現在、トラック運送業界に勤めている方や、これから運送会社立ち上げを検討中の方のなかには
「運送業は将来どうなるの?」
と不安になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、運送業界の売上・年収ランキングを紹介します。
今後の課題と将来性についても解説しているので、すでに運送業界に勤めている方はもちろん、これから起業や転職を考えている方もぜひ参考にしてみてください。
運送業界の売上高ランキングTOP5
まずは、運送業界の企業別売上高をランキング形式で紹介していきます。
TOP5を以下にまとめました。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) |
第1位 | 日本郵政 | 20,030 |
第2位 | ヤマトホールディングス | 17,936 |
第3位 | 日本通運 | 17,632 |
第4位 | SGホールディングス | 15,883 |
第5位 | 近鉄エクスプレス | 9,804 |
(出典:業界動向 https://gyokai-search.com/4-riku-uriage.htm)
日本郵政
「日本郵政」は日本郵政グループの持株会社です。「日本郵便」や「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命保険」など、200の子会社を持っています。このうちの「日本郵便」が物流部門を扱っており、2021〜2022年の売上高は20,030億円となっています。
筆者は宅配便大手のヤマトや日通の方が売上は多いと思っていましたが、元国営企業のマーケットシェアはいまだ大きいということですね。
ヤマトホールディングス
「ヤマトホールディングス」はヤマトグループの持株会社です。
宅急便で知られる「ヤマト運輸」を傘下に持ち、2020年3月には宅配便サービスの国内シェア第1位の実績を獲得しました。2021〜2022年の売上高は17,936億円。正社員のほか、契約社員やアルバイトを含め、グループ全体で約21万人の従業員が働いています。
日本通運
引越しは日通などのキャッチコピーで知られる「日本通運」は、業界最大手となる総合物流事業者で、「NIPPON EXPRESSホールディングス」の子会社でもあります。設立1937年の老舗企業ですが、海外にも独自の輸送ルートを持つなどグローバルなサービス展開が魅力です。売上高は17,632億円となっています。
SGホールディングス
「SGホールディングス」は、「佐川急便」を中核とする持株会社です。
国内宅急便の国内シェアは33%と、ヤマト運輸に次いで第2位の実績を誇ります。宅急便のなかでも発送個数の多い通信販売企業など、企業間取引を得意としています。2021〜2022年の売上高は、業界第4位の15,883億円です。
近鉄エクスプレス
「近鉄エクスプレス」は、海外46か国、298都市、688拠点を持つ、日本大手の国際総合物流企業です。「KWE(Kintetsu World Express)」の略称でも知られています。
設立時からある航空貨物輸送に加えて、海上貨物輸送やロジスティクスまで、幅広いサービス展開が特徴です。売上高は9,804億円となっています。
運送業界の年収ランキングTOP5
次に、運送業界の平均年収ランキングTOP5をご紹介します。
ちなみに、全国の平均年収は614万円。以下の表を見ると、全ての企業が平均をはるかに超える数字となっています。
順位 | 企業名 | 平均年収(万円) |
第1位 | 日本郵船 | 1,082 |
第2位 | ヤマトホールディングス | 1,018 |
第3位 | 阪神阪急ホールディングス | 819 |
第4位 | 日立物流 | 818 |
第5位 | 近鉄エクスプレス | 810 |
(出典:業界動向 https://gyokai-search.com/4-riku-nensyu.htm)
日本郵船
「日本郵船」は、三菱グループの中核企業にあたる大手海運会社です。
平均年収は1,082万円で業界第1位となりました。海運大手3社のなかでも、残業時間が最も短く、仕事と生活のバランスが取れた環境で高い収入を見込めます。
ヤマトホールディングス
売上高と年収ともに第2位となった「ヤマトホールディングス」。
平均年収は1,018万円で、競合である「SGホールディングス」を大きく上回りました。ちなみに、物流の中核を担う「ヤマト運輸」の平均年収は501万円です。
阪神阪急ホールディングス
「阪神阪急ホールディングス」は、1907年に設立された運送事業を中心とする企業です。
阪急電鉄や阪急阪神エクスプレス、阪急交通社など、6社の子会社を統括しています。2021〜2022年の平均年収は運送業界で第3位となる819万円でした。
日立物流
「日立物流」は、東京都に本社を置く東証プライム上場企業です。
平均年収は818万円で、運送業界で第4位となりました。また、勤続年数が長いのも特徴で、平均勤続年数は20年と業界のなかでもトップクラスです。
