アルコールチェックの義務化が、改正道路交通法施行規則が施行されたことにより2022年4月から実施されました。今まではバスやタクシー、トラック運送業など、いわゆる緑ナンバーだけが対象でしたが、自家用車を含む白ナンバートラックも対象となりました。
しかし、義務化が始まってもなお・・・
「対象になる事業者はどこ?」
「チェックをしなかった場合の罰則はあるの?」
と戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
この記事ではそんな声にお応えして、対象となる事業者やチェックを行わなかった場合の罰則、検知器を選ぶ基準などを解説していきます。
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アルコールチェックとは
事業者が運転手に対して点呼をするときに、酒気帯びの状態ではないかをチェックする制度のことです。2011年には事業用の自動車(緑ナンバー)を扱う運送事業、2019年には航空会社や鉄道会社でもチェックが義務化されています。
トラック運送業(緑ナンバー)では以前から義務化
バスやタクシー、トラック運送業など、緑ナンバーの車両を持つ事業者に対しては、2011年5月1日からアルコールチェックがすでに義務化されていました。
運転する前と後に、アルコール検知器で酒気帯びがないか確認するというもので、これによりチェック開始前の2010年は71件あった飲酒運転での事故数が、2018年には40件まで減少しています。
(出典:(公財)交通事故総合分析センター「事業用自動車の交通事故統計」)
白ナンバートラックはいつから対象となった?
このように、アルコールチェックは様々な業界で義務付けられてきました。そしてついに、2022年4月に施行された改正道路交通法施行規則によって、白ナンバートラックにもアルコールチェックが義務化されました。ここでは、対象の事業者やチェックに必要なものを解説していきます。
2022年4月から白ナンバーも対象
きっかけとなったのは、2021年6月に白ナンバートラックが起こした飲酒運転事故です。下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人が死傷しました。加害者の運転手は、焼酎を飲んだ状態で運転をしていたそうです。
この痛ましい事故をきっかけに、2022年4月から改正道路交通法施行規則が施行され、白ナンバーもアルコールチェック義務化の対象になりました。
対象となる事業者
下記の項目にひとつでも当てはまる場合は、義務化の対象となります。
- 白ナンバー(自家用車)の乗用車を5台以上持っている
- 乗車定員が11人以上の白ナンバー車両を1台以上持っている
通勤などで使う自家用車は対象外
通勤などで使う自家用車(各家庭で所有する車)は先述した条件には満たないので、アルコールチェックの義務はありません。しかし使用する車が社用車や営業車の場合は、条件に該当するので注意が必要です。
誰が実施するのか
事業者のアルコールチェックは、安全運転管理者が行う必要があります。
安全運転管理者とは?
自動車の使用者が道路交通法第74条の3の規定に基づき、自家用自動車(いわゆる「白ナンバー」)を一定台数以上使用している事業所において、安全運転管理者や副安全運転管理者を選任し、事業所における安全運転の確保を図るための制度です。
簡単にまとめると、事業所が所有している白ナンバー(自家用車)を管理する役割を担う人のことで、日々の安全運転を確保するための業務を行う人でもあります。
安全運転管理者が不在の場合は?
安全運転管理者が不在の場合は、副安全運転管理者や、安全運転管理者の業務を補助する人がアルコールチェックを行っても問題ありません。
いつ実施するのか
アルコールチェックは、運転する前とした後で1日2回のチェックが必要です。
緑ナンバーを持つ事業者はアルコール検知器を使用してのチェックが必要ですが、白ナンバーを持つ事業者は、次の事項を目視チェックするだけで問題ありません。
- 顔色
- 呼気の臭い
- 応答時の声の調子
出張などで対面による目視チェックができない場合は、カメラやモニターを使用して、顔色や声の調子を判断する必要があります。また、アルコールチェックの結果を毎日記録し、1年間保存しておくことも義務化されています。
白ナンバーのアルコール検知器使用義務化は当面の間延期が決定
2022年10月からは目視によるチェックに加えて、白ナンバーもアルコール検知器での酒気帯びチェックも義務化される予定でした。しかし、2022年9月の警視庁の発表で、当面の間延期になることが決定されています。
義務化される予定だったルールは以下の通りです。
- アルコール検知器を使用した酒気帯びの有無の確認が義務化
- 常時使用できるよう、アルコール検知器の定期的なメンテナンスを行うこと
延期になった理由としては、現時点において、十分な数のアルコール検知器が市場に流通するようになる見通しが立っていないことが挙げられます。
警視庁は、アルコール検知器の供給の見通しが立った時点で再度道路交通法施行規則を改正し、できるだけ早急にアルコール検知器使用の義務化を適用する考えを示しています。
検知器を用いたチェックの義務化がいつ施行されてもいいように、アルコールチェックについての知識を今のうちから身に付けておきましょう。
アルコール検知器を選ぶ基準
アルコール検知器の性能としては、酒気帯びの有無を、音や色、数値で確認できるものであれば問題ありません。
また、酒気帯びを検知した場合にだけエンジンを動かせなくする「アルコールインターロック」という機能が車両に搭載されている場合は、その機能をアルコール検知器として活用できます。
アルコール検知器の保守も必須
アルコール検知器が壊れていないかを定期的に確認し、正常に作動する状態で保管する必要があります。不具合があった場合は修理に出すなどして、故障がない状態をキープしましょう。
国土交通省が推奨している確認方法があるので、参考にしてみてください。
毎日確認すること | 電源が確実に入るか |
本体に損傷は見られないか | |
週1回以上確認すること | 酒気を帯びていない人が検知器を使用したときに、アルコールが検知されないか |
アルコールを含んだ液体を口に噴霧した上で検知器を使用したとき、しっかりとアルコールが検知されるか |
運転手が直行直帰の場合はどうする?
