運送業の営業所新設(事業所新設)認可申請に関する要件のうち、申請者の欠格事由・運行管理者・整備管理者・運転者など「人」の要件の解説です。
営業所新設認可申請を提出している間に行政処分になった場合などの対応につても詳しくご説明していますので是非ご覧ください。
まずは申請者の欠格要件から見ていきましょう。
営業所新設認可|申請者の法令遵守(欠格事由)
申請者の法令遵守事項(欠格事由と言います)は主に以下のとおりです。なお、申請者とは個人の場合は事業主本人、法人の場合は役員全員のことを言います。
法律の条文が苦手だという方は、次の見出しで簡単に説明しておりますので読み飛ばしてください。
- 1年以上の懲役または禁錮刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しの処分を受け、取消しの日から5年を経過しない者
- 申請者と密接な関係を有する者(親会社、子会社、グループ会社)が一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しの処分を受け、取消しの日から5年を経過しない者
- 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しに係る聴聞の通知が到達した日から、許可取消し処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に事業廃止の届出をした者で、その届出日から5年を経過しない者
- 監査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に事業廃止の届出をした者で、その届出日から5年を経過しない者
- 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消し処分に係る聴聞の通知が到達した日から、その許可取消し処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に事業廃止の届出があった場合に、申請者が聴聞の通知が到達した日前60日以内に事業廃止した法人の役員であった者で、事業廃止の届出日から5年を経過しない者
- 営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者または成年被後見人である場合に、その法定代理人が上記1~2、および4~6並びに下記8のいずれかに該当する者
- 法人の場合で、その役員が上記1~2及び4~7のいずれかに該当する者があるとき
上記のいずれか一つでも当てはまるものがあれば営業所新設の要件をクリアできません。
欠格事由の要約
上記の欠格事由を要約すると以下のようになります。
- 1年以上の懲役や禁固刑にが終わってから5年経過していること
- 一般(特定)貨物自動車運送事業の許可取消しの行政処分を受けた日から5年以上経過していること。たとえ、親会社やグループ会社が許可取消にになったときも同様
- 一般(特定)貨物自動車運送事業の行政処分により許可取消しの処分になる前に事業を廃止した場合は、その日から5年経過していること
- 未成年者については、まず該当しないので割愛
一般貨物自動車運送事業者にとって、よほどの違反がない限り許可取消しになることはありません。
ですから、5年経過しないと再びトラック運送業の許可を得ることはできないようになっているということです。
また、許可取消しになる前には運輸局による監査が実施されます。その際に、どれくらいの処分がくだるかは事業者もわかります。
行政処分になるくらいなら自ら廃業するという場合でも、他の会社を新たに設立し、その会社で引き続きトラック運送業をやるという事業者も過去にいました。
そのような「行政処分逃れ」が起きないよう、5年という長い欠格期間が設けられています。
悪質な違反や処分逃れについて
上記の欠格事由のほか、一般貨物自動車運送事業の処理方針では、悪質な違反や行政処分逃れについても欠格事由に該当することとしています。
その内容は以下の通りです。
個人事業主や法人の役員が、貨物自動車運送事業法、道路交通法の違反により申請日より前の6ヶ月間(悪質な違反の場合は1年間)、または申請した日以降に自動車・輸送施設の使用停止以上の処分を受けていないこと。
その他法令遵守に著しい問題があると認められる者でないこと。
自動車の使用停止処分とは監査における行政処分のことです。行政処分には、このほかに「事業停止」「許可取消」があり、いずれの場合も一定期間は営業所の新設をすることができません。
悪質な違反とは
道路交通法 違反における悪質な違反とは下記のことを言います。
- 違反事実もしくはこれを証するものを隠滅し、または隠滅すると疑うに足りる相当の理由が認められる場合
- 飲酒運転、ひき逃げ、妨害運転(あおり運転)等の悪質な違反行為または社会的影響のある事故を引き起こした場合
- 事業の停止処分の場合
悪質な違反についての欠格期間は2019年に6ヵ月から1年に引き延ばされています。また社会的な影響を受けて「妨害運転)(あおり運転)」が悪質違反に加わりました。
