トラック運送業許可における「人の要件」は大きく分けて以下の4つです。
- 申請者
- ドライバー(運転者)
- 運行管理者
- 整備管理者
事業計画において、4つの要件すべてをクリアしないと運行管理体制がととのっていないため、運送業許可を取得することができません。事業資金や事務所・駐車場の確保をしたのに、人の要件が満たせないために運送業の許可が取れないというケースは避けたいものです。
意外と盲点な人の要件。どんな場合に申請できなくなるのか見ていきましょう。
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申請者の要件1|欠格事由
申請者とは個人事業主なら事業主、法人なら法人役員全員のことを言います。申請者は一定の条件に当てはまると、運送業許可を申請することができません。一定の条件のことを「欠格事由」と言い、主な欠格事由の内容は下記のとおりとなっております。
- 運送業を営むのに必要な法律(道路交通法など)を守ること。
- 個人事業主や法人の役員が申請日の前後で、道路交通法などの違反で自動車の「使用停止」以上の処分を受けていないこと。
- 1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受け、その刑の執行が終わってから5年を経過していること。
- 運送事業(一般貨物運送事業または特定貨物運送事業)の「許可取消し」を受けた場合、取消しの日から5年を経過していること。
- 法人役員のなかに、上記1から4までのいずれかに当てはまる者がいないこと。
1から5までのうち、ひとつでも当てはまるものがある場合は欠格事由に該当します。そのため、人の要件をクリアできず運送業許可申請をすることはできません。
なお、法人の役員とは監査役を含む法人履歴事項全部証明書に記載されている者のことを言います。
自動車の使用停止以上の処分とは
2について詳しく申しますと、
「個人事業主や法人の役員が、貨物自動車運送業法、道路交通法の違反で、申請日より前の6ヶ月前(悪質な場合は1カ月前)、または申請した日以降に自動車・輸送施設の「使用停止」以上の処分を受けてないこと」となります。
悪質な違反とは飲酒運転、ひき逃げ、事業の停止処分などのことを言います。
欠格事由の詳細
欠格事由の詳細は下記のようになっています。なお、2018年の第197回国会で欠格事由に関する期間の延長の法案が出され、2019年に欠格要件は改正されています。
- 1年以上の懲役または禁錮以上の刑をうけ、その刑の執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年経過していない。
- 一般貨物運送事業または特定貨物運送事業の「許可取消し」を受け、その取消しの日から5年を経過していない。
- 申請者が法人の場合、その親会社や実質的支配会社などが2に該当する。
- 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消を受けて、処分決定までの間に事業廃止の届出をした場合、その届出の日から5年経過していない。
- 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業に関する立ち入り検査が行われた日から聴聞決定までの間に事業廃止の届出をした場合、その届出から5年経過していない。
- 上記4の事業廃止をした法人の役員であった場合、その届出から5年経過していない。
- 未成年者で、法定代理人が1~6(3を除く)および8に該当する。
- 申請者が法人の場合、その役員が上記1~7(3を除く)に該当する。
いずれも悪質な運送事業者を出さないために改正された措置です。この改正で、行政処分決定後の処分逃れができなくなったと言えるでしょう。
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運転者(ドライバー)の要件
運送業許可は、事業用自動車の運転者についても一定の要件をクリアするよう規定されております。具体的には下記の内容になります。
- 営業所には車両台数に応じた数の常勤ドライバーがいること(名義貸しはできませんので注意してください)
- 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に加入または許可申請時に加入予定であること(短時間労働者等を除く)
- 車両台数分以上の運転者を雇用している、または許可申請時に雇用予定であること
- 2ヵ月以内の雇用期間を定めて雇い入れる者でないこと(試用期間中のものが2ヵ月を超えて雇用されるに至った場合を除く)
- 日々雇い入れられるものでないこと
日雇いや2ヵ月以下の雇用契約を結ぶ者をトラック運送業の運転者とすることはできないのでご注意ください。
運転者はパート・アルバイト・派遣社員などでも良いのか
営業所に常勤する運転者は、必ず正社員でなければいけないという条件はありません。正社員でなくても、2ヵ月を越える雇用契約等を結んでいる下記の者でも大丈夫です。
- 派遣社員
- 出向社員
- パートタイマー
- アルバイト
【補足】パートタイマーとは?