運転手が直行直帰だと、営業所に備え付けてある検知器ではチェックできませんよね。そういった場合は、携帯型のアルコール検知器でアルコールチェックを行う必要があります。
チェックを行うタイミングは、トラックを目的地まで運転する前と運転した後、つまり業務を開始する前と終了時の1日2回です。
直行直帰の場合も記録の保存は必須ですので、通常の場合と同じく1年間保管してください。
アルコールチェックを行わなかった場合の罰則
飲酒運転をしたら罰則があるのは知っているけど、事業者がアルコールチェックを行わなかった場合の罰則はあるのでしょうか?
以下で詳しく解説していきます。
安全運転管理者の業務違反になる
アルコールチェックを行わなかった場合は、安全運転管理者の業務違反になります。直接的な罰則はありませんが、公安委員会から安全運転管理者を解任されるなどの処分が下される場合もあるので注意が必要です。
運転手が受ける行政処分
飲酒運転による交通事故が起きた場合に、運転手が受ける行政処分は以下の通りです。
酒酔い運転 (アルコールの影響で正常な運転ができない状態) |
点数35点、免許取消、欠格期間3年 ※1 |
酒気帯び運転 (政令で定める基準以上にアルコールを保有する状態) |
【アルコール濃度が0.15~0.25mg】 点数13点、免許停止90日間 |
【アルコール濃度が0.25mg~】 点数25点、免許取消、欠格期間2年 ※1 |
※1 欠格期間とは、免許取消を受けた人が免許を再度取得することができない期間のことを指します。
運転事業者が飲酒運転を犯した場合の処分
貨物自動車運送事業者(緑ナンバー)で飲酒運転があった場合には、以下の業務停止処分が下されます。
飲酒運転時の状況 | 処分の内容 |
事業所が飲酒運転を容認していた | 14日間の事業停止 |
飲酒運転が原因で重大事故があり、 かつ事業者が指導監督義務に違反していた |
7日間の事業停止 |
飲酒運転に関わる道路交通法通知があるにも関わらず、事業者が指導監督義務に違反していた | 3日間の事業停止 |
飲酒運転をした場合 | 初違反:車両使用停止100日間 再違反:車両使用停止200日間 |
飲酒運転の罰則
飲酒運転によって事故を起こした場合には、以下のような罰則が科せられます。車を運転した人だけでなく、車を貸した人や酒類を提供した人、同乗した人も重たい罰則を受けることになります。
車両を運転した人
【酒酔い運転の場合】
5年以下の懲役または100万円以下の罰金
【酒気帯び運転の場合】
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
車両を貸した人
【運転手が酒酔い運転をした場合】
5年以下の懲役または100万円以下の罰金
【運転手が酒気帯び運転をした場合】
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒類を提供した人または同乗した人
【運転手が酒酔い運転をした場合】
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
【運転手が酒気帯び運転をした場合】
2年以下の懲役または30万円以下の罰金
まとめ
2022年4月から、緑ナンバーだけでなく、白ナンバーもアルコールチェックが義務化されました。
現在、白ナンバーのアルコール検知器を用いたチェックの義務化は延期されていますが、これもいつまで続くかは決まっていません。アルコール検知器を使用したチェックの義務化に向けて、今回の記事を参考にしながら準備を進めていくことをおすすめします。
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