東京都で運送業を営む場合、国土交通大臣から許可を受けなければなりません。
許可を取得するにあたって申請をおこなう必要がありますが、書類の作成や要件の確認など、やるべきことは多岐にわたります。
そこで、本記事では東京都で運送業許可を取る流れを紹介します。
要件や費用のほか、東京で運送業をする際に避けて通れない「自動車Nox・PM法」についても解説するので参考にしてください。
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運送業とは?代表的な3種類を紹介
運送業とは、荷主の依頼に応じて自動車を使用し、有償で貨物を運ぶ事業です。
国土交通大臣の許可を受け、定められた法律や基準に則って事業をおこなう必要があります。
許可を取得する義務がなくなると、以下のようになる可能性も。
- 秩序が乱れて公共の安全が確保されなくなり、事故や災害が横行する
- 環境保護の規制がなくなり、大気や水質の汚染が進む
- 荷物の紛失時や配送の遅延が起こった際、責任の所在が不明瞭になる
このような事態を防ぐために、運送業では許可制が採用されています。
運送業は、大きく分けて3種類あります。
運送業の種類 | 概要 | 事業開始の条件 |
一般貨物自動車運送事業 | 不特定多数の荷主の依頼に応じて有償で貨物を運ぶ | 国土交通大臣からの許可を取得する |
特定貨物自動車運送事業 | 特定の荷主の依頼に応じて有償で貨物を運ぶ | 国土交通大臣からの許可を取得する |
貨物軽自動車運送事業 | 軽自動車や125cc超えの二輪車を使用して有償で貨物を運ぶ | 運輸支局への届出が必要 |
それぞれで事業内容や申請方法が異なります。
自身が希望する運送事業はどの種類に該当するのか確認しましょう。
一般貨物自動車運送事業
一般貨物自動車運送事業では、荷主の申し入れに応じて有償で貨物を運びます。
荷主は限定されず、不特定多数から仕事を受けます。
一般的にイメージされる運送業は、ほとんどがこれに該当します。
特定貨物自動車運送事業
特定の荷主の要請に応じて貨物を運び対価を得る事業を、特定貨物自動車運送事業といいます。
一般貨物が不特定多数の仕事を受けるのに対し、特定貨物では限られた1社の貨物だけを運びます。
メーカーや商社の運送を担当する系列会社が該当することが多いです。
貨物軽自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業は、荷主の要請に応じて運賃を受け取って貨物を運ぶ事業です。
上2つと異なる点は、軽自動車または125cc超えの自動二輪車を使用する点です。
また、貨物軽自動車運送事業については許可制ではなく、営業所管轄の運輸支局へ届出を提出する必要があります。
東京都で運送業許可を取るために満たすべき要件
次に、東京都で運送業許可を取得するための要件について解説します。
許可に関しては一定の基準があり、これらを満たす必要があります。
基準をクリアできない場合は許可を受けられません。
- 人(人員が揃っているか)
- お金(事業資金を確保しているか)
- 資格(運行管理者資格を保持する者がいるか)
- 車両(事業用車を確保できるか)
- 営業所(事業を営む施設が確保されているか)
以下で詳しく解説します。
人の要件
人の要件は、運送業を営むための人員が確保(または予定)されていることを示します。
運送業を始めるには、以下の人員を確保する必要があります。
- ドライバー:5名
- 運行管理者:1名
- 整備管理者:1名
- 運行管理補助者:1名
- 整備管理補助者:1名
運行管理者はドライバーと兼任できませんが、整備管理者・運行管理補助者・整備管理補助者に関しては兼任が可能です。
以上のことから、最低でも6名の人員を確保しなければなりません。
また人員の確保とは別に、運送事業者にあたる人物が欠格事由に該当していないかも確認しましょう。
欠格事由とは、要求されている資格を欠くことをいいます。
運送業許可における欠格事由は以下のとおりです。
- 1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受けてから5年が経過していない
- 一般貨物・特定貨物自動車運送事業の許可取消から5年が経過していない
- 申請者が未成年者・成年被後見人の場合、法定代理人が上記2つのいずれに該当する
法人の場合は役員全員、個人事業主の場合は申請者本人が欠格事由に当たらないことが要件となります。
お金の要件
お金の要件では、運送業を始めるための資金や、事業開始後の当面の元手が確保できているかチェックされます。
資金の有無は、金融機関が発行する「残高証明書」で示します。
具体的には、以下項目で必要になる資金を調達しなければなりません。
- 役員報酬(6ヵ月分)
- 従業員の給与手当(6ヵ月分)
- 車両修繕費・燃料代(6ヵ月分)
- 車両リース・ローンの月額料金(12ヵ月分)
- 営業所や車庫の賃料(12ヵ月分)
大体の資金総額は、1,500〜2,500万円程度です。
トラックの大きさや台数、新車か中古車、営業所の賃料や購入金額でも必要な資金額は大きく異なります。
資格の要件
ここでいう資格は「運行管理者資格」を意味します。
運送業を始めるには、運行管理者を1名以上必ず選任しなければなりません。
もし確保した人員の中に資格保持者がいない場合は、資格を持つ者を新たに雇うか、試験を受ける必要があります。
運行管理者試験は、3月と8月の年2回しか実施されていないので、許可取得に合わせて計画的に受験しましょう。
なお、運行管理者不選任のまま事業をおこなった場合は、初違反でも30日間の事業停止処分が下されるため注意してください。
