「福岡県でトラック運送会社を開業したいけど、何から手を付けていいかわからない…」
トラック運送業を始めるには、いくつかの要件をクリアし、申請書を作成して運輸支局に提出する必要があります。
しかし複雑な項目も多く、内容を見ただけでは判断に迷う方もいるでしょう。
本記事ではそのような方に向けて、福岡県でトラック運送業を始めるときに押さえておくべきポイントを解説します。
福岡県でトラック運送業(緑ナンバー)の新規許可を取得したい、営業所を新たに設けたいという方は、ぜひ参考にしてください。
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福岡県でトラック運送業(緑ナンバー)を開業するメリットとは?
福岡県は、西日本屈指の経済力と人口を有する県です。
高速道路などの交通インフラも整っているため、物流に対する需要は拡大傾向にあります。
また空港や湾岸も発達しており、アジア諸国にもアクセスしやすいので、福岡市を中心に国際物流を展開する運送会社も多く存在します。
福岡県でトラック運送会社を開業するメリットは数多くありますが、中でも以下の2点は福岡ならではといえます。
- 交通インフラが充実しているのでルート確保や輸送の効率化を実現しやすい
- 国外にもアクセスしやすく国際的な物流事業を展開できる
福岡県でトラック運送会社を開業するには、福岡運輸支局で許可申請をし、国土交通大臣または地方運輸局長から許可を受ける必要があります。
以降の項目で、許可を取得する際に押さえておきたいポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。
福岡県で運送業許可を取得するための要件
運送業許可を得るうえで欠かせないのが「要件の確認」です。
貨物利用運送事業法や九州運輸局の公示などで定められた審査基準に適合しなければ、運送業許可取得はいうまでもなく、申請をおこなうことすら不可能になります。
そのため、要件の確認は運送業許可を取るための第一関門といえるでしょう。
ここでは、運送業許可を得るための要件を以下3つに分けてざっくりと解説します。
- 人的要件
- 物的要件
- 財産的要件
さらに詳しく知りたい方は以下の記事も併せてお読みください。
人的要件
人に関する要件は以下の通りです。
- 欠格事由
- 人員の確保
- 役員法令試験
- 運行管理者
- 整備管理者
それぞれ見ていきましょう。
欠格事由
前提として、申請者が欠格事由に該当する場合、運送業許可申請はできません。
ここでいう申請者は、法人の場合は役員全員、個人事業主であれば事業主本人を指します。
運送業許可における主な欠格事由は、以下の通りです。
- 1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受けてから5年が経過していない
- 一般貨物自動車運送事業・特定貨物自動車運送事業の許可取り消しから5年が経過していない
- 申請者と密接な関係を有する者(親会社・子会社・グループ会社)が許可取り消し処分を受けてから5年が経過していない
- 申請者が未成年者または成年被後見人の場合、その法定代理人が上記に該当する
- 申請者が法人の場合、役員のいずれかが上記に該当する など
人員の確保
トラック運送業(緑ナンバー)を始めるには、以下の人員を確保(または確保予定)する必要があります。
- ドライバー:5名
- 運行管理者:1名
- 整備管理者:1名(兼務可)
- 運行管理補助者:1名(兼務可)
- 整備管理補助者:1名(兼務可)
整備管理者・運行管理補助者・整備管理補助者は他の役割と兼務できます。
そのため、最低でも6名の人員を確保できれば運送業許可申請が可能です。
ただし、運行管理者だけは他の役割と兼任できないので注意してください。
役員法令試験
運送業許可を取得するにあたって、役員法令試験に合格する必要があります。
役員法令試験では、一般貨物自動車運送事業法を中心とした法令から問題が出題されます。
試験時間は50分で、8割以上の問題に正解すれば合格となります。
福岡県でトラック運送会社を開業する場合は、九州運輸局で受験します。
運行管理者
運行管理者は、輸送の安全を確保する上で欠かせない存在です。
そのため、トラック運送業(緑ナンバー)を開始する際は、必ず選任する必要があります。
