愛知県はトヨタ自動車の本社所在地でもあり、中部地方随一の経済エリアです。そのため、トラック運送会社を構えたいと考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、愛知県でトラック運送業を開業する方法を解説します。
許可を取得する流れや要件、必要な資格、申請時の注意点に関しても詳しく解説するので、トラック運送業を始めたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
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愛知県で運送業を始めるには?
愛知県は中部地方を代表する経済エリアで、輸送用機械・鉄鋼業・生産用機械などの産業が盛んなため、トラック運送業の需要も高い地域です。
また、高速道路や港湾など交通インフラも整備されているので、物流の効率化や輸送ルートを確保しやすいエリアでもあります。
そのため、愛知県でトラック運送業を始めたいと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし一口に運送業といっても、輸送する貨物や使う車両によって必要な許可は異なります。
まずは自身が希望する運送業がどのケースに該当するのか確認しましょう。
運送業許可を種類別に解説
運送業とは、荷主の需要に応じて貨物を決められた場所まで運び、その対価として運賃を受け取る事業です。
大きく分けると、物を運ぶ「貨物」と人を運ぶ「旅客」の2種類があり、さらに以下のように分類されます。
旅客自動車運送事業 | 一般旅客自動車運送事業 |
特定旅客自動車運送事業 | |
貨物自動車運送事業 | 一般貨物自動車運送事業 |
特定貨物自動車運送事業 | |
貨物軽自動車運送事業 |
旅客には路線バスやタクシーなどが該当し、貨物にはトラック運送業や宅急便が当てはまります。
ここからは、一般的なイメージに近い「貨物自動車運送事業」について詳しく解説します。
一般貨物自動車運送事業
一般貨物自動車運送事業は、運送業と聞いて多くの人がイメージする、ヤマト運輸や佐川急便、日本通運のような事業者を指します。
詳しくいうと、軽貨物以外の普通貨物自動車を使用して不特定多数の荷主の需要に応じて貨物を決められた場所まで運び、運賃を受け取る事業です。
一般貨物自動車運送事業を始めるには、中部運輸局長の許可を得る必要があります。
特定貨物自動車運送事業
特定貨物自動車運送事業は、特定された1社のみの需要に応じて貨物を運ぶ事業です。
この場合も運賃が発生するので、中部運輸局長の許可を取得してから事業をおこなう必要があります。
メーカーの運送を担当する系列会社や、工場間で貨物を運ぶ輸送便が例に挙がります。
ただし、特定の1社のみの運送しかできないため、シフトアップでは特定貨物自動車運送事業の許可ではなく、一般貨物自動車運送事業許可を取ることをおすすめしています。
貨物軽自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業は、荷主の需要に応じて軽貨物自動車や125cc超えのバイクで貨物を運び、運賃を受け取る事業です。
他2つの事業とは異なり、人員1名、車両1台から開業できるのが特徴で、通販で購入した商品など、個人宅へ届けるような比較的小さくて軽い貨物を運びます。
貨物軽自動車運送事業を始める際は、特定貨物自動車運送事業および一般貨物自動車運送事業の許可は不要です。
愛知運輸支局へ届出をおこなうだけで事業をスタートできるので、個人事業主の方も多くいます。
Uberなどのフードデリバリーで原付の配達員をよく見かけますが、原付バイクは125cc以下なので貨物軽自動車運送事業の届出は不要となります。
愛知県で運送業許可を取るための要件
自身が始めたい事業が「一般貨物自動車運送事業」または「特定貨物自動車運送事業」の場合、運送業許可を取る必要があります。
しかし愛知県で許可を取得するためには、以下5つの要件を満たさなければなりません。
- お金
- 人
- 場所
- 車両
- 資格
ここではざっくりと解説しますが、内容をより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
お金の要件
運送事業許可申請をする前に、「開業資金」と「当面の事業資金」を確保しなければなりません。
車両の大きさや台数、その他諸費用で合計額は変わりますが、ザックリ1,500〜2,500万円ほど用意する必要があります。
また許可を取得したあとには、登録免許税(12万円)を納付しなければなりません。
【まとめ】
- 開業に必要な資金は1,500~2,500万円程度(場合によって異なる)
- 許可取得の際には登録免許税12万円も必要
人の要件
運送事業を開始するにあたって、必要な人員を確保しなければなりません。
- ドライバー×5人
- 運行管理者×1人
- 整備管理者×1人
- 運行管理補助者×1人
- 整備管理補助者×1人
整備管理者や補助者はドライバーと兼任できるので、資格保有者を含めて6人揃えれば、運送業許可を申請できます。
※運行管理者は運転者を兼任することができません。
また、申請者や法人役員が欠格事由に該当しないかもチェックする必要があります。
欠格事由とは、申請者が運送業許可を取得するための法律的な条件をクリアできないことで、主な欠格事由は下記のとおりです。
