫と営業所が離れている場合や、早朝・深夜などで運行管理者が営業所に出勤していないケースは該当しないため、注意が必要です。
IT点呼との違いは、国土交通省から認定を受けたIT機器を使用する必要がない点です。
ドライバー全員にスマートフォンを持たせてビデオ通話で点呼を実施したり、電話点呼時に顔写真を撮影してアルコールチェックをしたりする運送事業者も多くいます。

IT点呼導入のメリット
続いて、IT点呼を営業所に導入するメリットを解説します。
- 人手不足を解消できる
- 点呼記録の管理が可能
- スマホ等の機器と連動できる
運行管理者の負担を軽減できるのはもちろん、記録の管理や入力も従来より楽になります。
導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
人手不足を解消できる
IT点呼の最大のメリットは、人手不足を解消できる点です。
通常、乗務前後の点呼は運行管理者が対面でおこなわなければなりません。
しかし、トラック運送業は渋滞や荷待ちで帰庫の時間が読めないことが多く、営業所によっては運行管理者が長時間労働になってしまうことも珍しくありません。
IT点呼を導入すれば、遠隔地にある営業所や車庫からも点呼を実施できます。
これにより、日中の点呼は自身の営業所で実施し、夜間分は他の営業所に任せられます。
全拠点に十分な数の運行管理者を配置できなくても、スムーズな点呼を実現できるでしょう。
※ただし、IT点呼は連続する16時間以内に実施する必要があります。
点呼記録の管理が可能
IT点呼を導入すれば、点呼記録をシステム上で管理できるようになります。
これまで手書きで記入していた点呼記録簿を簡単に管理できるうえ、データはクラウド上で保存されるので、書類の紛失や保管場所に悩む心配もありません。
スマホ等の機器と連動できる
IT点呼では、免許証リーダーやアルコールチェッカー、スマートフォンなどの機器とシステムを連携できます。
点呼結果やアルコールの測定値が自動で記録されるため、自身で入力する手間が省けます。
また、虚偽報告や記録の改ざんを防げるのはもちろん、抜けや漏れも起こりにくいため、従来より確実な情報を記録できます。
IT点呼導入のデメリット
人手不足の解消や記録管理の手軽さなどメリットが多いIT点呼ですが、以下のようなデメリットも存在します。
- 機器やシステムが高額
- IT機器操作のトレーニングを受ける必要がある
それぞれ見ていきましょう。
機器やシステムが高額
IT点呼を実施する際は、専用システムを導入したり、国土交通省の認定機器を用意したりする必要があるので、1営業所あたり100万円前後のコストがかかります。
そのため、費用対効果を考慮して導入を検討する必要があります。
IT機器操作のトレーニングを受ける必要がある
IT点呼では国土交通省が認定した専用機器を使うため、導入後にスムーズに使用できるように操作トレーニングを実施する必要があります。
研修時間の確保により、業務が通常通り進まないなどのデメリットが生じる可能性もあるでしょう。

IT点呼の要件
IT点呼を実施する予定の営業所がGマークを取得していることが要件となります。
ただし、現在は要件が緩和され、Gマークを取得していない営業所でも下記の要件をすべて満たせばIT点呼の導入が可能です。
- 運送業の営業所として運輸開始した日から3年を経過していること。
- IT点呼の申請をする前3年間に、営業所に所属する事業用自動車が第一当事者となる自動車事故報告規則第2条に該当する事故を起こしていないこと。
- IT点呼の申請をする前3年間に、点呼の違反に係る行政処分または警告を受けていないこと。
- IT点呼の申請をする直近の巡回指導で、総合評価が「D、E」以外、かつ点呼の項目判定が「適」であること。または、巡回指導の総合評価が「D、E」、もしくは点呼の項目判定が「否」であった場合で3ヵ月以内に改善報告書が提出され、総合評価が「A、B、C」、点呼の項目判定が「適」に改善されていること。
Gマークの取得
営業所と他の営業所間では、Gマークを取得している営業所間でのみIT点呼の実施が可能です。
Gマークは営業所単位で取得する必要があるため、これからGマーク認証を受けてIT点呼を導入しようと考えているトラック運送事業者はご注意ください。
機械設置の条件
IT点呼を行うための機械の設置は以下のような条件があります。
- 国土交通省が定めた機器を使用すること。
- IT点呼を行う10日までに「IT点呼に係る報告書」を営業所管轄の運輸支局に届出すること。
- IT点呼の記録を付けること。
IT点呼記録簿は、IT点呼実施営業所で保存しなければいけません。
2つ以上の営業所間でIT点呼を行う場合は、実施営業所すべてで記録・保存する義務があるのでご注意ください。
IT点呼導入の手順
IT点呼導入の手順は下記のとおりです。
- IT点呼を行うすべての営業所がGマーク認定を受ける、あるいは巡回指導でA~C評価を受け、点呼に関する評価が「適」である
- 国交省が認定したIT機器の選定と購入
- IT点呼に係る報告書を営業所管轄の運輸支局へ提出する
- IT点呼機器の設置
- 運行管理者および運行管理補助者がIT点呼機器操作のトレーニングを受ける
- IT点呼スタート
IT点呼を始めるには届出が必要
営業所でIT点呼を始める際は、届出を提出しなければなりません。
ここからは、届出を提出する際に注意すべきことを紹介します。
報告書を輸支局長等に提出
機器の用意やトレーニングを実施してIT点呼を始める環境が整ったら、営業所を管轄する運輸支局に報告書を提出します。
申請はIT点呼を開始する10日前までにおこないましょう。
報告書の雛型は、各運輸支局のホームページでダウンロード可能です。
(出典:IT点呼・遠隔地IT点呼に係る報告書|愛知運輸支局)
なお、報告書の他にも、IT機器の性能がわかる書類を提出しなければならないので確認しておきましょう。
報告書を出さないとどうなる?
報告書を提出せずにIT点呼を実施した場合、どれほど機器が優れていたとしてもIT点呼とは認められません。
監査があった際には指導の対象となるため、必ず報告書を提出してから実施しましょう。
まとめ
IT点呼を導入すると、対面点呼実施に関する呪縛から放たれます。
しかし、導入にはコストもかかるため、一定の車両数を持っている企業でなければ現実的な選択でないかもしれません。
とはいえ、営業所間あるいは営業所車庫間での遠隔地点呼は、飛躍的に運行管理を簡略化できる可能性があります。
Gマーク認証を取得したときや、巡回指導でA~C評価を受けた際に検討してはいかがでしょうか。
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