運行管理者の選任要件は、以下の通りです。
- 運行管理者資格を保持している
- 配置するトラックが1~29台の場合は1名、以降30台増加するごとに+1名の運行管理者を確保または確保予定である
- 原則営業所に常勤する者である
- 他の営業所の運行管理者を兼任していない
- 社会保険および労働保険に加入している(個人事業主の身内は除く)
運行管理者資格を持つ者がいない場合は、新たに雇う・試験を受験する・講習を受けるなどして、運行管理者を確保する必要があります。
なお、運行管理者はドライバーと兼務できないので注意してください。
整備管理者
整備管理者は、最低1名の選任が必須です。
自動車整備士資格を保持していなくても、実務経験があれば選任できます。
要件には、以下の項目が定められています。
- 自動車整備士3級以上の資格を保持している
- 資格を持たない場合、2年以上の実務経験+実務経験の証明+選任前研修の受講が必要
- 原則営業所に常勤する者である
- 社会保険および労働保険に加入している(個人事業主の身内は除く)
ちなみに整備管理者は、ドライバーと兼務できます。
運行管理者と兼務も可能ですが、この場合はドライバーと兼務できなくなるため注意してください。
物的要件
物に関する要件では、以下の4項目が挙げられます。
- 車両
- 営業所・休憩施設
- 睡眠施設
- 駐車場
一つずつ解説します。
車両
トラック運送業(緑ナンバー)を開業するにあたって、車検証の用途欄に「貨物」と記載された車両を5台以上確保する必要があります。
※特例として、霊柩運送や一般廃棄物運送の場合は1台からでも運送業許可申請が可能です。
軽自動車や自動二輪車は対象外となるので注意してください。
申請車両の中にトラクタとトレーラーが含まれる場合は、合わせて1台とカウントされます。
営業所・休憩施設
トラック運送業で使用する営業所や休憩施設については、適切な使用権原があるかを以下の書面で証明する必要があります。
- 自己所有の場合:建物登記簿謄本
- 賃貸の場合:申請時点で2年以上の契約期間のある賃貸借契約書
また、確保または確保予定の建物が、都市計画法や農地法などの関係法令に抵触していないかも併せて確認しなければなりません。
基本的に営業所と休憩施設は併設されているのが好ましいですが、場所が見つからない場合は多少離れていても問題ありません。
睡眠施設
ドライバーが仮眠を取らないと運行上の安全が確保できない場合に限り、睡眠施設を設ける必要があります。
基本的な要件は、営業所や休憩施設と同じです。
- 適切な使用権原を証明できる
- 都市計画法や農地法などの法令に抵触しない
その他、睡眠施設特有の要件として、1人あたり2.5㎡以上の広さを保有している必要があります。
駐車場
トラック運送業で使用する駐車場については、以下の要件が定められています。
- 適切な使用権原を証明できる
- 都市計画法や農地法などの法令に抵触しない
- 屋根がある車庫は、原則として市街化調整区域に該当しないこと
- 営業所から直線で5km、政令指定都市※にあたっては特例で10km以内である(福岡県の場合)
- 駐車場の出入口が道路の曲がり角や横断歩道から5m以内でない など
※福岡県の政令指定都市は、福岡市と北九州市の2箇所です。
駐車場出入口に関する規則は、駐車場法施行令などで定められているので、公安委員会への確認が必要になります。
財産的要件
財産(資金)に関する要件では、以下の2つを満たす必要があります。
- 自己資金の確保
- 損害賠償能力
それぞれ見ていきましょう。
自己資金の確保
自己資金とは、事業を始めるにあたって必要になる資金を指します。
具体的には
- 役員報酬(6ヵ月分)
- 従業員給料手当(6ヵ月分)
- 営業所賃料(12ヵ月分)
- 車両購入費用(12ヵ月分)
などの費用が該当します。
運送業許可を申請する際には、十分な自己資金を保有していることを運輸支局に証明しなければなりません。自己資金は低く見積もっても1,500万程度、多くて2,500万円以上の費用が必要になります。
なお、自己資金の証明は金融機関が発行する「残高証明書」でおこないます。
損害賠償能力
自己資金の他、損害賠償能力があるかも証明できなければなりません。
証明するには、自動車任意保険の「対人補償無制限」「対物補償200万円以上」に加入する必要があります。