パートタイマーとは、パートタイム労働法第2条で
1週間の所定労働時間(会社で定めた労働時間のこと)が、同じ事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い者
と定義されています。
派遣社員、個人事業主やその家族で雇用保険、労災保険に加入できない場合は加入の必要はありません。
派遣社員は、派遣元で健康保険・厚生年金保険、雇用保険・労災保険に加入します。また、個人事業主は基本的に雇用保険・労災保険に加入する義務はありません。
【補足】パータイマーと短時間労働者の違い
短時間労働者とは、勤務時間・勤務日数が正社員の4分の3未満で、なお且つ、下記のすべてに当てはまる者のことです。
- 残業を含めず、1週間の所定労働時間が20時間以上ある者。
- 1年以上の雇用見込みのある者。
- 月の給料が88,000円以上ある者(残業手当、通勤手当、ボーナス等は含みません)。
- 学生でない者(夜間、通信、定時性の学生を除く)。
- 特定適用事業所、任意特定事業所または国・地方公共団体に属す
運行管理者
運行管理者とは運行の安全を確保に関する業務を行う者で、運送業運営の要となる役割を担います。したがって、運送業を行う事業所ごとにトラック=事業用自動車の台数に応じた運行管理者資格を持った運行管理者を確保しないと運送業許可申請はできません。
運行管理者となるには、運行管理者試験に合格するか、5年以上の運行管理の経験があり、運行管理者の基礎講習や一般講習を年1回、通算5回以上受ける必要があります。
車両29台までは、最低でも1人の運行管理者がいれば構いません。したがって、車両5台で運送業を始める場合は運行管理者の資格を持った者が1人いれば運送業許可申請はできることになります。
運行管理補助者は必ず必用か
運送業許可申請をするさいに、運行管理補助者の要件を満たしている者を確保することは必須ではありません。
ただし、運行管理補助者を確保できない場合で、営業所に運行管理者不在のときはトラック運送業を行うことはできませんので十分注意してください。
運行管理補助者になるための要件は、独立行政法人自動車事故対策機構やヤマト・スタッフサプライ等が実施している3日間の運行管理者基礎講習の受講を修了していることになります。
整備管理者
運送業を行う事業所ごとに1人以上の整備管理者を確保できないと運送業許可申請を行うことはできません。
整備管理者となるには、以下のいずれかの条件を満たす必用があります。
- 自動車整備士3級以上の資格を持っている。
- 運送業許可を持つ運送事業者で、トラックの点検整備などを行った実務経験が2年以上、かつ、実務経験を積んだ運送事業者から証明をもらえる者が整備管理者選任前講習の受講を修了していること。
ちなみに、整備管理者はトラックの台数に関係なく最低1人確保していれば構いません。
整備管理補助者
整備管理補助者についての要件はありません。したがって、資格や講習の受講は不要です。
整備管理者以外の者であれば選任可能ですので、必ず選任しておきます。
役員法令試験|法令遵守1
運送業許可の申請者、つまりトラック運送業に専従する個人事業主または法人の常勤役員が、許可申請受付後に実施される役員法令試験に合格しないと運送業許可を取得することはできません。
役員法令試験は奇数月に実施され、出題項目は以下のとおりです。
- 貨物自動車運送事業法
- 道路運送車両法
- 道路交通法
- 労働基準法
- 独占禁止法・下請け法などその他の運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識および能力
上記の法令から30問出題され、18問以上正解、かつ1~4の出題分野ごとに正解が1問以上、5については正解が2問以上ないと合格できません。
なお、2回目までに合格しないと申請取り下げとなるためご注意ください。
社会保険・労働保険への加入|法令遵守2
社会保険(健康保険と厚生年金保険のこと)、労働保険(労災保険と雇用保険のこと)の加入義務者については、運送業を始めるまでに加入しなければいけません。
先述した短時間労働者は社会保険の加入義務はありません。労災保険は加入必須。雇用保険は本人が望む場合は加入させる義務が発生します。
まとめ
運送業許可における人の条件で、「こんなときは運送業許可申請ができない」というケースをまとめました。
申請者やドライバーにおいては、欠格事由に該当しないとこと。このほか、運行管理者の資格を持った者が1人以上いること、整備管理者となる条件を満たす者が1人以上いること。
これらをすべてクリアしないと人の要件は満たされず、運送業許可申請をすることができません。
当事務所は運送業許可の専門事務所として、申請者やドライバーについてお客様の事情に合わせた申請方法のノウハウを持っております(ただし、法律違反はいたしません)。年間相談件数430件超え!運送業専門の「行政書士法人シフトアップ」が、豊富な経験に基づき的確なアドバイスをさせて頂きますのでお気軽にご相談ください。
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