近鉄エクスプレス
第5位となったのは、平均年収810万円の「近鉄エクスプレス」です。運送業界上位の数字ですが、福利厚生は乏しく、給与以外の面ではあまり期待できないという声が多いです。
運送業界の3つの課題
売上高や平均年収を見ると、運送業界の将来はまだまだ明るいと感じますよね。実際に、業績は2013年から2021年まで増加傾向にあり、成長率がやや高めな業界です。
しかし、必ずしも業界としての見通しが明るいとは言い切れないのが現状です。その理由は、運送業界が抱える下記3つの課題に繋がります。
- 人手不足
- 燃料価格の高騰
- ドライバーの高齢化
それでは次で1つずつ解説していきましょう。
①人手不足
運送業界が抱える1つ目の課題は「人手不足」です。
ここ数年でネット通販の需要が急増し、それに比例するように小口配送の数も増加しています。小口配送とは、1人1人の消費者に荷物を届ける配送方式のことで、宅配便が例に挙げられます。
大量の荷物を1つの場所に運ぶ大口配送とは違って効率が悪く、時間もかかるため、多くの人手が必要になります。
しかし、運ぶ荷物の量に対して配達員が少ないのが現状です。
トラックドライバーの人手不足の原因と4つの対策も併せてお読みください。
原因は過酷な労働環境
長時間労働で低賃金という過酷な労働条件によって、トラックドライバー志望の若者が少なくなってきているのも人手不足の原因です。
国土交通省の職業安定業務統計によると、トラックドライバーの有効求人倍率は平成30年度で2.68。つまり、1人の求職者につき約2件の求人があることになります。
全職業の平均は1.35のため、全体で見ても人手不足が深刻な業界といえます。
②燃料価格の高騰
運送業にとって、燃料価格の高騰は非常に深刻な問題です。
燃料価格が上がった場合、その分運賃を値上げしなければ採算が取れません。しかし、多くの運送業者は荷主に対して取引上立場が弱く、運賃の値上げ交渉に応じてもらいにくいです。
そのため、燃料価格が高騰すると、利益だけが下がってしまう業者が後をたちません。
当社シフトアップでも、売上は上がったが燃料価格高騰のため利益は下がっているというお客様がいらっしゃいます。
③ドライバーの高齢化
ドライバーの高齢化が進んでいることも、運送業界が抱える課題の一つです。
全職業の40〜59歳までの就業者平均が35%であるのに対し、トラックドライバーの平均は45%と高い水準です。反対に、29歳以下は全体平均15%に対して、10%以下と低い結果になっています。
この数値から、運送業界には若い世代が少なく、40歳以上の就業者が大半を占めていることがわかります。
筆者が顧問先のトラック運送会社に訪問しても、50代や60代の高齢ドライバーが主力となっている企業が多いのも納得がいきますね。
運送業界は今後どうなる?
ここまで、運送業界が抱える課題について説明しました。
「課題を解決しないことには、運送業界に明るい未来は訪れないのでは?」と不安になった方も多いと思います。
実は、運送業界では先ほど紹介した3つの課題を解決するべく、新たな動きが見られています。
ネット通販の拡大により業績は右肩上がりに
業界動向リサーチの調査によると、2019年から2020年の利益率は+3.1%、業界としての成長率は+4.3%となっています。ネット通販の需要は今後さらに増えていくと予想されているため、運送業界の業績は右肩上がりになっていくと言えるでしょう。
2024年には時間外労働の上限が規制される
2024年の4月には、働き方改革の一環で「時間外労働の上限規制」が適用されます。
今までは時間外労働の上限は決められていませんでしたが、2024年4月以降は、年960時間まで(月平均80時間)の上限が設定されることになりました。これによって、長時間労働・低賃金とされていた運送業の労働環境改善が期待されています。
女性ドライバーが活躍する時代に
今後は、女性ドライバーが活躍する時代になっていきます。
特に宅配便などの小口配送は荷物の重量が軽いものも多く、2tトラックやバンなど比較的運転しやすい車種を利用するため、女性ドライバーが増加傾向にあります。
また、国土交通省では女性ドライバーを「トラガール」と銘打ち、その数を増やすために、企業向けのガイドラインも発行しています。このような取り組みから、運送業では今後、女性ドライバーが活躍する時代になっていくでしょう。
「運送会社で勝ち組になるには?運送業界の今後や2024年問題も解説」も併せてお読みください。
まとめ
いかがでしたか?
本記事では運送業界の売上・年収ランキングに加えて、今後の課題と将来性についても解説しました。
運送業界は、今後も業績が伸びていくことが期待されています。
しかし、そのためには新たな人材の確保や労働条件の改善が必要不可欠です。国の制度はもちろん、企業単位でも努力が必要になるでしょう。
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