ご覧いただきありがとうございます。運送業許可専門行政書士の川合智です。
インターネット通販の拡大など、市場の追い風を受けて業績拡大が続くトラック運送業界。現在運送会社で働いている方や、転職先として運送会社を検討している方など、運送業界の動向が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、運送業界が今後どうなるのかという予測から、2024年4月の法改正(残業上限規制・改正改善基準告示)の完全義務化以降、激変を続ける運送会社の中で本当の「勝ち組」になるために必要な視点を分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
それでは、運送業界は今後どうなるのか見ていきましょう。
トラック運送業界の今後はどうなる?
トラック運送業界の今後を語る上で、ポイントとなるのは主に下記の5つです。
運送業界が直面している期待と課題を、両側面からひも解いていきましょう。
①トラック運送業は今後もなくなることはない
まず、トラック運送業という業界そのものの将来性について考えると、絶対になくならない業界であると断言できます。
それは、我々が社会生活を営み消費活動を行う限り、何かしらの物資が必要とされ、それをすべて自分たちで調達することは不可能だからです。
ドローンやロボットなどの技術を駆使して、人の手を介さなくなったとしても、業界そのものの基盤が強固である点は心強いと言えます。
ただし、未来永劫いまの状態が続くわけではなく、1970年代に現れたコンテナが港湾海運業界を激変させたように、テクノロジーや社会課題の変化に伴い「変化」の波は訪れるでしょう。
②インターネット通販により輸送量はさらに増加
近年はAmazonや楽天などのEC市場の急拡大により、配送量が急拡大。
増え続ける配送量に対して、ドライバーの新規採用が追い付いていないことが、業界全体の大きな課題となっています。
国内のEC市場は、過去の市場規模から毎年のように右肩上がりの急成長を続けてきた上に、新型コロナウイルス禍以降の定着した巣ごもり消費・行動変容によって人々の生活様式に完全に溶け込み、流通する小口貨物量は今なお増大の一途をたどっています。
③課題はドライバーの高齢化とドライバー不足
そんな強固な基盤を持つ運送業が直面している課題は、深刻な人材難。具体的にはドライバーの高齢化とドライバー不足です。以前の厚生労働省の各種調査や統計からも分かる通り、トラックドライバーの平均年齢は全産業平均を大きく上回り続けています。
特に大型長距離トラックのドライバーに絞って見ると、40代・50代のドライバーが労働力の圧倒的なボリュームゾーンを占めています。
この労働力のボリュームゾーンである層が引退を迎える未来に向けて、若手の流入がないままではドライバーの人数が激減するということです。
また、運送業界の平均給与の低さは10代~30代の働き盛りの年代を取り込むことを難しくしており、ドライバーの高齢化に拍車をかけています。
ドライバーの人手不足の原因と4つの対策も併せてお読みください。
④新しい配達方法やAI、自動運転が今後導入されていく
人手不足を解消するために期待されているのが、テクノロジーを駆使した物流の自動化です。
トラックの自動運転、amazonやファストリテイリング(ユニクロ)に見られる倉庫作業を自動で行なってくれるロボット、ドローンを使った配送網など、人の手を介さない物流のビジネスモデルが次々と現れ始めています。
たとえば、アメリカ小売業大手のamazonやウォルマートはドローンによる配送の実証実験をすでに開始しており、安全性の検証と規制の改革次第で一気にドローン配送が進む可能性があります。
自動運転自動車においては、ボルボが完全自動運転トラックの量産を目指しており、日本ではDeNAが自動運転自動車を使用した交通サービス「Easy Ride」の開発を手掛けています。
革新的な技術の導入により、運送業全体のドライバー不足解消が期待できるでしょう。