営業所新設認可中に監査が入ったときはどうなるか
営業所新設認可中に監査が入るというのは実際にあるケースです。この場合、行政処分の内容が決まるまでに認可が出れば問題ありません。
行政処分中は少なくとも6ヵ月(悪質な場合は1年)は、事業拡大を行うことができません。
事業拡大とは、主に下記のことを言います。
- 営業所の新設
- 車庫の新設
- 車両の増車
営業所または車庫の廃止をして移転する場合や、同種の車両への入替は事業拡大に当たらないので行政処分中やその後でも運輸支局へ認可や届出をして大丈夫です。
社会保険・労働保険の加入
申請者の法令遵守では、健康保険・厚生年金保険、労災保険・雇用保険の加入義務者が各保険に加入していることも要件となります。
個人事業主の場合は従業員5人以上の場合は社会保険・労働保険の加入義務が派生します。法人の場合、役員は非常勤役員を除いて社会保険加入は必須です。
※お急ぎの方は代表直通 080-3687-6848 までお掛けください。
営業所新設|運行管理者などの配置人員(運行管理体制)の要件
営業所新設(事業所新設)の場合も、新規許可取得時と同じく運行管理者、整備管理者、運転者などの運行管理体制=配置人員の要件の基準を満たす必要があります。
その内容は以下の通りです。
営業所に常勤する運行管理者と運行管理補助者がいること
新設する営業所には配置する車両の台数に応じた常勤の運行管理者と、運行管理補助者がいることが要件となります。新規運送業許可と同じく、運行管理者は運転者を兼任することはできません。運行管理補助者については、運転者を兼任しても構いません。
運行管理者と運行管理補助者の要件は以下の通りです。
運行管理者の要件
- 運行管理者資格を有していること
- トラック1台から29台までは1人以上。以後30台増えるごとに1人以上加算した数の運行管理者を申請時に確保、または確保予定であること
- 基本的に新設営業所に常勤する者であること(日雇い、2カ月以内の期間を定めて雇用する者でないこと)
- 他の営業所の運行管理者を兼任していないこと
- 社会保険および労働保険に加入していること(個人事業主の身内の場合などは除く)
運行管理者は、常勤であることが要件とるため、パートやアルバイトではいけません(派遣社員は大丈夫です)。
したがって、社会保険への加入は必須となります。労働保険(労災保険と雇用保険のこと)は、法人役員の場合は、基本的に加入できないため未加入で問題ありません。
運行管理補助者の要件
- 新設する営業所には車両台数に関係なく、1人以上の運行管理補助者がいること(新設営業所で運行管理者を2名以上選任する場合を除く)
- 基本的に新設営業所に常勤する者であること(日雇い、2カ月以内の期間を定めて雇用する者でないこと)
- 運行管理者資格を有しているか、運行管理者基礎講習を修了していること
- 短時間労働者等や個人事業主の身内の場合以外は、社会保険および労働保険に加入していること
運行管理補助者が営業所に常勤していることは必須ではありません。
ただし、運行管理補助者を選任しない場合、運行管理者が不在の時は、運送業をおこなうことが出来ないため注意しましょう。
運行管理者の欠格事由
下記に該当する者は、運行管理者および運行管理補助者となることはできません。
整備管理者と整備管理補助者の要件
整備管理者の要件
- 基本的に新設営業所に常勤する者であること(日雇い、2カ月以内の期間を定めて雇用する者でないこと)
- 自動車整備士3級以上の有資格者であること
- 1に該当しない場合は、運送業許可を有している貨物運送事業者のもとで整備管理者として選任された期間、または認証整備工場やガソリンスタンドでトラックの点検整備業を行った期間が2年以上ある者が、実務経験を積んだ事業者からの証明を取得し、かつ整備管理者選任前研修を修了していること
- 社会保険および労働保険に加入していること(個人事業主の身内の場合などは除く)
整備管理補助者の要件
整備管理補助者の要件は特にありません。
整備管理者および整備管理補助者の欠格要件
下記に該当する者は、整備管理者および整備管理補助者となることはできません。
運転者の要件
- 新設する営業所に配置する車両数に応じた常時選任運転者を確保または確保予定であること
- 他の営業所の常時選任運転者を兼任していないこと
- 日雇い、試用期間中の者、2カ月以内の期間を定めて雇用する者でないこと
- 短時間労働者等や個人事業主の身内の場合以外は、社会保険および労働保険に加入していること
※派遣社員は健康保険等に加入する必要はありません。また法人役員は労働保険に加入できないため例外扱いとなります。
まとめ
運行管理者・補助者、整備管理者・補助者、運転者に関しては他の営業所と兼任することはできません。もし、営業所新設(事業所新設)の認可申請時に兼任している場合は、認可取得までに一方の営業所を管轄する地方運輸支局へ解任届の提出が必用となります。
また、申請者の要件は今後、欠格事由に該当する期間が長くなることが決まっておりますので注意が必用です。
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