なお、許可取得後は事業用自動車の保険料率クラスに加入しなければなりません。
福岡県で運送業許可を受ける流れ
続いて、福岡県で運送業許可を受ける流れを解説します。
- 申請書を作成し、添付資料とともに福岡運輸支局へ提出
- 役員法令試験の受験
- 社会保険・労働保険加入、36協定の締結
- 申請書類の審査
- 補正対応
- 2度目の残高証明書提出
- 許可取得
- 運賃料金設定届と運輸開始届の提出
- 運輸開始
運送業許可では、申請書を提出してから4〜5ヵ月(標準処理期間)、許可取得から運輸を開始するまで平均して4週間程度かかります。
ただ、書類をスムーズに用意できず要件の確認に手間を要した場合は、1年近く時間がかかってしまうケースもあります。
滞りなく申請を進めるためにも、あらかじめ流れを頭に入れておきましょう。
①申請書を作成して福岡運輸支局へ提出
まずは、上記で紹介した5つの要件を満たせているか確認しましょう。
とくに運行管理者に関しては注意が必要です。
運行管理者資格を持つ者がいない場合は許可申請自体ができなくなるので、必ずチェックしておきましょう。
要件のクリアが確認できたら、運輸支局の担当窓口に提出する書類を収集します。
申請者が法人か個人事業主かによって、必要な書類の種類が変わるので注意してください。
書類の収集と申請書の作成が完了したら、営業所を管轄する福岡運輸支局へ提出します。
住所 | 電話番号 | |
福岡運輸支局(本庁舎) | 〒813-8577 福岡市東区千早3丁目10-40 |
092-673-1191(輸送部門) |
②役員法令試験を受ける
申請書の提出が完了したら、次に役員法令試験を受験します。
役員法令試験は、事業を適法に運営するための知識を有しているかを確認するために実施されます。
申請者が法人の場合は常勤役員のいずれか1名、個人事業主であれば事業主本人が受験します。
法令試験は申請が受理された翌月以降の奇数月に実施され、福岡県で運送会社を開業する場合は「九州運輸局」が受験会場となります。
住所 | 電話番号 | |
九州運輸局 | 〒812-0013 福岡市博多区博多駅東2-11-1 福岡合同庁舎新館 7F~10F |
092-472-2312(代表) |
法令試験は、1回の許可申請において2回までしか受験できません。
2回とも不合格となった場合は、許可申請自体が取り下げられてしまいます。
九州運輸局の法令試験の合格率は、全国的に見ても低い傾向があります。
そのため、過去問題を何度も解いて対策し、試験に挑むようにしましょう。
③残高証明書の提出・保険加入
申請書が受理されてから約2〜3ヵ月後に、残高証明書(2度目)を提出します。
その後、法人役員や従業員を以下の保険に加入させます。
- 健康保険(短時間労働者を除く)
- 厚生年金(短時間労働者を除く)
- 労災保険
- 雇用保険(短時間労働者・法人役員は除く)
許可取得後に保険に加入したことを証明できる書類を提出する必要があるので、忘れずに保管しておきましょう。
併せて36協定書の提出もおこないましょう。36協定書は従業員に時間外労働をさせるために必要です。
労働組合に加入している方は代表と、組合未加入の方は従業員の代表と協定を結び、営業所を管轄する労働基準監督署へ提出します。
④申請書類の審査・許可取得
審査が完了したら、福岡運輸支局から許可取得の通知が届きます。
その後、約1週間以内に、運送業許可書の交付式がおこなわれるので、法人であれば役員または運行管理者、個人事業主の場合は事業主本人が出席します。
交付式では運送業許可書のほか、登録免許税納付書が手渡されます。
許可を取得してから1ヵ月以内に金融機関で12万円を納付してください(コンビニでの納付は不可)。
⑤トラック運送事業開始
登録免許税の納付が完了したら、運輸を開始するにあたって必要な書類を揃える手順に移ります。
初めに「運行管理者選任届・整備管理者選任届」と「運輸開始前確認」を提出します。
運輸開始前確認と引き換えに「事業用自動車等連絡書」が手渡されるので、申請車両を緑ナンバーに変更する際に使用してください。事業用自動車等連絡書は、自家用車でいう車庫証明になります。
次に、事業用トラックを緑ナンバーに変更し、新たな車検証を取得します。