ただし、自動運転自動車については、法規制をクリアすることが難しいこともあり、日本において一般道の配送まですべてが自動運転に置き換わる日はまだ先の話となるかもしれません。特に倫理的な問題がついて回る完全自動運転自動車については実現できないとみている専門家もいます。そのため、2026年現在の実務においては、遠い未来の自動運転を待つのではなく、現在自社で稼働しているドライバーの「拘束時間をいかに短縮し、ITやシステム(DX)を活用して運行管理を効率化するか」という足元の対策が最優先の課題となっています。
⑤女性ドライバーが活躍していく時代に
トラックドライバーというと男性が多いイメージですが、近年は女性ドライバーも増えつつあります。
特に、インターネット通販の宅配ドライバーは、小型の宅配物も多いため普通免許で運転できるコンパクトな2トン車や3トン車、軽バンでも配送可能です。
普通免許があればドライバーになれる女性や主婦でも活躍できる環境を整えているトラック運送事業者も増えていることは明るい話題の一つです。
運送会社で勝ち組になるために必要な6つの視点
ここまで、運送業界の現状と将来性について、解説してきました。
それでは今後、運送会社で勝ち組になるためには、実際にどうすればいいのでしょうか。6つの視点に分けて解説します。
①長時間労働の是正と厳格な新・改善基準告示への完全対応
長時間労働の是正は荷主企業の協力やコンテナターミナルの長時間待機問題の解消なくして成立しないことは筆者も重々承知しています。
しかし、2024年4月に施行された「年960時間」の残業上限規制、および1年の拘束時間を原則「3,300時間」以内とする拘束時間制限の強化(改正改善基準告示)は、すでに完全義務化されて久しく、現在の運輸局監査や労働基準監督署の臨検における最重点チェック項目となっています。この厳格化されたルールを完全にクリアしていなければ、これからの時代に勝ち組となることは絶対にできません。
ドライバー不足により荷主企業とのパワーバランスが崩れかけている昨今、運送会社は荷主企業との交渉で集配時間の調整を行い長時間労働や休日出勤を極力抑えなければいけません。長時間労働や休日出勤の多いトラック運送事業者は、交渉力を存分に発揮して荷主からの協力を得るとともに、自社で運行する業務の取捨選択を急いでください。2024年10月の処分基準改定により、過労運転(労働時間違反)の処分件数上限(旧16件)は撤廃され、未遵守の件数だけ車両停止日数が「青天井」に累積する仕組みに変わっているため、1つの見落としが即「会社倒産」につながる厳しい時代に突入しています。
また、残業時間60時間を超えた場合の割増賃金は50%以上の割増賃金率としなければいけないというルールも完全に義務化され、実務に定着しています。この割増賃金率アップに適切に対応できていない場合、後から巨額の「未払い残業代請求」として経営を直撃するリスクとなります。固定残業代やみなし残業代を手当として支払っている企業は、未払い残業代が発生していないか、自社の賃金規程や運行記録(デジタコデータなど)をプロの目ですぐに精査しておく必要があります。
2024年問題の解決に有効な手段を紹介している「健康経営のはじめ方|トラック運送会社編」も併せてお読みください。
2024年問題にかかわる令和の改善規準告示改正については「2024年改正の改善基準告示を解説!いつ/拘束時間/休憩時間/罰則etc」をご覧ください。
②人材の確保と育成
2つ目の視点は人材の確保と育成です。トラック運送事業者が持続的に成長を続けるためには、ドライバーを新規採用し育成することが不可欠です。
多くの中小トラック運送会社でも即戦力となる経験者を有しているため今は完全に売手市場と言わざるを得ません。いつ確保できるかわからない経験者を待つのでなく、コストをかけて未経験者を育てるつもりで採用する余裕を持つことも必要です。
また、女性ドライバー採用により運転者不足を補う工夫も大切です。女性でも体に負担のかからない業務や、子持ちの女性でも就業できる柔軟な勤務体制の整備。そして、事務所・休憩室を綺麗に整備、資金的な余裕があればトイレを男女別々にするなどして女性の働きやすい職場環境を整えることも必要です。
加えて男性と女性の身体的な違いを経営者も他のドライバーも理解することも重要でしょう。
