物流業の皆様こんにちは、運送業許可専門の行政書士の川合智です。本日は運送業許可の営業権譲渡・譲受認可申請についてのコラムをお送りします。
営業権の譲渡・譲受と新規許可 どっちがいいの?
最近よくご相談を受けるのが、「運送業の営業権(運送業許可)を他社からもらうんだけど、新規で取るのとどっちがいいの」というご質問です。
そもそも許可が譲渡できるという規定自体が他の業種に比べ特殊だなと感じるんですが、それは置いといて結論から言うと、一般的には「運送業の営業権の譲渡を受ける(譲渡・譲受認可と言います。)方がお得です。 なぜかというと
- トラックを中古で譲り受けることができるので新規許可取得に比べ開業資金が少なく済む
- 譲渡する会社の取引先を引き継げれば、営業にかける労力が圧倒的に少なくなる
- 譲渡する会社の従業員を雇用すれば広告費も不要で、募集の手間が省ける
などが挙げられます。
1.開業資金について
運送業許可を新規で取得する場合、事業開始に必要な資金を細かく算出して資金的要件をクリアする必要があります。一般的に土地・建物購入費やトラック購入代金を除いて開業資金は600万~800万です。
そこにトラック購入代金が加算されるので1500万~2000万(新車・中古車、トラックの大きさにより変わります)ほど準備することになります。 譲渡・譲受認可申請の場合、譲渡物の帳簿価格の合計が直近会計年度の貸借対照表の純資産額を上回っていれば良いので開業資金の要件基準がグッと下がります。
新規許可の場合のように従業員の報酬や賞与、車両整備費用などは開業資金に入れる必要がないから下がるんですね。
2.取引先の引継ぎについて
運送業を新規で始める場合に比べ、圧倒的に有利な条件ですね。そもそも運送業を始めようという方は運送業経験者の方が多いのでコネクションをお持ちですから、改めて取引先を探す必用がないかもしれません。
しかし、そこに加え他社の取引先が引き継げるわけですからお得ですよね。 運送業開業後は、多くの方が荷主を増やすのに苦労してらっしゃいます。その手間が省けるわけですから嬉しい限りです。
とは言え、引継ぎも簡単でないことは確かですが、新規開拓より労力は少なくて済むんじゃないでしょうか?
私も営業マン時代新規開拓には苦労しました、ほんとに。罵声を浴びながら、胃の痛む思いで飛込み営業もよくやったものです。おかげで度胸もつきましたから感謝ですね。
3.従業員の引継ぎについて
運送会社の経営者さんが頭を悩ますポイントです。運転手さんを募集してもなかなか集まらない。やっとの思いで雇用してもすぐ辞めてしまう。口を揃えてそうおっしゃいます。「労組に加入している人を雇って大変なことになった」なんて社長さんも多々あり・・・。
それが、広告費もいらない、経験者を雇用できる、そして素性がわかっているドライバーさんを雇用できるわけですから安全・安心ですよね。もちろん、社長も待遇も変わるわけですから、そこはドライバーさんが辞めないような体制作りは必須ですが。
と、それなりの創意工夫は必要ですが、良いことづくめの運送業許可の譲渡・譲受。しかし、見落としてはならないポイントがあるんです。
運送業譲渡・譲受 絶対に抑えるポイント
運送業の営業権(運送業許可)を譲渡する側の法人や事業主が、銀行からの借り入れがどれくらいあるのかは必ずチェックしてください。決算書一式を見れば一目瞭然ですから。
ご相談いただいたなかには負債1億越えの会社もあったりします。取引先の運賃が異常に安く割に合わない仕事を抱えているとか、従業員から訴訟を起こされ未払い残業代を支払ったとか、なにか良くない原因があるはずです。
しっかりヒアリングして原因を突き止めてください。負債の原因を突き止め営業権を引受ける上で支障がないものか見極める必要があります。ここを抜かして安易に譲り受けてはいけません。
負債も譲り受けることになるのか
ここは一般的に誤解してらっしゃる方も多いところです。運送業の営業権を譲り受けるとき、譲渡側の持っている負債も譲り受ける必要はありません。「 営業権のみを譲り受ける」ことは可能です。
ただし、銀行に対する負債があれば銀行なしに営業権譲渡・譲受の当事者だけで話を進めてはいけません。 まず、負債を抱えている譲渡側と銀行との話合いが必用です。銀行に経緯を伝えて、運送業の営業権を譲ることが可能か判断してもらいます。
当然、銀行は貸したお金を返してもらいたいわけですから、その会社が運送業しか行っていない場合は「YES」がもらえる可能性は限りなく低くなります。 もし、「YES」が出たら今度は銀行と譲渡・譲受の当事者3者間の話し合いです。
そこで銀行から「YES」が出れば営業権の譲渡・譲受が可能となります。が、現実的には譲渡側に銀行の負債があると運送業許可の譲渡・譲受は難しいと言わざるをえません。
まとめ
運送業許可の譲渡・譲受は新規許可より資金的要件等が緩和されるため「お得」。しかし、譲渡側の会社の決算内容をしっかり確認してから話を進めてください。過大な負債がある場合は譲渡・譲受はできないと考えましょう。
今、実際に運送業の営業件譲渡の話をもらってるんだけど
- この会社は大丈夫?
- こんな場合はどうしたらいいの?
- どう話を進めたらいいの?
とお悩みの方は、運送業専門で実績豊富な行政書士法人シフトアップへお気軽にご相談ください。
運送業許可(営業権)の譲渡譲受認可申請という選択
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