変更した後は、事業用自動車としての自動車任意保険への加入も忘れずにおこないましょう。既に加入済みの方は、事業用車にも適用できるよう内容を変更してください。
その後、「運輸開始届」に車検証の写しと任意保険証券を添付し、「運賃料金設定届」とともに福岡運輸支局へ提出します。
以上の手続きがすべて完了したら、晴れてトラック運送業(緑ナンバー)を開始できます。
許可申請で必要な期間と費用(資金)
ここからは、運送業許可を申請する際に、かかる期間と費用について解説します。
結論をいうと、期間は最短で6ヵ月程度(当社シフトアップでは平均6カ月)、費用は開業資金を除いて登録免許税12万円が必要になります。
ただし、新たに会社を設立したり手続きを行政書士に依頼したりする場合は、期間や費用が異なります。
以下で詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
期間
申請書を提出してから実際に許可取得できるまでは、4〜5ヵ月(標準処理期間)かかります。※九州の一部地域では、稀に3ヵ月程度になるケースもあります。
また、許可取得から運輸を開始するまでは、社会保険加入や緑ナンバーへの変更手続きをする必要があるため、追加で1ヵ月ほどみておくと良いでしょう。
標準処理期間は、適切な審査をおこなうために地方運輸局の公示で定められています。
そのため、早く許可を取りたいなら、審査以外の時間をいかに短縮するかが重要です。
要件の確認や必要書類の収集をスムーズにおこなえるよう、許可申請前からしっかりと準備しておきましょう。
費用(資金)
運送業許可を取得する際に必要な費用(=所要資金)は、以下の通りです。
法定費用(登録免許税) | 行政書士に依頼する場合 | |
運送業許可取得にかかる費用 | 12万円 | 40万~70万円 |
この費用とは別に、開業資金や当面の事業資金(1,500〜2,500万円程度)を用意する必要があります。
行政書士に依頼した場合の報酬は事務所によって開きがあるので、ご自身の予算を加味して、信頼できるところに依頼するのがおすすめです。
参考までに弊社シフトアップでは、業界水準より2割程度安価な「45万円+税」で承っています。
ちなみに、会社を設立して法人で許可申請する場合は、別途以下の費用がかかるので注意が必要です。
- 株式会社の場合:法定費用20万円
- 合同会社の場合:法定費用6万円
また、会社設立の手続きを行政書士に依頼する場合は、2〜10万円程度の報酬が上乗せされます。
九州運輸局の役員法令試験は合格率が低いって本当?
九州運輸局の役員法令試験は、他の地方運輸局と比較しても合格率が低い傾向にあります。
令和5年3月に実施された試験の合格率は43.7%、令和4年1月に至っては10.4%と、過去最低記録を更新しました。
(参考:トラック法令試験の実施結果について|九州運輸局)
ちなみに、全国の合格率の平均は60〜90%程度です。
なぜ九州運輸局の法令試験は、これほどまでに合格率が低いのでしょうか。
その理由としては、以下が挙げられます。
- 定番問題が減少傾向にある
- 条文通りでなく、考えさせる問題が増えた
- 過去問対策だけではカバーしきれない初問題が複数出題された
- 見落としやすい問題が多い
今までのように、過去問を対策するだけではカバーしきれない問題が増えている印象です。
過去問はもちろん、条文集を素早く引けるようにしておくことも必要でしょう。
なお、条文は丸暗記するだけでなく、内容をしっかりと理解することが重要です。
まとめ
福岡県は西日本屈指の経済力を誇る県で、高速道路や空港、湾岸などの交通インフラも整備されているため、トラック運送業(緑ナンバー)を始めやすいです。
トラック運送業を始めるには、人・物・金の3つの要件を確認したり法令試験を受験したりして、国土交通大臣または地方運輸局長から許可を受けなければなりません。
要件の確認には専門的な知識を要する場合もあるので、申請をスムーズに進めたいならトラック運送業許可専門の行政書士に依頼するのがおすすめです。
弊社シフトアップでは、許可申請や依頼に関する無料相談を受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
運送業許認可や巡回指導・監査対策に関するお問い合わせは行政書士法人シフトアップまでお気軽に。全国対応しております。