従業員の定着率の向上について
確保した人材の定着率を高めることも大切です。採用したドライバーが定着すれば、求人広告にかけるコストもなくなります。そして、ドライバーの経験値が上がれば事故やミスも減り、顧客満足度も高まります。
ドライバーという職種は流動性が高く、採用しても短期間で次の運送会社へと転職する傾向にあるため、採用した人材を定着させることは多くのトラック運送事業者において至上命題であり、大きな課題です。いかに従業員満足度を上げられるかを考え、実行できる企業でなければいけません。
一人ひとりに合わせた働き方を実現する
トラックドライバーと言うと、深夜配送や長距離配送で稼ぐイメージがあるかもしれません。
しかし、働く人の価値観は一人ひとり異なります。休みより給料を優先する人もいれば、収入はそこそこでいいからプライベートを大切にしたい人もいます。
そうした一人ひとりの価値観に合わせた働き方を実現できる雇用形態や給与体系を準備すれば、幅広い層のドライバーから支持され、人材を確保できる可能性が高まります。
そのために様々な内容の業務を確保できることも従業員満足度アップの要素となります。
免許などの資格取得を支援する
入社のハードルは限りなく低く設定し、入社後に働きながらステップアップできる仕組みを作ることも有効です。
中型免許やフォークリフト免許など、仕事に活かせる資格取得にかかる費用の一部を運送会社が負担する制度は、求職者にとって魅力的に映るでしょう。
ただし、資格取得の支援をした社員が早期に退職した場合の決まりもしっかり決めておいて下さい。
人が一番重要だという事実
結局のところ、企業にとって最も大切なものは「人」です。
人の質を高めなければ多くのお客様から選ばれることはできません。経営者だけでは実現できない目標を達成するために、社員を雇用するわけで、社員なくして企業は成り立ちません。
人の質を高めるために企業理念を掲げて、この会社にいれば自分も成長できるという状況を作ることも従業員満足度を上げて定着率をアップさせる要素となります。
③運送業務の効率化と物流デジタルトランスフォーメーション(DX)
3つ目の視点は、運送業務の効率化です。取引先との調整や、テクノロジーを駆使することで、人の手を介さなくても回るビジネスモデルを模索していくことが、勝ち組へ近づく大きな一歩になります。まずは、取引先との連携を強化することで輸送の効率化を図りましょう。
さらに社内でITやクラウドシステムを積極的に活用していくことで、これまで人の手(アナログ)で行なっていた点呼記録の作成や拘束時間の集計などを自動化し、無駄を排除して人件費の削減や運行管理のミス防止につなげていく視点が重要です。2025年4月に本格施行された「改正物流効率化法(物効率法)」への対応も含め、これからの時代、ITを駆使した「物流DX」への取り組み遅れは、荷主企業から取引を打ち切られる致命的なリスクとなります。
そのために、経営者は常に最新のテクノロジーに触れ、ITリテラシーを高めておきましょう。
テクノロジーの進化のスピードが激しい令和の時代に、「パソコンが苦手」と言っていると知らない間に取り残されていたということになりかねません。
トラック運送業におすすめの勤怠管理システム比較5選も併せてお読みください。
④多角化による付加価値の向上
4つ目の視点は、付加価値の向上です。利用者にとって大きなメリットとなるよう品質にこだわり、付加価値を高めていくことが大切です。
そのために、短期的には売上が減っても、中長期的には売上が増えて利益も増えるという戦略も必要です。
例えば食品メーカーの営業が、ライトバンで注文を受けるルートセールスを行なっていた場合、物流のアウトソーシングとともに、ルートセールス業務も代行する提案を行う。
このように多角的なサービスにより、モノを運ぶだけではない付加価値を提供していくことが、業界内で存在感を高めていくヒントになると言えます。
⑤安全対策と環境対策の取組み
5つ目の視点は、安全対策と環境対策です。トラック運送業を営む上で、安全対策は最重要事項です。社内や協力会社と安全会議等で輸送の安全意識を全社的に高めましょう。