また、運行管理者とあわせて整備管理者も1名以上選任する必要があります。
整備管理者の場合は、資格を取得していなくても選任可能です。
選任条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
車両の要件
運送業許可を取るためには、1つの営業所につき5台以上の車両を用意する必要があります。
軽自動車や自動二輪車以外で、車検証の用途欄に「貨物」と記載されている車両であれば基本的には登録可能です。
ただし、トラクタとトレーラの場合は、セットで1カウントとなるため注意してください。
許可申請時に全ての車両を揃える必要はありません。
購入予定であるとして、売買契約書や割賦契約書が提出できれば、申請自体は受け付けてもらえます。
車両の要件については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
営業所の要件
運送業許可を取得するには、事業を営むための営業所・休憩所・睡眠施設・駐車場を揃える必要があります。
営業所や休憩所として使用する建物は、
- 自己所有または賃貸で確保できているか
- 都市計画法や農地法に抵触していないか
をはじめとする、さまざまな要件をクリアしたものでないといけません。
睡眠施設は、仮眠を取らないと運行中の安全確保ができない場合のみ設ける必要があります。
都市計画法や農地法に抵触していないかに加え、1人あたり2.5㎡以上の広さを確保していないと、運送業で使用する睡眠施設として認められないため注意してください。
駐車場については、
- トラックが出入りできるほどの道路幅があるか
- 営業所から5~20km以内(地域によって異なる)の場所にあるか
などの要件を満たす必要があります。
東京都で運送業許可を取得する流れ
許可の要件が理解できたところで、次に東京都で申請をおこなう流れを見ていきましょう。
- 要件の確認・申請書類作成
- 東京運輸支局へ書類を提出
- 東京運輸支局と関東運輸局で審査
- 役員法令試験の受験・ヒアリング
- 補正があれば対応
- 残高証明書を提出(2回目)
- 社会保険や労働保険への加入・36協定の締結
- 運送業許可取得
- 許可証の交付式・登録免許税の納付
- 運行管理者・整備管理者の選任届を提出
- 運輸開始前確認届の提出
- 事業用自動車等連絡書の交付
- 緑ナンバーに変更・自動車保険の加入
- 運賃料金設定届・運輸開始届を提出
東京都では、東京運輸支局へ申請書類を提出します。
東京運輸支局の基本情報 | |
住所 | 〒140-0011 東京都品川区東大井1丁目12番17号 |
電話番号 | 050-5540-2030 |
アクセス | JR品川駅 高輪口下車(約3km) 都バス 品93 大井競馬場行で東京運輸支局前下車 |
(出典:関東運輸局 東京運輸支局本庁舎)
東京都で運送業許可を取る場合の費用と期間
運送業の許可を取得するまでは、平均6ヵ月〜1年の時間を要します。
これを聞いて、長いと思う方もいるでしょう。
そもそも、申請書類を提出してから審査が完了するまで4〜5ヵ月かかります。
これは、運輸局が審査をするために必要な期間(標準処理期間)として公表されている数字です。
標準処理期間を公表することによって、許可取得までの目安が明らかになると同時に、素早い事務処理を可能にしています。
許可取得までの期間を短縮したいのであれば、
- 営業所や駐車場はあらかじめ目星をつける
- 必要になる書類は何かざっくりと把握しておく
- 法令試験を一度で合格できるよう勉強する
など前々から余裕をもって準備することが大切です。
費用に関しては、まず事業を営むための資金として1,500〜2,500万円程度必要です。
その他にも、許可を取得した際に納める登録免許税(12万円)も用意しておきましょう。
自動車Nox・PM法に適合しないトラックは注意!
東京都で運送業を営む場合、避けて通れないのが「自動車Nox・PM法」です。
自動車Nox・PM法とは、自動車から排出される窒素酸化物の総量を、特定地域において削減しようとする特別措置法です。
わかりやすくいうと、自動車から出る排気ガスを制限して、大気汚染対策につなげるというもの。
東京都では、以下の地域が自動車Nox・PM法の対象となります。
東京都(29市区町) | 特別区(23区)・昭島市・あきる野市・稲城市・青梅市・清瀬市・国立市・小金井市・国分寺市・小平市・狛江市・立川市・多摩市・調布市・西東京市・八王子市・羽村市・東久留米市・東村山市・東大和市・日野市・府中市・福生市・町田市・三鷹市・武蔵野市・武蔵村山市・日の出町・瑞穂町 |
(出典:自動車NOxPM法対策地域 環境省)
車検証の備考欄に「この自動車はNox・PM対策地域内に使用の本拠を置くことができません」と記載がある場合は、事業用車としての登録は不可となるため注意してください。
まとめ
運送業許可を取得するためには、いくつかの要件をクリアしたり、申請書類を詳細に作成したりする必要があります。
自分自身で申請をおこなうことも可能ですが、時間に余裕がないとよっぽど難しいでしょう。
また、満たすべき要件のなかには専門家でないと判断が難しい項目もあります。
「時間に余裕がない」「事務作業が苦手…」という場合は、行政書士に依頼するのがおすすめです。
シフトアップでは、書類作成はもちろん、要件の確認や申請代行まで、幅広く対応します。
許可取得に関する相談も無料で受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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