特定貨物自動車運送事業とは、特定の1社と専属契約を結び、有償で貨物を運ぶ事業のことです。
貨物自動車運送事業の一種ではありますが、具体的にどのような事業を指すのか分からないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、特定貨物自動車運送事業許可について詳しく解説します。
一般貨物との違いや許可を取得する際のメリット・デメリット、要件についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
特定貨物自動車運送事業とは
特定貨物自動車運送事業とは、特定の1社と専属契約を結び、有償で貨物を運ぶ事業のことです。
メーカーや商社の配送を担当する系列会社、工場間の直輸送などが該当します。
具体的な定義としては、「特定の荷主の総輸送量の大部分を運送できるものであること」「契約や運送の指示に第三者が関与しないこと」が挙げられます。
一般貨物自動車運送事業との違い
「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」には、荷主が特定の1社に限定されているか、それとも複数の荷主からの依頼を受けられるかという点に違いがあります。
特定貨物自動車運送事業が、特定の1社と専属契約を結び、有償で貨物を運ぶ事業であるのに対し、一般貨物自動車運送事業では、不特定多数の荷主から依頼を受け、運賃を受け取って貨物を運びます。
併せて「一般貨物自動車運送事業の要件・開業方法が5分でわかる」もお読みください。

特定貨物自動車運送事業許可を取得するメリット
特定貨物自動車運送事業は、一般貨物に比べて荷主が限定されるため、事業展開の自由度は低いですが、一般貨物よりも規制が緩和されていることから、事務作業の負担を軽減できるというメリットがあります。
以下で、規制緩和の内容を一つずつ見ていきましょう。
運送約款を明示する必要がない
運送約款(うんそうやっかん)とは、運送事業者と荷主との間で運送契約の内容を定めたもので、取引を効率的に行うために作成された定型的な条項のことを言います。
一般貨物自動車運送事業を行う際は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受ける必要がありますが、特定貨物自動車運送事業は、特定の1社のみと専属契約を結ぶ事業形態であるため、運送約款を一般的に明示する必要がありません。
取引の安全などに関しては、請負契約内で示しておけばよいため、運送約款を作成する手間が省けます。
営業所で運賃や料金を提示しなくてもよい
一般貨物自動車運送事業では、営業所に運賃や料金を掲示する義務がありますが、特定貨物では掲示不要です。
運送約款と同様、契約内で明示しておけば、取引の安全性は十分確保できるものとされています。
合併等を行った際は事後届出で対応できる
合併や会社分割、事業譲渡等が生じた際、一般貨物の場合は事前の認可が必要になりますが、特定貨物では事前の認可は不要で、事後30日以内の届出のみで対応できます。
これにより手続きの負担を減らせるだけでなく、事業展開や組織変更がスムーズに実施できるというメリットがあります。
事業報告書の提出が不要
一般貨物自動車運送事業では、事業年度終了後100日以内に、事業概況報告書や人件費明細書をはじめとする事業報告書を提出しなければなりません。
しかし、特定貨物の場合は、事業実績報告書を提出するのみで良いため、事務作業の負担が軽減されます。
特定貨物自動車運送事業許可を取得する際の注意点
特定貨物自動車運送事業許可は、特定の1社のみと専属契約を結び、貨物を運ぶ事業者に対して与えられる許認可です。
そのため、専属契約を結ぶ荷主の他に、新たに別の荷主と契約を結ぶ際は、「特定貨物自動車運送事業の廃止手続き」と、「一般貨物自動車運送事業の許可申請」を行わなければなりません。
特定貨物自動車運送事業には、「運送約款を明示する必要がない」「営業所で運賃や料金を提示しなくてもよい」などのメリットがありますが、荷主を増やす際の手続きの手間と時間を考慮すると、デメリットの方が大きいと言えます。
現在では、特定貨物自動車運送事業の許可を取得するよりも、一般貨物自動車運送事業の許可を得る事業者が多くなっています。
特定貨物自動車運送事業許可の要件
特定貨物自動車運送事業許可を取得するには、国で定められたいくつかの要件を満たす必要があります。
以下で、要件の内容をざっくりご紹介します。
| ① 運送事業者 | ・特定の荷主の総輸送量の大部分を受けること ・運送契約の締結や指示は直接行い、第三者を介入させないこと |
| ② 営業所 | ・建築基準法や都市計画法等関係法令に抵触しない ・適切な規模を有している ・使用権原があることを証明できる ・業務を遂行するにあたり必要な備品を備えている |
| ③ 最低車両台数 | ・営業所ごとに5台以上の事業用自動車が必要 (ただし輸送量などの関係で、地方運輸局長が個別に定める場合はこの限りではない) |
| ④ 事業用自動車 | ・車両の大きさや構造が、輸送する貨物に対して適切である ・使用権原があることを証明できる |
| ⑤ 車庫 | ・原則として営業所に併設されている (併設が難しい場合は営業所から5~10km以内の場所にある) ・建築基準法や都市計画法等関係法令に抵触しない ・使用権原があることを証明できる など |
| ⑥ 休憩・睡眠施設 | ・原則として営業所または車庫に併設されている ・睡眠施設を有する場合は、1人あたり2.5㎡以上の広さがある ・建築基準法や都市計画法等関係法令に抵触しない ・使用権原があることを証明できる |
| ⑦ 資金計画 | ・所要資金の調達に十分な裏付けがある ・自己資金が所要資金に相当する以上である ・自己資金が申請から許可取得までの間常時確保されている |
なお、以前は要件に違いがありましたが、現在は一般貨物とほとんど同じ内容となっています。
要件を詳しく知りたい方は、【見逃しNG】運送業許可の要件が誰でも5分でわかるを併せてご確認ください。
まとめ
特定貨物自動車運送事業とは、特定の1社と専属契約を結び、有償で貨物を運ぶ事業のことです。
メーカーや商社の配送を担当する系列会社、工場間の直輸送といった限られたシーンでのみ有効な許認可ですが、「運送約款を明示する必要がない」や「営業所で運賃や料金を提示しなくてもよい」、「事業報告書の提出が不要」など、事務的な負担を軽減できるというメリットがあります。
しかし、新たに複数の荷主と契約を結ぶ際は、「特定貨物自動車運送事業の廃止手続き」と、「一般貨物自動車運送事業の許可申請」を行わなければならないため、事業の将来性をしっかりと見据えたうえで、許可取得を検討する必要があります。
なお、許可取得にはいくつかの要件をクリアする必要があるため、事前準備を怠らないようにしましょう。
特定貨物自動車運送事業の許可取得をご検討中に方は、全国対応中の行政書士法人シフトアップへの相談がベストな選択です。

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