しかし、社長が「今日から安全対策と環境への取り組みをやります」と言っても、反発する社員も出てきます。ですので、社員を巻き込みながら時間をかけて取り組みを進めてください。
安全性への取り組みとしてはGマーク取得を積極的に活用しましょう。Gマーク認定は運送業開始後3年経過した営業所しか申請できませんが、3年未満であってもGマーク認定に沿った安全性に対する取組を行えば事故を削減することは可能です。
トラック協会に加入している事業者であれば、SASのスクリーニングテストやドライブレコーダー・バックカメラの取り付けに助成金がもらえたりといったサポートもあります。
このような助成制度を上手に活用すると経費を抑えながら安全性を高めることもできます。
【最新版】Gマーク取得方法をざっくり解説も併せてお読みください。
また、安全対策と同時に、トラック運送事業者の社会的責任として環境対策にも積極的に取り組んでいけると良いでしょう。
環境・エネルギー対策に積極的に取り組んでいるという企業姿勢をアピールすることで、荷主や求職者からの信頼度アップにもつながる利点もあります。ISOやグリーン経営認証の認定もぜひ積極的に取得していきましょう。
グリーン経営認証とは?メリット・デメリット、取得の流れ、取得方法etcも併せてお読みください。
⑥社長の意識改革
会社は社長の価値観の集合体です。社長の価値観によって、企業がどの方向に進むかが決まります。
これまで解説してきた運送会社で勝ち組になるための取り組みは、中小トラック運送会社においては社員だけに任せても進むことはありません。
安全意識や環境へ配慮や、人材定着への取り組みなどについて社内の誰よりも社長の意識が高くなくては実現しません。
もし、トラック運送会社は法令遵守など無理、ドライバーの定着は難しいと社長が考えていたら、何よりも優先して社長の意識改革を行う必要があります。
まとめ
運送業界は今後も、小口配送量の増加などで長期的な需要を維持していく見込みです。
しかしながらドライバー不足や強化された労働時間規制への対応が急務であるため、物流DXなどによる業務効率化や、女性ドライバーの活躍、何よりも義務化された新・改善基準告示に100%適合したクリーンな管理体制が不可欠です。
さらにこれからのトラック運送会社では、確保した人材の育成や従業員満足度向上に注力していくことが欠かせません。
この記事で解説した運送業界で勝ち組となるための6つの視点を1つずつ実行し、目的達成にコミットできれば明るい未来が待っているのではないでしょうか。
運送業界の今後の変化を先取りして勝ち組になりませんか?
AIや物流DXによる新しい配送方法、ドライバーの深刻な高齢化、そして完全義務化された労働時間規制に伴う人手不足など、運送業界の経営環境はより一層激しく変化しています。
そんな中、運送業許可の維持はもちろん、運輸局による監査や適性化事業実施機関による巡回指導を完全にクリアできるクリーンな社内体制を敷くことこそが、今後の運送業界で生き残るために最も必要だと私は確信しています。
「行政書士法人シフトアップ」では、運送業許可の新規取得はもちろん、行政処分の青天井リスクを回避するための監査・巡回指導対策、労務帳票チェックを含む専門特化した顧問業務など、運送業の持続的な経営を法務・実務の両面から強力にアドバイス可能です。
いつでもどこでも、全国からご相談を受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!
参考文献
- 厚生労働省|自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
- 国土交通省|自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について
- 経済産業省|流通・物流(改正物流効率化法関連)
- 全日本トラック協会|日本のトラック輸送産業 現状と課題 2025
なお、監査や巡回指導対策について相談したい方は、「運輸局監査対策は「行政書士法人シフトアップ」へ」の案内記事をご覧ください。
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