- 1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受け、またはその執行が終わってから5年経っていない
- 一般貨物運送事業または特定貨物自動車運送の許可取消から5年経っていない
- 申請者が未成年や成年被後見人の場合、法定代理人が上記のいずれかに該当する
- 法人で申請する場合、役員が上記のいずれかに該当する
【まとめ】
- 人員は最低でも6人必要
- 申請者または法人役員が欠格事由に当たらない
場所の要件
営業所や休憩施設、駐車場は運送業を営むうえで必ず設ける必要があり、自己所有または賃貸で、申請者に使用権原があることを証明できる建物でなければなりません。
また、都市計画法や農地法など関係法令に触れていないことも要件の一つとなります。
睡眠施設に関しては、ドライバーが仮眠・睡眠を取らないと輸送の安全確保が難しい場合のみ設置が必要です。
駐車場は、営業所から直線距離で10km以内の場所にあることや、出入口前面の道路幅が車両制限令(または道路幅員証明)に抵触しないか等の要件をクリアできるかチェックする必要があります。
【まとめ】
- 自己所有または賃貸で、使用権原があることを証明する必要がある
- 都市計画法や農地法など関係法令に抵触しないかの確認も必須
- 睡眠施設は仮眠を取らないといけない場合のみ設置が必要
- 駐車場は営業所から直線距離で10km以内の距離でなければいけない
車両の要件
車検証の用途欄に「貨物」と記載された車両のみ、トラック運送事業に使用する事業用自動車(緑ナンバー車両)として登録可能です。
1営業所につき5台以上揃える必要があります。
ただ、申請時にすべての車両を揃えておく必要はなく、売買契約書等で使用権原があることを証明できれば購入予定でも問題ありません。
【まとめ】
- 車検証の用途欄に「貨物」と記載された車両を5台以上確保する
- 申請時に揃えられなければ、購入予定でも問題ない
資格の要件
許可申請で欠かせないのが、運行管理者の選任です。
運行管理者資格を持つ者がいない場合は、新たに雇用するか、試験を受けて資格を得る必要があります。
同じく選任が必須なのが、整備管理者です。
整備管理者に関しては、自動車整備士3級以上の資格を持っているか、運送会社でトラックの点検整備などを行った実務の経験が2年以上あるものが整備管理者選任前研修を受講すれば選任可能です。
なお、運行管理者または整備管理者を不選任のまま事業をおこなった場合、監査が実施されると30日間の事業停止処分が科されるのでくれぐれも注意してください。
また、資格の要件で忘れてはならないのが、役員法令試験への合格です。
役員法令試験は運送業許可申請の受付をしたあと、最初に来る奇数月に実施され、2度不合格になると申請自体が取り下げられてしまいます。
しっかりと勉強しましょう。
【まとめ】
- 運行管理者・整備管理者資格を持つ者を選任する
- 役員法令試験に合格する
愛知県で運送業許可を取るまでの手順
ここからは、愛知県で実際に運送業許可を取るまでの手順を紹介します。
①各種要件のクリア → 申請書提出
- 要件の確認とクリア
- 運送業許可申請書の作成と添付書類を収集
- 愛知運輸支局へ許可申請書と添付書類を提出
②申請書提出 → 許可取得
- 愛知運輸支局と中部運輸局で申請書類を審査(審査期間は4~5ヵ月)
- 役員法令試験の受験
- 補正対応
- 残高証明書を提出
- 各種保険への加入・36協定書の提出
③許可取得 → 運輸開始
- 愛知運輸支局より許可取得の通知が届く
- 愛知運輸支局での許可書交付式に出席
- 登録免許税12万円を金融機関で納付
- 運行管理者・整備管理者選任届を愛知運輸支局へ提出
- 社会保険・労働保険の加入
- 36協定書を労働基準監督署へ提出
- 運輸開始前確認を愛知運輸支局へ提出
- 事業用自動車等連絡書・緑ナンバーを取得
- 運輸開始届・運賃料金設定届を愛知運輸支局へ提出
- 運送業開始
運輸開始届を提出した後、3~6ヵ月を目安に地方適正化事業実施機関による巡回指導がおこなわれます。
巡回指導はA~Eの5段階で評価され、総合評価がDまたはEの場合、行政処分の対象となるので気を抜かずに挑みましょう。
愛知県は運送業で利用できる駐車場が少ないので注意が必要
愛知県はトラック運送会社が多く、とくに以下の地域では、既に他の事業者が駐車場物件を利用しているケースが多いです。
- 名古屋市
- 小牧市
- 春日井市
- 豊明市
- 安城市
- 刈谷市
- 岡崎市
- 豊田市
中でも三河地方は、トヨタ系の自動車部品を運んでいるトラック運送会社が、高確率で立地のよい駐車場を押さえているため、運送業で使用できる駐車場が少ないのが現状です。
しかし、場所が全くないわけではないので、運送会社が移転するタイミングなどを狙って根気強く探しましょう。
まとめ
愛知県は中部地方を代表する経済エリアのため、トラック運送業の需要が高い地域です。
運送業を始める場合は、中部運輸局長の許可を得る必要があります。
しかし、愛知県には多くの運送会社があるので、既に他の事業者が優良な駐車場物件を押さえているケースが多いです。
そのため、場所選びには他の県より時間がかかる場合があることを頭に入れておきましょう。
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